独自開発技術を活用し、妊活タイミングをおりものでチェック
忙しい日々を送りながらも妊娠を望む女性にとって、“妊活に適したタイミング”を把握することは、重要なこと。一方で、生理ケア用品などを展開するユニ・チャームが実施した調査によると、妊活中の女性の約8割*1が様々な悩みを抱え、特に“妊活に適したタイミング”を把握することは、大きな悩みであることが判明しました。
そこでユニ・チャームは、妊活中の女性が普段どおりの生活を送りながら、気軽に妊活タイミングを予測できる方法はないかと、長年研究を重ねます。その結果、発見されたのが、膣から分泌されるおりものに含まれている、妊活タイミングを知るうえで重要なサインとなる「妊活おしらせ物質」。そこで、その「妊活おしらせ物質」が含まれていることをスムーズに把握できるよう、ユニ・チャームは「ソフィ 妊活タイミングをチェックできるおりものシート」を開発し、昨年販売をスタートしました。
「ソフィ 妊活タイミングをチェックできるおりものシート」のポイントは、ユニ・チャームが独自に開発した、おりものの中に含まれる「妊活おしらせ物質」を認知する「バイオテスター技術」。からだに当てたシートに付着したおりものの中に「妊活おしらせ物質」を検出すると、シートに付いている判定サイン部分に2本線が現れ、検出しなかった場合は1本線が現れるという仕組みです。さらに、おりものの量や粘度に左右されずに「妊活おしらせ物質」を捉え、判定しやすいように「おりものキャッチスルー構造」も採用されています。
いつもと変わりのない日常生活の中で妊活タイミングが予測できるバイオテスター技術は、まさに現代の女性のライフスタイルに寄り添う技術と言えそうです。
「痛いからやっぱり止める」を減らす、MRIを活用した痛くない乳がん検診
テクノロジーは医療の現場で活用されていることは広く知られていますが、その一つに乳がん検診があります。
現代は日本女性の9人に1人*2が生涯の間に乳がんに罹患すると言われ、30〜64歳の女性のがん死亡原因のトップ*3になっています。多くの女性にとって乳がんは人ごとではない、身近な病気ですが、早期に見つかって治療すれば、多くの人が罹患以前の生活に戻ることができるというのも乳がんの特徴です。
そのために欠かせないのが定期的な検診です。行政が行う健康診断でも検診できるごく一般的な検診である一方、よく聞かれるのが「乳がん検診は痛い」という声。確かにマンモグラフィによる検診は、乳房を引っ張ったり機械で挟んだりするため痛みが生じます。そのため足が遠のいてしまい、結果的に発見が遅れてしまう、という状況に陥る可能性も否定できません。
そんな状況を打開するテクノロジーとして、注目されているのが、「ドゥイブス・サーチ」の無痛MRI乳がん検診です。検査方法は、服を着たまま乳房型にくり抜かれた専用ベッドの上にうつ伏せに寝て撮影するだけ。乳房が圧迫されることがないため、痛みがないのが大きな特徴で、15分程度で検査は終了します。
また「日本人はマンモグラティでは乳がんが発見されにくい」という話を聞いたことはないでしょうか?それは、欧米人に比べて日本人は乳腺が白くぎっしり詰まっている高密度乳房の人が多いため、その乳腺に隠れてがんが発見されにくい傾向にあることが背景にあります。「ドゥイブス・サーチ」の無痛MRI乳がん検診は、MRI撮影で乳腺に邪魔されないため、がん発見の精度が高いというメリットがあります。
さらに、乳房を押さえたり挟んだりすることがないため、豊胸手術をしていたり、乳房再建手術を受けてインプラント(挿入物)が入っていたりする人も安心して検査することが可能*。さまざまな条件がある方も安心して検診を受けられるというわけです。
*受けられない場合もあるので、医師に相談の上、検査を行ってください。
検査は保険適用外で、検査できる医療機関も全国で70ヵ所とまだ限られてはいますが、MRIというテクノロジーが、女性の健やかな人生をサポートする需要な役割を担う画期的な例と言えます。
「病気になってもオシャレをしたい」メディカル専用編み機と肌データを活用した医療用ストッキング
病気治療の一環として着用する医療用ストッキングにもテクノロジーが活用されています。女性にとってストッキングは身近なものですが、ファッションの一部として選択するそれとは異なり、主にリンパ浮腫の方が着用するのが着圧の強い医療用ストッキングです。
リンパ浮腫とは、がんの手術や治療の影響などでリンパ液の流れが悪くなりむくんでしまう状態のこと。主に婦人科系がんや乳がんの後遺症として発症するため、その9割以上が女性といわれ、一度発症すると完治が難しいと言われています。脚のリンパ浮腫の治療には医療用弾性ストッキングによる圧迫が欠かせません。
毎日はき続ける必要があるため、医療用としての機能性にくわえ、快適性や美しさも不可欠と考え、テクノロジーの力で実現したのが、化粧品メーカーとして知られるポーラ・オルビスグループから生まれた、 「MAEÉ(マエエ) コンプレッションストッキング」(encyclo(エンサイクロ))です。リンパ浮腫を抱える人が持つ「医療用弾性ストッキングが原因でオシャレを諦めている」という課題に着目し、開発されました。
一般的なストッキングと医療用弾性ストッキングの大きな違いはその着圧力。「MAEÉ コンプレッションストッキング」の場合、足首は最大43hPa、ふくらはぎは34hPa、太ももは22hPaとなり、心臓に遠いところから段階的に圧迫することで血流の流れを促し、脚のむくみを予防・改善します。ちなみに10hpa → 500円玉 7.5個分を置いたくらいの圧力*4なので、着圧感が想像できるかと思います。
着圧力を実現するためには、特殊な編み機が必要となります。「MAEÉ コンプレッションストッキング」が使用しているのは、医療用弾性ストッキング編機のトップメーカーであるドイツのメルツ社の編み機。この特殊な編み機により、見た目は足首から太ももまで同じでも、部位ごとに細かく設定した着圧値を実現しています。
ストッキングですから、伝染しづらさも必須です。使用する糸は、芯糸となるライクラ®*5ファイバーの周りに、ナイロン糸を二重に巻き付けてカバーしたDCY糸(ダブルカバードヤーン)を採用。一般的なストッキングに比べて太くて丈夫な糸で編んでいるため、耐久性に優れているのも大きな特徴です。
ポーラ・オルビスグループらしく、ベージュの色にもこだわっています。そこで活用されたのが、ポーラの1,900万件(開発当時)を超える肌色ビッグデータ。それに基づいて、日本人女性の肌を美しく見せる究極のベージュが生み出されました。
編み機や糸の技術、そして肌研究のビッグデータと、さまざまなテクノロジーが融合して着圧機能は保ちつつ素肌感のある薄さと透明感を備えた医療用ストッキングが実現しました。
*リンパ浮腫治療のための医療用弾性ストッキングは、医療従事者の指示のもとの購入が前提となります。
可能性を多く秘めたフェムテック
女性の生活に密接に関わる「フェムテック」をご紹介しました。テクノロジーによってより良い環境を生むフェムテックはまだ始まったばかりで、多くの可能性を秘めています。さらなる技術革新に期待も高まりますね。
参考:
*1 ユニ・チャーム調べ
*2 地域がん登録全国推計値2020年データによる。国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
*3 国立がん研究センターがん対策情報センター(人口動態統計より作成)2014年データを参照
*4 グンゼのHPより引用https://www.gunze.co.jp/support/faq/product/material-03.html
*5 ライクラ®(LYCRA)はTheLYCRACompanyの商標です。
<プロフィール>
川原好恵
文化服装学院マーチャンダイジング科卒業後、流通業界で販売促進、広報、店舗開発を約10年経験した後、フリーランスとして独立。下着通販カタログの商品企画などを経て、現在はランジェリーやビューティ、フェムテックの分野を中心に、雑誌、新聞、ファッションウェブサイトなどで執筆・編集を行うほか、服飾専門学校などで講師を務める。