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アパレル販売の未来が大きく変わる!? 各社が競って導入するサイズテックの現在地

2024.01.22(最終更新日:2024.01.22)

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2017年に株式会社スタートトゥデイ(現ZOZO)の「ZOZOSUIT」によって注目を集めたサイズテック。スーツを着てスマートフォンで撮影するだけで瞬時に身体のサイズを計測できる技術は、当時大きな話題となりました。本サービスは2022年に終了となったものの、実はほかにもサイズ計測テクノロジーを利用したサービスは数多く存在します。そこで本記事では、さまざまな企業で取り入れられているサイズテック技術を紹介するとともに、今後のアパレル業界の展望を考察します。

「ZOZOSUIT」の手軽さを活かしたボディーマネジメントサービス「ZOZOFIT」とは?

まず、先述した「ZOZOSUIT」をボディーマネジメントサービスとして活用した「ZOZOFIT」が挙げられます。株式会社ZOZOは、2022年4月にワークアウトの進捗をサポートする新しいサービスとして「ZOZOFIT」を発表しました。

専用のスーツとスマートフォンさえあれば、どこにいても詳細な体型が採寸できる「ZOZOSUIT」。「ZOZOFIT」はその手軽さを利用して、ジムや自宅にいながら高精度な3Dボディスキャンをおこない、計測したデータの詳細な分析を可能にするサービスです。

使い方は「ZOZOSUIT」同様、専用のスーツを着用した状態で、スマートフォン上の専用のアプリを起動して撮影するだけ。スーツ全体に施されたドットマーカーを360度撮影することで、高精度な体型計測を可能にし、計測結果をもとに身体の3Dモデルを生成することができるのです。

これらの計測結果や身体の3Dモデルは、アプリ内に記録として蓄積することも可能。過去と現在の数値や3Dモデルを比較することで、ユーザーのモチベーションアップやトレーニングに必要な部位の可視化にも役立ちます。

通常「ZOZOFIT」と同程度の高精度な体型計測をおこなうには、特殊な大型機械や器具の導入が必要です。しかし「ZOZOFIT」であれば、それらを導入するためのコストや場所を取ることもなく、手軽かつスピーディーな体型計測が可能です。

またZOZOは、体型計測情報以外にも、将来的に心拍や運動強度などの計測全般を取り込むことを想定しているといいます。これらのデータから生み出されるシミュレーションアルゴリズムなどの開発や、スーツを通して得られた個々人の蓄積データから、個人に合った商品や関連サービスを勧めるマーケットプレイスとしての展開も視野に入れているとのことです。

近年急速に導入企業を増やしている身体測定テクノロジー「Bodygram」

2019年に創業し米国と日本を拠点にサービスを展開する「Bodygram」も、近年急速に導入企業を増やしている身体測定テクノロジーのひとつ。「Bodygram」とは、AIの学習機能を使って、服を着たまま身体のサイズ測定ができるアプリケーションです。

測定の方法はいたってシンプルで、アプリのガイダンスに従って身体の前面と側面の2枚の写真を撮影するだけ。後は基礎情報を入力すれば、数秒で身体の24ヵ所の計測データや姿勢データ、3Dアバターが生成されます。

「Bodygram」のメリットは、どこにいても数秒で正確な身体のサイズを測定できるため、採寸のための時間や場所に制約がないという点です。さらに人の手間も不要なため、人件費の節約にもなります。実際に、個々人の採寸を必須とするカンコー学生服、セロリー株式会社、トンボ学生服などのユニフォームメーカーでは「Bodygram」を導入し、数千人にもおよぶ採寸業務の効率化を実現しました。

全国展開する大手学生服メーカーである株式会社トンボは、2021年春に「Bodygram」のAI採寸テクノロジーを利用し、提携する学校に対して学校制服採寸サービス「ハカルンジャー」の導入を開始。スマートフォンで2枚の写真を撮影するだけで、腹囲・肩幅・手足の長さなど全身25ヵ所のサイズを測定し、最も合う制服や体操着のサイズを推奨するサービスを実現しました。

さらに推奨されたサイズの制服や体操着は、画面上でそのまま注文することも可能。これにより従来は実店舗などに赴き、直接採寸してもらう必要があった学生の移動コストや手間などの課題解決に成功しました。

また「Bodygram」により蓄積された個々人の綿密なボディーデータは、健康管理の面でも重宝します。保険サービス事業を展開する明治安田生命では、保険加入者への継続的な健康サポートの一環として「Bodygram」の技術を利用した「MYほけんアプリ」を展開。スマートフォンのカメラで全身を撮影するだけで身体の気になるパーツ12ヵ所を採寸し、体脂肪や骨格筋量の測定や姿勢分析を可能にしています。

導入が広がるサイズテックと今後のアパレル業界の展望

そのほかにもさまざまな企業でサイズテック技術の導入が進められています。大手下着メーカーである株式会社ワコールでは、アプリを使って顧客自身が下着の3D計測をおこなえるサービスの提供を開始しました。

これまで下着売り場での下着の採寸は、店員に直接お願いするのが一般的でした。しかし店員に身体を見られたり、触れられたりすることに抵抗を感じる女性も少なくありません。こうした課題を解決すべく誕生したのが、前述した下着の3D計測サービス「3D smart & try(スマート アンド トライ)」です。

事前にワコール公式アプリをダウンロードしておけば誰でも無料で利用可能。すべてセルフで計測するため、計測中の姿を店員に見られることもありません。計測後は計測したデータをもとにAIと会話したり、店員からアドバイスを受けたりしながら商品を選ぶことができます。

また老舗紳士服メーカーである株式会社コナカでは、自宅にいながら顧客自身がサイズを計測し、オーダースーツを仕立てられるAI画像採寸アプリ「D MEASURE」をリリース。従来のオーダースーツでは、フィッターによる細やかな採寸が必要不可欠でした。しかしこのような採寸はプロの技術を必要とするうえ、顧客にとっても時間と手間を要します。

「D MEASURE」ではスマートフォンで撮影した写真と、身長・体重・年齢・性別などの情報を入力するだけで、顧客に最適なサイズのスーツを仕立てることが可能です。従来のフィッターによる採寸では1着1時間半ほどの時間を要しましたが、AIにより採寸を自動化することで採寸時間の大幅な短縮に成功しました。

このようなサイズテックの技術は、単に店員の負担を減らすだけではなく、店舗にわざわざ出向いてサイズを計測してもらう顧客の負担を取り除いてくれます。また自宅にいながらプロに計測してもらうのと同等の高精度な計測を可能とするため、ECサイトで商品を購入する際のハードルも確実に下げてくれるでしょう。

東芝テック株式会社では、最先端3Dアバター技術を活用したバーチャル試着ソリューション開発を進めています。2021年に同社のショールームで公開されたプロトタイプでは、高速3Dボディスキャン装置「SHUN'X Apparel」を用いて利用者本人にそっくりなアバターを生成。バーチャル試着アプリ「Virtual Palette」でアプリ上のファッションアイテム一覧から気になるアイテムを選択し、アバターに試着させることを可能にしています。

これらのサイズテック技術がアパレル業界に浸透すれば、自宅で商品の試着から購入までを当たり前におこなえる未来もそう遠くないかもしれません。



吉田康介(フリーライター)