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ごみがごみ袋に生まれ変わり、循環する社会へ。99%廃プラスチックでできたごみ袋「FUROSHIKI」とは

2024.06.24(最終更新日:2024.06.24)

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大量生産・大量消費の現代、私たちの生活には選択肢が増え、便利さと豊かさを増している。その一方で、切り離せないのが「廃棄」だ。中でも、製品そのものや包装に使われるプラスチックは、自然分解されないためにさまざまな問題を引き起こす原因となっている。そこで今求められているのが、プラスチックの適切な扱いや、環境負荷を削減するための取り組みだ。

今回紹介する「FUROSHIKI®(フロシキ)」は、株式会社サティスファクトリーが生み出した、資源循環のための新たな選択肢だ。本来はごみとして処分されるプラスチックをごみ袋に生まれ変わらせ、再利用する仕組みとなっている。そんなFUROSHIKIに込めた思いや、開発の裏側、目指す社会について、同社環境コンサルティング本部の渡邊 聡さんと、BPO本部 運用管理部の東 智之さんに伺った。

ごみをごみ袋に生まれ変わらせる。再生材で循環する資源

──「FUROSHIKI」とはどのような製品なのでしょうか?

FUROSHIKIのごみ袋(半透明・黄色・青色)

渡邊:簡単に言うと、ごみから作ったごみ袋です。様々な企業から回収した廃プラスチックを原料に戻し、再生材ごみ袋を製造しています。

ごみ袋はモノを捨てることを目的に作られているものです。しかし、捨てることが目的なのに、新しい石油資源を原料としてどんどん消費するのは、資源の無駄遣いで非常にもったいないんですよね。

捨てるのであれば、バージン材(※)ではなく、ごみとして捨てられてしまっている廃プラスチックを原料に使えば、石油資源を使わなくて済むのではないか。そんな思いからFUROSHIKIは生まれ、2020年の6月に販売を開始しました。
私たちは、廃棄物の管理業務を受託しているということもあり、日頃から企業のあらゆるごみを見てきました。そのノウハウが、このFUROSHIKIというプロダクトに生かされています。

※まだ一度も使われていない新品の原料のこと。

環境コンサルティング本部 部長 渡邊さん

──ごみがごみ袋に生まれ変わるのですね。ごみとなった廃プラスチックはどのようにしてごみ袋になるのですか?

渡邊:まず、廃プラスチックを溶かして、「ペレット」と呼ばれる粒状の素材に成型します。それをまた溶かしながら筒状に膨らませて、ごみ袋を作ることができるんです。

プラスチックペレット。汚れや混入物の程度によって黒く品質が低下するため、分別の徹底が大切

──原料となる廃プラスチックにはどのようなものがあるのでしょうか。

渡邊:現在、FUROSHIKIの原料として特に大きい割合を占めているのが、物流の現場で使われているストレッチフィルムです。家庭で使われている食品用ラップをもっと大きくしたようなプラスチック製のフィルムですね。大きな荷物を運ぶ際に倒れたり崩れたりしないよう、ぐるぐると巻きつけて使われます。荷物が目的地まで運ばれてしまえば用がなくなるので、物流の現場ではごみとして大量に処分されてしまうのです。
ほかにも、洋服を輸送する際に使われる保護用の袋も割合としては多いですね。ネットで販売した服を倉庫から発送したり、店頭で商品棚に並べたりする際に不要となり、大量に廃棄されています。

物流の現場などで使用される、ストレッチフィルム

賛同の輪が大きくなるまで2年。再生材だからこその苦労

──FUROSHIKIはどのような企業に導入されているのですか?

渡邊:そもそも、私たちとお客様とのお付き合いの仕方には2種類あるんです。1つ目が、ごみ袋の原料となる廃プラスチックを提供してくれる企業とのお付き合いです。先述したような、ストレッチフィルムや袋を提供してくださる企業ですね。このような廃プラスチックから作られたごみ袋を自社で使ってくださる場合、資源の社内循環が実現します。

2つ目が、ごみ袋を購入してくださる企業とのお付き合いです。環境貢献はしたいけれど、ごみ袋の原料となるほどの廃プラスチックを排出しない。そこで、再生材でできたFUROSHIKIを使うことで環境貢献をしたい、という経緯から導入いただいています。

これまでの提供実績は15,000事業所にのぼり、都市銀行、保険会社にも大口で採用いただいています。

──大手の銀行や企業に採用され、全国でFUROSHIKIのごみ袋が使われているのですね。販売当初から好調だったのですか?

渡邊:最初は本当に大変で、売れ始めるまで苦労しました。FUROSHIKIは一般的な業務用のごみ袋よりも原料が高価で、原料回収などのコストもかかっているので、1枚当たり1~2円ほど高いんです。

加えて、再生材を使っているからこその独特なにおいや、見た目の違いがあり、それを受け入れてもらうのが大変でした。再生材はプラスチックを溶かし直すので、その際の熱で少し焦げにおいが出てしまうんです。また、原料の溶け残りによって、袋の表面に粒ができてしまいます。

そのような一般的なごみ袋との違いから「ごみ袋はいつも買っているものがあるから」「こだわりはないから」と取り合ってもらえないことも少なくなく、「ちょっと焦げくさいし、開けにくい」といった反応もあり、散々でしたね。

FUROSHIKIはごみ由来だからこそ、溶け残った粒がみられる

──そこからどのようにしてたくさんのお客様を獲得するまでになったのでしょうか。

東:まず、プラスチックを溶かす際の細かい温度調整や、ごみ袋を成形する際の改良を施し、ごみ袋の品質を改善してきました。また、環境負荷を考慮した商品の購入を示す「グリーン購入」を求める企業にリーチするため、エコマークも取得しました。グリーン購入を促進したい、品目を増やしたいという企業は想定より多く、お客様を増やす一助となりました。

そして、逆転の発想で売り方も変えたんです。「FUROSHIKIにはごみ由来ならではのにおいや粒があります。これこそ、バージン材でつくられた再生材ごみ袋との違いです」と、廃プラスチックが原料であることを真正面から伝えるようにしました。最初はバージン材のごみ袋と同じ土俵で戦おうとしていたのですが、それをやめたことで「再生材らしくていいね」と、反応が一気に変わりましたね。

「FUROSHIKI」の名付け親である、BPO本部 運用管理部 部長 東さん

──廃プラスチックを使用したことを全面に打ち出すことで、バージン材を使用したごみ袋と、差別化したのですね。

渡邊:そうですね。特に多かった「ごみ袋には特にこだわっていない」という企業に対して、それを逆手に取りました。あえてこだわって選択する理由を作るため、FUROSHIKIの意義を伝えて共感してもらうようにしたんです。

そうしているうちに少しずつお客様が増えていき、金融機関が導入してくださって、全国の支店やグループ会社でも使われるようになりました。さらにそこから取引先へも広めて下さって、一気に賛同の輪が広がっていきましたね。ここまでに2年ほどかかりました。

──FUROSHIKIのコンセプトや環境面での意義に共感して価値を感じる企業が増えていったのですね。環境負荷を削減できるメリットに対し、企業がFUROSHIKIを利用することでどのようなメリットを受けられるのでしょうか?

渡邊:ごみ袋の原料となる廃プラスチックの提供や、それによって作られたごみ袋の導入は、CO₂排出削減に繋がります。つまり、企業としての脱炭素やSDGs達成への貢献になります。

さらに、FUROSHIKIの利用によって、廃プラスチックの焼却処分を回避したことでどれだけの二酸化炭素の排出削減になったのかを数値として各社に提示し、「CO2排出削減証明書」をお渡ししています。企業はこれをもとに対外的に環境貢献を示せるので、証明書をESG報告書に入れたり、WEBで公開したりしています。

サティスファクトリーが発行する「CO2排出削減証明書」

東:具体的な例として、1箱に45リットルのごみ袋が500枚入っている商品を購入いただくと、約45kgのCO2排出を削減できます。このような数字を実際に見てみないと、FUROSHIKIを使ったことで自分たちがどれくらい何に貢献できたかが意外とわからないんですよね。それが目に見える数字になっているので、お客様も喜ばれています。

廃棄物管理会社としての使命から実現した「99%再生材」

工場に集められた廃プラスチック。ここからFUROSHIKIへと生まれ変わる

──「環境問題解決企業」である御社ですが、環境問題の中でも廃プラスチックに目をつけたのはなぜですか?

渡邊:2019年のバーゼル条約改正により、海外へ廃プラスチックを輸出することが難しくなったことがきっかけでした。それまでは汚れたプラスチックでも、資源物として多少の価値があれば海外の企業が買い取ってくれていました。しかし、それができなくなると、国内で廃棄物としての処理が求められるようになったので、さまざまな企業が頭を抱えていたのです。

私たちは廃棄物の管理会社です。ごみの処理方法にはずっと向き合ってきたので、そうした困りごとを解決しなければならないと、大きな使命感を感じました。

ではどうするかと考えたとき、「海外に出せないから捨てる、ではなく、国内循環させればいいのではないか」という発想がありました。そして、何に再生するかといえば、どの企業でも使われているプラスチック製品、つまり「ごみ袋」に至りました。



──FUROSHIKIを開発するにあたり、特にこだわった点を教えてください。

渡邊:再生材を「99%」使用している、という数字の部分です。「100%」再生材とうたうごみ袋は市場にたくさん出回っています。しかし、実はその多くがOG(オフグレード)品と呼ばれるものなんです。

OG品とは、中古品となったバージン材を買い取ったもので、まだ一度もプラスチック製品に加工されていない新品原料を指します。一度は市場に出回った中古品であることを「再生」と表し、製品としてはバージン材で作られているものと同じ。粒一つ入っていない、ピカピカな袋ができあがります。

工場でFUROSHIKIが製造される様子

渡邊:私たちの場合、99%は再生材である廃プラスチックを、残る1%は品質調整のためにバージン材を使っています。それを正直に伝えることで、OG品ではなく一度製品になった再生材を使っていることを訴えたいと考え、この数字にはこだわっています。

──OG品が一般的ということは、「99%再生材」は技術的に難しいことなのでしょうか?

渡邊:技術的にはそこまで難しくないのですが、安定して再生材99%のごみ袋を作り続けられるだけの原料を確保することは簡単ではないと思います。廃棄物の管理会社として長年培ってきたお客様とのネットワークを生かし、効率の良い資源回収ルートを繋ぎなおしたり新たに提案したりすることで、原料を集めるインフラを整えられるのが私たちの強みです。

ごみが生まれ変わり、循環する社会へ。「FUROSHIKI」に込めた思いと未来

──「FUROSHIKI」という名前に込めた思いを教えてください。

東:「日本の文化である風呂敷がそうであったように、一般的ではなかったものが一般的なものになってほしい」という思いを込めて考案しました。

私は学生の間ずっと剣道をしていたため、武道や昔の文化が好きで風呂敷を使っていました。そんな背景から、このごみ袋の名前が社内公募されたときに、風呂敷の歴史を改めて調べてみたんです。風呂敷は武家の時代から使われていたそうなのですが、年月を重ねるうちに徐々に広まり、江戸時代には一般社会で使われるようになったのだそうです。

ごみから作ったごみ袋も大切なものを包む意味を持つ風呂敷のように、大切な資源を包むごみ袋として社会に広まってほしい。そんな思いとマッチするものでした。
また、日本だけではなく世界へと広がっていったら、という思いからアルファベットにして、「FUROSHIKI」という名前になりました。

──販売を開始してから4年。「FUROSHIKI」の名前に込めた思いから逆算した現在地と、これからの目標を教えてください。

東:現在地としてはまだまだですね。私たちは廃棄物の管理業務をしているという点で、全ての企業がFUROSHIKIのターゲットですから、その全ての企業にFUROSHIKIの取り組みを伝えたいという思いがあります。お取引をする企業は年々増えてきているので、サイズや用途など、さまざまなニーズに応えて間口を広げていきたいと思っています。

また、企業には広まってきている一方で、自治体や地域は限定的です。最終的には、地域で出た廃プラスチックをその地域内で加工する「地域内処理」ができるようになる、そんな地域に根差した循環も作っていきたいですね。


渡邊:もっとFUROSHIKIの原料となる対象を増やしていきたいという思いもあります。現在はその第1弾として、ペットボトルのキャップを原料に5%ほど練りこめるようになりました。実際に、那須塩原市では小学生が家庭でキャップを集め、それをごみ袋に生まれ変わらせて小学校で使うといった取り組みが始まっています。

このように、「普段何気なく捨ててしまうものが原料として使うことできるんだ」ということが伝われば、世の中の環境意識が変わってくるかもしれないですよね。そのきっかけが作れたらいいなと思っています。そして、捨てるものだけでなく、それを入れるごみ袋のことまで考えていけるような社会になったら何より嬉しいですね。

[プロフィール]
渡邊 聡
環境コンサルティング本部 部長
プラスチック等の素材分野に長け、大手外食チェーンやアパレル企業等における資源循環プロジェクト責任者を担当。理科学系の知識・知見と科学的なアプローチを得意とし、物流・工場・小売流通に係る知見を持つ。
東 智之
BPO本部 運用管理部 部長
廃棄物の適正処理に関する知識に明るく、事業者間の折衝を専門分野とする。顧客に代わって処理委託業者との運用を管理する責任者を担当。令和4年度の産業廃棄物処理委託検定合格者。

サティスファクトリー公式サイト:https://www.sfinter.com/


(文・安藤憧果、写真・飯山福子、編集・高山諒)