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テクノロジーを通して人とペットが暮らしやすい世界を。PETOKOTOが目指す未来

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2022.08.22(最終更新日:2022.09.14)

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私たちの生活に幸せをくれる存在、「ペット」。コロナ禍のもと在宅時間が増えたことによって、ペットを飼う人は急速に増加した。さらに、テクノロジーの進化により、ITを活用したペットのためのさまざまなサービスが生まれ、ペット産業の拡大を後押ししている。

今回は、テクノロジーを通して、動物と共に生きる社会の実現を目指している、ペットウェルネスカンパニー「PETOKOTO」代表の大久保泰介氏にインタビュー。急速に拡大しているペット市場の背景から、ペット産業が抱えている、命を繋ぐ業界ならではの課題、テクノロジー事業を通してPETOKOTOが伝えたい想いを聞いた。
大久保氏は、人間とペットの未来をどのように考えているのだろうか?

ペット事業に必要なのは、ビジネスモデルだけじゃない

──大久保さんは大学在学中にロンドンのユニクロでプロモーション業務を経験した後、新卒でグリー株式会社に入社。そして2015年に株式会社シロップを立ち上げ、現在はペットウェルネスカンパニー「PETOKOTO」代表として活躍されています。大久保さんがペット業界に着目したきっかけはどういったところにあったのでしょうか?

実は僕、昔は犬や猫が苦手だったんですよ。小学生のときに、友達が飼っていた柴犬に赤ちゃんができて、その赤ちゃんをうちで迎えたいと親に相談したら反対されてしまって。吠えられたり、噛まれたりされたわけではないのですが、動物との距離感が空いてしまったというか。犬や猫に対しての苦手意識がありました。


──大久保さんが犬や猫が苦手だったのは意外ですね。苦手意識を克服するまでにはどういった経緯があったのでしょうか?

当時付き合っていた彼女がトイプードルを2匹飼っていたんです。最初はもちろん怖かったんですけど、触れ合っていくうちに、自分は今まで犬や猫に対して、触れ合わずにただ苦手という意識を持っていただけだったことに気がつきました。そこから少しずつ苦手意識を克服していきました。また、大学在学中にロンドンに行ったときの経験も大きかったですね。ロンドンは、社会全体が犬猫に対して本当にフレンドリーに接する環境なんです。バスに乗っていても、隣の席に大型犬が乗ってきたりします。それをなんの違和感もなく受け入れている社会に衝撃を受けました。そこから「ペットへのこの意識の違いはどういうところにあるんだろう」という想いが深くなり、同時にペット産業に関心を抱くようになりました。


──事業としてペット市場に挑戦していこうと思ったのはなぜでしょうか。

調べていくうちに、ペット産業はデジタル化がまったく進んでいないことに気づいたんです。病院の予約や、支払いのキャッシュレス化などもまだまだ整備されていなくて、犬猫に関する信憑性のある情報も、ネット上だとなかなか見つかりませんでした。また、保護犬猫の社会問題も人生を懸けて解決したいという気持ちがあって、本格的に事業を考え始めたんです。

ちょうどそのとき、僕が働いていたグリー社内で新規事業公募の取り組みがあって、ペットに関する事業アイディアを提出しました。みなさんに興味を持っていただいて、役員面接まで進むことができましたが、そのとき話した役員の方たちはペットを飼っていなかったんです。結局その案は、最終面接を通過できずに終わってしまって。そのときに、ペット事業はビジネスモデルがしっかりしていても、「ペットに愛があるか」という“想いの部分”をプレゼンしていくことがすごく重要なんだということに気付きました。その後、投資家の方を紹介していただき、僕のペットに対する想いや現状の課題をお伝えしたところ、事業として支援してくださることが決まり、会社を設立することになりました。

ペットテック市場が急成長している背景とは

──近年、テクノロジーの発展とともに、ペットとテクノロジーを掛け合わせた「ペットテック」という言葉を最近よく耳にします。大久保さんは、ペットテックに対してどう考えていますか?

近頃話題になっているペットテックというのは、首輪などにデバイスを取り付けてペットの健康を管理するウェアラブルデバイスだったり、自動でご飯を提供してくれるようなIoT商品だったり、狭義な概念のものだと思います。僕たちPETOKOTO が考えているペットテックはもう少し広義のもので、ペットとの暮らしをより豊かにする情報や、出会いを提供するものです。ただ、どちらも急速に成長している市場であることは間違いなく、大きな可能性を秘めていると思いますね。


──なぜ、今こんなにもペット市場は拡大していると考えていますか?

一つは「ペットの家族化」が進んでいることです。家の外で飼うより室内で飼う人が増えたことも関係していて、昔に比べてペットとの距離が近くなり、家族と同じような情を持って飼う人が増えたことが、市場を拡大している要因だと考えます。コロナの影響もあってペットを迎える環境が整ったことで、迎える人がさらに増えましたが、一方で捨てる人も増えたことは問題でもあります。命を大切に考え、持続可能な産業を作っていくことが必要だと考えています。


──需要が大きく増えたところに、テクノロジーの要素が加わり始めたということでしょうか。

そうですね。より犬猫との絆を深められるように、テクノロジーを利用しようという動きが大きくなっています。動物の「言葉では伝わらない部分」を、テクノロジーを介することによって飼い主が把握できれば、より犬猫のことが理解でき、絆を深めることができます。例えばヘルステック系のペットテックが流行しているのも、飼っている犬猫たちの健康を可視化できることで、より安心して一緒に生活していくことができるからです。ペットの家族化により、ペットの健康を重視する人は年々増えています。そういった飼い主の需要に、ペットテックはマッチしているのではないでしょうか。

当たり前の存在である、家族のために

──大久保さんが代表を務める、ペットウェルネスカンパニー・株式会社PETOKOTOについて教えてください。

事業の軸としては、「クオリティ・オブ・ペットライフ」としてペットライフのQOLを最大化することをテーマにしています。豊かなペットライフを送るためのプラットフォームを作り、テクノロジーを通して、情報や商品を提供しています。ただ、それと同時に、犬猫が苦手な人もいることを忘れないということも大切にしています。僕たちが持っている価値観の一つに、「輪の外を想像しよう」というものがあります。ペットを家族として愛せる世界を実現するためには、犬猫が苦手な人のことも想像することが、重要なファクターになっています。僕たちはつねにその中立に立ち、お互いが許容していくことを意識しています。

PETOKOTOのブランドストラクチャー

──PETOKOTOでは現在ペットに関する情報発信メディア『PETOKOTO MEDIA』、ペットのためのフレッシュフードを提供する「PETOKOTO FOODS」、保護犬・保護猫とのマッチングサービス「OMUSUBI」の3事業を展開されていますよね。それぞれのサービスについてお聞かせいただけますでしょうか?

PETOKOTO MEDIAは、数あるペットメディアの中でも情報の信頼性が高いという特徴があり、獣医さんやトリマーさんなど、犬猫に対して確かな知識を持っている方たちに執筆してもらっています。大切な家族に間違った健康管理をしてしまわないように、正しい情報をペットの専門家に発信してもらうようにしています。

PETOKOTO MEDIA ※画像クリックで外部サイトへリンクします

また、執筆には、目や歯、心臓などの各分野に特化した専門医に担当してもらい、専門的な記事制作に取り組んでいます。人間の場合も、病院に行くと眼科や外科、歯科や脳外科など多くの診療科に分かれていて、それぞれの専門医が担当してくれますよね。それと同じで、ペットにもより細分化した対応ができたらと考えました。


──次に、PETOKOTO FOODSについて教えてください。

PETOKOTO FOODSは、僕たち人間が食べるものと同じように国産の食材を使用し、人間向けの食品と同じ衛生環境下で調理した、家族のためのフレッシュフードです。PETOKOTO FOODSに込めた想いは「ペットの家族化が進んだ今、犬猫にも人間と同じようにおいしいご飯を味わってほしい」ということです。

僕にはコルクという愛犬がいるのですが、最初はドライフードを食べさせていました。でもふと「コルクが食べているこの食事っておいしいのかな」と疑問に思ったんです。つねに常温保存なので少し臭いがあるし、いろんな部位の肉を粉末にしているので、何が入っているのかも不透明です。カロリーについての情報も、裏面におおよその数値が記載されているだけです。もっと愛犬においしくて、食材情報がしっかり明記された健康なペットフードを作りたいと思ったのをきっかけに、PETOKOTO FOODSを考えはじめました。

──PETOKOTO FOODSの特徴はなんでしょうか?

大きく3つあるのですが、一つ目は安心安全です。原材料は日本の農家さんと契約して、「生産者の顔が見える」ということを意識しています。調理場の衛生・品質管理も、人向けの食品と同等です。国内では人間の食品と犬の食品の調理場は分けなければいけない決まりがあるので、作れる工場が少なく、見つけるのにとても苦労しました。二つ目は、スチームで加熱した後に急速冷凍をしているので、保存料無添加にできるということ。解凍して温めたときに食材本来のいい香りが出るので、非常に食いつきのいいものになっています。三つ目は犬猫の栄養のスペシャリストで、世界で100名もいない米国栄養学専門医獣医師にレシピを開発してもらったことです。ただおいしいというだけではなく、水分が多いため、食べることによって血液の循環が良くなることで被毛が良くなるなどの期待ができ、子犬からシニア犬までオールステージで対応できる総合栄養食として提供しています。

──3つ目の事業である、OMUSUBIについてはいかがでしょうか。

OMUSUBIは、保護犬や保護猫と迎えたい人を結ぶ場所です。募集者の保護団体と、飼い主になりたい応募者をマッチングさせるサービスになっています。日本で犬や猫を迎える時、ペットショップを利用する方がほとんどだと思いますが、ペットショップから迎えた頃は可愛かったのに、「想像したよりも大きくなってしまった」とか「吠えがうるさい」といった理由で捨ててしまう人がすごく多いんです。また、コロナもあってリモート環境になったから飼い始めたけど、リモートが終わったので捨てるといった、「突然飼い」をする人も増えています。そういった「ライフロス」を少しでも減らせるように、このサービスを立ち上げました。


──保護犬、保護猫は社会的な問題ですよね。

保護犬、保護猫の殺処分問題は、保護団体や行政の努力により、この10年で確実に減少はしていますが、まだまだ持続可能な迎え方のためにはすべきことがあります。だから僕たちはOMUSUBIを通して、一生を共にする家族との出会いの場を少しでも作れたらという想いで、この事業に携わっています。保護犬猫の譲渡率を上げるだけではなく、お迎えしたあとも、一生のパートナーで居続けられるような出会いを増やすことが目的です。例えば、顔や見た目が可愛いからという理由で飼う人も多いと思うのですが、それだけで判断をしてもらわないように、6つの質問に答えて相性度を確かめるレコメンドマッチング機能があります。こういったプロセスを踏むことにより、理想と実際の相性のギャップを埋めて、一生を共にする出会いを生み出します。


──犬猫の一生を扱う企業として、リスクや責任についてはどう考えていますか?

まず募集者である保護団体さんは、審査を通過した方のみにさせていただいています。また、迎える側は、応募してから一度面談をして、その後トライアルの期間があります。そこで2週間ほど試し飼いをしてもらって、相性の確認をします。一生の家族を選ぶ重みを踏まえて、しっかり判断してもらうようにしていますね。

あらゆる生活の場に、ペットと暮らしやすいサービスを実現させる

──これからのPETOKOTOについて教えてください。

今はPETOKOTO MEDIAで情報、PETOKOTO FOODSで食事、OMUSUBIで出会い、この3つに絞って事業を展開していますが、ペットと暮らす一生に寄り添うことで、顧客生涯価値を最大化していきたいと思っています。一生の中では、医療や保健、旅行や住まい、介護まで、人の一生がペットだと約15年に集約されているため、すべての体験を「ペット=家族」として捉えた場合に、再定義していきたいと考えています。例えば、目の病気の記事を見たら、近隣の目の専門動物病院の情報が表示されてそのまま予約ができたり、オンラインでペットのことに関して相談ができたりなどのサービスを展開していきたいですね。今はまだスタッフが20人もいない会社なので、そのほとんどをフード事業に割いていますが、ここから3年くらいは、いままでやりたくても手が届いていなかったところを強化していきたいですね。


──企業として長期的な目標はありますか?

最終的には、アジアナンバーワンのペットライフカンパニーを目指しています。アジア圏には小型の犬猫文化という共通点があるので、日本での成功事例を展開することができます。また、海外から見て日本の食への信頼性は厚く、獣医療に関しても日本はアジアトップレベルなので、その強みを活かしていきたいです。ペットが家族として当たり前に生活できる社会の実現を目指して、テクノロジーとともに世界にサービスを発信していくつもりです。

編集部コメント

古くは番犬やネズミの駆除といった役割を持って、家畜として扱われていた犬や猫ですが、経済成長や少子高齢化に伴い、今ではペットとして「家族の一員」として受け入れられています。ただ、その一方で、ペットが当たり前の世の中になったからこそ、殺処分や多頭飼育崩壊といった社会課題があります。そんな社会課題に対して、メディア、フレッシュペットフード、犬猫のマッチングサービスなど、DXを駆使して社会課題に取り組む大久保さん。取材を一緒に受けてくれた大久保さんの愛犬・コルクも、「足が内股だから」という理由だけでかつては保護犬だったそう。取材中は大久保さんがPETOKOTO FOODSの袋を取り出すと、「早くちょうだい!」と言わんばかりに、足元に駆け寄り、食事をおねだりしているのが印象的でした。

[プロフィール]

大久保泰介●おおくぼ・たいすけ
京都府出身。同志社大学経済学部在学中、英・ロンドンのユニクロで「+J」プロジェクトなどのプロモーション業務を経験。同大学卒業後、グリー株式会社に新卒入社し、採用プロモーション業務、財務管理会計業務に従事。2015年3月、株式会社シロップを設立し、代表取締役CEOに就任。2021年3月に会社名を「株式会社PETOKOTO(ペトコト)」へ変更し、家族クオリティの国産フレッシュペットフード「PETOKOTO FOODS」、保護犬や保護猫と飼い主を繋ぐマッチングサービス「OMUSUBI(お結び)」、獣医ら動物の専門家が執筆するメディア『PETOKOTO MEDIA』など、ペットに関わるインターネット関連サービスを開発・運営している。

(文:高山諒 写真:飯山福子 編集:金澤李花子)