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旅行をスムーズにする「トラベルテック」 観光×ITでアフターコロナの旅はどう変わる?

2024.05.23(最終更新日:2024.05.23)

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新型コロナウイルス感染拡大で大打撃を受けた旅行業界ですが、コロナ禍が明け、旅行やレジャーに出かける人も増加しています。そこで、本稿では、最新のITテクノロジーを活用したトラベルテックについて紹介します。ホテルの予約や交通機関の予約、旅行中のスムーズな決済サービス(キャッシュレス)、GPSと連動した観光地案内など、ITテクノロジーと連動してシームレスに旅行を楽しめるテックやサービスを紹介。自分に合ったテックやサービスを活用してより快適な旅をアレンジしてみてはいかがでしょうか?

「IT×旅行」トラベルテックとは?

トラベルテックとは、トラベル(travel)とテクノロジー(technology)を組み合わせた言葉で、従来の旅行の様式や手続きを変革し、よりスマートで効率的な旅行体験を提供するものです。

例えば、ホテルのオンラインチェックイン、エクスプレスチェックアウトができるサービス、商業施設やトイレなどの混雑状況を可視化するサービスなどが挙げられます。また、キャッシュレス決済や多言語翻訳サービスなどもトラベルテックの一部として展開されています。

このように、IT技術を活用することで旅行者の利便性が向上し、旅行全体の効率が高まるとともに、観光地や旅行業界全体の競争力も強化されることが期待されています。

経産省・トラベルテック協会によるトラベルテックの定義は?

経産省とトラベルテック協会が示すトラベルテックの定義には、それぞれ独自の視点があるため、それぞれが掲げるトラベルテックの定義について確認しましょう。

経産省の定義では、「トラベルテックの導入に関する調査等事業*1において、「タビマエ(旅前)・タビナカ(旅中)・タビアト(旅後)におけるPUSH型/PULL型情報発信、多言語対応(翻訳)、キャッシュレス、観光型MaaS、輸出促進(越境ECなど)までを構成するデジタルビジネス・サービスの総称」と定義されています。これは、旅行におけるカスタマージャーニー全体での情報提供やサービスが、デジタル技術を活用して行われることを指しています。

一方、トラベルテック協会の定義*2では、「最新のITテクノロジーを活用することで、旅行者の手間をなくし、シームレスな対応を試みること」としています。目的としては、「人、モノ、サービスがテクノロジーでつながることで、観光によるコミュニケーションを誰もが実現すること」とされています。旅行者の利便性を向上させるためにテクノロジーを活用し、観光におけるコミュニケーションをスムーズにすることを目指していることがわかります。

このように、経済産業省はトラベルテックをデジタルビジネス・サービスの総称と捉え、主に旅行業界全体のデジタル化や新たなビジネスモデルに焦点を当てています。一方、トラベルテック協会は、より旅行者のコミュニケーションに着目し、テクノロジーを通じて旅行者と観光地、旅行業者との関係性を強化することを重視しています。

それぞれの分野で活躍する企業がリストアップ 観光テックカオスマップとは?

AOSデータ社が作成した「観光テックカオスマップ2023版」

観光体験の質を高め、効率を上げ、新たなビジネスモデルを生み出す可能性を秘めているトラベルテック。そこで、クラウドデータ、システムデータ、リーガルデータ、AIデータなどのデータアセットマネジメント事業を展開する「AOSデータ」がChatGPTを利用して、観光テック分野の32業界クラスターを包括的に取り上げた観光テックカオスマップを作成しました。

このマップは、以下の8つのメインカテゴリに分類されます。


1. デジタル体験
2. データドリブン観光
3. 顧客エンゲージメント
4. サステナビリティ観光
5. スマート交通
6. デジタルマーケティング
7. スマートインフラ
8. 観光テックの未来


トラベルテックが最新技術やさまざまな業界やサービスなど広範囲にわたっていることがこのマップを見ればわかるのではないでしょうか?

トラベルテックの市場規模は?

ITと旅行が結びつくことで、さらなる成長が期待されるトラベルテックですが、市場規模はどのくらいなのでしょうか? 市場規模は、国内市場では現在約8,943億円と推計されており、今後5年間で37.29%成長し、1兆2,278億円に達すると予測されています。*3

一方、世界のトラベルテック市場の売上高は2022年に約94億米ドルであり、2023年から2032年までの予測期間中には8.6%の複合年間成長率で成長すると予測されています。*4

トラベルテックの市場規模を見ると、国内外問わずに急速な拡大が見込まれており、旅行業界におけるデジタル技術の重要性がますます高まっていることを示しています。

なお、国内市場規模で推計されているトラベルテックは、旅行者向けサービス全てを指しており、世界の市場規模では旅行予約や計画、支払いなどを自動化するオンライン予約のみを指しているため、国内外で金額感は異なります。

それでは、具体的にどのようなデータやテクノロジーが旅行や観光に関わってくるのでしょうか。ここでは、旅行・観光に関わる以下のテクノロジーを紹介します。


● ビッグデータ
● AI
● ロボットや自動化

順に解説します。

ビッグデータ

ビッグデータは、観光客の人数や移動範囲などの情報を収集し、その行動を分析することで、様々な施策やサービスの改善に役立てられています。

例えば、京都観光快適度マップ*5では、観光スポット周辺の混雑状況や観光快適度の予測、リアルタイムな情報提供を通じて、観光客がより快適に旅行を楽しむことができるよう支援しています。また、ビッグデータの分析により、地方活性化や観光プラン、交通機関のダイヤ改正などにも役立っています。

AI

旅行・観光に関わるテックとして、AIも外せません。ユーザーの好みや過去の行動を分析し、最適な旅行先やホテル、航空券を提案するだけでなく、過去の旅行履歴や検索履歴を元にユーザーに適した旅行プランを提案する役割を果たしています。また、AIチャットボットがカスタマーサービスを担当し、ユーザーとの対話を通じて情報提供やサポートを行うこともあります。

例えば、多言語生成系AIチャットボット「Kotozna laMondo(コトツナ ラモンド)」*6は、大阪に訪れた旅行者の質問に対して、大阪の観光情報を提供するWEBサイトの情報をもとに自然な言葉で回答しています。

さらに、災害・事故など緊急性の高い情報をリアルタイムに伝えるAIサービスや、画像解析や音声技術を活用した防災AIの開発も行われており、旅行者の安全や快適性を向上させるために重要な役割を果たしてくれるでしょう。

ロボットや自動化技術

ロボットや自動化技術もトラベルテックとして注目を集めています。ロボットが受付業務や案内業務を担当することで、スムーズなサービス提供や効率的な対応が可能になります。

さらに、自動チェックインやチェックアウトのサービスも普及しており、旅行者は手間を省いて快適に滞在を楽しむことができます。このようなロボットや自動化技術の導入により、観光施設の運営やサービス品質の向上が図られています。

トラベルテックの代表例

ここでは、前章で紹介したトラベルテックに使われるデータや技術を実際に活用した代表例として、以下の4つを紹介します。


● スマートロック
● キャッシュレス決済
● 翻訳テック
● MaaS

順に解説します。

スマートロック

スマートロックは、近年急速に普及しているトラベルテックのキーワードの一つです。この技術は、ホテルや宿泊施設に導入され、スマートフォンやデジタルキーを利用して部屋の鍵を開閉するシステムです。

チェックインやチェックアウトの手続きが省力化され、宿泊者はよりスムーズな滞在を楽しむことができます。同時に、施設側ではセキュリティ管理も向上し、安心してサービスを提供することが可能です。

キャッシュレス決済

キャッシュレス決済は、現金を持ち歩く必要がなくなり、支払い手続きがスムーズになるため、利用されている方も多いでしょう。
キャッシュレス決済は旅行者にとっても安全性が高く、紛失や盗難のリスクを軽減することができます。このように、キャッシュレス決済は旅行者にとって便利で安全な支払い手段として注目されています。

翻訳テック

翻訳テックは、多言語翻訳アプリやサービスを指し、旅行中に現地の言語や案内、商品情報を理解するために活用されます。

MaaS

MaaS(Mobility as a Service)は、複数の交通手段を一括して提供し、ユーザーが簡単に移動を計画・予約・支払いすることができるシステムです。日本では国土交通省を中心に普及が進んでおり、観光客や地域住民の移動ニーズに対応するためのサービスとして注目を集めています。

MaaSは、バスや電車、タクシーなどの公共交通機関だけでなく、自転車シェアリングやカーシェアリングなどの新たな移動サービスも含みます。移動の手段を最適化し、より効率的で便利な移動体験を提供することが可能になります。

トラベルテックが利用されているサービス

ここでは、前章でご紹介したトラベルテックを活用したサービスを解説します。

● リモートロック
● Suica
● Payke
● TOHOKU MaaS

順に解説します。

ホテルなどの宿泊施設で活用「リモートロック」

RemoteLOCK(リモートロック)は、米RemoteLock社が開発し、日本国内では株式会社構造計画研究所が提供するWi-Fi接続型・クラウド管理機能を備えたスマートロック。ホテルなどの宿泊施設のほか、スポーツ施設や公民館といった公共施設、店舗、オフィスなどで利用されています。入室者ごとに予約情報に紐づいたユニークな暗証番号が鍵になるので、番号を押すだけで入室が可能です。

身近なキャッシュレス決済「Suica」

鉄道、バス、お買い物で利用できるJR東日本のICカード「Suica」は私たちにとっても身近なキャッシュレス決済かつトラベルテックといえます。Suicaのベースとなるのは、ソニーが開発した非接触ICカードのための通信技術で、交通系ICカードのほか、「nanaco」などの電子マネーサービスにも利用されています。ICチップとアンテナを搭載したカードをリーダーに近づけると、リーダー/ライターから発信される電磁波を用いて非接触で通信を行います。FeliCaに対応したチップを内蔵するスマートフォンでの利用も可能です。

インバウンド向け多言語翻訳アプリ「Payke」

インバウンド向けの多言語翻訳アプリである「Payke」では、スマートフォンを使ってバーコードを読み込むと、商品情報がユーザーの指定した言語で表示されます。このような翻訳テックの導入により、旅行者は現地の言語の理解やコミュニケーションをスムーズに行うことができます。

東北をスマホ1つでシームレスに移動「TOHOKU MaaS」

JR東日本が提供するWebサービス「TOHOKU MaaS」は、スマホひとつで「便利で快適な旅」をサポートするサービス。スマホを見せるだけでバスや電車、レンタカー、観光施設、グルメなどを網羅した各種電子チケットの購入・予約・決済ができるので、シームレスに東北の旅を楽しめます。

トラベルテックで旅はどう変わる?

ここまでトラベルテックの定義や市場規模から最新トレンド、具体的なサービスやアプリを紹介しました。旅行において、IT技術を活用することで旅行者の利便性が向上し、旅行者はより便利で快適な旅を楽しむことができます。同時に、旅行業界全体も新たなサービスやビジネスモデルを展開し、競争力を高めることができ、トラベルテックはより発展していくでしょう。

〈著者〉
奈良優作

株式会社NIBAL
京都在住のWebマーケター。京都大学在学中にWebマーケティング会社の立上げに携わり、3年従事の後、株式会社NIBALを創業(https://nibal.co.jp/)。人材関連のWebメディアを立上げから事業譲渡までを経験。SEM戦略の立案に強みを持つ。戦略の検討からSEOコンテンツ制作・広告運用まで対応し、サービス立上げ支援などに深くコミット。