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首輪を変えるだけ?愛猫・愛犬との関係をワンランクアップさせる「ペットテック」の現在地

2024.05.09(最終更新日:2024.05.09)

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現代において、ペットは単なる愛玩動物というよりも、かけがえのないパートナー・家族として迎えられることが増えています。ペットは生活に潤いや安らぎを与えてくれたり、家庭を和やかにしてくれたりと、私たちに癒やしと幸福感を与えてくれるかけがえのない存在。今回は、そんな大切な家族とできるだけ長く幸せに過ごすのに役立つ、現代ならではのテクノロジーを紹介していきます。

ペット業界のテクノロジー利用

「ペットテック」という言葉をご存じでしょうか。既存の業界に最先端テクノロジーを組み合わせる「~Tech(~テック)」という言葉の1つで、ペット(Pet)と技術(Technology)を合わせた造語です。最先端の技術を用いて、大切な家族の一員であるペットの世話や健康管理をサポートしてくれる商品やサービスのことを指します。

単なる撮影機能だけじゃない…留守中の見守りカメラが進化

ペットテックの代表格として挙げられるのが、遠隔での見守りカメラ。核家族化が進み、共働き夫婦や一人暮らしのために日中、家を空けることを余儀なくされる飼い主さんも多い昨今、導入する家庭も増えています。

外出先からリアルタイムの姿を見守れるという基本機能だけでなく、通話機能や録画機能がついている機器も少なくありません。

防犯カメラメーカーの塚本無線が発売している「ごはんだすよ2」では、自動給餌器とカメラが一体化。カメラはお皿の中もしっかりと映すことができるので、留守中にもちゃんとご飯を食べたかどうかを確認できます。言語でのコミュニケーションが難しいワンちゃん、ネコちゃんにとっては、食欲低下なども重要なサイン。遠くからでも異変に気づくことができるのは大きなメリットです。

犬とも猫とも…コミュニケーションの難しさを解決してくれるアイテム

人間同士のように言語でのやりとりができないのがペットの魅力でもあり、一緒に生活する難しさでもあります。ベテランの飼い主さんなら愛犬、愛猫のご機嫌や体調が手に取るようにわかるかもしれません。しかし、初めてペットを飼う人にとってはなかなか難しいもの。なかには感情表現があまり多くないペットもいるでしょう。

そんな飼い主さんの心強い味方が、Langualessの「イヌパシー」です。この商品は、首輪型、ハーネス型のデバイスで愛犬の心拍数をチェック。外部の音をシャットアウトし、体内の音にのみ反応する「体内音マイク」と、音声からノイズを除去して心音を検出する「心音検出システム」、さらに心拍リズムと犬の情動を関連づけて分析する「解析アルゴリズム」によって、犬の心理状態を解析します。

実際には、愛犬の心の状態を「リラックス」「ドキドキ」「ハッピー」「興味」「ストレス」の5種類に分類。計測された感情は、デバイスが対応する色に光ることでリアルタイムに把握することが可能です。実際に導入してみて、これまで知らなかった愛犬の好きなものを発見できたり、反対に苦手なものに気づけたりといった飼い主さんもいるよう。

感情豊かといわれる犬でも、なかなか正確なコミュニケーションは難しいもの。警戒心が高いことで知られ、「弱っていることを隠す」ともいわれる猫とのコミュニケーションはなおさら難易度が上がります。そんな猫たちの体調管理を助けてくれるのが、RABOの「Catlog」というデバイスです。

Catlogは人間の使用するスマートウォッチのような首輪で、食欲や水分補給、睡眠といった愛猫の生活パターンを行動記録として見ることが可能。食事摂取量と消費カロリーのバランスから最適な食事量を導いてくれるほか、活動状態の変化や食欲の変化から不調の兆候を検出してくれるため、愛猫の体調不良を早期に発見できます。

同社では「Catlog Board 2」という板状のデバイスも販売。こちらは、普段使っている猫用トイレの下に敷いて使用するデバイスです。愛猫の体重やトイレ滞在時間、排泄量を計測し、その情報から排泄トラブルや体重減少を検知してくれる優れもの。複数のネコを見分けることも可能なため、個別に首輪などをつける必要はありません。多頭飼いや首輪を嫌がる子の家庭にもピッタリですね。

こうしたデバイスで運動不足が判明した愛猫の活動量を増やしたいときにも、最新テクノロジーが有効です。最近では猫の遊びをサポートするデバイスも多く、振動や音を出して猫の興味を惹く自動の猫じゃらしや、不規則な動きで猫を翻弄する電動ボールなどの「スマートトイ」のバリエーションも増えてきています。

ペット業界にもICT化の波

ICTという用語をご存じでしょうか? ICTとよく似た用語で「IT」がありますが、ITとICTはほぼ同義語です。日本政府は、日本型IT社会の実現を目指す構想を、2004年に改正したころからICTという用語を使っており、これを機にITに代わってICTが広まり始めました。ICTは、「Information and Communication Technology」の略で、通信技術を使ったさまざまなコミュニケーションのことを指します。

人間の医療分野でも活用されており、離島などの医療過疎地域への遠隔診察や、通院困難者への負担の少ない診察が可能になりました。実は、ペットの診療や薬の処方にもICTの波が押し寄せています。

動物たちにとって、動物病院への通院は遠方への移動や、待合室など慣れない環境への対応といったストレス要因に。また、珍しい病気に罹ってしまうと診てくれる病院が近隣にないこともあります。そのため、遠隔で受診ができるサービスは飼い主にとってもペットにとってもメリットが多いです。

株式会社みるペットの運営する「みるペット」というサービスや、クレジットカード会社のクレディセゾンの「セゾンのペットオンライン診療」では、予約からビデオ通話による診察、会計まですべてオンライン上で完結。さらに、薬も郵送で受け取ることが可能です。

また、「病院に行くほどではないけど心配なことがある」「病気ではないけど夜鳴きや排泄などの悩みがある」といった悩み相談を受け付けるオンライン相談も利用できるのが嬉しいポイントです。

ペット業界のICT化は医療分野だけに留まりません。最近では、保護犬猫との出会いもオンライン上で行われるようになっています。株式会社PETOKOTOが運営する「OMUSUBI」には、審査を通過した200以上の保護団体が登録されており、審査制マッチングサイトでは日本一の規模です。

このサイトには相性診断の機能もあり、自分のライフスタイルや好みに合った保護犬猫を見つけられるのもポイント。リアルのイベントよりも多くの母数の動物と出会えるということもあり、これまでよりもマッチ率の高いワンちゃん、ネコちゃんとの出会いが期待できるでしょう。

ペットテックの今後に期待すること

ペットの家族化が進むなか、ペットテック事業は急拡大しています。技術の進歩によって、これから各家庭にペットの世話にかかる手間や時間はどんどん短縮され、お互いが快適に過ごせるように変わっていくでしょう。コミュニケーションや健康管理の面は前述のデバイスがサポートしてくれます。開発がさらに進めば、機器の精度は上がり、対応する種類の動物も増えていくと予測されます。

日々のお世話に関しても、自動給餌器やシッター代わりのおもちゃだけでなく、オランダでは排泄物を処理してくれるドローンが開発されています。こうした技術を用いることで、愛犬、愛猫が、人の手間は最小限ながらも、衛生的で健康的な環境で暮らしていけるようになるでしょう。

本来、動物を飼うというのは、その動物の命を任せてもらうことであり、手間を惜しむべきではないのかもしれません。しかし、人間も毎日世話を続けていると、体調が悪くてどうしても休みたい日、お世話疲れが溜まっている日が出てくることは致し方のないことです。

ペットテックは飼い主の負担を減らすことで、ペットとよりよい関係性を保つことに貢献していくはず。ペットと飼い主がよりよい関係を築くことができれば、飼育放棄や殺処分につながるケースも減少するかもしれません。


吉田康介(フリーライター)