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鮮度・味を保つ冷凍技術に、庫内カメラによる在庫管理…単に“冷やす”だけじゃない、「冷蔵庫」の進化の最前線

2023.12.01(最終更新日:2023.12.01)

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最新型の冷蔵庫は冷凍・チルド技術が著しい進化をみせており、食品の鮮度保持については業務用レベルの機能を搭載した機種も登場しています。食品が長持ちし、より美味しく冷凍できる機能が各製品に搭載されるようになったことで、まとめ買いした1週間分の食品もムダなく使い切れるようになり、食品ロスの削減にもつながっています。

本記事では、「ただ冷やすだけ」に留まらず、生活の質向上にも貢献する最新の冷蔵庫事情を紹介します。

共働き世帯の増加でまとめ買いが定着…冷蔵庫は“大容量”が選ばれやすく

冷蔵庫カメラを搭載した日立グローバルライフソリューションズの冷蔵庫

冷蔵庫の容量を選ぶ基準として、一般的には「1人あたり70L×家族の人数+常備用120~170L+予備100L」とされています。ところが実際は、家族の人数にかかわらず大容量タイプが選ばれる傾向にあります。

その理由は大きく3つ。1つめは、共働き世帯の増加です。共働き世帯数は1990年代半ばに専業主婦世帯数と逆転して以来増え続け、2022年時点で専業主婦世帯539万世帯に対して共働き世帯1,262万世帯と2倍以上※。それに伴い、週末にまとめ買いする世帯が増えているのです。(※参考:https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html

2つめは、お米や粉類を冷蔵庫内で保存する人が増えたこと。これらはかつて常温で保存することが多かったのですが、お米は密閉容器に入れて冷暗所で保存したほうが鮮度と美味しさを保てることが広く知られるようになりました。

また一度開封したお好み焼きやホットケーキなどの粉類は、高温多湿下でアレルギー症状を引き起こすダニが繁殖することがあるため、いずれも冷蔵庫で保存することが推奨されています。

ほかにも常温保存できる調味料類も冷蔵庫に保管するなど、冷蔵庫をパントリーとして使用する人が増えています

そして3つめは、大容量モデルのほうが年間消費電力量を抑えられるケースがあること。

一般的には小型冷蔵庫を冷やすより、大型冷蔵庫全体を冷やすほうが、よりパワフルに冷却する必要があるため電気代が高いイメージがありますが、冷蔵庫に関して必ずしも当てはまりません。

大容量モデルほど省エネ性の高い機器や部材が採用されているため、電気代が抑えられるのです。たとえばシャープの350L冷蔵庫『SJ-W358K』の年間消費電力量は420kWh/年であるのに対し、502L冷蔵庫『SJ-GK50K』の年間消費電力量は240kWh/年と、大幅な省エネを実現しています。

ちなみに10年以上前の古い冷蔵庫を最新冷蔵庫に買い替えるだけでも、年間消費電力量が40%前後ダウンできる場合があります※。とくに近年は、真空断熱材を薄型するなどして本体の幅や奥行きはそのまま容量アップを実現した冷蔵庫が多数登場していますので、同じ設置スペースでも容量アップがねらえるかもしれません。

一例として三菱電機の『MR-MX46H』(2022年)と『MR-MZ49J』(2023年) の幅・奥行きは同じですが、容量は455Lから485Lと買い物かご1杯分の30Lもアップしています。
(※参考:https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/kaiteki/topics/20210630.html

“ラップなし”で肉や魚の保存が可能な機種も…まとめ買いしても食品ロスを低減

アクアから登場したのは、チルドルームから野菜室、冷凍室と全室で食材の美味しさを守る機能が搭載された『TXシリーズ』

大型冷蔵庫を購入すると安心してまとめ買いができるようになりますが、まとめ買い=家事の手間がラクになる訳ではありません。

食材のなかには1週間も鮮度がもたないものが多いため、買い物から帰ったらすぐに、あらかじめ肉や魚に下味をつけたり、野菜を茹でたり、冷凍したり……と適切に下ごしらえしなければならないのです。しかも一度冷凍してしまうと美味しく解凍するのが難しく、味が落ちてしまうというデメリットも。

しかし近年の冷蔵庫は、チルドルームが大きく進化しています。たとえばパナソニックの『微凍結パーシャル』は冷凍の一歩手前の約−3℃で保存することで、肉は約10日から14日、魚は7日間美味しく保存します。冷凍していないため、解凍の手間なくすぐに調理できます。

また、日立グローバルライフソリューションズの『特鮮氷温ルーム』は、約−1℃で保存することで、マグロなどの魚は3日間、肉は7日間鮮度を保つほか、乾燥も抑えられるため、肉や魚もラップなしで保存できます。

鮮度が7日間長持ちすれば1週間分のまとめ買いも楽勝ですが、それ以上保存したい場合は、やはり冷凍する必要があります。でも一度冷凍してしまうと、解凍時にドリップが出て味が落ちたり、カチカチに凍っているので一部だけ取り出しにくかったり、上手に使うのは意外と大変。その結果、解凍しそびれてしまい、気づけば死蔵品になってしまうことも多いのではないでしょうか。

そんなときに活躍するのが、三菱電機の『切れちゃう瞬冷凍A.I』です。通常の冷凍庫の温度は-18℃から-20であるのに対し、こちらは約-7℃と高めの温度で保存するため、ひき肉が包丁で切れたり、薄切り肉が一枚ずつ剥がせたり、一部を取り出すことも可能です。

さらに過冷却現象を利用した冷凍方法により細胞が壊れにくく、解凍後も美味しさをキープします。保存期間は3週間なので、すぐに食べないけれど美味しく冷凍したいときに便利です。

三菱電機の『切れちゃう瞬冷凍A.I』で冷凍したひき肉は、包丁でサクッと切れる

美味しく冷凍する技術として、アクアは冷凍食品の味が落ちる原因である霜つきを低減する『おいシールド冷凍』を搭載しています。

一般的な冷蔵庫は庫内に溜まった霜を溶かすためにヒーターを作動させるため、一時的に庫内の温度が上がることがあります。この温度変化が霜つきの原因の1つですが、アクアは霜取り運転時の庫内の温度変化を抑えることで食品に霜がつきにくく、美味しさを保ってくれるのです。

在庫状況をスマホアプリで確認…“二重買い”を防ぐ

日立グローバルライフソリューションズの冷蔵庫カメラが撮影した様子はアプリで確認できる

鮮度保持機能は、冷蔵庫の主要メーカーが切磋琢磨し、業務用レベルの機能を搭載しているところも出てきています。

そして近年開発が進められているのが、冷蔵庫の在庫を管理する機能。誰しもが、買い物に行ったとき冷蔵庫になにがあったか思い出せず、在庫があるものを二重買いしてしまったり、逆に買い忘れてしまったりした経験があるのではないでしょうか。

そんな買い物のムダを防げると期待されているのが、庫内を撮影する冷蔵庫カメラを搭載した冷蔵庫で、現在は、日立グローバルライフソリューションとアイリスオーヤマから登場しています。

細かい仕様はメーカーごとに異なりますが、基本的には冷蔵庫内を撮影するカメラが搭載されており、扉を開閉するたびに庫内を撮影します。その画像がクラウドを経由してスマホアプリで確認できるので、外出先から冷蔵庫内の画像が確認できるのです。

なお最近では関西電力が、家の冷蔵庫に後付けできる冷蔵庫カメラをクラウドファンディングで出品していましたが、残念ながら不成立で10月22日に終了しています。

重量で在庫管理するものもあります。たとえばパナソニックの「重量検知プレート」は、上に乗せたものの重量の増減を検知し、スマホアプリに通知するというシンプルなもの。卵や牛乳など在庫を切らしたくない食品を登録しておけば、一定量まで減ると通知が届くので、買い忘れを防止できます。プレートは電池式であり、他メーカーの冷蔵庫でも使用可能。シャープも同コンセプトの「ストックアシスト」を開発しています。

以上みてきたように、近年の冷蔵庫のトレンドは、ただ単に冷やすだけではなく、より美味しく、より長持ちさせることで食品ロスを抑える方向に向かっています。

これらは冷蔵庫が単なる家電ではなく、使いこなし方次第で生活の質に大きく影響する存在であることを意味しているのでしょう。今後の冷蔵庫選びは「食生活が豊かになるのはどの機種なのか」という視点が基準になりそうです。


〈著者〉
田中真紀子

家電ライター。早稲田大学卒業後、損害保険会社を経て、地域情報紙に転職。
その後フリーとなり、住まいや家事など暮らしにまつわる記事を幅広く執筆。
出産を経て、子育てと仕事の両立に悩む中、家事をラクにしてくれる白物家電、エステに行けなくても自宅美容できる美容家電に魅了され、家電専門ライターに。現在は雑誌、webにて執筆するほか、専門家として記事監修、企業コンサルタント、アドバイザー業務もこなし、テレビ・ラジオ出演も多数こなす。これまで執筆や監修に携わった家電数は1000近くに及び、自宅でも常に多数の最新家電を使用しながら、生活者目線で情報を発信している。