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ウイルス対策のテクノロジーを搭載、IoTによる連携機能も…空気清浄機の選び方は?

2024.06.17(最終更新日:2024.06.17)

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新型コロナウイルス感染症の流行で改めて注目された空気清浄機。海外からも続々と上陸して群雄割拠の様相を呈し、高価格モデルが売れるなど、多くのメーカーが販売台数や金額を伸ばしました。現在は落ち着いているものの、コロナ禍を経て空気清浄機はどのように変わったのでしょうか。今回は、空気清浄機の進化やトレンドをご紹介します。

花粉・PM2.5対策として徐々に普及

皆さんの中で空気清浄機を持っているという人はどれくらいいるでしょうか。空気清浄機は、冷蔵庫や洗濯機のような日常生活に欠かせない家電とは異なり、「空気が汚れている実感がない」「効果が分かりにくい」などの理由から、必要を感じない人も多いかもしれません。

実際、内閣府の消費動向調査によると、2000年代における2人以上世帯の空気清浄機の普及率は35%前後と低迷気味でした。ところが2009年には新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)のパンデミック、2013年ごろには中国の激甚的大気汚染による越境汚染で日本のPM2.5濃度が上がったことが社会問題となり、普及率が40〜45%近くまで上昇。花粉症の有病率も1998年の19.6%から2019年の42.5%と急激に増えていることも、普及率増加に影響していると考えられます。

ここで改めて空気清浄機の働きについて確認しましょう。一般的な空気清浄機には「HEPAフィルター」と呼ばれるフィルターが搭載されており、ファンで吸い込んだ空気の中から微粒子を濾し取り、きれいな空気のみを室内に戻します。この「HEPAフィルター」は0.3μmまでの微粒子を99.97%取り除くとしているため、粒子の大きさが30〜40μmのスギ花粉や、2.5μm以下のPM2.5は除去できる計算に。一方でウイルスの大きさは、種類にもよりますが0.1μm以下とされていますので、取り除けないということになります。

コロナ禍で空気清浄機の常識が大きく変化

近年、空気清浄機の販売台数を押し上げることになったのは、言わずと知れた新型コロナウイルス感染症の流行です。感染ルートの1つに、飛沫がマイクロ化して空気中を一定時間漂う「エアロゾル」が指摘されたことから、空気清浄機がウイルス対策になるのでは、と注目され、販売台数が一気に増加。国内メーカーはもちろん、海外からも高額製品が続々上陸し、2020年度は国内出荷額が前年比100.7%増と2倍以上を記録しています。

つまりコロナ禍がユーザーの空気清浄機に対する期待感を高め、結果的に進化を促進させることになりました。では具体的にどのような変化があったのか、1つずつ見ていきましょう。

1.ウイルス対策の機能を搭載

ブルーエア「Protect」は、HEPAフィルターと静電気の力を利用した「HEPA Silent Ultra Technologyを搭載し、0.03μmまでの超微粒子を99.99%除去する

コロナ禍により、空気清浄機でウイルス対策をしたいというニーズが高まったことから、0.1μm以下というウイルスレベルの微粒子も捕集できる空気清浄機が海外メーカーから続々と登場しました。これらは主に帯電させたフィルターに電気の力で捕集する電気集じん式を採用しており、HEPAフィルターより微細な粒子の集じんを可能としています。

たとえばスウェーデンの「ブルーエア」Protectシリーズは、0.03μmまでの超微粒子を、中国の「エアドッグ」は0.0146μmまでの超微粒子の捕集。さらにアメリカの「メディエアー」は0.007μm、ドイツの「ナノドロン」は0.001μmまでの超微粒子を捕集するとして話題になりました。これらの製品は、10万円超えは当たり前で、メディエアーは40万円弱、ナノドロンは88万円〜と超高価格ですが、対策として導入する人や施設が多く現れました。

一方、多くの国内メーカーはHEPAフィルターを使用しているため、捕集できる微粒子の大きさは、0.3μmまでと限界があります。しかし、パナソニックはイオン技術「ナノイー」がダイキンは「「ストリーマ技術」が新型コロナウイルスを不活化する効果を実証。またシャープは「プラズマクラスター」がコロナの感染価を減少させることを実証しています。

ダイキンの空気清浄機には、「ストリーマ技術」を搭載。高い酸化能力を持ち、ニオイや菌類、ホルムアルデヒドに効果があるとしてきましたが、一部ウイルスの不活化を確認

これらの結果をもとに、「空気清浄機がコロナに効果がある」と言うことはできませんが、空気清浄機選びの指針の一つになったといえるでしょう。

2.単機能かつフィルター交換式が再注目

空気清浄機の要ともいえるのがフィルターの性能ですが、国内メーカーの中には「フィルター交換10年不要」をうたうものも多くあります。フィルター交換不要なら、ランニングコストがかからないのでお得に感じますが、実際は定期的なお手入れが必要で、その際にフィルターに付着した汚染物質に晒されるリスクもあります。また10年後の空気清浄性能は、新品時の6割以下まで落ちてしまうことが多く、本来の機能を享受できているとは言い切れません。

ブルーエアの空気清浄機を1年間使用した後(画像下)、新品フィルターと並べてみると、ここまで大きな違いが

その点、海外メーカー製品は、フィルターを定期的に交換するのが一般的。こまめなお手入れは必要とせず、時期がきたらさっと新しいフィルターに交換するだけで、新品同様の性能が復活します。さらに空気清浄機に加湿機能を搭載するのも国内メーカーの特徴ですが、空気清浄性能に特化したものへのニーズが高まったことを受け、国内メーカーからも単機能のフィルター交換式が登場しています。

3.他の家電と連携させ、効率的に運転

ロボット掃除機メーカーとして知られるアイロボットが満を持して開発した空気清浄機「Klaara(クラーラ)。ロボット掃除機メーカーならではの機能も搭載している

次なる進化として注目されているのが、IoT による他の家電との連携機能です。パナソニックやダイキンのように、エアコンと空気清浄機を製造しているメーカーが続々と、両者を連携させて効率的に稼働する機能を搭載してきているのです。例えばダイキンの場合、エアコンの運転開始と同時に、自動で空気清浄機のサーキュレーター運転が開始。またエアコン暖房運転と同時に、自動で空気清浄機の加湿運転を行います。

ロボット掃除機メーカー・アイロボットの「ルンバ」も、昨年9月に発売した空気清浄機「Klaara」との連携が可能です。ロボット掃除機が掃除を始めると、空気清浄機をパワフルに稼働させ、空気中を舞うホコリも一網打尽にしてくれます。

また近年は、家具のようなデザインの空気清浄機が増えています。そもそも家電全般のデザイン性は高まっていますが、2022年には家具と一体化して存在感を感じさせない「ステルス家電」という言葉が話題に。空気清浄機にも、家具のような脚付きやテーブル付きが登場するなど、よりインテリアになじむ製品も多く登場しています。

LGの「LG Puricare AeroFurnitufe」は丸テーブルのようなデザインで、上にモノも置ける。部屋の真ん中に置いても違和感のないデザインで、360度全面から吸気できる

これからの時代の空気清浄機選び

上記を踏まえ、これからの空気清浄機選びでは、以下の点に着目しましょう。

1.何のために空気清浄機を置きたいか。

花粉やPM2.5対策なら、0.3μmまで捕集できるHEPAフィルターで十分ですが、ウイルス対策も期待したいなら、0.1μm以下も捕集できるタイプや、イオン技術を搭載したものが選択肢になります。

2.こまめにお手入れできるか、手軽に済ませたいか。

フィルター交換式は、ランニングコストはかかりますが、お手入れの手間が軽減され、空気清浄性能も担保されます。加湿機能付きは、さらにお手入れが複雑になりますので、苦手な人は単機能タイプをそれぞれ用意するのがおすすめです。

3.適用畳数だけでなく清浄スピードもチェック。

空気清浄機は、部屋の空気をしっかり吸い込んでこそ発揮されます。その点で、8畳の部屋を何分できれいにできるかという「清浄スピード」も、性能をチェックするポイントになります。

さて話は冒頭に戻りますが、空気清浄機が本当に必要かどうか、判断がつかない人も多いと思います。花粉やアレルゲンが気になる人、小さいお子さんがいるご家庭ではすでに導入されているかもしれませんが、排気ガス量が多い地域の高気密住宅は、室内に汚染物質が溜まりやすい可能性がありますので、積極的に導入したほうがいいでしょう。また寝室の空気がきれいなど、睡眠の質が上がるとの報告もありますので、検討してみてはいかがでしょうか。



〈著者〉
田中真紀子
家電ライター。早稲田大学卒業後、損害保険会社を経て、地域情報紙に転職。その後フリーとなり、住まいや家事など暮らしにまつわる記事を幅広く執筆。出産を経て、子育てと仕事の両立に悩む中、家事をラクにしてくれる白物家電、エステに行けなくても自宅美容できる美容家電に魅了され、家電専門ライターに。現在は雑誌、webにて執筆するほか、専門家として記事監修、企業コンサルタント、アドバイザー業務もこなし、テレビ・ラジオ出演も多数こなす。
これまで執筆や監修に携わった家電数は1000近くに及び、自宅でも常に多数の最新家電を使用しながら、生活者目線で情報を発信している。
公式サイト:https://makiko-beautifullife.com/