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私の「なりたい顔」を求めて。メイクの楽しさを教えてくれるバーチャル秘密基地とは?【やさしいテック学】

2023.04.21(最終更新日:2023.04.21)

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フィンテックやフェムテック、アグリテック、エドテック……日々進化し続けるテクノロジーと特定の領域をかけ合わせた、「◯◯テック」。最近よく耳にするけれど、実際、どのような技術が使われていて、なぜ注目されているのか? よくわからないという方も多いのではないでしょうか。

この企画【やさしいテック学】では、現役大学生の世良マリカさんが、気になるテック業界の有識者へインタビューを敢行。目まぐるしく変化するテックについて、学んでいきます。

第3回目は、“NO MORE RULES.”をステートメントに掲げ、ルールに縛られない攻めのメイクを提案してきたメイクブランドである「KATE」チームを訪問!
2023年1月にローンチし、話題になっているのが没入体験型ECストア『KATE ZONE』。バーチャル空間上で、さまざまなメイクアップ体験を通して未知の自分に出会えるとたくさんの方から注目を集めています。今回は、テクノロジーで一人ひとりのためのメイクを提案する開発の裏側を伺いました。

未知の自分に出会える、バーチャル空間の秘密基地

今回世良さんが訪れたのは、中央区・茅場町にある花王株式会社のオフィス。『KATE ZONE』の企画・開発の中心人物である安田亜実さんと、PR担当の若井麻衣さんに、開発のいきさつや想いをたっぷりと伺いました。

写真左から、PR担当の若井麻衣さん、マーケティング担当の安田亜実さん

世良マリカ(以下、世良):本日はよろしくお願いします!

安田亜実(以下、安田):こちらこそ、よろしくお願いします! 世良さんは普段メイクアイテムを購入するときはどうしていますか?

世良:実は、あまり冒険ができないタイプで……。最近はテスターもできないですし、仕事で、メイクさんに「似合うね」と言われた色味と似たものを選んでいました。だから、『KATE ZONE』で未知の自分に出会えるのを楽しみにして来たんです!

安田:そう言ってくださって嬉しいです!『KATE ZONE』は、秘密基地をコンセプトにしたバーチャル空間で、「LAB」「LIBRARY」「TUNNEL」「STUDIO」「MUSEUM」の5つのゾーンを通じてさまざまなメイクアップ体験をしていただけます。早速ですが、スマホを持って、まずは『KATE ZONE』の世界を試してみてください!

最先端のAI技術 × 地道に積み重ねられた独自のロジック

『KATE ZONE』に入るといくつかのコンテンツが選べ、さまざまな楽しみ方ができるそう。

世良:まずは「LAB」に入ってみます。おぉ、たしかに秘密基地らしい世界観ですね! 「LAB」ゾーンの中にも3つのコンテンツがあるんだ。

安田:はい。顔を分析して8つのタイプに分類する「KATE SCAN」や、顔パーツの比率からおすすめの眉の形やアイシャドウの色味、塗り方を提案する「PERSONAL MAKEUP」のほか、なりたい顔画像をもとにKATEアイテムを提案する「FACE HACK」があります。スマートフォンで自分の顔を読み取るだけで簡単にできますよ。試してみてください!

スマホで自分の顔をスキャンする世良さん。

世良:まずは「KATE SCAN」を試してみましたが、私は「KOUKA(紅霞)」タイプでした。すごい、パーツごとに細かく比率が計算された上で分類されるんですね。

安田:そうなんです。AIが顔の特徴点を84座標から測定し、黄金三角比率や5眼比率などのパーツ比率を分析しています。

世良:具体的に、どんな技術が使われているのでしょうか?

安田:比率の分析には、ARやAI技術を用いたバーチャルメイクの技術を持つパーフェクト株式会社のAIシステム「AI フェイス アトリビュート」を使っています。その結果をもとにKATEの独自ロジックで解析をして、顔タイプの分類やオリジナルのパーソナルメイクメソッドを作りました。膨大な量の顔写真のサンプルと、AIシステムが算出した数値から、顔のタイプやメイクのメソッドを提案しています。

世良:AIシステムとKATEの膨大なデータが掛け合わせられているのですね。

若井麻衣(以下、若井):そうですね! ただAIによる比率の分析をするだけではなく、顔の印象を掛け合わせておすすめのメイクメソッドを提案するという点が『KATESCAN』ならではだと思います。

世良:「目頭側の白目を強調するためにアイライナーをこの位置に入れる」と表示されました! 一つひとつのパーツに対して写真とコメントが出てくるから、どこを変えたらいいかわかりやすい! 

安田:顔タイプを踏まえたちょっとした工夫の提案なので、やりすぎに見えず、日常的にチャレンジしやすいのもポイントなんです。

世良:たしかに、とてもナチュラル! 『KOUKA(紅霞)』や『TSUYUDAMA(露玉)』など、顔タイプのネーミングも特徴的で面白いですよね。これはどうやって決めているんですか?

若井:こうしたネーミングは、普段の打ち合わせから決まることが多いです。KATEチームは、マーケティング担当や開発担当が一つのチームとなり企画に携わっているので、両視点で良いものを作れている点は強みかもしれません。

世良:なるほど~! おすすめとして表示されたアイテムは、そのまま花王の公式通販サイト「My Kao Mall」のページへ飛んで、購入することができるんですね。

安田:はい。KATEらしい新しい購買体験を目指して、お客様には体験の高揚をそのままに、より直観的にお買い物を楽しんでもらえるような導線づくりを意識しています。

似合うだけでなく、“なりたい顔”になれる場に

世良:これは、楽しくてあっという間に時間が過ぎてしまいそうです(笑)。そもそも『KATE ZONE』を開発することになったのにはどういった経緯があったのでしょうか?

安田:開発の背景には、世の中の潮流がありました。一つは、情報過多で何が正しいのか、何が自分に合うのかわからなくなってしまっていること。また、デジタルによってあらゆるものがデータ化されていること。そして、ものづくりの主体がお客様自身に移りつつあることです。この3点を踏まえつつ、よりお客様と結びつきながら、新しい自分と出会い、メイク欲を刺激する場を提供できないかと考えて立ち上がったのが『KATE ZONE』なんです。

世良:たしかに私も、パーソナルカラーをはじめ、情報が溢れすぎていて何を信じたらいいかわからないという感覚があります。あちこちいろいろなサイトを見るのも疲れてしまって……。

安田:そうですよね。このZONE内では顔分析や実際のメイクの仕上がり、アイテムのクチコミやランキングまで情報を集約しています。お客様をいかにワクワクさせられるかを大事に、メイクにまつわるあらゆるデータやユーザーの声、テクノロジーを活用しながら、メイクの可能性を広げる新しいコンテンツを打ち出してきました。

世良:メイクのコツや理想の仕上がりを知ることができたり、108色から4色を選んでアイシャドウパレットを作れたりして、どのコンテンツも魅力的だなと感じます。特にこだわったポイントはどこですか?

安田:まず『KATE ZONE』では、似合うだけでなく、一歩踏み込んで“なりたい顔”になれる場にしようと話していました。その上で、今までのパーソナルメイクよりももっと感覚的に、なりたい顔になれるコンテンツを入れたいと思って導入したのが、「FACE HACK」です。雑誌やSNSで見かけて「可愛い」と思ったメイク画像を読み込むだけで、そのメイクに近づくためのKATEアイテムが出てくる仕組みにしています。

世良:へ~! “似合う”を教えてくれるものはたくさんあるけれど、“なりたい”に近づくためのヒントをもらえるのは新しいですね……! アイシャドウ、アイブロウ、リップそれぞれ1個ずつアイテムを提案してもらえるので迷わないし、買いたくなっちゃう。

安田:狙い通りです(笑)。嬉しい。こうやってメイクで変われる楽しさを体感していただくために、私たちKATEチームでは各々が常にリサーチしています。「今これが来てるよ」とか「こうしたらもっと使いやすくなるんじゃない?」とか、日々の小さなアイデアから形にしていますね。InstagramなどのSNSはもちろん、中国の「小紅書(RED)」や「weibo(ウェイボー)」など、情報収集のツールはさまざまです。

「ワクワク」と「購入」の2軸を両立させる

世良:皆さんの徹底したリサーチのもとに、こうした魅力的なコンテンツやアイテムが生まれているんですね。『KATE ZONE』は、開発からローンチまでにどのくらいの時間がかかったのでしょうか。

安田:トータルで1年半ほどですね。

世良:1年半⁉ 想像以上にスピーディーでびっくりしました。開発にあたって特に苦労した点はありますか?

安田:やはり難しかったのは、「ワクワクしてもらう」と「購入してもらう」の2軸の両立ですね。『KATE ZONE』でバーチャル上の体験をして楽しいと思ってもらえても、そこから買うまでの間にInstagramで仕上がりやクチコミを見に行ってしまったら意味がないなと。いかに直感的にお買い物してもらえるかをチームで何度も議論した結果、この中で全て完結させるためにどんどんコンテンツが増えていきましたね。

世良:そうだったんですね。『KATE ZONE』の反響はいかがでしょうか?

安田:毎日約1万人のお客様が遊びに来てくださって、本当に楽しんでいただいているなと感じています。男性のユーザーも結構いらっしゃるのですが、中にはTwitterで「俺がなりたい顔になれる場所見つけた」と呟いてくださる方もいたりして。ほかにも「これが無料で楽しめるんだ!」とか「自分のここがチャームポイントだったんだ」というお声もいただけて、とても嬉しいです。売上に関しても、通常ECサイトからのコンバージョン率は2%前後ですが、『KATE ZONE』の影響もあって「My Kao Mall」では5.3%(※)という実績を出すことができています。

※2023年1月24日~2月14日まで、KATEのみのCV率実績

世良:先ほどおっしゃっていた、ワクワクと購入の2軸が両立しているんですね! 最近は男性でメイクをする方も増えていますし、気になるものを自分のペースでじっくり試しつつ、ほしいと思ったときに購入できるのは嬉しいですよね。

大事なのは、表現したいアウトプットに見合うかどうか

世良:最近では「ビューティーテック」という言葉も聞くようになり、KATEさんもテクノロジーを活用してこの『KATE ZONE』を開発されています。今後についてはどのように考えていらっしゃいますか?

安田:私たちとしては、やはりアウトプットが一番肝心だと思っているので、KATEが表現したいものに見合ったテクノロジーなのかは、きちんと見定めていく必要があると考えています。たしかにウィズコロナ時代で、美容業界でも「ビューティーテック」が加速していますし、勢いがあるとつい、新しいものに飛びついてしまいそうになるのはわかるんです。でもテクノロジーがいくら進化したとしても、KATEのブランドパーパスに沿わないのであればやる意味がないですし、逆に可能性を広げてくれるものはどんどん活用していきたいなと思っています。

世良:たしかにテクノロジーありきではなく、本質をきちんと捉えた上で活用していくことはとても大事ですよね。世界観がしっかりとあるからこそ、『KATE ZONE』がたくさんの方に受け入れられているんでしょうし。



安田:そうですね。「変化する勇気や新しい自分との出会いの創出」というブランドパーパスの実現を中心に据えながら、さらに世の中のメイク欲やメイクの可能性を広げる新しいサービスや商品を打ち出していって、この市場を大きく創造していきたいですね。「KATE、こんなこと始めたのか!」と何度でも思ってもらえるように、チームみんなで頑張っていきたいなと思っています。

世良:KATEチームの皆さんが、これからどんな試みをしていくのか、想像するだけでワクワクしちゃいました! 『KATE ZONE』のコンテンツ拡充も含めて、すごく楽しみにしています。本日はありがとうございました!

[プロフィール]

<聞き手>
世良 マリカ(せらまりか)

神奈川県出身。世界三大ミスコン「ミス・ワールド2019ジャパン」にて、史上最年少16歳、現役高校生で「ミス・ワールド2019日本代表」に選出。慶應義塾大学2年生。また環境問題や教育格差、貧困問題などSDGsに関心を持ち、現在BSテレ東『日経ニュース プラス9』 木曜日SDGsコーナーのレポーターを務める。

【Twitter】
https://twitter.com/seramali_jsmn
【Instagram】
https://www.instagram.com/seramali_jsmn/

(左から)
若井 麻衣(わかい まい)
花王株式会社 KATE PR担当

安田 亜美(やすだ あみ)
花王株式会社 KATE マーケティング担当

(文:むらやまあき、写真:飯山福子、編集:金澤李花子)