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子どもたちと向き合う時間を増やすために。多忙な保育士のアナログ業務をICT化するサービス「CoDMON」とは?

2023.10.26(最終更新日:2023.10.26)

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保育・教育施設向けICTサービス「CoDMON(以下コドモン)」。「すべての先生に、子どもと向き合う時間と心のゆとりを」というコンセプトの下、主に保育園の業務改善に取り組み、現在、保育施設向けICTサービス導入実績No.1となっているという(2023年1月株式会社東京商工リサ―チ調べ)。
保育×テック領域での成功の秘訣は、徹底したカスタマーサクセス。利用者の使いやすさを第一に考えられたUIは、先生と保護者の双方の満足度が高く、結果的に子どもたちへの豊かな保育の提供に繋がっている。

未来を担う子どもたちのためにテックの力でできることは何か。そして、カスタマーサクセスにこだわる理由とは。株式会社コドモン執行役員で、カスタマーサクセス部ゼネラルマネージャーの荒井翔子さんにお伺いする。

保育園のアナログ業務をICT化。保育士の働く環境を改善

――保育園や幼稚園、学童などの保育・教育施設向けICTサービス「コドモン」を開発・提供をしている株式会社コドモン。まずは御社のミッションについて教えてください。

弊社は「子どもを取り巻く環境をテクノロジーの力でよりよいものに」というミッションを掲げています。「子どもを取り巻く環境」とは、保育施設やそこで働く人・家庭・地域社会の三つの領域のこと。その中でも、元々注力していたのが保育園です。保育園で働く保育士の働く環境を改善していくサービスが基本となっています。

――具体的に「コドモン」には、どのような機能があるのでしょうか?

これまでアナログが主流とされていた保育業務に関わる記録、計算、連絡などの事務業務が、PC・タブレット・スマホの画面上で完結できるようになっています。また、施設の運用に合わせて使いたい機能のみ選択して利用することが可能です。

施設側の管理画面

一部機能を抜粋しますが、例えば「保護者連絡」機能。保護者からの欠席などの連絡がアプリで完結することで、保育士の人数が少ない朝の時間帯の電話連絡が不要になり、確認や施設内での連携の漏れも防げます。
また、園での検温、排便、食事やミルクも記録できて、「連絡帳」へも自動で転記。さらに、連絡帳には写真も添付できるので、保護者としては施設での子どもの状態がよりわかりやすくなるというメリットもあります。


――施設側の業務改善だけでなく、保護者の立場としても嬉しい機能が満載なのですね。

そうですね。従来の電話での連絡や手書きでの連絡帳記入は、保護者の方にも負担があったかと思います。保護者連絡は全てスマホの「コドモン」アプリ内で完結するので、書類でのやり取りがなくなり、双方の負担軽減にもつながっています。さらに、登降園記録もQRコードやICカードでの打刻となり、それに伴う保育延長料金の計算・請求も「コドモン」上で可能。毎月の保育料もいつでも確認できます。

他にも「給食・献立管理」メニューでは、施設側が登録したメニューの栄養価などが自動で計算・反映される。保護者も献立表を紙ではなくアプリ上で確認できるのは嬉しい。

――園生活に関わる全ての機能が紐づいて一つのアプリ上で見られるのは、保護者の立場からしても使いやすいと感じます。デジタルとアナログが混在してしまうと、逆に確認するものが増え、情報の見落としが発生してしまいそうなので……。

そうですよね。保護者側のアプリでは最新のプリントや提出書類だけでなく、「園生活のしおり」などの通年で確認したい資料や行事予定も確認できますし、表示を絞り込んで使いやすいようにカスタマイズができます。


――機能が多いにも関わらず、わかりやすくシンプルな画面で操作も簡単。「コドモン」は、普段PC作業に慣れていない方でも使いやすいと感じました。

ありがとうございます。良い機能があったとしても使いこなせなければ意味がありません。特に、保育士の中にはこれまで使ってこなかった分、PC業務に不慣れな方もいるので、使いやすさにはこだわって設計しています。

「コドモン」でもよく使われる機能である毎月の「指導案作成」画面では、フォーマット(例文)も用意されているので、該当文を選択し自由に編集することもできます。これまで指導案は手書きやExcelで作成されている施設が多かったので、業務負担削減につながっています。保育士の業務には、保護者からは見えないけれど重要なものが多いのです。それらをシステムで省力化することで、保育に注力できる状況を目指しています。

指導案作成画面。作成した指導案はシステム上でいつでも確認できるので、職員間の共有もスムーズです。

ICT導入だけでは課題は解決しない。定着までのサポートが肝心

――便利な機能や使いやすいUIなど、保育士や保護者の痒いところにまで手が届くサービスですが、「コドモン」開発の経緯について教えてください。

「コドモン」誕生のきっかけは、弊社代表の小池が、ある保育施設様からの保護者連絡システムの受託開発をしたことです。開発後に、これは施設側の課題、保護者側の悩みの双方を解決し、世の中に価値を届けるシステムだと気づき、サービスとして展開を始めました。

私は、小学生の子どもが2人おり2回産育休を取得し、保育園には大変お世話になりました。保育園は子どもの育ちにとってとても大切な場所だと実感しましたし、私一人で子どもを育てるのではなく、保育園という社会の中で保育士さんやお友達との関わりの中で育ったことが、子どもにとって良かったと思っています。感謝の一方で、保護者から見える保育士の業務は本当に一部ですが、保育士さんの負担が大きいと感じる部分は当時からありました。そういった経験もあり、保育士たちが抱える悩みや課題を解決したいという想いが私自身にも強くあります。

――現在の保育業界にはどのような課題があるのでしょうか?

やはり業務負荷の大きさと待遇の低さはまだまだ改善の余地があると思います。そのせいで保育士不足という課題も残っている状況です。

本来、保育士は子どもの保育に集中したいのに、それ以外の事務的な作業が多く、残業や制作物の持ち帰りが常態化している園もあります。また、保育士には配置基準というものが決められており、4・5歳児クラスでは30人に対して一人という基準になっています。負荷も責任も重い仕事なのに、待遇は低い。働きづらい環境なのが実情です。


――そのような保育業界の課題へのICT・DXでのアプローチは進んできているでしょうか?

はい。「コドモン」に関しては2016年4月に導入数が120施設でしたが、2023年2月には14,000施設を突破しました。ただ、ICTを導入したからといって、保育業界が抱えるすべての課題をすぐに解決できるわけではありません。

すでに業務負荷が大きい保育施設で新たなシステムを導入するのは一定負荷のかかるもので、やり方を間違えると省力化どころかさらなる負担を増やすことになりかねません。だからこそ私たちは、「コドモン」を導入するだけでなく定着させ、課題解決まで寄り添ってサポートしていくことを大切にしています。

カスタマーサクセスに集中できる組織体制で、開発を止めない

――「コドモン」の強みについて、具体的に教えてください。

弊社では、顧客サポートを担当するチームとして「カスタマーサクセス」と「カスタマーサポート」の両軸が存在しています。
前者は、業務省略化や保育の質向上といったお客様がシステムを導入される目的の達成をサポートしています。導入のプランニングを行い、活用・定着をフォローしています。

後者は、主にご利用いただいている方向けのお問い合わせ窓口の運営を行っています。発生した問題をお電話で解決したり、マニュアル類の整備・提供をしています。
ありがたいことに、導入施設数も増えてきているので、両者を同じチームが担当してしまうと、どうしても今起こっている問題の解決が優先になります。問題解決は専門部署がしっかりと対応しつつ、目的達成のためのフォローも並行しておこなえるような組織体制になっています。

また、発生した問題に対処すること、そもそもの目的達成ために必要なことの視点があることにより、それぞれに応じたフィードバックをサービスに反映できていると感じています。


――だからこそ誰でも使いやすいシステムになっているのですね。

導入数が15,000施設を超えてもなお、「すべての先生に、子どもと向き合う時間と心のゆとりを」というコンセプトをぶらさずに、導入されている施設の方が成果を出し続けられるよう、継続して開発もし続けています。

――実際にカスタマーサクセスの事例として、改善した機能はありますか?

基本的に機能改善は、顧客の声をベースに行っています。例えば保護者への「アンケート」機能は元々回答者がわかる記名のアンケートだったのですが、匿名で率直な意見を収集し、施設運営に反映したいというご要望から、匿名でもアンケート回収ができるように改善しました。

また、コロナ禍には、保護者連絡の「欠席」の理由に新型コロナ項目の追加も行いました。たくさんの施設に活用いただいていることで、様々なご要望をいただけ、機能改善に繋げることができています。開発時にもヒアリングを行いリリースするのですが、いざ使ってみて「こうしたい!」というご要望はどの園でも必要なことだった、ということも多いため、引き続きお客様からのお声は大切にしていきたいです。

目指すは、社会全体で子どもを育てる環境作り

――これまで、導入施設からどのような反響をいただいていますか?

やはり一番多いのは「業務省力化ができた」というお声です。「時間内に業務を終わらせて、自宅への持ち帰り作業もなくなった」と言っていただけると、本当に良かったなと思います。

また、職員間のコミュニケーションがスムーズになったという声も。例えば職員間での連絡は、忙しい中内線をしたり、集合して会議をしたりしていましたが、「コドモン」では掲示板のように情報を職員に周知させることもできますし、資料もすぐにシステム上で確認できます。例えば隣のクラスが今どういう状況か、担任しているクラスは昨年度どんな状況だったかなどもシームレスに共有ができるようになるのです。

さらに、保護者への伝達事項もアプリ上でスムーズになり、連絡帳の情報量も増え、保護者とコミュニケーションも良好になったという声もいただきます。


――たしかに保育士も保育で忙しく、保護者も仕事の時間に追われている中では登降時のちょっとした伝達も難しい場面がありますよね。

そうですね。また、保護者の方からは「園での様子の写真購入がアプリでできるのがありがたい」というお声もいただきます。
実は、写真販売の利益は施設側が「現金」または「コドモンポイント」で受け取れる仕組みになっていて、「コドモンポイント」は専用のECサイトで新しい遊具を購入するときに使えるなど、子どもたちに還元することができるのです。

連絡帳を製本、卒業アルバム制作サポート機能も。大切な思い出はアナログでも残せるようになっています。

――保護者としても「仕方ないな」と諦めていたことがICTを導入することで解決されるのは、感動です。では、今後の展望を教えてください。

現在、待機児童解消のために保育園は増え続けています。厚生労働省の調べによると、平成29年から令和2年にかけて、全国の保育所等は4,859カ所増加し、待機児童は13,642人減少。待機児童問題は解消に向かっています。しかし、少子化に伴い、保育施設の利用児童数は令和7年にピークを迎え、そこからは下がっていくと言われています。

そういった状況の中で、保育園に求められることが多機能化してきています。例えば、親が働いていなくても時間単位等で保育園を利用できる「こども誰でも通園制度」が始まるなど、保育園は、子どもを支えるポジションとして、社会の中でますます重要な役割を担い、引き続き質の高い保育が求められます。だからこそ、これからも保育施設の業務改善支援はしっかりと行っていきたいです。そして、現場環境や待遇面で保育士になることを諦めてしまう人を減らしたいですね。
また、子育ては保育園を卒園したら終わりではなく、連続的なものです。私たちは義務教育を終える中学生までを「子ども」と定義しており、そこに関わる施設を支援の対象としています。

時代の変化のスピードが速い分、予測ができない部分も正直あります。しかし、「子どもの健やかな成育」が最も大切という点は変わりません。学童、小学校、中学校へもシステムを展開し、保護者、地域を巻き込んだ支援を行い、様々な業種の方と一緒に社会全体で子どもを育てられる環境を作っていきたいと考えています。


【プロフィール】

荒井翔子
株式会社コドモン執行役員、カスタマーサクセス部ゼネラルマネージャー

ISP、メール配信ASPでのサポート業務を経て、トランスコスモス株式会社に入社。2017年、自身の産育休、子育てをしながら仕事をする経験をきっかけに、保育現場が抱える問題や多様性のある働き方についての課題意識を持つようになり、コドモンへ入社。カスタマーサポート、カスタマーサクセスを立ち上げ、現在はカスタマーサクセス部ゼネラルマネージャーとして、こども施設の成功を実現し、子どもたちにとって社会がよりよいものになるよう日々カスタマーサクセスを推進。二児の母。


(文:菱山恵巳子、写真:飯山福子、編集:高山諒)