メタバース空間での「経済活動」
メタバース空間での経済活動とはどんなことを指すのでしょうか。
経済とは、「財貨やサービスを生産・分配・消費する活動」を指します。(出典:デジタル大辞泉)
それらをメタバースに当てはめると、例えば、バーチャル空間上で新たなワールドやアバター、アイテムを作成、販売、購入するといった活動が代表的なものといえるでしょう。
それ以外にもバーチャル空間上で行われる広告・宣伝やイベントの開催、ガイド、執筆・創作活動、カラオケや居酒屋など場の提供といったものも経済活動と言えます。
それらを実現する方法は、物々交換や、仮想通貨、現実の通貨のやりとりなどさまざまですが、大切なのは、バーチャル空間の中でモノやサービスが生まれて提供され、それに対する対価が支払われ、「価値の交換が続いていく」ということです。
実際にどんな活動がされているのか、世界最大のメタバースイベント「バーチャルマーケット」の様子をご紹介いたします。
「バーチャルマーケット」に行って買い物してみた
バーチャルマーケットは、メタバース上にある会場で、アバターなどの3Dデータ商品やリアル商品(洋服、PC、飲食物など)を売り買いできる世界最大のVRイベントです。
世界中から100万人以上が来場し、ギネス世界記録™も取得しています。
バーチャルマーケットは内部でいくつかの会場に分かれていて、現実の街がモデルとなっている「パラリアル会場」をはじめ、バーチャル空間らしさを追求した会場など様々な種類があります。
個人的には、今回、「パラリアルニューヨーク」が一番気に入りました。リアルなビルの街並みと「バーチャルマーケット」の経済活動が頭の中で結びつくことによって、これまでのVR空間にない現実感がありました。本物の街のように感じられます。
てんぱすおおもり(https://tempasta.booth.pm/)
バーチャルマーケットでは一般参加者の方も「サークル」としてブースを出店できるのですが、外見も中身も個性が出ていてかわいいです。
アバター用の洋服などを販売されていて、可愛いと思った商品をクリックすると、販売サイトであるboothのページに飛びます。
気付いたらフルセット買ってしまいました。かわいい…。
物販系の店舗はこのようにバーチャルマーケットから直接販売サイトに飛んで購入できる仕組みになっているところがほとんどでした。
BEAMS(https://www.beams.co.jp/)
バーチャルマーケット常連のBEAMSさんではアバターの服だけではなく、現実の服も販売もしていました。バーチャルマーケット上で商品をクリックしてリンクに飛ぶと…、
BEAMSのECサイトの商品ページが出てきます。アバターとおそろいのTシャツを買いました。
BEAMS内ではバーチャル接客も行われていて、現実のショップスタッフさんと会話しながら選ぶこともできます。
大丸松坂屋(https://www.daimaru-matsuzakaya.com/)
有名デパートの大丸松坂屋も出店していました。
何のブースだろう…?と気になって見てみると、なんと食べ物のデータ販売!
表示されている画像をクリックすると、VketSTORE(バーチャル空間で使えるデジタルプロダクトのECサイト)にリンクするようになっていました。
デジタルなので味わうことはできませんが、VR友達と遊ぶためにいくつか購入しました。
大阪府泉佐野市(https://www.city.izumisano.lg.jp/)
自治体のブースもありました。
まずは泉佐野市。ふるさと納税の返礼品を紹介していました。
こんな風にお肉が山盛りで置かれていたり、お米も積み上げられていると、通常の画像で見るよりもボリューム感が伝わって面白いと思いました。
こちらも画像をクリックすると「さのちょく」という自前のふるさと納税のサイトにリンクし、申し込みができるようになっていました。連携がよくできているなと感じます。
静岡県焼津市(https://www.city.yaizu.lg.jp/)
焼津市もふるさと納税の案内をしていましたが、マグロの解体ショー体験も行っていました。
解体されたマグロ。絵面的にもインパクトあります。このマグロがもらえるならふるさと納税してしまうかも…と思いましたが、データのマグロではなく、実物のおいしいマグロが届くそうです。来年度はデータのマグロももらえると嬉しいです!
実際に体感してみた感想
商品を3Dで見て購入できるのは、WEBにはないメタバースの特長だと感じました。
またバーチャルマーケットではマーケット内で使える共通の通貨や購入の仕組みが無く、だからこそユーザー一人一人が工夫して自分たちで経済を作り上げているように感じます。これはバーチャルマーケットのユニークな点ではないでしょうか。
バーチャルマーケットのイベントは、実際の商品の販売ページなどとリンクが貼られて連携が取れており、ユーザー体験もとても高いと感じました。
課題も…
一方で、何かを購入しようとするたびにVR世界とは別にWEBサイトが立ち上がるので、VRゴーグルを外してパソコンのモニターを操作しなければならないなど、シームレスな体験ができないことは課題と感じました。
また、現実の商品(例:BEAMSのTシャツ)もワクワクを感じて買ってみたものの、仕組みとしては普通の通販なので、届いたころにはバーチャルマーケットを堪能し終えており、「欲しい」「かわいい」と思った感情との時間のギャップが感じられました。
出来ればパソコンの端末を開かずにVRの中で購入手続きが全て完結できて、現実のモノも「Uber Eats」のようにすぐ届くようになると、「バーチャル空間で生きてる」と実感できると思います。
バーチャルマーケットをはじめ、メタバースのサービスは日々進化が続いているので、今後に期待したいですね!
(まとめ)結局メタバースとは何なのか
さて本連載では、3回にわたりメタバースについての解説や紹介をしてきました。
メタバースとは、『バーチャル空間上で“社会”が存在していること』であり、メタバース上でのコミュニケーションや経済活動は、現実社会に匹敵するレベルになりつつあることがお分かりいただけたでしょうか。
また現実社会とは異なり、主体が場所や性別、立場などに依存しない、画期的な世界が広がっていることも確認できました。
一方で技術的ハードルがまだまだ高く、同時に参加できる人数に制約があったり、買い物やアバター設定をするたびに現実に強制送還されたり、完全に「バーチャル空間で生きている」とは感じにくいのも現状です。
これらは今後の課題ですが、ハード・ソフトの進化によって解決されていくことが楽しみですね。
個人的には、メタバースは利用者にとって現実と並列で存在するレイヤーの一つだと捉えています。
現実レイヤーも含め、一つ一つはまだまだ独立しているように見えますが、それぞれが重なり合うことで、きっと今まで見えなかった素敵な世界が見えることでしょう。
いつか来るその時を夢見て、私は今日もバーチャルの世界へ飛び込んでいきます。いつかメタバースの中でみなさんとお会いできたら嬉しいです!
[プロフィール]
藤野稔●ふじの・みのる
iX+編集部。
化学工学を専攻しプラントエンジニアとして入社したが、未来に少しでも近づきたくて新規事業部門に異動となる。
ガジェットとインターフェースが大好き。気になったものはいち早く試すために、海外のモノでも個人輸入してでも手に入れるタイプ。
演算処理分野に興味があり、グリッドコンピューティングボランティアBOINCにて日本二位という隠れた実績がある。