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食用油はヘルシーオイルを選ぶ時代へ…健康とおいしさを叶える“サビないオイル”の新技術とは?

2024.04.11(最終更新日:2024.04.11)

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みなさんは「食用油」と聞いて、どんな印象を持っていますか? ダイエットの大敵、健康のためになるべく控えたいというイメージを抱く人は少なくないでしょう。しかしながら実際は、様々な技術の進化によって、油脂類との付き合い方が大きく変わりつつあることをご存じでしょうか? 今回は、「食用油の今」をテーマに、健康をサポートする食用油のご紹介とそれらを生み出す最新技術について詳しくご紹介していきたいと思います。

食用油は、サラダ油一択から“様々なヘルシーオイルを選ぶ”時代に。

インテージ社SCI-pデータをもとに日清オイリオグループ株式会社で推計

はじめに、私たちの食卓で使われる食用油の移り変わりを見ていきましょう。家庭用食用油の最大手である日清オイリオグループでは、ちょうど100年前の1924年に「日清サラダ油」という名前でサラダ油を販売しはじめました。当時の日本において食用油は揚げ物等の用途として使われていましたが、西洋のようにサラダ料理=生で使用できる精製度合を高めた良質な製品として名づけられたそう。

その後、「油っこくない」のフレーズで話題になった「日清キャノーラ油」やイタリア料理などに使うオリーブオイルが台頭。ココナッツオイルやアマニ油、MCTオイルなどの健康オイルブームも起こり、今では様々なヘルシーオイルが選択できる時代に移り変わっています。

令和になった今、具体的に食用油を選ぶ際に最も重視したいポイントとは一体何なのでしょうか?スーパーの食用油売り場に行くと、体に脂肪がつきにくい、すっきり油っこくない、揚げ物の吸油量を抑制できるなど、消費者の健康面などに配慮したコンセプトの商品が並んでいますが、もっと根源的な問題として注目されているのが、私たちの老化の引き金となる「酸化」への対策なのです。油の酸化はおいしさにおいても大きな影響をもたらすことがわかっており、食品企業における研究が進んでいます。それではまず、油の酸化が私たちを脅かす問題点について整理してみたいと思います。

油が酸化すると、健康面とおいしさにおいて悪影響がある

酸化した油(脂質)は過酸化脂質と呼ばれ、体に蓄積すると癌や動脈硬化症、アルツハイマー型認知症などの疾病につながることがわかっています。とはいえ私たちは日々の食事の中でやむを得ずに過酸化脂質を摂取しています。従来はこれらの過酸化脂質は過剰に摂取しない限り体内に吸収されないと言われてきたものの、最近の研究(※)において、過酸化脂質の摂取刺激が体の中で脂質の酸化を引き起こすことが報告されています。

また、酸化によるおいしさ劣化については一般的に言われてきたこと。油の酸化は、「光、高温、空気」などにより促進され、調理時に不快なにおいがしたり、色が濃くなるなどの変化が指摘されていましたが、これらの変化が食味分析や成分測定などの「株式会社味香り戦略研究所」の実証実験によっても明らかになっています。

(実験によって明らかになったこと)
・開封後90~120日相当の脂は、苦味、塩味、渋みが減少し、味に特徴がないのっぺり重くなる。
・においの変化は官能評価および成分測定によって実証。酸化した油は“より酸っぱいにおい”がする。
・油が酸化すると、目立った色の変化がある。
・酸化した油で素揚げしたかぼちゃの方がビタミンE(抗酸化力の指標)の含有率が減少した。

以上のことからも、食用油における酸化対策の重要性を実感することができるでしょう。私たちにとってうれしいのは、今年に入り酸化対策をコンセプトにした食用油が新たに商品化されて購入できるようになっているということ。

それでは次に、その商品の特長と技術についてご紹介をしていきましょう。

“酸化対策”に着目した新しい食用油が登場

2024年2月28日に新発売された「日清ヘルシークリア」(著者撮影)

酸化対策に注目して登場したのが、日清オイリオグループから発売された「日清ヘルシークリア」という新商品。毎日使う油だから鮮度が気になるものの、1本使い切るまでに時間がかかってしまうという消費者の悩みを解決するために、“鮮度が長持ちする酸化しにくいオイル”が開発されました。このコンセプトを実現するためには、次の特許を含む3つの技術が集結されています。

1 Neoナチュメイド製法(特許第6346257号)

キャノーラ油を低温・高真空の状態で精製することで、製造時の酸化油脂の生成を抑制。この技術によってにおいの原因物質を抑制することにもつながります。

日清オイリオグループ株式会社より提供

2 日清ウルトラファインバブル製法(特許出願中)

油中に微細な窒素バブルを吹き込むことで油中の酸素を追い出す製法。これにより酸化のもとになる油中の酸素濃度を低減させることができます。「ウルトラファインバブル」は、国際規格で定義されている超微細な泡のこと。汚れが落ちやすいシャワーヘッドで使われているケースや、水揚げされた魚をウルトラファインバブル水で保存することで鮮度を維持するなど、様々な実用例が生まれている画期的な技術。今回採用された製法は、窒素を可能な限り微細にすることで実現しています。

日清オイリオグループ株式会社より提供

3 酸化ブロック製法(特許第4601711号)

ボトルのヘッドスペース(容器内のキャップから液面までの空間)の酸素を窒素によって徹底的に追い出すことで、保存中に油と酸素が触れるのを極力防ぎ、保存時の酸化を抑える製法。油をできるだけ酸素に触れさせないように、ウルトラファインバブル製法と組み合わせたことが画期的な技術とも言えます。

日清オイリオグループ株式会社より提供

これらの技術の結晶によって、開封後、酸化を抑制できる食用油が誕生。具体的には、鮮度が長持ちでおいしさが続く、開封後もすっきりしていて油っこくない、調理時のにおいが少ないという長所を持つことが特長です。

実際に使ってみた感想は?

「炒め物を作る時に使ってみました」(著者撮影)

最後に、気になる使用実感について。私は食の専門家として日頃様々な食用油を使い分けており、従来品や他製品との違いに気づきやすいのではないかと自認しつつ、炒め物や揚げ物などの調理で使ってみることに。1か月弱の期間使用し、あくまでも個人的な感想にはなりますが、全般的に油っこくない軽やかな仕上がりになること、あっさりした味付けの炒め物や天ぷらでの実感が最も大きいと感じました。

さあこれからは、おいしさだけでなく健康面で食用油を積極的に選ぶ時代です。技術の進化を知ることは、明日の健やかな食卓に直結しているといっても過言ではありません。


<著者>
スギアカツキ
食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中