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自作したゲームを「全世界」に公開…プログラミング・3Dグラフィック技術やビジネススキルを学べるゲーム『Roblox』とは?

2024.03.04(最終更新日:2024.03.04)

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2020年、グリニッジ高校の3年生が『Roblox』というゲーミングプラットフォームでゲームの制作を行い、200万円を超える収益を得ました。同プラットフォームでは、専用のゲームエンジン『Roblox Studio』で制作したゲームを有料で配信できるほか、アバター用のコスチュームなどを販売して収益を得ることが可能であり、現在200万人以上のユーザーがゲームを公開しています。

ゲーム制作の過程ではプログラミングや3Dグラフィックのスキルを身に付けられる上、収益を得るために企画・マーケティングのスキルも学べるため、「Roblox」は教育ツールとしても注目を集めています。本稿では、Robloxの熱心なユーザーでもある株式会社シュタインズの代表取締役・齊藤大将氏が、Robloxの事例を軸に、教育ツールとしてのゲームの可能性について解説します。

全世界に2億人以上のユーザーを抱えるゲーミングプラットフォーム

Robloxは世界中の若者に愛されているオンラインゲーミングプラットフォームです。

このプラットフォームは、Roblox Studioという専用のゲーム開発ツールを使うことでユーザーがゲームを制作し、ほかのユーザーと共有できます。Robloxは現在、スマートフォンやPCなど、さまざまなデバイスからアクセス可能で、ペット育成やピザ配達、ミニゲーム、対戦型シューターなど、幅広いジャンルのゲームを楽しめます。

Robloxの月間ユーザー数は全世界で2億人以上と、メタバースの世界で大きな注目を集めています。ゲーム内の言語は一部日本語に対応しているものの、基本的には英語。そのため、ゲームを作ったり遊んだりする過程で、自然に英語に親しめることも魅力の1つといえるでしょう。
上にメタバースという言葉を使いましたが、Robloxと同様にいまでは「ゲーム×メタバース」として認識されることの多い『Minecraft』や『Fortnite』などの有名なタイトルも、元々は「VR SNS」と呼ばれていました。
現代ではゲームそのものがSNSと化しており、さまざまな人が同時に、そしてランダムに参加可能なプラットフォームで世界中の人と交流したり遊んだりできることから、メタバースという言葉が広く知れ渡るにしたがって、これらのゲームも次第にメタバースとして捉えられるようになったのでしょう。

金融の世界にも影響を及ぼす革新的なビジネスモデル

Robloxには、GameFiの要素も含まれています。GameFiとは、ゲームをプレイすることで、ゲームの外においても価値がある仮想通貨やNFTを獲得でき、ゲームなのに現実世界のお金を稼ぐことができる、ゲームと金融を組み合わせた仕組みです。

人気があるゲームの場合、ゲーム内の仮想通貨が暗号資産取引所で取り扱われることもあり、稼いだ仮想通貨はドルや円に交換可能です。またRoblox上でユーザーが制作したゲームは、ゲーム内通貨『Robux』を通じて収益化でき、有料のゲーム配信やアバター用のアイテムを販売することで、現実世界での収益を生み出せます。

この革新的なビジネスモデルは、ゲームの世界だけでなく金融の世界にも影響を及ぼしています。

2020年には、アメリカのグリニッジ高校の3年生・Jacob Korffさんが、冬休みの余暇を活用してRobloxでゲーム制作に取り組み、合計で200万円以上もの収益を得たという例も。彼はこれまでもこのゲームで遊んでいたようですが、実際にゲームを制作した経験は2019年の1本だけで、日常的にゲーム開発を行っていた訳ではありませんでした。

そんな彼がRoblox内で子どもたちに人気のあるゲームを徹底的に調査し、レベルごとに難易度が上がる障害物コース『Aio’s Wraparound Difficulty Chart』を友人と一緒に制作した結果、200万円以上もの収益を得ることになったのです。

ゲーム制作を通じて“ビジネススキル”も身に付けられる

教育ツールとしても注目を集めるゲーム制作エンジンRoblox Studio

Robloxは教育分野でも重要な役割を果たしており、実際に欧米では多くの教育現場でゲームが利用されています。Roblox社の創始者であるDavid Baszucki氏は元々教育者であり、Robloxそのものも教育用のソフトから着想を得たものだといいます。

RobloxではLuaというプログラミング言語を使ってコードを書く必要があり、ゲーム開発に使用するRoblox Studioという専用のゲームエンジンの操作にはプログラミングや3Dグラフィックスのスキルを要するため、同じプログラミングでもMinecraftに比べて難易度が高く、本格的です。

また、子どものプログラミング教材としては『Scratch』も人気ですが、こちらでも広く活用されているのはアイコンや矢印のような視覚的なオブジェクトを組み合わせるビジュアルプログラミングの言語。Robloxの場合は本格的なテキストプログラミングとそのための言語に関する学習が必要になるため、より高度なスキルを身に付けられるのです。

さらに、前述の通り自作したゲームを公開し、プレイヤーからの支持を受けることで収入を得ることも可能です。とはいえ、単に面白いゲームを作れば儲かるという訳ではありません。ゲームで収益を上げるためには「ビジネス」の視点も重要です。

200万円以上の収益を生み出したアメリカの高校生は、どんなゲームが流行っていて、どんなゲームが飽きられずに遊ばれ続けるのかなど、ビジネスやマーケティングの視点から、企画・開発を行いました。Robloxによるゲーム制作では、プログラミング等の技術的スキルだけでなく、“稼ぐ”ためのビジネススキルも身に付けられるのです。

加えて、普通の習い事とは異なり、親子でゲームを制作し、一緒にプレイすることによって家族の時間を過ごしながら楽しく学習につなげられる点もRobloxの大きな利点だと筆者は考えています。

教育ツールとしてのゲーム…2,000万人以上の学生が開発スキルを身に付ける

Roblox Studioは、教育者から生徒にいたるまで、コミュニティのメンバーに制作やコーディングの仕方を学んだり、簡単に使える無料の制作エンジンで情報を処理したりする機会を提供しています。

同社は2015年からSTEM(科学、技術、工学、数学)教育にRoblox Studioを役立てる教育プログラムをサポートしており、とくに欧米では教育現場で使われる事例も増えています。実際に同社が行った「Build It, Play It」というイベントでは、Roblox Studioを使って2,000万人以上の学生が新しい開発スキルを身に付けられるようになりました。

このようにRobloxは、子どもたちの創造性を促進するプラットフォームとして機能しています。子どもたちは自分たちでゲームを制作し、ほかのユーザーと共有することで、プログラミングやゲームデザイン、3Dモデリングなどの技術を学んでいます。

このプロセスは子どもたちにとって価値ある経験となり、創造性と技術的スキルの両方を育めます。Robloxは、子どもたちが自らのアイデアを実現し、新しい形のコミュニケーションを体験する場所となっているのです。



〈著者〉
齊藤大将

株式会社シュタインズ代表取締役。
情報経営イノベーション専門職大学客員教授。
エストニアの国立大学タリン工科大学物理学修士修了。大学院では文学の数値解析の研究に従事。
現在はテクノロジー×教育の事業や研究開発を進める。個人制作で仮想空間に学校や美術館を創作。