当社サイトでは、サイト機能の有効化やパフォーマンス測定、ソーシャルメディア機能のご提供、関連性の高いコンテンツ表示といった目的でCookieを使用しています。クリックして先に進むと、当社のCookieの使用を許可したことになります。Cookieを無効にする方法を含め、当社のCookieの使用については、こちらをお読みください。

初心者も楽しみやすく…競走馬をGPSトラッキングでピタリと捕捉!実はかなり進んでいる「競馬」の最新テクノロジー

2024.02.28(最終更新日:2024.02.28)

読了時間目安 8

シェアする

日々進化を遂げるテクノロジーの数々。さまざまなスポーツで導入が進むなか、競馬レースにおいても最新技術が多く活用されています。特に2023年は、多くのシステムが競馬に導入された年でした。そこで今回は、競馬の楽しみ方を広げ得る新しい取り組みの魅力や課題について掘り下げていきます。

トラッキングシステムの導入で競馬初心者にもやさしく

競馬に取り入れられた最新テクノロジーとしてまず挙げられるのが、“トラッキングシステム”です。トラッキングシステムとは、競走馬の位置をリアルタイムで測定する技術のこと。競走馬が身につけるゼッケンにGPSセンサーを設置し、各馬のデータを取得しています。

取得された馬の位置情報は、中継画面の下部にゼッケン番号で表示。加えてコースの全体図や地面の勾配、走行速度といった情報もひと目で確認可能です。これにより、コース内においてそれぞれの馬が走っている地点や、同士の相対的な位置関係を視聴者が把握しやすくなりました。

トラッキングシステムは、2023年4月23日におこなわれた京都競馬場でのレースを皮切りに順次運用が開始。映像は全国の競馬場やウインズ、競馬専門の有料放送「グリーンチャンネル」にて放映され、一部のレースはJRA公式YouTubeチャンネルでも公開されています。

トラッキングシステムを導入したことのメリットとしては、初めて競馬を見る人やライトなファン層にとってレース展開を追いやすくなったという点が挙げられるでしょう。中継カメラの映像に映っていない馬の順位に関しても把握可能なため、自分が馬券を購入した馬がいまどこを走っているのか理解しやすくなりました。

実際トラッキングシステムが活用されている映像を見たネット上の視聴者からは、「中継映像が斜めからの画角になっていても、トラッキングがあることで本来の馬のスピード感がわかりやすい」「レース中に馬を見失いにくくなった」といった声が。

また馬同士の位置関係がわかりやすいため、ジョッキーの進路取りのスキルに目が行くようになったという意見もありました。

一方で、現在導入されているトラッキングシステムには表示上の課題も。画面内の限られたスペースで各馬の位置を相対的に示すことになるため、レース展開によってはシステムのよさが上手く機能しない場合があります。

たとえば2023年11月26日の「第43回ジャパンカップ(GI)」レースでは、8番パンサラッサが序盤から独走状態に。その結果、後方の馬が団子状態のように表示され、一番後ろの馬に関してはトラッキングマークが画面内に収まらず何度もフレームアウトしてしまっていました。

現段階での課題はあるものの、競馬をさらに見やすくするテクノロジーとしてメジャーになりつつあるトラッキングシステム。今後のさらなる進化に期待しましょう。

AIを活用したシステムでレース前の馬の状態が丸わかり

競馬では、AI技術も活用されはじめています。具体的なサービスとしては、JRAシステムサービスが2023年8月にリリースした「パドックアイ」が挙げられるでしょう。パドックとは、スタッフに連れられた競走馬がレース出場前に周回するエリアのこと。“下見所”とも呼ばれ、観客はパドックの中継映像を通して各馬のコンディションを確認することができます。

通常、中継においてはパドックを歩く馬それぞれを順番に映すのが主流です。一方「パドックアイ」では、パドック内の映像をAIが自動で馬別に分割。特別レースおよび重賞レースのみではありますが、当日のレース開始約20分前には各馬の単体動画を閲覧できます。状態が気になる馬の様子を好きなタイミングで確認可能なため、従来の中継放送だけではカバーし切れなかった視聴時の利便性向上に繋がっているといえるでしょう。

パドック映像の分析においては、馬の歩くリズムや姿勢、顔つき、毛艶のよさ、馬を連れているスタッフの様子などさまざまな部分に着目することが重要だそう。「パドックアイ」を活用すれば、特定の馬の様子を細かくじっくりと観察できます。

また「パドックアイ」では、任意のパドック動画を2つまで同時に再生できる機能も利用可能。馬ごとに過去のパドックでの様子を比較することができます。成績がふるわなかったレースと優勝したレース、それぞれのパドック動画を見比べることで、馬のコンディションを判断する基準となります。

なお「パドックアイ」を利用するには、「JRA-VAN」に有料会員として登録する必要があります。登録後は、2020年9月以降におこなわれた過去の重賞レースに関してもパドック映像が閲覧可能。加えて「パドックアイ」以外に、30年分以上のJRA公式データや出走表、レース成績などを確認できます。競馬好きな人、本格的に応援したい馬が見つかった人にはぜひ活用してもらいたいサービスです。

リアルの競馬場を飛び出してメタバース空間にも進出

いまや競馬は現実世界を飛び出して、バーチャル空間にも進出しています。たとえば2023年7月15日~7月30日に開催された「バーチャルマーケット2023 Summer」には、千葉県船橋市にある中山競馬場をメタバース世界で再現した「バーチャル中山競馬場」が登場しました。

「バーチャルマーケット」は、アバターなどのバーチャル商品や現実世界で使えるアイテムをメタバース空間で売買できるイベント。なかには音楽ライブをはじめとする体験型のブースも出展されていて、一般のクリエイター、企業を問わずさまざまな人が参加可能です。

現実世界では「有馬記念(GI)」の開催地となっている中山競馬場。「バーチャル中山競馬場」では、2017年の同大会にて優勝した有名馬キタサンブラックに騎乗できるタイムアタックレースが開催されました。さらに競走馬に乗ってパドックやコース内を楽しめるイベントもおこなっています。

なお「バーチャル中山競馬場」は、2023年12月2日~12月17日開催の「バーチャルマーケット2023 Winter」にも出展。クリスマス仕様にデコレーションされた場内でレースに参加したり、競走馬を装飾したりといったアクティビティを提供しました。

また佐賀競馬場も、地方競馬場としては初となるメタバース技術を使ったオンラインイベントを2023年5月に開催しています。場内がダートコースであることにちなみ、「スナバース」と題したオリジナルのバーチャル空間を用いて多彩なプログラムを企画。1着の馬を予想するクイズ大会やグッズ販売、佐賀競馬公式YouTubeチャンネルにて放送している「SAGAリベンジャーズ」のライブ配信などがおこなわれました。

加えてイベント当日は、実際の佐賀競馬場内で限定オリジナルドリンクを販売。場内からスナバースに参加できる体験ブースも設置され、リアルとバーチャル空間を連動させた取り組みが特徴的でした。

メタバースやAIをはじめ、最新テクノロジーの導入がすすむ競馬界。レースの楽しみ方のバリエーションや気軽に競馬に触れられる機会の増加など、コアなファンはもちろん、これまで競馬をあまり楽しめなかった人たちにとっても嬉しい進化を遂げています。今回紹介した技術がさらに浸透することで競馬界がどのような盛り上がりを見せていくのか、今後もぜひ注目してみてください。


吉田康介
フリーライター