ボールの弾道をリアルタイム解析
ゴルフ界に導入された最新技術のうち、プロも愛用しているのがボールの弾道測定器です。なかでもTrackman社が提供する「Trackman」シリーズは、松山英樹選手、山下美夢有選手といった活躍中の日本人プレイヤーや、世界ランキング1位のネリー・コルダ選手をはじめとする海外の有名ゴルファーも使用している製品として有名です。
Trackmanは屋外でも使用できるTrackman 4と、インドアゴルフ専用として開発されたTrackman iOという2種類の製品を展開。どちらにも特許を取得した高性能のレーダー技術が搭載されており、クラブやボールの動きを的確にとらえた精度の高いデータが取得できます。
Trackmanを導入すれば、ボールスピードや打ち出し角だけでなく、スピン量、滞空時間、最高到達点、カーブ、着地角、キャリーなどさまざまな数値を正確に計測できます。さらにTrackman 4では、クラブ・ボールに関するデータやパッティング時のボールの打ち出し地点とエントリースピード距離の地点の高さの差といった情報も分析可能です。
トレーニングに役立つ専用ソフトウェア、TRACKMAN PERFORMANCE STUDIOも提供されていて、利用すればAIによる分析とコーチングも受けられます。シミュレーションゴルフ機能では、世界中の有名コースを精密に再現したバーチャルコースを用いてプレーが可能。シミュレーター上で参加可能な、バーチャルゴルフトーナメントも開催されています。
Trackmanではリアルタイムにデータを計測し結果をすぐに表示できるため、指摘された改善点を次のプレーへと即座に落とし込んでいくことができるのが大きなメリットです。実践、フィードバック、改善の流れがスムーズになるので、効率よくプレー技術の向上を目指せるのではないでしょうか。
GPS機能でプレーをアシスト
弾道測定器以外の最新テクノロジーとして挙げられるのが、ゴルフ用のスマートウォッチ。特にGPSナビゲーション製品を主軸に成長してきたGarmin社の「APPROACH S70」は、プレー中に必要な情報を、GPSを用いて表示してくれる点で優れています。
フルカラーのコースマップによって、プレイヤーがコース上のどこにいるか、狙うべきエリアはどのあたりかといった情報が一目瞭然に。全世界およそ4万3,000コースのデータが収録されているので、初めて訪れたコースでも安心です。
さらにプレー傾向や風向き、風速を分析し、推奨されるクラブの種類を提示。ボールが着地すると予想されるエリアもあわせて表示されるので、次のショットをイメージしやすくなります。加えてコースの標高、空気密度といった情報を把握したうえで、どのくらいの距離を打つべきかを提案。グリーンの傾斜も細かく確認できるため、パッティングの場面でも役立つでしょう。
さまざまなスポーツ向けのスマートウォッチを展開するGarmin社だからこその、ゴルフに必要な機能が過不足なく搭載された製品だといえます。アプリのメッセージ通知や交通系IC、睡眠の質とストレスの計測機能などもあるので、普段使いも可能です。
スマホ1台でスイング分析
ゴルフに関する最新技術は、スマートフォンという身近なデバイスにも波及しています。たとえば2023年10月にヤマハ株式会社から提供され、注目を集めたのがスマホアプリ「PLAY SWING」。ヤマハ独自の音と映像を組み合わせた技術によって、クラブヘッドがボールを捉えるインパクトの高精度検出が可能となり、ゴルファーにとって効果的な練習方法“スイング分析”が簡単に行えるようになりました。
PLAY SWINGでは、スマホカメラで撮影・保存したスイング動画の中からインパクトを検知。1回の撮影で複数回スイングを行っても自動的に1スイングごとの動画にわけられ、打席への移動・素振り・ワッグルなどスイング以外の不要な部分を自動的に削除してくれます。
また、スイング内の「アドレス・トップ・インパクト・フィニッシュ」の4点検知機能を搭載。ボタンをタップするだけで、簡単に各ポイントの画像をチェックすることができます。さらにアドレスからトップ、トップからインパクト、インパクトからフィニッシュまでそれぞれの時間を計測するスイングテンポ計測機能も見逃せません。テイクバックや切り返しの速さなど、自分のスイングの特徴を知るヒントになるはずです。
同アプリは、2つ並べた動画を同時再生できる「動画比較機能」も備えています。比較機能を使えば、過去の自分のスイングと現在の自分のスイングを見比べながら分析・検証する機会に。加えて「プロ動画ダウンロード機能」を利用することにより、あこがれのプロと自分を比較してスイング改善のヒントを得ることもできます。ちなみに動画再生機能については、通常速度だけでなくスローやコマ送りでの同時再生が可能。自分の体の動きをじっくり観察しながらスイング分析を行いたいという人にぴったりではないでしょうか。
もうひとつ活用したいのが「軌跡自動表示機能」。スイング中の手や頭や背骨の動きの軌跡が自動的に動画上で線になって表示されるため、自分のスイングがアドレスからフィニッシュまでどのように動いているのか一目瞭然です。
PLAY SWINGはいまのところ、iOS対応バージョンがApp Storeにて無料提供中。スマホ1台とアプリさえあれば完結するのが魅力です。
広がるスポーツテックの輪
ゴルフにおけるさまざまな場面で普及しはじめている最新テクノロジー。これらは決してゴルフ界だけのものではなく、ほかのスポーツを取り巻く環境にも影響しています。
たとえばはじめに紹介したTrackman社は、ゴルフ向け製品に加え野球専用のトラッキングシステムも開発。実際2023年3月に行われたWBCでは期間中、日本代表選手たちのトレーニングにTrackman社の製品が導入されていたことが話題になりました。日本のプロ野球リーグではTrackman社によるシステムが広がりを見せ、審判員のスキル向上目的でも活用されています。
またサッカーやアメリカンフットボールといったスポーツのトレーニングにもTrackmanの技術が広がっているようです。さらに2021年に行われた東京オリンピックでは、ハンマー投げなど複数の競技でTrackman社の技術を応用。出場選手のパフォーマンスデータを解析しサポートしました。
革新的な技術が導入されることで、ゴルフをはじめとしたスポーツの世界は今後どのように変わっていくのでしょうか。進化を続けるスポーツテックにぜひ注目してみてください。
吉田康介(フリーライター)