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絵に描いたオムライスが実写化!まるでひみつ道具みたいなAIが躍動する、食育×ITの世界

2023.12.12(最終更新日:2023.12.12)

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小さい頃にクレヨンで描いたオムライスが実写化して、目がついて、おしゃべりを始めたら、大人になってもオムライスを食べる度にワクワクしそうです――。

昨今は子どもたちの食への知識や関心を育むことで、情緒や感性をも豊かにする食育が注目され、IT活用により促進されています。まるで、ドラえもんの四次元ポケットから出てきたひみつ道具のよう……そんなAIが躍動する食育の世界に迫ります。

人生と深い関わりのある味の記憶

あなたは嫌いな食べ物はありますか? 子どもの頃は苦手だったにもかかわらず、年齢を重ねて食べられるようになった食品はありますか?味の記憶をたどると、一緒に食べた人や、場所の雰囲気、そのときの気持ちなど、人生の記憶が呼び覚まされることがあります。

それは一体なぜでしょうか? 広く知られているとおり、人間の五感が認識できるもののなかで、最も記憶と結びつきが深いのが香りです。これは、嗅覚が記憶と感情の処理を行っている脳の「扁桃体」や「海馬」とつながっているためです。その次に記憶と結びつきが深いのが、味覚による認識といわれています。

そもそも、香りには味を強める効果があります。食欲を誘う香ばしいグリルチキンの香りや、甘いチョコレートの香りは鼻をつまんで口にすると一気に風味を感じにくくなる現象が起こります。このように、香りが風味を構成する重要な要素であることを考えると、味覚が嗅覚の次に記憶と結びつきが深いのもうなずけるのではないでしょうか。

食事を味わうことは人生を味わうこと

「味の記憶は、人生の記憶」であり「食事を味わうことは、人生を味わうこと」そんな考えから、子どもたちの食への知識や関心を育み、情緒や感性をも豊かにすることを目的にした食育が昨今は重要視され、IT活用による促進がなされています。

実際、農林水産省は「デジタル食育ガイドブック」を令和4年に公開しています。このガイドブックはITを活用した食育に取り組むためのポイントや実践の方法がまとめられています。デジタル食育の推進により、食育の活動者を増やしていくことを目的としています。

具体的に、オンラインイベントや食育動画、SNS等の運営や活用の方法が実際の事例を交えて紹介されています。こうした政府の動きからも、食育におけるIT活用は一般的になりつつあることが分かります。

(参考:農林水産省 デジタル食育ガイドブック・食育動画

食育に活用されるさまざまテクノロジー

ITを活用した食育は、オンラインイベントやYouTube、インスタグラム、X(旧Twitter)などのメディアで好きなときに好きな場所で楽しめるのが魅力です。そのため、新型コロナウイルス拡大による行動制限下においても重宝されました。一方で、政府が感染拡大防止と社会経済活動の両立を目指す「Withコロナに向けた政策の考え方」を発表した令和4年9月以降は、直接人々が同じ場所に集まるイベントでもITが導入されています。

たとえば、オンラインプログラミングスクールを運営している株式会社プロキッズが開催する「アグリテック体験プログラム(実証実験)」は、親子でアグリテックが体験できる画期的なプログラムです。アグリテックとは、Agriculture(農業)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、AIロボットやドローンなどICT(情報通信技術)の農業における活用を指します。

子どもたちがほうれん草やバジルなど野菜への水やり・種まき・除草などを行う農業ロボットをプログラミングして、実際に農場で操作することができるイベントです。当日のみならず栽培期間中は、自宅からの遠隔操作で農作業を継続して行うことができるのが特徴です。直接作物の様子を確認したいときや収穫時には農場へ足を運び、フレキシブルな次世代農業を体験できます。農業分野のIT人材育成を目的としています。

(参考:自宅から農業!?姫路市の子供たちがアグリテックを駆使した未来の農業体験に挑戦

小中学生の約7割が「嫌いな食べ物がある」と回答

カゴメ株式会社が行った、3歳~中学生の子どもをもつ女性を対象にしたアンケート調査によると、約6割の子どもが野菜の好き嫌いがあると答えています。また、塩竈市学校給食栄養士会が小中学生を対象に行った調査によると、「(野菜に限らず、食べ物の)好き嫌いはありますか」という質問に、小学生は 72%、中学生は 76%「ある」と回答しています。

本調査においては、小学生より中学生の方が食べ物の好き嫌いのある子が多いことが分かりました。前述のカゴメ株式会社の調査でも「(野菜の好き嫌いが)以前はなかったが、今はある」と答える人の割合は全世代で5割以上います。年齢を重ねるごとに、味覚の許容が広がる訳ではないことが分かります。子どもたちは大人と比べて自分で食べるものを選ぶ機会が少ないため、嫌いな食べ物に対峙しストレスを感じる機会も多いことが想像されます。

そんな子どもたちが楽しく食に関する知識を学べる、小学校向けのデジタル教材「食育の時間+(プラス)」は「消費者教育教材資料表彰2020」の“理事長賞”を受賞するなど、高い評価を獲得しています。可愛いキャラクターの主人公が、食に関する事件や相談を解決するために奮闘するアニメーションを中心に、楽しみながら学べるのが特徴です。

実際に視聴してみました。主人公である探偵の女の子と助手のネコが営む探偵事務所に、悩みを抱える相談者がやってきます。探偵コンビが相談者のライフスタイルや食生活を調査し、悩みの原因の推理を視聴している児童に促す物語アニメから始まります。

その後、推理に必要なヒントをくれる学習アニメ、専門家による解説動画、物語アニメの完結編、自分の食生活をあらゆるデータで可視化できるアプリへとステップを進める構成となっています。各コンテンツは数分程度のため、集中力を切らすことがないうえ、合間にディスカッションやシンキングタイムを挟むことができます。

小分けにされたコンテンツの段階を踏むことで徐々に理解や考えが深まり、能動的に食の世界を楽しめる工夫がなされています。

また、古きよき時代のヨーロッパの片田舎を思わせる街並みや、手描きの温もりを感じさせる筆致も可愛らしく、大人でも楽しめます。

※参考:
子どもの野菜に対する意識調査
令和2年度食事に関するアンケート調査結果
食育の時間+(プラス)

「味覚教育」に有効な、最新の画像生成AIシステムを搭載した食育アプリ

ピーマンが苦手な子どもに、細かく刻んでカレーに入れたところピーマンが入っていると気づかず「食べられた!」という事例があります。これは古くからある食材の個性や存在感を消す方法で「苦手な食材を食べる」ことを目的にした場合に有効です。

一方で、食育の1つに味覚教育という方法があります。子どもたちが「食材の個性を認識」し「味わう力」を育てることを目的にしています。この分野では「食材に親近感が湧く活動をした結果、イメージが変わり、子どもが苦手な食材を克服した」という事例があります。

たとえば、味覚教育を美術の授業に取り入れた、とあるフランスの学校の例を紹介します。キウイをテーマにスケッチをしたり、実際に手にとって匂いや色合いなどの感想を友だちと話し合ったりします。その結果、親近感が湧いてイメージが変わり、キウイの酸味の効いた風味を楽しめるようになりました。

親近感は好感につながり、好感は許容につながります。親近感は苦手なものを克服させてくれることもあれば、好きなものをもっと好きにさせてくれることもあります。食への親近感を高めるために家庭でできる有効な方法の1つが料理です。

家庭で子どもと大人が一緒に料理を楽しめる、お絵描きアプリがあります。食を囲む親子のコミュニケーションのサポートを目的とした食育アプリ「おいしいおえかき SketchCook」(大塚製薬株式会社)です。

子どもが描いた料理の絵をカメラで撮影するとたちまち実写化し、その「料理のレシピ」と栄養バランスがとれる「食べ合わせメニュー」のレシピを提案してくれます。

実際に使ってみました。

名前を入力するとアプリが呼びかけてくれます。今回は「やまだたろう」と入力しました。

絵を描くときのポイントが表示されます。クレヨンやカラーペンで紙に描いた絵でも、スマホで描いた絵でも、どちらでも使用可能です。今回はスマホで描きました。

描かれた料理が何の料理かアプリが認識すると、目がついて話し始めます。今回はオムライスを描きました。

絵はたちまち画像生成AIシステムにより実写化されます。

絵に描いた料理との栄養バランスを考えた「サイドメニュー」を提案してくれます。

絵に描いた料理と、チョイスしたサイドメニューのレシピを教えてくれます。

試しにもう1枚、別のオムライスを描いてアプリに取り込んでみました。すると、先ほどとは別のレシピの紹介とサイドメニューの提案をしてくれました。

レシピを紐解くと、1枚目は「生クリームたっぷりの卵で包んだチキンのオムライス」、2枚目は「粗挽き胡椒を効かせたボローニャソーセージのオムライス」にそれぞれ変身したようです。レシピ名はどちらも「オムライス」です。

1枚目はサイドメニューとして「ほうれんそうのチーズグラタン」と「レタスとベーコンのスープ」。2枚目はサイドメニューとして同じく「ほうれんそうのチーズグラタン」と、「かいそうサラダ」を提案してくれました。

同じ料理でも描く人によってレシピが変わるので、友だちファミリーと集まって皆でお絵描き大会をした後ランチタイムに実際に作って楽しんだり、大好きなメニューを色んなパターンで描いて、さまざまなアレンジレシピを試してみたり、楽しみ方がどんどん広がるアプリです。

一緒に楽しむ人への親しみも食への親しみも深まり、子どもの「味わう力」を育むことができます。


※参考:
小学館の育児メディア「HugKum」が食に関する悩みをママパパに調査。「栄養バランス」がお悩み1位!|PR TIMES 
おいしいおえかき SketchCook

まとめ

子どもの生活は食事が大人に用意される場面が多いため、「食の世界」はかつて子どもたちにとって近くて遠い存在でした。ですが現在はIT活用により、お皿にのる前の野菜を育てたり、食が健康や人生に与える影響を想像したり、頭に思い描いた理想の料理を実際に作ってみたり……。かけがえのない食体験をする機会が身近になりました。

「食べる」ことは「生きる」ことに繋がり、食を選ぶことは、人生を選ぶことにつながります。多くの子どもたちが食を大切にすることで、自分自身と自分の人生を大切にできる未来がやってくることを願ってやみません。


文/福永奈津美