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食洗機は贅沢品?時間・金額で換算してみたら、じつは「使ったほうが節約」に

2023.10.02(最終更新日:2023.10.02)

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共働き世帯が増えた今、現代の「三種の神器」と言われているのが、ドラム式洗濯乾燥機、ロボット掃除機、食器洗い機です。特にコロナ禍で在宅時間が増え、食事の準備や後片付けの負担が増加したことから、食器洗い機(以下、食洗機)に注目が集まりました。しかし日本における普及率はかろうじて30%を超える程度と低水準にあります。そこで今回は、家事の手間を省くだけではない食洗機のメリットと、最新の進化事情をご紹介します。

食洗機が普及しにくい日本特有の事情とは

パナソニックが発売している卓上タイプの食器洗い乾燥機。少人数向けのタンク式から、まとめ洗いできるファミリー向けまで展開している。

日本は“食洗機後進国”と言われています。前述のように日本における食洗機の普及率は30%超ですが、他国を見ると、アメリカやヨーロッパでは70%、中には90%近く普及している国もあるほどです。

では、なぜ日本の普及率は上がらないのでしょうか。その理由の1つとして挙げられるのが社会的背景です。日本は1990年ごろまで専業主婦世帯率が高く、食器洗いをはじめとした家事は主婦が行うものという固定概念がありました。その後、急速に共働き世帯が増え、今では7割に迫っているものの、その世帯の多くが専業主婦の下で育っているため、食洗機=家事をサボる、ムダ遣い、という潜在意識を抱いている人が多いのです。

このように、日本人は食洗機を前提としない暮らしをしていたため、かつての住宅は食洗機が設置できる造りになっていません。そのためキッチンに食洗機の置き場所がない、給水のための分岐水栓工事が必要など、さまざまなハードルがあり、「設置したいけれど諦めた」という人も少なくありません。

ドイツの高級家電メーカー・ミーレのビルトイン食洗機は、大きな鍋やフライパンも洗える大容量タイプ。節水しながら短時間で洗い上げる。

時短・節約のメリットを金額に換算すると

では食器洗いは本当に、人の手で行わなければいけない家事なのでしょうか。家事には主に、その工程に人の創造性が加わる家事と、機械的に行っても結果が変わらない家事があります。前者の代表的なものは料理で、料理を作る人が家族の好みに合わせて味を変えたり、気分によって材料や調味料をアレンジしたりすることで、暮らしの質を上げてくれる家事といえるでしょう。

一方、掃除や食器洗いなどは、汚れたものを元の状態に戻す作業であり、基本的に特別な創造性は必要とされていません。適切な手順で行えば、誰が行っても同等の結果が得られるのです。つまり、これらの家事は自分で行う時間がない場合には、優先的に家電に任せてもいい家事と考えることができます。

実際に、食器洗い機には次のようなメリットがあります。

・使用する水量が大幅に減る
・作業に要する時間が大幅に減る
・手洗いよりきれいになり、除菌効果が期待できる

ひとつずつ見ていきましょう。

使用する水量が大幅に減る

手で食器を洗う場合、洗剤の泡をすすぐ際に大量の水を使用します。一方、食洗機では、泡立ちが少なく高濃度の専用洗剤を使用し、少ない水を噴水のように循環させて洗浄するため、少量の水で洗うことができます。

パナソニックの試算によると、4〜5人分の食器(食器40点、小物20点)を洗う場合、手洗いした場合に使用する水量は約75Lであるのに対し、食洗機(パナソニック NP-TZ300)を使用した場合の水量は約11Lと約6分の1に留まります。さらに、手洗いにはガス代、食洗機には電気代がかかりますが、これらを加味しても、食洗機は1年間で約16,400円の節約になるとしています(1日2回洗った場合)。

作業に要する時間が大幅に減る

1回あたりの食器洗いに必要な時間は平均約20分かかるため、1日2回洗うと約40分要します。一方、食洗機は食器をセットするだけなので、1回あたり約5分、1日2回で約10分しかかかりません。つまり1日で約30分、1年間で約10,950分(約182時間)の時間が節約できます。

もし食器洗いにかかる時間を仕事に充てて考えた場合、執筆時点での全国の最低賃金平均が時給1,002円であるため、これに当てはめると、最低でも年間182,364円以上の金銭的価値があると考えられます。

手洗いよりきれいになり、除菌効果が期待できる

「食洗機は汚れ落ちが信用できない」と思っている人も多いかもしれませんが、実際は手洗いよりきれいになると考えられます。食洗機は、高濃度洗剤と高温のお湯で洗うため、油汚れが落としやすく、除菌効果も期待できますが、手洗いでは手に優しい洗剤と温度のお湯で洗うしかありません。また食器スポンジには雑菌が繁殖しやすいので、しっかり除菌していないと雑菌の付着する可能性もあります。

もちろんすべての食器が食洗機で洗えるわけではありませんので、使い分ける必要があります。また食器を並べる前に残りものを取り除く、水流が食器の汚れに当たるように並べるなど、きれいに洗うための工夫も必要ですが、そこさえ気をつければ、ほとんどの食洗機の汚れ落ちに問題はありません。

少人数世帯向け食洗機で若年層を狙う

パナソニックが新たに投入したパーソナルタイプの食器洗い機「NP-TML1」。背面も透明にすることで圧迫感を減らしている。

じつは卓上型の食洗機自体は、1990年代に多くの大手家電メーカーから発売されていましたが、普及が進まなかったため次々と撤退していきました。しかし、パナソニックのみが根気良く開発を続けたため、現在でもパナソニックの卓上食洗機がシェアナンバーワンを占めています。

一方で近年は、新築住宅のシステムキッチンにビルトイン食洗機が導入されるようになり、ファミリー世帯の需要はビルトインに置き換わりつつあります。そこで今、新たなターゲットとして注目されているのが、少人数の若年層世帯です。賃貸に住む1人暮らしの若年層こそ、家事の時間が足りないため、食洗機の需要があると考えられているためです。

NP-TML1のタンク部分。水栓と繋がなくても食洗機が使えるタンク式は、手軽に導入できるとして人気を集めている。

食洗機の普及が進まない理由として、置き場所と分岐水栓問題を挙げましたが、その問題を解決したのが、タンク式食洗機です。従来の食洗機は、水栓に直接繋いで自動給水していますが、賃貸住宅の場合、分岐水栓工事ができなかったり、キッチンが狭くて食洗機が設置できなかったりするパターンがあります。しかしタンク式なら、あらかじめタンクに水を入れておけば水栓がなくても使えるため、電源さえ確保できればシンク周り以外で使うこともできます。

若年層に食洗機を普及させることは、長い目で見て食洗機業界に大きなメリットをもたらすと考えられています。前述のように日本は、食洗機を使うことに対して潜在的な罪悪感を持っている人が多く、ファミリー世帯でも購入を躊躇している人が少なくありません。

しかし1人暮らしを始めるタイミングで食洗機を使い始め、その利便性を体感することで、食洗機は特別な家電ではなく、日常的な家電としてなじんでいきます。そのためライフステージが変わっても、食洗機を使い続けることになり、欧米のように普及率が高まっていくことが期待されているのです。

NP-TML1。食べ終わったらすぐに食洗機に入れる習慣がつくことも、若いうちから食洗機を使い始めるメリットかもしれない。

もちろん、今まで自分で食器を洗ってきたけれど問題はない、という人も多く、食洗機は必ずしもなくてはならない家電ではありません。しかし前述のように、手間が省けるだけでなく、水道光熱費の節約や除菌などメリットも多いので、食洗機=無駄遣いという概念を取り払い、また利用したことのない人は一度検討してみてはいかがでしょうか。



[プロフィール]
田中真紀子
家電ライター。早稲田大学卒業後、損害保険会社を経て、地域情報紙に転職。
その後フリーとなり、住まいや家事など暮らしにまつわる記事を幅広く執筆。
出産を経て、子育てと仕事の両立に悩む中、家事をラクにしてくれる白物家電、エステに行けなくても自宅美容できる美容家電に魅了され、家電専門ライターに。現在は雑誌、webにて執筆するほか、専門家として記事監修、企業コンサルタント、アドバイザー業務もこなし、テレビ・ラジオ出演も多数こなす。これまで執筆や監修に携わった家電数は1000近くに及び、自宅でも常に多数の最新家電を使用しながら、生活者目線で情報を発信している。