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一人ひとりに足りない栄養は違う。尿で分かる栄養検査サービス「VitaNote」でロジカルなヘルスケアを

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2022.06.15(最終更新日:2022.09.13)

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健康寿命の延伸に関心が高まるなか、ヘルスケアは私たちの日常から切り離せないものとなった。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査(2019年)」※によると、食生活改善の意思について、「関心はあるが改善するつもりはない」と回答した人が最も多く、また、改善の意思を示した人の多くが、取り組めない理由として「仕事(家事・育児など)が忙しくて時間がないこと」を挙げた。この結果は、ヘルスケアに対する関心は高いものの、忙しさを理由に実践できていない国民が多いことを浮き彫りにしている。

そのような時代背景から、ヘルスケアもデジタル化が進む。手軽に健康状態を可視化できるウェアラブルデバイスやアプリを使った健康管理サービスなどが普及してきている。

今回紹介する「VitaNote(ビタノート)」も、その先端を走るサービスである。自宅で採取した尿を郵送するだけで自らの栄養状態が分かり、その人に必要なサプリが届くという、まさに忙しい現代人に最適なサービス。「VitaNote」を提供するユカシカド代表取締役兼CEOの美濃部慎也氏に、サービスに込めた想いやビジョンを聞いた。

※厚生労働省「令和元年「国民健康・栄養調査」の結果」

「栄養面の改善は世界共通の課題」。創業前から揺るがない“パーソナライズドニュートリション”

——ユカシカドの事業の根幹である「健康」と「栄養」は幅広い世代から関心の高い領域ですが、美濃部社長が着目されたきっかけをお聞かせください。

小さい頃からスポーツをやっていて、なかでも小学校5年生ぐらいに興味を持ったアメフトは、特に力を入れて取り組んできました。その後、全国屈指の強豪である関西学院大学のアメフト部に入部。最先端の情報に基づくトレーニングなど、非常に充実した環境でしたが、栄養面に関しては選手やコーチたちの勘や経験に依存していることに気付いたんです。

引退後に顧問の先生が、栄養について関心を持っていた僕に、一度、途上国の様子を見に行くよう勧めてくれました。早速フィリピンへ行くと、栄養価の高いバナナをすぐそばで作っているにも関わらず、子どもたちは身体に良くないものを食べている。栄養状態を把握し適切な食事を摂ることが、いかに大切か痛感しました。それが、2004年のことです。

——栄養に対する課題解決や、途上国への想いとともに帰国されたのですね。その後すぐに起業せず、企業に入社されたのはなぜでしょうか?

手元のノートは美濃部氏が創業時に綴っていたノート

帰国後すぐに母校の図書館に通い詰め、栄養に関するさまざまな書物を読みあさりました。そのなかでSDGsの前身のMDGs(ミレニアム開発目標)に出会い、栄養面の改善は世界的な課題であること、また単に栄養価の高いものを提供するだけでは、問題は解決しないと考えるようになりました。
大学時代に起業の意志は固まっていましたが、事業や経営に関するスキルを身に付けるためにリクルートに入社しました。営業の最前線に立ったのち、社内人事異動制度を利用して、自分が興味関心を持っていた栄養に関わるオイシックスに出向、そちらで食に関する理解を深めていきました。

また仕事のかたわら100名以上の研究者に会い、ビジネスプランを固めていきました。門前払いも少なくありませんでしたが、そんなときは講演会の最後に「出待ち」するなどの工夫もしましたね。研究者のなかでも、ビタミン・ミネラルなどの栄養素研究をリードされている滋賀県立大学の福渡努教授との出会いは大きかったです。先生に僕の構想を話すと、ご自身の研究が社会実装に近づくと、とても喜んでくださったことを覚えています。

——地道な努力を積み重ね、福渡先生との出会いから一気に構想が現実になっていったと想像されます。どのような経緯でユカシカドを立ち上げられましたか?

退職後は、ユカシカドの創業メンバーと人生の棚卸しをしました。そして、途上国をもう一度見に行こうと、メンバーとともにバングラデシュへ行き、改めて自分たちのやるべきことへの想いを一つにしました。

帰国後はまず社名から。僕らのサービスは必ずグローバルに展開したいと考えていましたから、日本っぽい名前を付けようと。社名の「ユカシカド」は古語の組み合わせであり、「ゆかし」は好奇心旺盛、「かど」は才能の意味をもちます。僕らもそうですが、サービスを利用してくださる方も含めて、好奇心旺盛な才能を育んでいきたい──そんな想いを込めています。

そして、MISSION「国内外を問わず平等な環境と機会の創造に全力を尽くし、努力できる才能を持っている人が強くなれる世界をつくる。」と、STANCE「1HERO 1MISSION」を立てました。経営においては、よくMISSON、VALUE、VISIONが大切と言われますが、僕らはあえてそこまで設定していなくて、それよりもどういったSTANCEでMISSIONに向かえば良いか、いかにしてやり抜くかを大切にしています。

——現在ユカシカドでは、どのような事業、サービスを展開されていますか?

上からパーソナライズサプリ「VitaNote FOR」、左:郵送型栄養検査キットの「VitaNote」、右:パーソナライズプロテイン「VitaNote FOR Protein」
すぐに結果が分かるセルフ栄養検査キット「VitaNote Quick」

一言で表すなら「パーソナライズドニュートリション」、“栄養の個別最適化”です。それを実現するために、栄養状態を可視化する郵送型の検査キット「VitaNote」と、その場で検査結果が分かる「VitaNote Quick」を用意しています。

さらに検査結果に基づいて、その人に適切な食品やサプリメントを提供するまでがビジネスの全体像になります。提供する製品としては、パーソナライズサプリ「VitaNote FOR」、パーソナライズプロテイン「VitaNote FOR Protein」、そのほか栄養補助製品などを開発、製造、販売しています。

尿を採取して郵送するだけで栄養状態が分かり、必要なサプリが届く「VitaNote」

——ユカシカドのコアコンピタンスとも言える「VitaNote」の概要や特徴をお聞かせください。

「VitaNote」では、ECサイトで購入した検査キットで尿を採取し郵送すると、約1週間で自分の栄養状態についてアプリケーション上で確認できます。検査結果で分かるのは、ビタミン8種類、ミネラル9種類、タンパク質、サビつき指標(酸化ストレス)、コンディショニング指標(サイトカイン)の合計20項目の状態。なおセルフ検査タイプの「VitaNote Quick」では、栄養状態の総合評価をその場で確認することが可能です。

このサービスがリリースされるまで、栄養状態を知るすべは、管理栄養士による聞き取りか、血液検査が一般的でした。ところが聞き取りの場合、食べたものの記憶があいまいだったり、味付けによっても栄養価はまちまち。結果を良くするために過少申告する例もありますよね。一方の血液検査は、ユーザーへの身体的な負担が大きい上に、過度に栄養価が欠乏しているケースでしか判断できません。「VitaNote」は健康な人の栄養状態を可視化した世界初のサービスと言えます。

——画期的なサービスということで、世に出るまでにさまざまな苦労もあったのではないでしょうか?開発の経緯やターニングポイントも教えてください。

まずは栄養状態を把握する素材を、何にするかの壁がありました。血液や髪の毛、唾液、涙、爪、便、すべて試しましたね。最終的に福渡先生との出会いを経て「尿」にたどり着いた後も、どのような機械や設備を導入すべきか手探り状態。そこでかつて計測機器メーカーなどに勤めていた方や、専門家を頼りアドバイスをもらいました。

また、採取した尿を郵送する手段も頭を悩ませました。食べ物もそうですが、外気に触れた直後から状態が変わっていくのが常です。採取した尿をいかに安定した状態で運ぶか。独自の安定剤を開発し特許化しました。

さらに栄養状態の測定にあたっては、ユーザーが利用しやすい原価に抑えなければなりません。おそらく普通に測定すると5万〜10万円の商品になってしまいます。それでは一般の人の手に届きづらいため、工夫を重ね、10分の1までコストを削減し、一般化に成功しました。

——素晴らしい製品が生まれても、利用しやすい価格でなければ社会課題の解決にはつながりにくいということですね。「VitaNote」リリース後の業界や専門家からの反応、また印象深いユーザーの声はありましたか?

ユカシカド創業が2013年。当時は今ほど、スタートアップという言葉を耳にしない時代だったので、周囲の反応も冷ややかなものでした。また、ステルスで研究を重ねていたため、会社の事業が周りには見えず、「何をやっているか分からない会社」のように思われていた時期もありましたね。
ところが、2017年に「VitaNote」をリリースすると事業を応援してくれる人も増え、企業としての信用度も一気に高まりました。

ユニバーサルなサービスを意識しているため、利用者はアスリートが多いかといえば決してそうではなく、3歳から102歳と幅広く男女比もほぼ半々。自身の栄養状態と、パーソナライズサプリの効果が数字で出るため、ロジカルに効果が実感できているという声をたくさんいただいています。

——高評価ということですが、サービスはどのように進化してきたのですか?

「VitaNote」は過去に、ユーザーをセグメントしたバージョンを販売したことがあります。栄養の消費が激しいアスリートに向けたものと、妊娠期・授乳期の方を対象にしたもの。それぞれ検査項目を絞ったのですが、結局のところ、最も多くの項目が分かる通常版を選択される方がほとんどでした。

その後、2017年のリリース前から行っていた研究が形になったこともあり、2022年2月に検査項目を追加。それまでの栄養素14種類、体調マーカー2種類から、現在の栄養素18種類、体調マーカー2種類にバージョンアップを図りました。

——世代を超えて利用されているなかで、「もっとこの年代にも」という想いはありますか?

ユーザーの傾向を見ていると、若い世代ほど健康に対するリテラシーが高い。多くがデジタルネイティブなので、健康や栄養について気になれば、いろいろな角度から調べる習慣があるのでしょう。
一方で、僕らの親の年代にあたる団塊の世代は、高度経済成長期の中で、着色料や保存料をはじめとする食品添加物の大量使用が当たり前な食環境で育ち、「おいしいものを食べれば良い」という感覚の人が少なくありません。
そういった方々の価値観を、「VitaNote」で抜本的に変えたいという想いはありますね。

途上国の栄養問題にもアプローチ。パイオニアとして一気通貫で正しいマーケットを作っていく

——近年は競合も増えてきています。そんななかで「VitaNote」のサービス設計で大切にされている視点は何でしょうか?

一見似たようなサービスであっても、僕らのように開発も製造も検査も一気通貫でやっているところはありません。すべてを自社でやっているのは強みですし、結果として「VitaNote」リピートにつながっていると考えます。
今では弊社に類似したサービスも増えており、ごく一部では、科学的根拠が不十分であったり、消費者の健康を害する可能性があるものがあります。そのような商品が流通することに対しては、非常にもどかしい思いをしています。

長野県松本市にあるパーソナライズに特化した自社検査センター&製造工場
長野県松本市にあるパーソナライズに特化した自社検査センター&製造工場

ただ、カスタマーの健康に責任を持ってサービスを提供している同業者に関しては、この業界を促進していく仲間だと思っています。パーソナライズドニュートリションの市場が拡大していることはうれしいですし、この産業を切り開いて良かったと感じます。
今は良質なサービスであれば存在を認め、市場をともに拡大していければと考えています。

もっとも、精密な検査の仕組みを作るために、12年分の尿中解析データや日々蓄積される検査データにより独自のアルゴリズムを蓄積し、解析精度を向上させているので、誰もが簡単に真似できるサービスではありません。正しいマーケットを作るためには、パイオニアである僕らがもっと突き抜ける必要がありますし、それが責任だと思っています。

——美濃部社長の眼差しの先にはどんな未来があるのでしょうか?日本が現在抱える医療や健康に関する社会課題を踏まえながら、ぜひ事業展望もお聞かせください。

僕らが目指すのは、途上国の栄養問題を解決すること。これは起業時から変わっておらず、絶対にやり切りたい。そう考えると、ユカシカドのフェーズとしては、まだスタート段階に近いかもしれませんね。
日本が抱える課題で言えば、増え続ける医療費の削減に対しても「VitaNote」はアプローチできると考えます。例えば生活習慣病は、ときに重篤な疾患の原因となり国民医療費にも大きな影響を与えるものですが、その多くは適切な栄養管理で予防、改善が可能です。

将来の構想もいろいろ考えています。僕らが提供しているサービスは、検査キットが届き、それを自宅で利用するサイズ感ですが、人が栄養を改善する場所はほかにもありますよね。通勤途中などいろいろな場所で栄養改善ができるようになれば。その構想を実現するために、関連するプレイヤーと協業していきたいですね。

——2021年12月に行われた「東京栄養サミット2021」では、コミットメントとして「栄養改善サービス『VitaNote』を用いて一人ひとりに適した栄養改善を促進する」と表明されました。改めて、そこで掲げられた3項目をご紹介いただきながら、達成に向けての想いをお聞かせください。

サミットでは、以下を宣言しました。

1.栄養検査キット「VitaNote」を2030年までに1億人に提供します。
2.管理栄養士などの専門職1,000人に活躍の場を創出し、栄養教育を広げます。
3.2030年までに途上国・新興国の子ども1,000万人にサービスを提供します。

僕らがこのような場所でメッセージを発信することは、栄養改善に関する社会の問題意識を高めるためにすごく重要だと考えます。

お金儲けだけを目的としたビジネスはすぐに燃え尽きてしまいます。サミットで発信したような目的があるからこそ、想いを一つにする仲間が集まり、絶対に負けない組織になる。技術はもちろん大切ですが、「人」の要素もとても大きいんです。
掲げた数値目標は簡単なものではありませんが、言ったからにはやり遂げたいと思っています。

——これから管理栄養士の仕事はどう変化していくと思いますか?

管理栄養士の業務のなかで、栄養状態を把握する作業はとても手間がかかりますが、そこを「VitaNote」で代替することができます。

それよりも、相談者の行動変容を促したり、改善した栄養状態を維持するためにモチベーションを高めたりといった、心理面のサポートが重要です。これは人間である管理栄養士にしかできない仕事です。

つまり「VitaNote」と管理栄養士は共存するものであり、栄養改善を促進するためには、管理栄養士の力はとても大切です。

あらゆる人の栄養を支えながら、活躍のフィールドを創出。栄養に関する理解を高め、豊かな人生に貢献

——イクタスは「テクノロジー・DXによってわくわくする未来を感じさせる」メディアです。ユカシカドが実現する「わくわくする未来」とは、どのような社会でしょうか?

人々を豊かにする要素として、衣・食・住・娯楽があり、ユカシカドが担うのはそのなかの食の機能である栄養面です。みなさんの栄養面をしっかり支えることで、いろいろなことにチャレンジできるフィールドを作ることができれば。それこそ自分にとっての、すごくわくわくする未来ですね。
今の日本は、チャレンジしづらい環境になっている気もしていて。特にこれからの世代、子どもたちがチャレンジできるフィールドを作ってあげたいですね。

——栄養面を支えるのは手段であり、あくまでも目的はMISSIONにあるように活躍の場作りということですね。最後に、今後「VitaNote」をきっかけにどのような変化が生まれることを期待されますか?

僕自身「栄養」は本当におもしろいと感じていますが、ほとんどの方は栄養と言われても、家庭科の授業で少し習った程度で、まだまだ関心が低いのではないでしょうか。
科学的に分かっていることとして、みなさんの日頃の気持ちの浮き沈みや、ストレスなどは、栄養を補うことでコントロールが可能です。適切な栄養を摂取することは、人生を豊かにすることにつながる。ぜひ「VitaNote」をきっかけにして、パーソナライズドニュートリションの素晴らしさを知っていただきたいですね。

尿で分かる栄養検査サービス「VitaNote」はこちら

[プロフィール]

美濃部慎也●みのべ・しんや

株式会社ユカシカド
代表取締役 兼 CEO


1980年生まれ、兵庫県宝塚市出身。筋トレが習慣。関西学院大学のアメフト部に所属し、厳しいトレーニングや自己管理を続けるなかで栄養に興味を持つ。新卒で株式会社リクルートに入社し、営業や企画に携わる傍ら、独自で栄養検査のリサーチを続ける。2010年にオイシックス・ラ・大地株式会社へ出向し、2013年には株式会社リクルートを退社。同年3月15日、ユカシカドを設立。