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デジタルの恩恵を、より多くの人々へ。出光がメディアサイトに込める思いとは

2022.05.17(最終更新日:2022.09.06)

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2030年を見据えたビジョンに「責任ある変革者」を掲げる出光。既存事業の枠を超えたトランスフォーメーションに挑み、エネルギーの安定供給とともに、社会課題の解決に貢献することを責務としている。
そして、2022年5月にはWebメディアサイト「iX+(イクタス)」を公開。「テクノロジー・DXによってわくわくする未来を感じさせる」を運営方針に、デジタルの力でより生活が豊かになる、解決のヒントになる情報を発信していく予定だ。コンテンツとしてはさまざまな地域で暮らす人たちに寄り添う生活に身近な技術の紹介、未来を切り開く新たな体験をもたらすテクノロジー・DXに取り組む企業、サービスの情報などをお届けする。
 
2030年を見据えた基本方針のなかで、「DXの加速」を標榜する同社のCDO・CIOの三枝氏に話を聞いた。

出光がなぜメディアサイトを?転換点で打ち出された「3つの変革」に対する責任とその実現

――出光と言えばサービスステーション(ガソリンスタンド)。エネルギーを供給している歴史のある会社、というイメージが強く、Webメディアサイトを始めると聞いたときは、正直意外でした。 サイトをはじめるきっかけは何でしたか?

Webメディアサイトの立ち上げは、2021年5月に中期経営計画の見直しを公表したことが背景にあります。

日本政府が打ち出した「2050年カーボンニュートラル宣言」により、化石燃料事業を根幹とする当社は大きな転換期を迎えることとなりました。この一見ピンチと思える状況を、チャンスに変える。その思いが、当社のDXを加速する出発点になっています。

そして、2030年のビジョンとして「責任ある変革者」を掲げました。次の3つの責任とその実現に向けた事業ポートフォリオへの変革を進めています。

地球と暮らしを守る責任:
 カーボンニュートラル・循環型社会へのエネルギー・マテリアルトランジション
地域のつながりを支える責任:
 高齢化社会を見据えた次世代モビリティ&コミュニティ
技術の力で社会実装する責任:
 これらの課題解決を可能にする先進マテリアル

この3つの責任の実現は当社だけの力でできるものではありません。パートナー企業、テクノロジー提供企業、そして生活者の方々と協力し、エコシステムを築き連携していくことが不可欠です。

――3つの責任を果たすには、“いかにイノベーションを起こせるか”という点が鍵になりそうですね。どのように変革を推し進めていくのでしょうか?

出光は世間的にも“燃料の会社”というイメージが強いかと思います。今後は3つの責任を果たしながら業態を大きく変えていく必要があるなかで、当社の力のみでそれが達成できるとは考えておりません。
カーボンニュートラル、循環型社会、次世代モビリティ、次世代コミュニティなど、より良い未来への取り組みを進めているサービス・製品はすでに多数存在していますので、企業・自治体とパートナーシップを築きながら変革を加速させていきたいと考えています。

また、出光のWebメディアサイトでは、そのような取り組みをしている企業や自治体の製品・サービスを積極的に紹介し、「こんな未来へ進んでいるんだ!」とわくわくしてもらいたいですね。

――なるほど。Webメディアサイトはテクノロジー・デジタルを活用したさまざまなモノ・サービスの情報提供の場になるのですね。運営をしていく上でどのような点に重きを置いていく予定でしょうか?

軸として考えているのは、既存のモノ・サービスが、「テクノロジー」や「デジタル」・「データ」の活用によってイノベーションを起こして新たな価値を届けていく様子についてお伝えしたいと思っています。当社と同様に社会課題の解決に向けて取り組む企業やそのサービスを紹介し、地域創生につながる情報も発信していく予定です。


また重要視しているのは、当社のWebメディアサイトに触れることで生活者の方がどのような行動をして、どのように変容していくのかという点です。ユーザーが変遷していく様子をつぶさに捉え、将来的には双方向で共創するメディアを目指したい。そのためには会社のホームページではなく、独自のWebメディアサイトで情報を発信すべきだと考えました。

全国約6,300ヶ所のサービスステーションネットワークを活用する「スマートよろずや」構想とは

スマートよろずやイメージ図

――メディアサイトを立ち上げた意図は分かりました。これからわくわくする未来をつくっていくために、出光はビジョンに掲げたことに取り組んでいくのですね。ビジョンとして掲げていることについて、具体的にはどのようなことを考えていますか?

「地球と暮らしを守る」「地域のつながりを支える」「技術の力で社会実装する」という3つの責任を果たす具体策の一つに、「スマートよろずや」構想があります。

「スマートよろずや」は、全国約6,300ヶ所のサービスステーションを持つ出光ネットワークを活用し、エコシステムの構築を目指すプロジェクト。各地にあるサービスステーションを経営する特約販売店は、地域の課題やニーズを熟知しており、このネットワークを持つ当社の強みを活かした戦略と言えます。

これまで人口減少や自動車の燃費向上などによりサービスステーションの数が減ってきていましたが、今後はカーボンニュートラルへの取り組みや電気自動車へのシフトにより、ガソリン需要のさらなる減少が見込まれています。これからは燃料としてのインフラだけでなく、付加価値を付けて拠点としての事業が維持・発展できるように地域の人々の多様化するニーズに応えていくことが求められるでしょう。これが「スマートよろずや」構想の原点です。


拠点に付加価値を付けるチャレンジ、例えばコンビニエンスストアやコインランドリーの併設などは今までも行ってきました。
ただ、日本中の拠点に「これで良い」と断言できる正解があるわけではありません。地域によって課題は違いますし、優先順位も違う。となると、地域のニーズに即したサービスが求められるのは当然のことです。

昔は地域に根ざした「よろずや」が数多くあり、地元に密着して物やサービスを提供していました。これを現代に置き換え、それぞれの地域に必要なコンテンツを、必要な場所に、必要なタイミングで届くようにするのが「スマートよろずや」の“スマート”である理由です。

――地域のニーズはどのように掘り起こしていくのでしょうか?

当社系列のサービスステーションは、その多くが特約販売店により運営していただいています。皆様は、もう地元で何十年もビジネスをやっている方たちが多いんですね。
そのため、地域の悩み・自治体の課題に密着して事業をされているので、「こういうサービスがあったらぜひやりたいんだ」とか「こういう課題があるから何とかならないか」といった声をたくさん頂戴できる環境にあるのです。

一方で、特約販売店の努力に頼り切るだけではいけません。例えば当社が“新しいカテゴリー”の事業として今年中のサービス展開を予定する「モビリティ&コミュニティサービスの開発」は、地域課題を背景に発足したプロジェクト。電気自動車の開発・生産・サービス展開は特約販売店で完結するのは難しい領域かと思いますが、当社がその役割を担い、多くのサービスステーションで提供できるようにする。このように、相互に高め合う関係を築いていきたいと考えています。

「スマートよろずや」構想で目指す世界

スマートよろずや展開のイメージ図

――「スマートよろずや」構想ですか。よろずやというと何でも取り扱っているお店を想像しますが、実際にはどのようなことを行うのでしょうか?

全国のサービスステーションで初の試みとして「スマートよろずや」の実証実験を2021年10月、静岡県島田市にて実施しました。移動式MRIでの脳ドック健診やシェアキッチン、野菜の直販を行い、お客様からは非常に満足度の高い評価をいただくことができました。

なかでも移動型の脳ドック健診は、今年の4月以降に本格的な事業展開を予定。今後、複数の場所でサービスが受けられるようにしていこうと思っています。

――実証実験を経て、脳ドック健診事業の展開が決まったのですね。どのような点に地域からのニーズを感じられたのでしょうか?

もしかすると、脳ドック健診を身近に感じている方は少数かもしれません。しかし、「いつかやらなきゃいけない」「受診したいけれど、どこでやれば良いのか分からない」といった潜在的な悩みを抱えている方も一定数いるのではと考えました。特に、地方では脳神経外科の専門の病院や先生が少なく、「脳ドック健診は1日がかりで」となってしまうケースもあるでしょう。

そこで、移動式のMRIをサービスステーションに設置できれば1時間で3枠受診できます。単純計算しても1日24人は受けることができて、土日も稼働可能。さらに事前にネット問診しておけば、約30分の短時間で終えることもできます。脳ドック健診がより身近に感じられ、“地域の健康づくり”を守ることにつながりますよね。

――サービスステーションへ出かけるついでに、脳ドック健診を受ける。まさにDXで生活が変容していく様子が想像できますね。

そうですね。また“DXで日常を変える”という意味では、「シェアキッチン」の取り組みも好例になりました。

シェアキッチンの実証実験では、キッチンカーにてフード・ドリンクのテイクアウト、およびデリバリーによる販売を行いました。ここでのポイントは「デリバリーサービスがないエリアに、デリバリーの仕組みを一時的につくる」という試みです。

実証実験の気付きとしては、企業にお勤めの方に多く利用いただけたのは意外でした。ランチの“仕出し弁当”のような感覚で使っていただけていたようですね。仕出し弁当は前日までに予約しなくてはいけない仕組みが多いと思いますが、シェアキッチンは1時間前までのオーダーでお届けできるシステム。「1時間でやってくれるんだ」と好評をいただき、企業にお勤めの方からのリピートは特に多かったですね。

「食のデリバリー文化をつくる」というのはとてもおもしろく有益なチャレンジに感じられ、地域の生活を変革させたDXの成功例と言えるのではないでしょうか。

ほかにも、ドローン配送やヘルスケアサービス、カーライフサポートなどの拠点として、「よろず」の問題を解決し、QOL向上と地域活性化のプラットフォームへと進化させていく予定です。

出光が挑むのは既存事業の枠を超え、社会に大きなインパクトを与えるDXトランスフォーメーション

――全国にネットワークを持つ出光のサービスステーションが、その地域に合ったサービスをスマートに届けていく、素敵な取り組みだと思います。そのほかにも今までの出光からの変化を感じる取り組みなどがあればお聞きしたいです。

当社は石油コンビナートのオペレーションを行っていますが、将来は石油精製だけではなく、例えばグリーン水素、グリーンアンモニア、再生可能エネルギーの供給も目指しています。
石油プラントは廃プラスチックや重金属の再生能力もあり、資源循環のハブとしての役割へと変えていく計画を立てています。これを「CNX(カーボンニュートラルトランスフォーメーション)センター」構想と呼んでいます。

CNXセンター構想は「スマートよろずや」に並び、柱となる施策の一つ。各種プラントを脱炭素化すると同時に、再生可能エネルギーやバイオ・合成燃料など次世代エネルギーの供給基地として機能させるものです。

しかし、いくら再生可能エネルギーを生み出し、素材の再生を行っても、マーケットに展開されない限りカーボンニュートラルは進みません。
世の中のニーズをしっかり掴み、新しい価値を持ったエネルギーや素材が広がるよう、地域の悩みを吸い上げる拠点とのつながりが重要と考えます。その意味でもアンテナとしての「スマートよろずや」は重要ですし、独立したWebメディアでの情報発信が機能してくると考えています。


2022年中期経営計画資料より CNXセンターコンセプト

また、地方の共通の課題として挙げられるのが移動の問題です。これに対しては、超小型EVを使ったモビリティサービスを提供することで、カーボンニュートラル社会の実現を目指します。

モビリティサービス「ideta」は、今の時代に合った“使いたいとき”に使うことのできるカーシェアのサブスクリプションとして2022年中のサービス開始を目指しています。

我々が情報発信する目的は、デジタルの恩恵を受けられる方を増やしていくこと。最先端の地域サービスもメディアサイトで掴めるようにする。そうすれば相乗効果で我々のデジタルを使ったサービスの認知度が上がり、カーボンニュートラルも進む。

「あの出光がこんなに変わった」というのを世の中に発信できたらおもしろいじゃないですか。誰でも情報やテクノロジーを活用できる世界が理想であり、目標です。そのためには当社だけでなく、他社や自治体の取り組み、それを支えるテクノロジーも含め、きちんとユーザーに届けていく責任を果たしていきたいと思っています。


――

世界的な脱炭素化の動きに伴う「2050年カーボンニュートラル宣言」、ライフスタイルの変化と新型コロナウイルスの影響による主要製品の需要減少。これらをチャンスと捉え、変革を推し進める出光。
Webメディアサイトの立ち上げ、サービスステーションを活用した「スマートよろずや」構想、「CNXセンター」構想など、DXによる未来に向けたチャレンジが着々と進行している。

「テクノロジー・DXによってわくわくする未来を感じさせる」
この想いを実現させるために、iX+(イクタス)ではテクノロジーを活用したさまざまなサービスや情報を、多くの人へ届けていく。

[プロフィール]

三枝幸夫

出光興産
執行役員CDO・CIO
情報システム管掌(兼務)
デジタル・DTK推進部長

1985年ブリヂストン入社。生産システムの開発、工場オペレーションなどに従事し、工場設計本部長を経て2016年に執行役員に就任。マーケットドリブン型のスマート工場化などを推進後、2017年よりCDO・デジタルソリューション本部長となり、全社のビジネスモデル変革とDXを推し進めた。2020年1月より出光興産に入社し、執行役員CDO・CIO デジタル・DTK推進部長を務める。