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エドテックとは?注目の背景や具体的なサービスを解説

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2022.10.14(最終更新日:2022.10.14)

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ここ数年で耳にする機会が増えた「エドテック(EdTech)」。子どもの教育や社会人の学び直しに活用されています。

この記事ではエドテックの意味や市場規模、活用のメリット・懸念点、具体的なツールやサービスを説明します。

エドテックの意味とは?

エドテックとは、テクノロジーを活用して教育に革新的な変化を起こすことを指します。英語で表記すると「EdTech」 となり、Education(教育)とTechnology(技術)をかけあわせた造語で、「教育テック」と呼ばれることもあります。

テクノロジーには、AI(人工知能)やVR(Virtual Reality/仮想現実)などの先端技術はもちろん、すでに一般的になっている汎用技術も含まれます。また、活用の場は学校に限らず、社会人の学び直しも含んでいます。

具体的なエドテックのツールとしては、実際にそれを使って学習ができるオンライン教材やサービスのほか、間接的に学びの効率化を促す学校用の教育支援ツールなども含まれます。

エドテックと似た言葉に、「ICT教育」や「eラーニング」があります。ICT(Information and Communication Technology)とは情報通信技術の意味で、ICT教育とはタブレット端末やデジタル教科書など情報通信技術を活用した教育のことです。eラーニングとはオンラインを活用した主体的な学びのことで、オンラインで配信されるコンテンツを使った教育や研修サービスを指すのが一般的です。ICT教育もeラーニングもエドテックの領域と重なり、各用語にそこまで厳密な区別はないと考えてよいでしょう。

エドテックの市場規模

野村総合研究所が2022年2月に出版した『ITナビゲーター2022年版』では、2021年度のエドテックの国内市場規模は2,674億円と見込まれ、2027年度には約3,625億円まで拡大すると予測されています。

世界の市場規模はさらに巨大です。アメリカの調査会社マーケッツアンドマーケッツ社のレポートによると、世界のエドテック市場は2022年時点で1,253億ドル(約17兆円)の規模であり、今後も年率13.2%で成長して、2027年には2,329億ドル(約32兆円)に達すると予測されています。こうした市場規模予測をみると、今後日本でもますますエドテックへの注目は高まっていくと考えられるでしょう。

エドテックが注目されている背景

今、教育の分野に限らず、デジタルによって事業や業務を変革していこうとする、デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れが加速しています。テクノロジーとさまざまな産業をかけあわせることをクロステック(X-Tech)と呼び、エドテックもその一つです。クロステックには、エドテック以外にも「フィンテック」(FinTech/Finance〔金融〕×Technology〔技術〕)や「フードテック」(FoodTech/FoodAgriculture〔食〕×Technology〔技術〕)などがあります。

そうした世の中の流れのなかでエドテックへの注目も高まっているのですが、エドテックの広がりの背景としては次のようなことも挙げられます。

コロナ禍におけるオンライン学習、在宅勤務の浸透

新型コロナウイルス感染症の流行の影響もあり、一部の学校や塾ではオンライン授業が導入されました。家庭では子どもの学力低下を心配して、オンライン学習や学習アプリを採り入れる親が増えたというアンケート調査結果(出典1)もあります。
企業では在宅ワークが浸透し、在宅時間を有効活用しようと社会人の自律的な学びが進み、社会人向けのオンライン学習の人気も高まっています。

国によるICT教育の推進

国が教育のICT化を進めていることもエドテックの後押しになっています。2018年には経済産業省が「未来の教室」ビジョンを策定し、1人1台端末をベースに、エドテックを活用した新しい学び方の実証事業を進めています。

文部科学省は2019年に「GIGAスクール構想」を掲げ、学校での1人1台端末・クラウド活用・高速通信環境の整備などを進めてきました。2020年度からは子どもたちのIT力育成のために、小学校でのプログラミング教育も必修化されています。国が推し進めるこうした教育デジタルトランスフォーメーションにエドテックは不可欠といえるでしょう。

エドテックが解決できる課題

エドテックの活用によって解決できる課題は多く、特に大きなメリットとしては次のようなことが挙げられます。

教育格差の是正

都会と地方に教育環境の格差があることは以前から言われてきました。たとえば、地方では学習塾が少なかったり、通うのに時間がかかったりすることも少なくありません。エドテックを活用したオンライン講座なら、住む場所のハンディを乗り越えられます。無料で使える優良なエドテック教材も多いため、経済的理由による教育格差の是正につながることも期待されています。

ただ一方で、自宅でインターネットが使えない、学校がオンライン授業を導入しないなど、ICT環境の整備の差がデジタル教育格差につながる懸念も指摘されています。エドテックの浸透には、誰もがインターネットにアクセスできる環境の整備が急務となるでしょう。

社会人の学び直しを促進

社会人向けのエドテック教材も多く、リカレント教育(※)やリスキリング教育(※)の充実や効率化にも役立ちます。エドテックを活用すれば個人でも学ぶ機会をつくりやすく、社会人としての市場価値向上やキャリアアップにもつなげやすいでしょう。

※リカレント教育もリスキリングも「社会人の学び直し」を意味しますが、一般的にリカレント教育は個人主体の生涯学習を指し、リスキリングは人材戦略として企業が行う研修を指します。

働き方改革、業務改善

働き方改革関連法が2019年4月から順次施行されていますが、学校現場の働き方改革はなかなか進まず、長時間労働が問題になっているところもあります。エドテックには、学習マネジメントシステム(LMS)のような教育支援ツールのほか、先生の業務負担軽減を促す校務支援ツールもあり、教育現場の業務改善の実現も期待されています。

最近は、民間企業の人事や教育担当者の業務負担を軽減する目的で、新人研修や人材育成に使えるサービスを提供するエドテック企業も増えてきました。最新のIT教育をはじめ、多様な教育プログラムがあり、企業の業務改革にも役立てられます。

エドテック導入への懸念点

エドテックの導入はよいことだけではありません。いくつか懸念点もあります。

ITリテラシーが必要

エドテックを使いこなすにはITリテラシー(ITを使いこなす能力)が必要です。タブレットやパソコンなどIT機器を使いこなす基本的なスキルや、安全に使うための知識が欠かせません。特に子どもには、インターネットの危険性、IDやパスワードの重要性などを伝えることが大切です。子どもが使える機能を制限するとなると、親にそれができるだけのIT知識が求められるでしょう。

ICT環境の整備にコストがかかる

エドテックは無料で利用できるサービスもありますが、個人の場合、スマホやパソコン、タブレットなどのハードウェア、自宅インターネット回線など、ICT環境の整備にコストがかかります。

学校の場合は、さらに大きな予算が必要です。ただ、GIGAスクール構想により小学校や中学校、特別支援学校等を対象に1人1台の端末整備には国から補助金が出ます。また、エドテックサービスを提供する企業が国の「EdTech導入補助金」を活用した場合、その会社のサービスの導入実証をしたい学校は、期間中無償で利用できます。こうした制度をうまく活用すれば、学校のICT環境の整備はしやすくなるでしょう。

エドテックの具体例は?教材やサービスを種類別に紹介

すでにエドテックを活用した多種多様なツールがあります。ここでは個人でも利用しやすい主なエドテック教材・サービスを3つに分類して紹介します。

オンライン講座

エドテックはアメリカ発祥ですが、アメリカでブームの火付け役となったのは、ムーク(MOOC/Massive Open Online Course)と呼ばれる大規模公開オンライン講座でした。動画をみて学ぶ方法は、特に社会人のリカレント教育では一般的です。オンライン講座を配信しているプラットフォームの例を紹介します。

JMOOC(ジェイムーク)

大学講師陣や企業が提供する本格的なオンライン講義を誰でも無料で受講でき、講座のジャンルには歴史・統計学・プログラミング・心理学などがあります。JMOOCはアメリカではじまったムークを日本でも広めるために設立されたもので、複数の講座配信プラットフォーム(gacco、OLJ、OUJMOOC)をまとめるポータルサイトの役割を果たしています。

JMOOC

Schoo(スクー)

社会人向けの生放送授業を無料で提供しているライブ動画学習サービスです。生放送なのでその場で先生に質問したり、学生同士で話し合ったり、双方向の授業ができるのが特徴です。授業ジャンルとしてはビジネススキル・プログラミング・経済・デザイン・思考法・文章術や働き方・お金・健康などが用意されており、録画授業をみられる有料プランや法人向けサービスもあります。

Schoo

Udemy(ユーデミー)

教えたい人(講師)と学びたい人(受講生)をつなげるオンライン学習のプラットフォームで、全世界におよそ4,400万人の受講生がいます。講座は社会人向けの内容が多く、プログラミングやデータサイエンス、リーダーシップ、チームビルディングなどがあります。講師は主に実務のエキスパートが務め、講座価格は各講師が設定します。法人向けサービスもあります。

Udemy

教材コンテンツ

動画をみる以外の学びのスタイルとしては、デジタルドリル教材やアプリなどがあります。最近の教材コンテンツは、AIが一人一人の理解度に合わせた教材を提供する「アダプティブラーニング(適応学習)」を取り入れたものが多いのが特徴です。

すらら

小学生から高校生を対象に、国語、算数/数学、英語、理科、社会 5教科の教材が用意されており、先生役のアニメーションキャラクターと一緒に一人一人の理解度に合わせて勉強を進められます。生徒の学力に応じた演習問題に取り組める姉妹教材「すららドリル」もあります。

すらら

スタディサプリ

小学校高学年から大学受験生までに対応したオンライン学習サービスです。豊富な映像授業のほかに、オンラインコーチングサービスも展開しています。高校を中心に導入が進む学校向けの「スタディサプリ for SCHOOL」や1日3分から隙間時間で学べる大人向けの英語学習アプリ「スタディサプリENGLISH」もあります。

スタディサプリ

Progate(プロゲート)

初心者から学べるオンライン型プログラミング学習サービスで、JavaScriptやPHP、Rubyなどさまざまなコースがあります。ツールやスライド、演習問題などはすべてブラウザ上に用意されているので、ソフトのインストールや開発環境の構築は不要です。学校向けや法人向けのサービスもあります。

Progate

VRを活用した疑似体験学習サービス

まだ市場としては大きくありませんが、VR(Virtual Reality/仮想現実)と組み合わせて疑似体験ができる学習サービスも登場しはじめました。AR(Augmented Reality/拡張現実)、MR(Mixed Reality/複合現実)など、クロスリアリティ(XR)と呼ばれる分野とかけあわせた学習サービスは今後増えていくかもしれません。

VIRTUAL GLOBAL GATEWAY(バーチャルグローバルゲートウェイ)

東京都内に実在する体験型英語学習施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」をVR化した体験型学習サービスです。リアルな施設は、平日は学生向けで社会人は土日祝日のみ利用可能ですが、VR版では社会人もいつでも利用でき、海外のカフェや飛行機の機内など多様なVRシチュエーションで英語講師とコミュニケーションしながら実践的な英語活動や異文化を体験できます。

VIRTUAL GLOBAL GATEWAY

The Wonder of Numbers and Sounds(ザ・ワンダー・オブ・ナンバーズ・アンド・サウンズ)

Meta社のVR端末(Meta Quest)を利用して楽しむ数学とアートの要素を取り入れたVR教育ゲームです。VR空間に浮かぶ数字をつかんで氷山にぶつけて氷山を削っていき、体を動かしながら遊び感覚で計算力を培えます。対象は中学生以上。2022年9月現在テスト版のため「審査中」と表示されますが問題なく使えます。

The Wonder of Numbers and Sounds

まなVRクラウド

VRを使った学習は企業からの注目も高く、企業の研修や学習にVRを活用できるサービスもあります。まなVRクラウドもその一つで、自社に合わせた学習コンテンツの制作の依頼をすることもでき、工場の施設見学、防災訓練、運輸業の交通安全講習などへの活用が想定されています。

まなVRクラウド

エドテックを活用しよう

グローバル化が進み、人生100年時代といわれる今、子どものIT力強化や社会人のリカレント教育やリスキリングの必要性はますます高まってくるでしょう。今回紹介したように個人が利用できるエドテック教材も増えているので、「なにかを学んでみたい」と思ったら、まずは無料で使えるものを気軽に試すのもよさそうです。新しい学びが、人生に新たな楽しみや喜びを増やすきっかけになるかもしれません。