ウーバーイーツがデリバリーロボットでの配送を開始
ウーバーイーツ(Uber Eats Japan合同会社)は、三菱電機、Cartken Inc.と連携してオンライン・デリバリーサービス(ロボットデリバリーサービス)を2024年3月6日から開始しました。ロボットデリバリーサービスを提供するのは米国に続き、日本が世界で2カ国めとなります。
最初は東京都内の日本橋エリアに限定し、対応は2店舗、1台のロボットから始め、平日の10時から17時に限定して稼働します。最初は無理なく小規模で、安全優先で初めて、今後は利用状況やニーズに応じて、協力店舗やロボットの数を増やしていく考えです。
目立つ緑色に塗られたウーバーイーツのデリバリーロボットは6輪で自動走行します。歩道を走行し、走る速度は法定速度の5.4km/hです。ロボットに搭載したカメラとセンサーで周囲を確認し、障害物や歩行者があると停止したり避けて走行します(横断歩道と障害物の前では一時停止)。荒天を除き、通常の雨天には対応できます。
自律走行と遠隔操縦の組み合わせ、安全対策は何重にも
また、カメラ映像は遠隔の運用センターに送られていて、スタッフが安全に走行しているかを監視します。横断歩道の手前では一時停止し、信号の確認も運用センターのスタッフが行います。技術的には信号の判別は自動でできる機能を持っていますが、当初は念のためスタッフが信号を判断します。
トラブル時にはロボットのスピーカーを通じて、スタッフが周囲の人とコミュニケーションをとることができます。万が一深刻な非常事態が起こった場合は、警察や救急に連絡したり、スタッフが駆けつけたりなど、複数の安全サポート体制をとっています。
デリバリーロボットが配送できる状態にある場合に限り、通常のUber Eatsアプリから利用者はロボットを選択することができます。特別な追加料金はかかりません。ただし、エリアを限定した1台体制ですから、最初はなかなかロボットに依頼するのは難しいかもしれません。
注文から受け取りまでの流れ
注文を受けるとロボットはレストランや料理店などの店舗に商品のピックアップに向かい、店舗はロボットに商品を入れてロック(施錠)します。ロボットは商品を乗せて注文者の元に向かいます。
ロボットがどこを走行しているか、あとどれくらいで到着するかはアプリ上のマップに表示されます。オフィスビルやマンションの場合、入口まで受け取りに行く必要がありますが、マップで近くに来たことを確認でき、到着したらアプリに通知が来るので受け取りに行けばいい仕組みです。エントランスの外でロボットの到着を待っている必要はありません。
ロボットが到着したらスマホ(アプリ)でロボットのロックを解除(開錠)して、商品を受け取って完了です。
日本国内で10万店以上の加盟店舗、デリバリースタッフは約10万人
Uber Eats Japanによれば、Uber Eatsはグローバルで1.1万以上の都市で展開、89万以上の店舗が加盟しているということです。日本国内は全国展開していて、10万店以上のアクティブな加盟店舗があり、アクティブな配送スタッフが約10万人の規模でデリバリーしています。コロナ禍の巣ごもり需要がきっかけでECやデリバリーのニーズが急拡大しています。
そして、「買い物弱者、共働き世帯等の多様なニーズへの対応」やEVのロボットで配達することでの「脱炭素社会への貢献」という点でデリバリーロボットの導入に至ったとしています。
社会課題の解決のためにも、デリバリーロボットの運用が軌道に乗り、提供エリアが更に広範囲に拡がっていくことが期待されています。
楽天、つくば市でデリバリーロボットが食品配送
オンラインショッピングなどECサイトの需要が急増し、宅配業務が増加、すでに限界に近付いているとされている中、更に2024年問題が追い打ちをかけ、宅配業務は抜本的な改革が求められています。楽天は「配送ロボットやドローン配送による物流の無人化・省人化」を目指して積極的に取り組んでいます。
楽天は人口増加率が全国トップレベルのつくば市で、自動配送ロボットを実用化し、既に複数の店舗から料理・冷凍野菜・果物、ナッツ等や飲料水、炭酸水、アイスなどのロボット配送を実用化しました(2023年末で終了)。
楽天が配送ロボットで目指しているのは「ラストワンマイル」配送と呼ばれるもので、物流センターから各地域の配送センターまではトラック等で大量輸送し、地域の配送センターから戸建ての玄関先やマンションのエントランスまではロボットの自動配送に任せるしくみです。
2019年に最初の取り組みが発表され、横須賀市うみかぜ公園でBBQの食材や飲料などを近隣の西友からロボットで有料配達するサービスを期間限定で行いました。2020年8月と9月には東急リゾートタウン蓼科のグランピング施設で、2021年にはホンダが開発した自動配送ロボットに楽天の商品配送用ボックスを搭載し、構内で活用しました。
それまでは公道以外の公園・施設内・大学など私有地での実証実験に限られていましたが、2023年4月1日に、自動配送ロボットなど遠隔操作型小型車の交通方法などを規定した、改正道路交通法が施行されました。
改正以前は、配送ロボットが公道を走行する際、これまでは原付や軽自動車扱いとなっていて、保安基準緩和認定や道路使用許可の取得が必要で、だったのですが、改正法によって都道府県公安委員会への届出制に変わりました。また、歩道ではみなし歩行者として従来はロボットに人がついて走行する必要があり、事実上は自動運転によるメリットはありませんでした。
改正法ではロボットの遠隔監視は必要ですが、人が同行する必要はなくなり、1人の監視者が複数台のロボットを遠隔から監視することが可能となりました。これらの規制緩和や運用によって、利便性やコスト面で実用化が促され、社会実装が身近になったのです。
また、楽天を含む8社によって「ロボットデリバリー協会」が発足され、国に変わって基準に合致したロボットかを審査する体制も作られています。
オンライン診療と医薬品をロボットが配送する未来
川崎重工業、ティアフォー、KDDI、損害保険ジャパン、menu、武田薬品工業の6社は2023年1月~2月に、東京西新宿で「オンライン診療と5G自動配送ロボット」の実証実験を行いました。この実験に伴い、報道陣に公開されたデモでは、フードデリバリーを行う様子だけでなく、オンライン診療と処方された医薬品をロボットが配送する未来社会の様子も実演されました。
患者がパソコンを使ってオンラインで医師による診療を受け、医師が医薬品を処方し、薬剤師が同じくオンラインで服薬指導を行います。その後、ロボットが処方箋の医薬品を薬局で集荷し、患者の個宅に配送(自動配送)するしくみです。
この運用には、オンライン診療やロボット配送の遠隔監視に高速で大容量通信が可能な5Gが役立ちます。このときは改正道路交通法の施行前だったので、スタッフがロボットに付き添っていましたが、5Gの普及や、改正道路交通法の施行などの規制緩和によって、医療分野においてもICTやロボットの活用が進むことが期待されています。
<著者>
神崎洋治
TRISEC International代表取締役
ロボット、AI、IoT、自動運転、モバイル通信、ドローン、ビッグデータ等に詳しいITジャーナリスト。WEBニュース「ロボスタ」編集部責任者。イベント講師(講演)、WEBニュースやコラム、雑誌、書籍、テレビ、オンライン講座、テレビのコメンテイターなどで活動中。1996年から3年間、アスキー特派員として米国シリコンバレーに住み、インターネット黎明期の米ベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材した頃からライター業に浸る。「ロボカップ2018 名古屋世界大会」公式ページのライターや、経産省主催の「World Robot Summit」(WRS)プレ大会決勝の審査員等もつとめる。著書多数。