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夢のタイムトリップを実現! VR(仮想現実)・AR(拡張現実)技術の現在

2023.10.10(最終更新日:2023.10.10)

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昨今は、城跡を中心とした史跡めぐりが人気を集めています。御朱印や御城印を集めたり、ゲームやマンガを通じて好きになった武将のゆかりの地をめぐったりと、さまざまな楽しみ方が浸透したことが理由の1つです。人気の上昇にともない、バーチャル空間で復元された史跡(城跡、古墳などの遺跡)を楽しむ、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)技術を活用したサービスが続々とローンチされています。本記事ではその背景について紐解き、各サービスの特徴を紹介します。

お城や古都、寺社仏閣…史跡の復元にはVR・ARが最適解か!?

現存する史跡の多くが、当時の原型を留めていません。遺構(遺跡のなかでも、特に不動産的なもの)はすでに形を成しておらず、市街地化していたり、風化して雑木林や山ができていたりする場合がほとんどです。

復元するには莫大なコストがかかるうえ、現存する遺構を傷つけることなく保全する必要があるため、実現が難しいという課題がありました。

そこで、VR・ARの再先端技術を活用して、バーチャルの世界で再現しようという試みが始まりました。来場者は、当時の建物や街並みを疑似的に体験することができます。

もし研究が進んで、当時の姿・様相に新たな仮説が出てきたとしても、バーチャルの世界であれば、実際に改修工事を行うよりも少ないリソースで反映できます。こうした柔軟性の高さから、現在では多くの自治体や組織がVR・AR技術を活用したサービスを観光に取り入れています。

未体験の臨場感!現地体験型の歴史VR・AR

最もポピュラーなものの1つが、実際に現地を訪れた来場者に向けられたARのサービスです。手持ちのスマホやタブレットのカメラで、ARマーカーと呼ばれるコードを読み取り、設定の場所にカメラをかざします。すると、復元された建造物の立派な姿がCGで画面に蘇ります。

また、最近はVRシアターのスタイルが注目を集めています。VRシアターとは、従来型のようにVR専用ゴーグルを装着して、バーチャル空間に没入するものではありません。高精度の巨大LEDディスプレイ等に映し出したホログラフィック映像とサラウンド音声を組み合わせて、 実際に映像のなかに入り込んだような感覚を体感できるシステムです。

CG再現された当時の町並みや風景を体感しながら、音声で解説が流れ、歴史を追体験することができます。

実際のサービスをいくつか紹介します。

「ストリートミュージアム」で全国の史跡をめぐろう!

凸版印刷が2016年に公開した「ストリートミュージアム」は、全国の史跡や寺社仏閣の当時の姿をVR(仮想現実)で体験できるアプリです。各史跡に設定されたVRスポットを訪れると、CG復元された当時の姿を観ることができます。美術館や博物館のVRシアターも手がける凸版印刷のサービスは、高い完成度を誇ります。

全国の史跡が多数掲載されおり、現在も新たなVRスポットが続々と追加されています。アプリを開く度に新しい発見がある、そんなアプリです

・凸版印刷「ストリートミュージアム」
https://www.streetmuseum.jp/

360°ビュー対応の映像がリアル「仙台城VRゴー」

専用スコープを使用して没入感の高い映像体験ができるのが、「仙台城VRゴー」です。城内の8箇所に設定されたVRポイントで専用スコープを覗くと、伊達政宗が造った仙台城の門や御殿などを、当時の姿のままで観ることができます。360°ビューに対応している映像で、細かい意匠をじっくり眺めることも可能です。また、メタバース空間「DOOR」にも仙台城のバーチャル空間が展開されており、自宅でくつろぎながら、仙台城のタイムトリップを楽しむことができます。

・仙台城VRゴー
https://honmarukaikan.com/vrgo/
・DOOR「仙台城バーチャル空間」
https://door.ntt/sendaicastle01/

ARで遺跡を大冒険!「GO!GO!しだみ古墳群」

「歴史の里しだみ古墳群」は、4〜7世紀の古墳を見ることができる愛知県名古屋市の遺跡です。この遺跡をまるごと楽しんだもらうために2018年にリリースされたのがこの「GO!GO!しだみ古墳群」です。「古墳マップ」と「リアルRPG しだみクエスト」という、2種類のコンテンツがあります。

「古墳マップ」は、敷地内の15基の古墳に近づくことで、造られた当時の古墳の姿をVR(仮想現実)・AR(拡張現実)の両方で観ることができます。マスコットキャラクター「しだみこちゃん」が各古墳の歴史や見どころを紹介してくれます。

一方、「リアルRPG しだみクエスト」は、「歴史の里しだみ古墳群」を歩いていると出会う悪い埴輪を倒して物語を進めていくという、RPGゲーム。タブレットの貸出も行われているため、手ぶらで行って家族みんなで楽しむこともできます。

2020年には、続編として名古屋市熱田区の遺跡でプレイできる「あつたクエスト」がローンチされました。「あつたクエスト」には、AR機能を使って「宝物品」を発掘するといった新要素も追加され、「しだみクエスト」クリアした人も楽しめます。

・リアル古墳RPGアプリ「GO!GO!しだみ古墳群」
https://www.rekishinosato.city.nagoya.jp/app.html

・株式会社ジーン「GO!GO!しだみ古墳群」リリース情報
https://www.xeen.co.jp/info/product/000519.html

「明神山からタイムスリップ 世界遺産トラベル」で古代〜現代の大パノラマを満喫!

近畿地方の文化財を一望できることで人気の奈良県明神山。奈良の「法隆寺地域の仏教建造物」や「東大寺」などの世界遺産を含む歴史的文化財の数々を、古代〜現代の山頂からの眺望をお家で楽しめるのが「明神山からタイムスリップ 世界遺産トラベル」です。時代ごとに眺望を比較してその変遷を楽しむことができ、時間旅行の醍醐味を存分に味わうことができます

・「明神山からタイムスリップ 世界遺産トラベル」
https://www.town.oji.nara.jp/myojinVR/index.html

・YOMIURI BRAND STUDIO 実績紹介「明神山360度VRコンテンツ」
https://brandstudio.jp/works/ouji_360/

400年前の城内を自由に散策! 「福山城バーチャルツアー」

2022年に築城400周年を迎えた広島県の福山城。記念事業のひとつとして公開されたWebサイトが「福山城バーチャルツアー」です。天守や御殿など、近代化や戦争によって失われた城内の建築物をバーチャル空間で観ることができます。最大の特徴はビューポイントの多さ。約80箇所がCGで再現されており、城内のほぼ全域をストリートビューのように自由に散策することができます。

・福山市「福山城バーチャルツアー」
https://fukuyama400.jp/virtual/fj-vtour/

史跡以外で利用されるVR・AR

VR・ARはこれまで紹介した城の復元以外にも、活用の幅を広げています。いくつか紹介しましょう。

東日本大震災を後世に伝える「津波伝承AR」

2011年3月11日、東日本大震災で大きな被害を受けた東北3県。この地で復興支援や震災伝承などの活動を行っている「公益社団法人3.11メモリアルネットワーク」が公開しているのが、「津波伝承AR」です。

震災直後の被災地の姿を画面越しに観られる他、石巻市・東松島市・女川町を訪れると震災時にどれほどの高さの津波がきたかが分かる「浸水深AR」機能、震災当時のインタビューや被災からの教訓などを学ぶことができる「南浜・門脇ツアー」など、貴重な情報に触れることができます。かつて華々しく栄えたお城の歴史のみならず、悲しい災害の、風化させてはいけない記憶を、臨場感をもって伝えることができるのも、AR(拡張現実)の強みです。

・3.11メモリアルネットワーク「津波伝承ARアプリ」
https://311support.com/assist/ict/tsunami_ar

360°動画で近代を生きる人々に出会う「VR昔旅」

VR・ARによるタイムトリップでは、風景や建物を再現した静止画のCGが一般的です。もし再現された世界の人々や動物、乗り物が動く姿が観られたら、もっと楽しいですよね。そんな夢のような体験をさせてくれるのが、関門海峡の近代遺産を紹介する「VR昔旅」です。

「VR昔旅」は門司港駅や下関英国領事館など、近代の関門海峡を象徴する6箇所のスポットをCGで再現し、YouTubeの360°動画として公開しています。動画のため、行き交う人々や人力車、発車する汽車なども再現されていて臨場感たっぷり。自宅のパソコンやスマホでも十分楽しめますが、VRゴーグルをつけたり、実際に現地で動画を再生したりすると、よりリアルな体験ができるのでおすすめです。

・日本遺産 関門〝ノスタルジック〟海峡「VR昔旅」
https://www.japanheritage-kannmon.jp/trip/karakuri.cfm

宇宙の始まりをARで再現! 「ビッグバンAR」

家にいながら宇宙の始まりを体験できるのが、CERN(欧州原子核研究機構)とGoogleが共同開発した「ビッグバンAR」です。

アプリを起動しスマホに手をかざすと、手のひらの上でビッグバンが起こり、原子や星の誕生を観ることができます。360°ビューの映像で、部屋全体が宇宙になったような感覚を味わえます。なお、解説や字幕は英語のみに対応しています。

・CERN「ビッグバンAR」
https://home.cern/news/news/knowledge-sharing/download-big-bang-your-smartphone

まとめ

史跡のかつての姿を楽しむサービスを中心にVR(仮想現実)・AR(拡張現実)コンテンツを紹介しました。失われた歴史の闇に葬られた建築物や風景を仮想空間で再現し、当時の人々が見ていた光景を臨場感たっぷりに疑似体験できるのがVR・ARによるタイムトリップの最大の魅力です。

遺構の痛みが激しく来場者が立ち入り禁止の場所をバーチャル空間で再現したり、塗料が落ちて変色した壁画を色鮮やかに蘇らせたりするなど、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)の技術は我々が観られる世界をどんどん拡張してくれます。今後はどのような進化を遂げ、私たちをどう楽しませてくれるのか、期待せずにはいられません。

[プロフィール]
小関裕香子
企画から執筆・編集まで多彩なメディアのコンテンツ制作に携わる編集プロダクション・かみゆに所属。得意ジャンルは日本史、世界史、美術・アート、エンタテインメント、トレンド情報など。