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日本初の「100%オンラインで卒業できる大学」が「教務AI」を独自開発! テクノロジーの力でボーダーレスに学べる世界へ

2023.09.12(最終更新日:2023.09.12)

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ビジネス・ブレークスルー大学(下記、BBT大学)は、日本初の100%オンラインによる学習で卒業できる大学です。2005年の創立当初は、大学院で経営学を修了した者に与えられる学位・経営管理修士(MBA)をオンラインで取得できる、経営系専門職大学院として開学しました。その後、2010年に経営学部が設置され、学士課程が整えられました。

現在、学生にとってオンライン学習は身近な存在になりましたが、創立時は時代背景・教育現場の舵取りが大きく異なり、向かい風のなかスタートしました。本記事では、BBT大学の歩みを振り返り、さらにオンライン学習の現在について解説します。

オンライン授業のパイオニアである、BBT大学の現在

コロナ禍を経た現在では「インターネットを活用し、学校のカリキュラムを自宅で学ぶ」ということが一般化していますが、2010年にBBT大学が経営学部の学士過程をスタートした当初は、オンライン授業への好意的な意見は極めて限定的でした。

教育業界では「学校とは、通学して学ぶもの」「学友との交流こそが重要であるにもかかわらず、何故わざわざインターネットを介して勉強する場を作らないといけないのか?」など、否定的な意見が多くありました。

しかし、翌年2011年に起きた東日本大震災、2020年から拡大した新型コロナウイルスによる活動自粛期間を経て、潮目が大きく変わることとなります。それまで当たり前だった日常が送れなくなり「インターネットを使った教育は必要不可欠ではないか?」と、世の中がテクノロジーの効能を再評価し始めたのです。

実際、コロナ禍ではオンライン教育がなければ、小学校から高校までの学校教育においても、乗り切ることができなかったのではないでしょうか。著者には中学生と高校生の子どもがいますが、実際に学校側がMicrosoftのTeamsを使用してリモート学習環境を用意し、授業のライブ配信を行っていました。

このようにして、「Face to faceの環境でなければ」と頑なだった教育現場が、新型コロナ感染症の出現によって大きく変わらなければいけなかったのが、ここ数年の動きだったと言えます。

リモート学習をフォローするITシステム

もちろん、リモート学習が教育面において完璧な方法であるという訳ではありません。しかし、リモート学習だからこそのメリットもあります。

学ぶ場所を問わないため海外から参加することも可能で、日本語を理解できない他言語使用者はAIによる翻訳機能で内容を把握することができます。さまざまな事情で学校まで通うのが難しい人や、社会人で通学時間を捻出できない人たちに重宝されます。

また、オンライン型スクールならではのデメリットについても、カリキュラムの工夫やITシステム構築によってフォローができる点があります。

たとえば、BBT大学には10年以上に渡るオンライン学習者の膨大なデータの蓄積があり、それらを基にさまざまな改善策をかけ合わせて、よりよい教育環境の構築が日々進められています。実際に現場で活用されているITシステムを紹介します。

教育のDX化を推進するため独自のAI「BioLa」を開発!

BBT大学では2021年から、教務AI「BioLa」の運用を始めました。「BioLa」は、これまで大学が10年以上に渡って蓄積した学生のデータを機械学習させたオリジナルAIです。これまで、学習進捗の良し悪しを人間が判断するには多くのデータを参照して総合的に見ることが多く人が俯瞰的にそれらのデータを見るのは時間がかかっていました。このデータを見て進捗の良し悪しを判断する作業を効率化するためにBioLaを開発しました。

オンラインのみの教育現場では、大量の学習履歴データが発生します。なぜなら、対面授業であれば出席頻度や学生のモチベーション、授業の理解度などを教師が直接確認しますが、オンライン教育ではそれらが記録データに置き換わるためです。

具体的に、学生が閲覧したページの履歴やクリックした場所、受講の有無や課題の提出履歴、最終アクセス日など多岐に渡ります。学生1人1人の状況を示すデータは膨大であるうえ、別々の場所に保存されているため、教員やスタッフが分析・処理しきれないところに問題がありました。


こうした問題にも教務AIは有効です。過去の学生たちの学習データと照らし合わせ、理解するのが難しい可能性が高い教科や単元、受講しなくなったタイミングなどを見つけ出し、AIがアラートを出します。

画像:教務AI「BioLa」

現在のところ、教務AIがアラートを出した学生に対して、いつどのようにアクションを起こすかは各教員の判断に委ねられています。しかし、教務AIのアラートを生成AI が解析し、どのようなサポートが適切か提案するまでを行う機能が、今後は搭載される予定です。

教育クラウドシステム「AirCampus」がBBT大学の枠を超えて、提供を拡大。リカレント教育の主要プラットフォームへ

BBT大学は兼ねてより、生涯にわたるリカレント教育を提供するため「AirCampus」という、オンライン教育クラウドシステムを独自に開発し提供していました。

「AirCampus」とは、PC・スマートフォン・タブレット端末に対して、世界中のどこからでも講義が受けられる「オンライン空間上のキャンパス」です。主な機能であるオンデマンド講義の受講に加えて、講師やクラスメイトとのディスカッションが行えるSNSのような、双方向型のインターフェースを有しています。

大学の学生、リカレント教育の一般受講生などのユーザーのフィードバックを基に、2023年3月に大幅にリニューアルしました。メンションやリアクション、スマホ通知など、SNSで使い慣れている機能を盛り込み、より親しみやすいユーザー・インターフェースへとアップデートされました。

画像:教務AI「AirCampus」
画像:教務AI「AirCampus」

「AirCampus」は現在、BBT大学の枠を超えて、政府機関や企業内大学(コーポレート・ユニバーシティ)、企業研修等でも数多く利用されています。そのため、公的要求水準を満たすSAMLシングルサインオン認証、生体認証などを実装し、厳正な出席確認ができる仕様になっています。資格試験などにおいて、ログイン者が本人であるか否かは極めて重要だからです。

画像:教務AI「AirCampus」

文字起こし機能×翻訳機能を兼ね備えた「BioLa CC」とは

コロナ渦に入りオンラインでの授業や研修が当たり前になるなか、「多様なバックグラウンドをもつすべての人に対して、学ぶ機会を公平に提供する」という、教育格差の是正がこれまで以上に推奨されるようになりました。

BBT大学ではコロナ禍以前の2018年からユーザーの要望に応え、一部の講義映像では字幕表示が可能でした。2022年にさらにすべての講義でダイバーシティ化・ユニバーサル化を実現すべく、動画にリアルタイムで字幕を表示するAI「BioLa CC」を開発しました。講義動画の音声を自動音声認識するうえ、AI翻訳サービスDeepLで多言語字幕を生成することができます。日本語をはじめ、英語や中国語など14言語の字幕を自動作成することができるのが特徴です。

画像:教務AI「BioLa CC」

耳が不自由な方を含め、ユーザーからは「字幕の精度はまだ完璧ではない。しかし、講義を学ぶには十分である」「これまで受講できると思ってもいなかった授業が受けられて嬉しい」などのレビューが届いています。

文字起こし機能については、意外な活用のされ方が重宝され、反響がありました。社会人の学生が文字起こしをダウンロードしておき、仕事の移動中などにテキストで反芻する、という使い方です。また、一度授業で聞いて分からなかった部分を、プリントしておいて後から重点的に復習するといった声も多く聞かれます。

サービスの提供側が意図した利用方法以外にも、使う側が自分の学習スタイルに合わせて自由に活用できるところも、柔軟性の高いオンライン学習だからこそと言えます。

エドテックとオンライン大学のこれから

著者は、教育もITと同じくらい広い世界であると考えています。教育×ITと一言でいっても、効果的な学習方法をかなえる技術開発をしている企業もあれば、オンライン大学を実現しているケースもあります。

そうした背景のなか今後エドテックは目的に応じた細分化が進んでいくのではないでしょうか。たとえば資格試験対策、定期テスト対策、受験に特化するなど、これまで以上に専門性を高めていくと思います。

一方でオンライン大学の課題として、オンラインであるが故に一定の制約が生じる場面で「その制約を、どう特徴に変えられるような発想の転換ができるか?」という力をもっと身につけていかなければならないと考えています。オンラインならではの特徴を、強みとしてもっと出していけたらいいですね。

これまでの教育は、練り上げられたシステムのベースに合わせて実施されるものでした。その方法は、一定の質が担保された素晴らしいものです。一方で、決まった学習要項から離れたり、自分のペースで進められる柔軟性はありませんでした。


オンラインのよさは生徒にも、教師にも自由度を高く提供できるところにあります。
リモートワークが一般化し、働き方が多様化するなか、教育の現場ももっと柔らかく、新しいテクノロジーや、発想が生まれたらいいなと思っています。


〈プロフィール〉
編集/福永 奈津美

取材協力/原 秀文
株式会社ビジネス・ブレークスルー システム開発本部副本部長
株式会社ITプレナーズジャパンアジアパシフィック 取締役

積算システム、外資系生命保険ECサイトなどを経て現職。
ビジネス・ブレークスルー入社後は一貫して教育のDXに関わり、教育システムAirCampusの開発を主導。学習管理システム、モバイルアプリ、コンテンツ管理システム、決済システム、英会話システム等を開発。
AirCampusは2015年日本eラーニング大賞厚生労働大臣賞を受賞
Scrum.org認定 プロフェッショナルスクラムマスター II
Scrum Alliance認定 プロダクトオーナー、スクラムマスター、アジャイルリーダー