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進む「お墓参り」のテクノロジー。お墓参りの新たなかたちと変わりつつある“その意義”とは?

2023.09.11(最終更新日:2023.09.13)

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「お墓参り」と聞くと、何をイメージするでしょうか?一般的には、墓地や霊園に行ってお墓やその周りを綺麗に掃除し、お花やお水を供え、お線香を焚き、手を合わせて故人への敬いの気持ちを伝える。こういったことを思い浮かべるのではないでしょうか。

日本は古くから仏教との結び付きが強く、先祖供養が重要視されてきました。しかし、最近では若年層からミドル世代を中心に「仏教離れ」や「檀家離れ」が見られ、お墓参りのあり方にも変化が生じています。

本記事では、コロナ禍を経たお墓参りの変化や、最新のテクノロジーによる新たなスタイル(お墓テック)について取り上げ、今後のお墓参りの展望を探ります。

お墓参りの需要は増加傾向に。その背景にあるのは

お墓参りは、亡くなった方の冥福を祈るとともに感謝の気持ちを表現する行為で、その意義や重要性は、日本人の間でこれまで脈々と受け継がれてきました。

著者が2023年7月に全国に住む20~50代の男女400人を対象に行ったアンケートでは、「過去1年以内にお墓参りに行きましたか?」という質問に対して67%の方が「はい」と回答しています。また、そのうち過去1年間に2〜3回お墓参りをした人が半数近くを占めることがわかりました。

出典:株式会社スタルジー「お墓参り、檀家制度、お墓の在り方に関するアンケート結果」
出典:株式会社スタルジー「お墓参り、檀家制度、お墓の在り方に関するアンケート結果」

この結果からも分かる通り、現代でもお墓参りの需要はあることが分かります。お墓参りの重要性は、依然として多くの人々に認識されているようです。

一方で、お墓参りに積極的に行かないという人々も存在します。その理由として、「感染リスクへの懸念」や、「元々お墓参りをする習慣がない」という意見が挙げられました。そのうち、最も多く挙げられた理由は「お墓が遠い・移動手段がない」という回答でした。

確かに、郊外にあるお墓は、場合によっては何時間もかけて車を走らせ、山道を登っていかなければならないケースもあるようです。そのため、高齢者や移動手段が制限されている人々にとって、お墓参りはハードルが高くなってしまう傾向にあります。


「屋内型納骨堂」自体は以前からありますが、最近はさまざまな進化を遂げていることも選ばれている理由のようです。

都市部の「屋内型納骨堂」…人気の理由は?

「屋内型納骨堂」は、東京都などの都市部や駅周辺に多く存在し、お墓の新たな形態として広く受け入れられています。

最大の特徴は、従来の墓石でできたお墓とは異なり、室内に納骨スペースを備えていることです。
普段は収納棚に保管されている遺骨を納めた厨子(ずし)が、参拝スペースにあるパネルにICカードをかざすことで、参拝者の元まで自動的に運ばれてくる「自動搬送式」となっています。高さや奥行きの空間を有効活用することで、限られた用地内により多くの区画を設けることが可能となっています。

室内に保管されているため、従来のお墓のように清掃をしたり、草むしりをしたりといった定期的なメンテナンスが不要です。また、 アクセスの良い駅近のビルに建てられていることが多いため、天候にも左右されることなく気軽にお墓参りに行くことができます。

さらに、屋内型納骨堂は最新の技術を取り入れやすく、時代に合わせたスタイルを実現しやすいという特長もあります。例えば、愛知県名古屋市にある万松寺の納骨堂では、入館の際に顔認証システムを搭載。エントランスに設置されているモニターで顔を認証すると受付表が発行され、入館できるシステムとなっています。また、会員登録すると顔認証の際にポイントがたまり、線香やお花に交換できるといったサービスも提供されています。参拝スペースでは液晶ディスプレイ上に戒名や遺影が映し出され、そこで参拝が行われます。賽銭箱もデジタル化されており、キャッシュレスで支払いが可能です。

屋内特有の利便性に加えて、最新の技術を取り入れてさらに利便性を向上させ、快適な環境を提供できることから、屋内型納骨堂は人気を集めています。著者が行ったアンケートでは、「屋内型納骨堂を知っている」と回答した262名のうち67%にあたる175名が、「従来のお墓よりも魅力的だと思う」と回答しました。

こうした結果からも、都市部の屋内型納骨堂に対する需要は今後も高まっていくと予想されており、お墓参りのあり方や意識に変化が生まれていることを示唆していると言えます。

仮想空間上の霊園も。進む「お墓」の多様化

屋内型の自動搬送式納骨堂は、都内ではすでにお墓の新しいあり方として広く受け入れられつつあります。さらに近年では、最新技術を活用した「メタバース上のお墓」や「デジタルお墓」など、より新しいスタイルのお墓が登場し始めていることをご存じでしょうか。

コンパクトに思い出を残しておける「デジタル墓」

「デジタル墓」(写真提供:スマートシニア株式会社)

スマートシニア株式会社が提供するのは、自宅に置けるお墓(写真立て)と、インターネット上のネット墓地(ネット墓)を組み合わせた「デジタル墓」です。

大切な人との想い出は、時間が経つにつれて記憶が薄れていったり、色褪せてしまったりします。デジタル墓では、小さなQRコードの付いた墓標をスマホで読み取ることで、故人との想い出の写真やメッセージ、動画などを見ることができます。自宅に置けるコンパクトなお墓として納めることができるのです。

通常、お墓を継承する際には、管理をする手間や費用がかかります。子や孫に負担をかけたくないという人もいるでしょう。デジタル墓であれば負担なくお墓を継承することができます。また、自然災害などの影響を受けることもありません。

墓石を残しておくこともできる「NFT墓」

「NFT墓」(写真提供:スマートシニア株式会社)

それでも物理的なお墓を残しておきたいという需要もあるでしょう。同社は2023年5月31日に「NFT墓」というサービスをリリースしました。このサービスでは、仮想空間上の永代供養墓と物理的な納骨の併用が可能です。二つの世界を繋ぐためにお墓にQRコードを追加します。NFT墓には、墓誌(故人の事績などを墓石に書き記したもの)にメッセージ・写真・動画などを追加することができます。これまで継承してきたお墓をいきなり手放すことに抵抗がある人にも、今後物理的なお墓を手放す「お墓じまい」を選択肢の一つに入れられるようにするため、また「自然墓」(散骨・樹木葬)の継承手段としても最適です。

テレビモニター型サイネージシステムを利用した映像サービス

墓地開発大手の株式会社ニチリョクは、屋内型の墓の横に設置するデジタルサイネージに、家系図や故人の思い出となる映像などを表示する「家系樹」というサービスを提供しています。このサービスでは、家系図や思い出の写真・ビデオの表示、指定した開封日にメッセージが表示されるタイムメッセージ、お参り履歴などがお墓の横に映し出されます。東京都港区にある納骨堂「威徳寺赤坂一ツ木陵苑」では、このデジタルサイネージがすでに搭載されています。

日々変わり続ける「お墓参り」 選択肢が増える中、どう選ぶべきか

少子高齢化問題を抱え、家族や親族との血縁のつながりが薄れつつある日本において、今後求められるものは何か……。伝統や慣習を重んじることを重視するのか、それとも時代の流れに沿った新しい方法を取り入れるのか、意思決定は個人個人の自由に委ねられています。

お墓参りの需要は残り、テクノロジーが進化し続ける現代社会において、「お墓参り」や「お墓」の選択肢は今後も増え続けるのではないでしょうか。選択の幅が広がっている今だからこそ、「供養×IT」という、一件交わることが難しい分野における最適解を探り続けることが求められます。

[プロフィール]
飯塚祐世
株式会社スタルジー代表取締役。新卒でベンチャーの WEB 制作会社にエンジニアとして就職。3 年後に介護・医療系のメガベンチャーである株式会社エス・エム・エス(東証プライム上場)に転職し、エンジニア兼マーケターとして従事。その後起業をし、WEB システム開発や WEB マーケティングを主な事業としている。