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すでに多岐に渡る医療AIの導入。人間の仕事をどこまで担うようになる?

この記事は1年以上前に書かれたものです。現在は状況が異なる可能性がありますのでご注意ください。

2023.03.16(最終更新日:2023.03.28)

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医療の分野で活用されているAIを「医療AI」と言い、取り入れることで医療の質の向上が期待されています。その導入は多岐にわたり、すでに幅広く利用されています。医療AIが実際に活用されている導入事例、またメリットなどから、医療AIの今後の未来について考えます。

医療におけるAI導入は多岐に渡る

最初に、「AI」とは「Artificial Intelligence」の略で、日本語では「人工知能」と訳されています。コンピュータを使って人間の知能を再現する技術で、高い精度でデータを分析できます。また、学習を進めていくことでよりミスを減らしつつ、短時間で膨大なデータを処理することができるようになります。

近年のAIの技術発展は目覚ましいものがあり、医療現場でも広く利用されるようになりました。現在では診断や病状の分析、日常生活の支援など多くの分野でAIの導入が進んでおり、AI導入の中でも特に注目されている分野です。

医療におけるAI導入では、診断、治療、医薬品開発、介護、ゲノム医療など、利用できる範囲は多岐にわたります。すでに様々な医療現場で活用されている医療AI。まず初めに現状ではどのように活用されているのかみていきましょう。

画像診断、ゲノム解析など

医療現場において最も多くAIが活用されているのが、画像診断です。レントゲンやMRIの画像からAIによって異常部分を検知することで、異常の見逃し防止や早期発見に効果を発揮しています。

カルテに記載された内容や問診結果など、様々なデータを分析する際にAIを活用することで、精密な診断が可能となりました。そのため臨床診断の段階でも、素早く正確に病気を特定したり、見逃しがちなわずかな異常の発見につながったりし、診断ミスの防止に役立っています。

医療の現場では、人手不足や重労働といった問題が深刻です。そのため実際に、医療機器にAIを組み込む取り組みが積極的に行われており、医療スタッフの業務の軽減や効率化にも一役買っています。

遺伝子情報を解析することを「ゲノム解析」といいます。ゲノムには膨大な量の情報が含まれますが、これをAIが解析することで疾病の診断を的確に行えるようになりました。

このように、医療AIの診断力は年々向上し、現在ではその精度は人間の医師と同等か、それ以上であるとされています。

一方で、現在のように医療AIが進化してもできないことはあります。それは、イレギュラーなことに対応したり、人と柔軟なコミュニケーションをとることです。AIには人間の心がないため、患者の心に寄り添うことができません。

また、どんなに医療AIが進化したとしても、最終的な判断を任せることはできず、人間が管理して責任を持つことになります。機械であるAIにどこまで責任のある仕事を任せることができるのか、そのあたりについては議論を続けていく必要があります。

業務の効率化・質の向上が期待。懸念点は──

医療AIの導入が進んだことで、以下でご紹介するように、良い点も悪い点も様々な面が指摘されるようになりました。

1)効率化

人手不足が続く医療現場では、AIを導入することにより医療スタッフの負担が軽減されることが期待されています。人間は疲れてくるとどうしても作業効率が落ちてしまいますが、AIはそのようなリスクとは無縁です。

治療の現場だけでなく、医療事務においても作業の軽減に役立つので、医療機関全体の業務効率化が期待できるでしょう。

2)医療の質の向上

AIを導入することで、時間をかけずに精度の高い診断が期待できます。医師とAIでダブルチェックを行うことで、重大な症状を見逃す危険を減らすことができるでしょう。診断結果や過去のデータを詳細に分析することも容易となり、最適な治療法を見つけることに役立ちます。

すでに多くの医療機関では医療AIの導入は進んでおり、医療の精度の向上、効率化、コストの削減に貢献しているといえるでしょう。



医療の質の向上や効率化に大きなメリットをもたらす医療AIですが、欠点がないわけではありません。

1)責任の所在が不明確になる

もし医療ミスが起きてしまった場合、責任の所在が不明確になってしまうリスクがあります。AIは膨大なデータから診断を導き出しますが、その基準が明確にできないという場合も起こるかもしれません。

2)データの管理

多くのデータを扱う以上、その管理方法が問題となります。例えば、紙のカルテと比べて電子データは盗まれても気がつきにくいでしょう。データをどのように守るのか、これまで以上に管理をしっかりする必要があります。

3)バグや不具合

AIも機械である以上、バグや誤作動が起こる可能性はゼロではありません。AIによって複雑化したことで、単純な機器よりも不具合を発見しづらくなる可能性もあります。

医療AIの正確性やリスクは?

医療の現場でも大きな期待が寄せられるAIですが、不安視する声が少なからず存在します。最も不安視されるのが「正確性の課題」と「誤診が起きたときのリスク」です。

AIはより多くのデータを学習することでより正確性を増し、正しい判断ができるようになります。そのため大量のデータが必要となり、逆にデータが少ない症例に対しては正確性に課題が残ります。

またAIといえどもちろん完璧ではないので、ミスは起こります。AIによって誤診が起きたらどうするのか、もし起きた場合はその責任の所在はどうなるのかといった不安はぬぐえません。その他、医療スタッフがAIに依存しすぎてしまうあまり、成長を妨げてしまうというリスクも考えられます。

そのため、医療現場ではAIに頼り切るのではなく、医療スタッフとAIが適切に連携し、補完し合いながら医療業務に対応していく工夫が重要となるでしょう。

AIに看護師や薬剤師の仕事が取られる日は来るのか?

医療現場におけるAIの導入は進んでおり、すでにAIは必要不可欠になっているといえます。今後も医療現場における人手不足は進むでしょうし、医療の効率化と正確性の向上のため、医療AIを導入する流れはますます加速していくことでしょう。

そうなると心配されるのが「AIに看護師や薬剤師の仕事が奪われてしまうのではないか」ということです。確かに、人間が行なっている業務のいくつかは、いずれAIが担うことが可能になるだろうと予想されています。

ただ、それでも看護師や薬剤師の仕事が“完全に”AIにとって代わられてしまうことはないでしょう。もちろん「絶対」ということはありえませんが、そう考えられる理由があります。

まずAIは「コミュニケーション」ができないからです。学習を重ねることにより、AIもある程度の対話能力を身につけることができますが、人間の気持ちを本当に理解したうえでのコミュニケーションをとることは、現状ではできません。

患者の気持ちに寄り添い、きめ細かい配慮をし、適切なコミュニケーションを行うことによりできる医療、それは生身の人間だからこそできることだと考えられます。


次に、目覚ましい進化をとげるAIも、まだまだ完璧ではないからです。機械であるがゆえの不具合やデータ不足からなる不具合も考えられますし、仮に重大なトラブルに発展した場合の責任の所在といった課題もあります。

医療現場におけるAIは、今の段階では医療スタッフにとってかわるというものではないですが、AIが医療スタッフをフォローし、人間とAIがお互いに連携することでより素晴らしい医療の発展を目指していく、そのような未来が予想されています。

[プロフィール]

飯塚祐世
株式会社スタルジー代表取締役。新卒でベンチャーの WEB 制作会社にエンジニアとして就職。3 年後に介護・医療系のメガベンチャーである株式会社エス・エム・エス(東証プライム上場)に転職し、エンジニア兼マーケターとして従事。その後起業をし、WEB システム開発や WEB マーケティングを主な事業としている。