オンライン診療の料金は?保険適用の対象となる症状や疾患を解説
オンライン診療は、対面診療と同様に「保険診療」と「自費診療」の2つに分けられます。
保険診療ではオンライン診療独自の算定基準により保険適用の症状や疾患が限られるため、注意が必要です。
オンライン診療で保険診療が適用される症状・疾患
オンライン診療が適用される症状・疾患には、結核・悪性新生物といった特定疾患や15歳未満の患者による再生不良性貧血、生活習慣病である脂質異常症が挙げられます。そのほかにも、オンライン診療を受けられる症状・疾患は多数ありますが、対面診療に比べると限られています。
そのためオンライン診療を希望する場合は、自分の症状・疾患が診察対象に該当するかを医療機関に確認するようにしましょう。
対面診療と同じく「保険診療」「自費診療」で費用は異なる
「保険診療」とは、サラリーマンなどの被用者を対象とした被用者保険制度や後期高齢者医療制度、自営業を営む方を対象とした国民健康保険といった公的医療保険が適用される診療のことを指します。
オンライン診療ではケガや病気による症状・疾患が診療対象となる場合、診療時に発生する下記の費用に保険が適用されます。
初診料/再診料/外来診療料(情報通信機器を用いた場合)
医学管理料
オンラインシステム利用料
処方された医薬品の購入費用
一方「自費診療」は自由診療とも呼ばれ、医療保険が適用されない診療のことです。
例えば、AGAの診療などオンライン診療が可能であっても保険の適用外となるケースもあります。
ただし対面診療と同様に、保険診療の場合は患者が治療費を原則3割(未就学児や高齢者は1〜2割)負担し、自費診療では全額自己負担することは変わらないので注意しましょう。
オンライン診療で必要となる諸費用
保険適用の有無に関わらず、オンライン診療にはさまざまな費用が発生します。
受診する医療機関によって項目や金額は異なりますが、主な費用には以下のものが挙げられます。
初診料/再診料/外来診療料(情報通信機器を用いた場合)
医師などによる診療や治療のために支払う費用で、医療費控除の対象となります。
2022年4月の診療報酬改定により、従来の「オンライン診療料」が廃止。「情報通信機器を用いた場合」について評価が新設され、初診料や再診料、外来診療料に再編されています。
医学管理料
医師などが行った医学管理や指導に対して算定される費用。2022年度の改定で、特定疾患療養管理料などの医学管理等について「情報通信機器を用いた場合」の評価が見直されました。現在、オンライン診療では対面診療の診療報酬点数の約87%で算定されます。
オンラインシステム利用料
診療アプリにおけるオンラインシステム整備や、個人情報保護のためのシステム管理などに関わる料金です。診療や治療を受けるために必要な費用であるため、医療費控除の対象になります。
処方された医薬品の購入費用
処方された医薬品が、治療や療養に必要な医薬品である場合は、医療費控除の対象となります。
処方箋や医薬品の配送料
医薬品の配送料は、治療や療養に必要な購入費用に該当しないため、医療費控除の対象にはなりません。
初診でオンライン診療を利用する際の注意点
新型コロナウイルス感染症の流行による特例措置だったオンライン診療の初診ですが、2022年1月に通常時でも実施できるよう指針が改定され、4月から恒久的な制度として始まっています。
私たちが患者としてオンライン診療を利用する際、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
ここでは、オンライン診療を利用する際の注意点について解説します。
オンライン診療での初診は「かかりつけの医師」が原則
厚生労働省が改定した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、初診は「かかりつけの医師」が行うことが原則となっています。
「かかりつけの医師」とは、「日頃から直接の対面診療を重ねている、患者と直接的な関係がすでに存在する医師」のことです。
最後の診療から時間が経っていたり、定期的な受診が行われていなかったりしても、直接的な関係があれば「かかりつけの医師」となります。
「診療前相談」の実施でかかりつけの医師以外のオンライン診療が可能に
かかりつけの医師がオンライン診療に対応できない場合や、かかりつけの医師がいない場合には、「診療前相談」を行ったうえでオンライン診療での初診が可能となります。
診療前相談とは、かかりつけ医師以外の医師が、患者とリアルタイムでやり取りを行い、医師が患者の症状や医学的情報を確認する行為のことです。
診療前相談によって適切な情報が把握でき、医師・患者ともにオンライン診療が可能と判断して合意した場合にのみ、オンライン診療での初診が受けられるようになります。
事前にメールやチャットで患者の情報を収集していたとしても、映像でのリアルタイムのやり取りは必要です。
オンライン診療の初診に適さない場合は、対面診療を実施
オンライン診療での初診について、一般社団法人日本医学会連合が2021年6月に「オンライン診療の初診に適さない症状」「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」といったガイドラインを設けています。
これらを踏まえて医師によりオンライン診療が適していないと判断された場合には、対面診療を実施することになります。
また、オンライン診療での初診時には、医師が今後の診療計画を立てて患者に説明し、症状の悪化があった場合に、どこの医療機関で対面診療を行うかについて、患者の合意を得ておくことが求められます。
オンライン診療の初診料が改定!今後普及の見通しは?
利用者にとって便利なオンライン診療ですが、取り入れている医療機関は少ないという問題があります。その問題背景として、対面診療との診療報酬の価格差が挙げられます。
対面診療と比較した診療報酬の低さがマイナス要因となっていた
オンライン診療に対応する医療機関の数は、2020年4月の新型コロナウイルス感染症に対応した特例により一時的に増えたものの、その後は横ばいが続いています。
そのなかで初診から対応している医療機関の割合も約6%のままで推移しており、増加の兆しは見えていませんでした。
この理由の一つとして考えられるのが、対面診療と比較した診療報酬の低さです。
17の国と地域を対象に行った調査(出典1)によると、オンライン診療の報酬が対面診療よりも安い国は日本と中国の一部だけで、そのほかの15ヶ国と地域では対面診療と同等、もしくはそれ以上の報酬が得られていました。
医療機関ではオンライン診療のための設備投資やオペレーション、事務の手間が増えるにも関わらず、対面診療よりも医療報酬点数が低いのが日本の現状です。これにより、医療機関は導入の決断ができずにいることが予想されます。
診療報酬の改定により縮まる、対面診療とオンライン診療の費用差
オンライン診療報酬が低いことや初診の恒久化に合わせた措置として、2022年4月にオンライン診療の診療報酬が一部改定されました。
コロナ特例による初診料は2,140円だったのに対し、2,510円へ引き上げられました。対面診療の初診料は2,880円であるため、約9割弱まで近づいたことになります。
同額まで引き上げられなかった理由として、「対面でしかできない医療行為がある」「オンライン診療は対面診療の補完的なもの」といった意見を持つ医師に配慮したという点が挙げられます。対面診療と同額まで引き上げられておりませんが、診療報酬の上昇に伴いオンライン診療の普及が期待されるでしょう。
オンライン診療は費用面での変革期、本格的な普及への期待が高まる
今回は、オンライン診療と対面診療との料金の違いや初診対応のルールについて解説しました。
オンライン診療における初診の恒久化や診療報酬の見直しによって、対面診療との差を軽減し、医療機関での導入を後押しする環境が整い始めています。
東京都医師会がシンポジウムで発表した資料によると、一般の方を対象に行われたアンケートで、オンライン診療を「対面診療と同じ費用なら利用したい」と答えた方が41.5%と最も多く、「対面診療より高くても500円程度なら利用したい」が26.4%と2番目に多い結果となりました。
これにより自宅で診察を受けることができ、通院や診察の待ち時間がなくなるオンライン診療のメリットが理解されていると言えます。
患者が一番のメリットと考える「自宅で受けられる診察」は、国がメリットと考える「医療機関が少ない離島などの遠隔地でも受けられる診察」にもつながり、今後さらに認知が進めば、普及促進への強い推進力となります。
医療機関のシステムづくりをサポートし、患者には診療アプリを提供するなど、オンライン診療サービスをビジネスとする事業者も次々と登場しています。
オンライン診療がより普及することで、誰もが医師とのコミュニケーションが取りやすくなり、健康の維持にも役立っていくでしょう。
オンライン診療についての詳細は、下記関連記事をご覧下さい。