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写真提供:GO株式会社

「すぐに乗れる」を実現する「タクシー配車アプリ」──AIの活用で高まる利便性とタクシー業界に与える影響

2023.08.15(最終更新日:2023.08.15)

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写真提供:GO株式会社

「タクシー配車アプリ」は、少子高齢化や担い手不足が進む日本において、ラストワンマイルの移動を効率化させる手段として期待されており、手を挙げて空車のタクシーを探す手間を省いたり、キャッシュレス対応を促進させるなど、利用者に便利さとスムーズな移動体験を提供しています。

近年ではAIを活用した配車サービスの登場により、タクシー配車アプリの利便性が高まり、今後さらに普及していくことが予想されます。本記事では、タクシー配車アプリの現状やAIによるタクシー配送がタクシー業界全体の未来に与える影響について紹介していきます。 

「タクシー配車アプリ」の国内シェアNo.1は「GO」

正確な現在地が分からなくても、スマホの位置情報を活用してタクシーを呼ぶことができる「タクシー配車アプリ」。あらかじめ決済方法を登録しておけば、タクシー降車時に支払いをする必要がないなど、さまざまな便利な機能が搭載されており、首都圏や都市部を中心に利用者が増えています。

タクシー配車アプリが世界的に普及し始めたのは、2010年にアメリカで配車サービスを開始した「Uber」がきっかけでした。日本では2011年にJapan Taxi社が開発したタクシーアプリを皮切りに、2014年には「Uber」が日本に上陸、さらに2018年には中国企業とソフトバンクの合弁会社が「DiDi」を開発するなど、さまざまなタクシー配車アプリのサービスが展開されてきました。現在、タクシー配車アプリの利用者数は、2020年に「JapanTaxi」アプリと「MOV」が統合して誕生した「GO」が一番多く、2位が「DiDi」、3位が「Uber」となっています。

タクシー配車アプリのAI活用も進んでおり、「GO」と「S.RIDE」ではAIによる予約サービスが提供されています。「DiDi」でも、AIを使った高度な分析と予測テクノロジーを活用し、タクシーに乗りたい人と乗せたい人をスムーズにマッチングするシステムを実現しています。

AIを活用したタクシー配車アプリの仕組み

ここからは、代表的なAI活用アプリの「GO」と「DiDi」について解説します。まず「GO」についてです。タクシーアプリ「GO」は、配車機能の特徴として高度な「配車ロジック」があります。タクシー車両1台1台のリアルタイムの位置情報をベースに、AIを活用したアルゴリズムでアプリユーザーと近くのタクシー車両をマッチングさせています。

また、2020年9月にアプリがリリースされてから2ヶ月後、新たな機能として「AI予約」機能(当時「希望日時配車」機能として開始)をリリースしました。「AI予約」機能とは、利用者の希望した日時に合わせてタクシーを手配できる機能です。時間帯に限らず、予約した日時にタクシーが自動で配車されるため、機能のリリース後2週間ほどで約10,000件の利用実績を達成しました。これまでのタクシーの配車予約では、タクシー利用者がどこまで・いつまで乗車するか事前に把握することは難しく、予約を受ける際には車両と乗務員の待機時間を余分に見積もる必要があり、注文があっても実際には配車できないといったケースが多くありました。「GO」の「AI予約」では、AIが指定時間前後に手配できる車両の数を予測し、注文を受ける仕組みを実現させ、従来の10倍以上の注文件数が受けられるようになっています。

例えば、同じ「8時台」という時間帯でも、「8時ちょうど」と「8時半付近」では供給量が異なるなど、細かい状況の違いもAIの技術で把握することができます。AIによって予測される供給量に応じて注文を受けることで、希望の時間に合わせた配車を実現しました。

「DiDi」は、細かな業務にも一切人の手を介さず、100%AIによって配車を完了させているのが強みです。また、日本だけでなく海外を含めた1000都市以上で利用されているのも特徴です。アプリから配車の希望があれば、AIが一番早く配車できる車両を瞬時に把握してマッチングします。平均5分という素早いマッチングは、AIの高度な分析・予測機能を活用しており、稼働率の向上を実現しています。

タクシー配車アプリの利用方法は簡単

タクシー配車アプリの利用方法は非常にシンプルです。「GO」は北海道から九州まで、計44都道府県で利用可能となっています。「AI予約」機能は、一部のエリアではまだ利用できませんが、利用可能エリアは着々と拡大しています。

「GO」を利用するには、まず会員登録を行い、表示される地図上で乗車位置と降車位置を指定します。そして「タクシーを呼ぶ」ボタンを押せば、配車依頼は完了です。配車の段階で支払い方法を指定でき、「アプリ内決済」を選んでおけば降車時に支払いをする必要はありません。アプリ内決済では、各種クレジットカードとd払い(両方とも「GO Pay」に登録が必要)で支払い可能です。

左:乗車位置と降車位置を指定するアプリ画面。右:「タクシーを呼ぶ」ボタンのアプリ画面(写真提供:GO株式会社)

「AI予約」の使い方も基本的な操作方法は同じです。アプリ下部の「AI予約」タブをタップし、乗車位置と降車位置、希望日時を設定すれば完了です。日時は最短15分後から7日後まで指定可能で、指定した日時の5~10分前に配車された車両がアプリ上で通知されます。

「DiDi」は対応エリアを拡大中で、現在、日本では東京や埼玉などの首都圏や愛知、大阪などを含む15都道府県で利用可能です。

配車依頼は、アプリに表示される地図上から簡単に行えます。目的地を入力し、支払い方法と出発日時を指定します。すぐに来てほしいか、そうでない場合には、30分後から2日間までの期間で日時指定をすることも可能です。最後に乗車地点を入力すれば、配車依頼は完了します。支払い方法はタクシー降車時に支払う方法と、アプリ内決済でクレジットカードやデビットカード、PayPayによって支払う方法があります。

タクシー業界が抱えている問題をテクノロジーで解決できるか?

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会が2022年6月に提出した国への要望書によると、コロナ禍の影響でタクシー業界の売上は約4割減少したと報告されています。緊急事態宣言による自粛で街から人々が減り、タクシー会社や乗務員の収入は大幅に減少、多くの乗務員が離職に追い込まれました。

アフターコロナ時代に突入した現在、タクシー業界の最大の課題は「乗務員不足」です。

乗務員不足が起こっている要因としては、歩合制という乗務員一人一人がどれだけ稼げたかに応じて給料が変動するというタクシー独自の給与体系に大きく起因しています。コロナ禍により人々の移動が減少し、タクシー業界の売上が下がった結果、給与に直接影響を受けた乗務員たちが離職してしまったという背景があります。現在、離職した乗務員が戻る兆しは見られず、全国的に乗務員数がコロナ前に比べて2割減となっており、供給不足が深刻な問題となっています。

一方でタクシー配車アプリの利用者は年々増加傾向にあります。キャッシュレス決済や待ち時間の短縮など、利便性を高めるタクシー配車アプリは、今後もタクシー業界のDX化を促進していくでしょう。

そして、AIの活用による配車は、乗客の利便性だけでなく乗務員側にもメリットをもたらします。効率的な配車システムにより、客待ち時間を減らすと同時に無駄な移動を減らすことができるため、より効率的に収入を得ることができます。

高齢化が進む中、ラストワンマイルを担う唯一の公共交通であるタクシーは、買い物や通院の移動手段のひとつとしても重要な存在です。タクシー配車アプリは地域社会のニーズに合致し、ますます普及していくでしょう。オーダーメイドの移動が可能な唯一の公共交通として、人々の移動がより快適になっていくことが期待されます。


文=長谷川寧々 (情報提供=GO株式会社)