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アメリカ発の想像以上にすごいAI「ChatGPT」が、世界のIT技術を推進中! 中国や日本に与える影響

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2023.04.05(最終更新日:2023.04.05)

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アメリカ発のAIチャットサービス「ChatGPT」が世界中で急速に注目を集めています。その影響は、アメリカに次ぐ「AI大国」である中国、そして日本にも及んでいます。今後、中国でChatGPTに対抗するようなサービスが生まれ発展していくのか、AIの分野で中国に後れを取ってきた日本がこの分野でビジネスチャンスを獲得していけるのか、ジャーナリスト・高口康太氏が解説します。

これまでとは比べものにならない、自然な会話が可能に

AIチャットサービス「ChatGPT」が世界的に注目を集めています。

ChatGPTとは米AI(人工知能)スタートアップ「オープンAI」が開発しているチャットサービス。人間相手に会話するように文章で質問をすると、自然で説得力のある回答が返ってきます。

コンピューターと対話するチャットサービスはこれまでにもありましたが、ChatGPTは一見すると人間と区別がつかないほどに自然な文章が出力されるほか、専門的な難題に正確な回答を返す、複雑な文章を簡潔に要約するといった仕事まで華麗にこなします。

もちろん、すべてが完璧ではなくでたらめな回答も多いのですが、そうした問題以上に過去のAIのぎこちなさとはまるで違う、自然な対話が可能な点に度肝を抜かれた人が多いようです。

2022年11月に公開されると、その驚異的な能力が話題となり、わずか5日間で100万人もの登録ユーザーを集めました。

これまで主要ウェブサービスが立ち上げから100万ユーザー獲得までに要した期間としては、ソーシャルネットワーキングサービスのフェイスブックが10カ月、音楽配信サービスのスポティファイが5カ月でした。ここからもChatGPTのバズりっぷりがうかがえます。

その後も利用者数は伸び続け、2023年1月時点でMAU(月間アクティブユーザー、月に1回以上利用したユーザーの総数)は1億2,000万人を突破したとみられます。

この勢いはさらに加速しそうです。オープンAIに出資している米マイクロソフトが、ChatGPTを改善した機能を検索サービス「Bing」に組み込み、チャット型検索サービスの提供を開始しました。検索の王者グーグルも類似のチャット型検索サービスをまもなくリリースすることを2023年2月に発表するなど、熱気は高まるばかりです。

もはや人間との区別は不可能。「ChatGPTショック」に踊る中国

全世界的にChatGPTブームが広がっていますが、その中でももっとも熱狂している国は中国でしょう。流行り物、とりわけビジネスにつながりそうなネタは大好物という企業が多い国でもあります。

ChatGPTはユーザー登録ができる国・地域を制限しています。中国はまだ対象ではありませんが、今すぐ使ってみたいという人であふれかえっています。

そこで海外在住の華人華僑による登録代行やアカウント転売という商売が登場したほか、中国版LINEとも呼ばれる大手メッセージアプリの「ウィーチャット」からChatGPTが使える有料サービスなどが次々と誕生しているのです。購入したアカウントが使えなかったなどのトラブルも多発し、ネットモールはChatGPT関連業者の出店を削除する騒ぎに発展しています。

また、早くもChatGPTによるフェイクニュース事件も起きています。浙江省杭州市では渋滞解消のための規制(ナンバープレートの下一桁の数字ごとに走行禁止日が設けられている)がありますが、メッセージアプリやソーシャルメディアで3月1日より全面解禁されるとの噂が広がりました。

中国メディア・浙江在線の2月17日付記事によると、この噂のソースは、ある住民がChatGPTに書かせたフェイクニュースでした。政府発表っぽい文体も書けるかを試そうとしただけだったのが、あまりにも本物っぽい文体だったので真に受けた人が拡散してしまったのだそうです。

これらは一般市民の動きですが、中国IT企業の過熱ぶりはさらに強烈です。中国検索大手バイドゥ(百度)は、ChatGPTに類似した機能を開発中で、3月にはテストを終えて公開すると発表しました。

他にもEC大手アリババグループ(阿里巴巴)、ゲーム・メッセージアプリ大手テンセント(騰訊)、EC大手JDドットコム(京東集団)、セキュリティ大手チーフー360(奇虎360)など、名だたる大手IT企業は、「 かねてより ChatGPTの基礎技術である大規模言語モデルの研究を続けている」との声明を発表、まもなくデモ版を発表するとした企業まであります。

中国語ではビジネストレンドのことを「風口」と呼びますが、なにがしかの風口が見つかればそこに数多の企業が殺到するのが中国流です。このChatGPTという風口は近年まれに見る巨大な盛り上がりを示しているのです。

中国に肩を並べる米国

今後、中国版ChatGPTが続々と登場することは確実です。中国にはそれを可能とする蓄積があります。

ChatGPTは「GPT-3.5」と呼ばれる大規模言語モデル(LLM)を基盤としていますが、中国もこの分野に手を付けていなかったわけではありません。バイドゥの「アーニー(文心一言)」、通信設備端末大手ファーウェイの「盤古」、北京智源人工知能研究院の「悟道2.0」などの大規模言語モデルが構築されています。

また、AI研究全体で見れば、中国は世界をリードする存在です。スタンフォード大学人間中心AI研究所(HAI)の報告書「2022 AI Index Report」によると、AI関連の論文数では中国が全体の31.04%とトップ。EU・英国の19.05%、米国の13.67%を引き離しています。

出所:2022 AI Index Report

中国は米国に肩を並べるAI大国としての地位を確立しているわけです。しかし、その中国の内部から「ChatGPTには差を見せつけられた」との声が上がっています。

清華大学コンピューター科学技術学部の黄民烈副教授は、デジタル化とAIに関する中国語専門メディアの「数智前線」の取材に応じ、「オープンAIの長所はユーザーのフィードバックをもとにAIを改良し、その改良されたAIをもとにさらにユーザーを集めるという歯車が機能している」ことだと指摘しました。オープンAIが開発したAIを活用して新たなサービスを作り出すベンチャー企業がいくつも誕生しており、いわゆる「エコシステム」が形成されつつあるわけです。

一方、中国の大規模言語モデルは派手な発表こそあるものの、社会実装では後れを取っています。バイドゥをはじめ、自社開発のAIを外部提供している企業は多いものの、顔認証や画像分析、動作解析など一部にとどまっているのが現実です。研究による新たな発見や進展は多いのですが、利益を生み出しているのはこうした顔認証などの過去の発見にとどまっています。

ChatGPTのようなヒットを生み出すには、現時点ではコストに見合うだけの利益があげられない分野でも投資と研究開発を続けられるかが問われます。中国は現実にフォーカスし実利を追求する傾向が強いがゆえに、長期的成果を待つ忍耐心では劣るともいわれています。

実際、AIがなかなか利益につながらないことから2022年にはベンチャーマネーの投資額が急減しています。

出所:中国調査企業IT桔子の報告書をもとに筆者作成。

日本にチャンス、加速するAIエコシステム

このように中国ベンチャー投資界隈ではAIに対する幻滅が広がっていたのですが、ChatGPTという風口の登場によって2023年には再び熱気が戻ってきているようです。しかも前述したような大手IT企業によるChatGPTに対抗しうるサービスの開発だけではなく、ChatGPTを活用した派生サービスも新たな風口になりそうです。

企業のマニュアルやゲームのシナリオなどの文書作成、法務や財務など専門知識の情報収集、エクセルなどのオフィスツールのヘルプサービスなどの機能が、利用者の教育コストが低い対話型インターフェイスを通じて提供できるようになります。

オープンAIなどのAIの開発元が直接、個別企業やニッチなニーズに対応したプロダクトを開発することはなく、ベンチャー企業を含めたサードパーティーによる二次開発が加速すると予想されています。

そこで問題となりそうなのが政治問題です。一党独裁の政治体制である中国では、体制批判や指導者批判の発信は厳しく取り締まられます。AIが生成した文章が取り締まり対象に該当するというリスクは、AIの積極的な採用の足を引っ張りかねません。

すでにこの危惧が現実化した例もあります。中国AI企業・元語智能は2月3日にチャットボットサービス「Chatyuan」を公開しましたが、わずか3日で公開中止となりました。台湾メディア「TAIWAN NEWS」は、「Chatyuan」が「ウクライナ問題はロシアによる侵略」など、中国政府と異なる立場のテキストを発信したことが問題になった可能性があると指摘しています。

その意味では、民主主義の国で言論の自由度が高い日本のほうがAIを許容しやすい環境にあると言えます。二次開発がビジネスチャンスとなるのは日本企業も同じです。情報キュレーションアプリ「グノシー」は、オープンAIのプロダクトを利用して、動画コンテンツの要約記事を作成するサービスを発表しています。今後も同様の動きが続くとみられます。

そして、オープンAIが開発中の新たな大規模言語モデル「GPT-4」は年内にも公開される見通しです。さらに能力が強化されたAIとの対話、協業が日本でも広まりつつあり、新たなビジネスチャンスとなりそうです。

[プロフィール]

高口 康太
ジャーナリスト、千葉大学客員准教授。2008年北京五輪直前の「沸騰中国経済」にあてられ、中国経済にのめりこみ、企業、社会、在日中国人社会を中心に取材、執筆を仕事に。クローズアップ現代」「日曜討論」などテレビ出演多数。主な著書に『幸福な監視国家・中国』(NHK出版、梶谷懐氏との共著)、『プロトタイプシティ 深圳と世界的イノベーション』(KADOKAWA、高須正和氏との共編)で大平正芳記念賞特別賞を受賞。