当社サイトでは、サイト機能の有効化やパフォーマンス測定、ソーシャルメディア機能のご提供、関連性の高いコンテンツ表示といった目的でCookieを使用しています。クリックして先に進むと、当社のCookieの使用を許可したことになります。Cookieを無効にする方法を含め、当社のCookieの使用については、こちらをお読みください。

世界にはばたく未来のユニコーン企業を応援!英国・米国が牽引する海外「株式型クラウドファンディング」

この記事は1年以上前に書かれたものです。現在は状況が異なる可能性がありますのでご注意ください。

2023.04.04(最終更新日:2023.04.04)

読了時間目安 13

シェアする

日本の先を行く海外の株式型クラウドファンディング

個人が約10万円から非上場のスタートアップ企業に投資できる仕組み「株式投資型クラウドファンディング」(以下、株式型CF)。このコラムでは、日本の先を行く海外の株式型CF事情について紹介します。

特に市場が活況な英国・米国では、株式型CFによる資金調達を行ったスタートアップ企業が後に上場や買収に至り、個人投資家が大きなリターンを得る事例が続いています。

また、投資したスタートアップ企業の成長過程を一緒に楽しみ、盛り上げるといった経験が得られることから、起業家と株主で作る「コミュニティ」の価値が、海外の株式型CFでは広く認識されています。

株式型CFは、国ごとに少しずつ仕組みが異なります。とはいえ、金銭的リターンと、いわゆる精神的リターン(応援投資)といった、ほかの投資とは異なる2軸の面白さは、海外同様、国内市場でもさらに注目されていくはずです。

2020年の世界市場規模は1,976億円!英国・米国が勢いを牽引

2020年の株式型CFにおける世界各国の市場規模(中国除く)は、合計1,130億円にのぼりました(出所:『The Cambridge Center for Alternative Finance (CCAF)、'The 2nd Global Alternative Finance Market Benchmarking Report』)。

なかでも英国・米国ではすでに、株式型CFが、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家と並んでメジャーな資金調達手段となっています。2020年の英国の株式型CFによる年間調達額は800億円規模、2021年の米国の調達額は600億円規模で、多くの個人投資家が非上場企業の投資に参加していることがわかります。

日本の2022年の調達額は約25億円で、制度開始以来の累計調達額は2022年に100億円を突破したところです。その規模は海外に比べて小さいですが、調達額は増加傾向にあります。

プラットフォームごとに見る株式型クラウドファンディング

では、英国・米国ではどのようなプラットフォームがあるのでしょうか。それぞれの主要なプラットフォームを紹介します。

英国

Crowdcube

英国の株式型CFプラットフォーム最大手とされています。2021年の取引額は約29.7億円にのぼります。取り扱いジャンルも幅広く、利用するスタートアップ企業が資金調達後にユニコーン企業(※1)に成長したり、IPO(株式を公開し投資家に向けて株式を売り出すこと)や、M&A(企業・事業の合併や買収)を続々と成功させています。米国のプラットフォームSeedInvestと業務提携をしています。

(※1)ユニコーン企業とは次の4条件「創業10年以内」「評価額10億ドル以上」「未上場」「テクノロジー企業」を満たす企業。

Seedrs

2021年の取引額は約19.2億円にのぼります。米国のRepublicに買収されましたが、Seedrsとして運営を続行しています。

米国

Wefunder

米国でのシェアNo.1とされ、2022年は、延べ140,386人の投資家から約224億円を集めました。企業のユーザーを巻き込みながら資金を集められるという側面から、株式型CFを「コミュニティラウンド」と提唱しており、専用サイト「communityround.com」で、株式型CFを通じた資金調達とコミュニティづくりに成功した企業を紹介しています。

StartEngine

投資家へのスタートアップ株式の売買ニーズに対応した「セカンダリー」向けプラットフォームも同時に展開しています。2022年に、同じく米国の株式型CFプラットフォームSeedInvestを買収しました。

Republic

Wefunder、StartEngineの2社と比べシェアは小さいですが、米国での株式型CFによる調達上限額6.5億円に達する大型の案件を成功させる例が多いです。2022年に、英国の株式型CFプラットフォームSeedrsを買収しました。


上記の他、近年では海外展開を視野に入れたプラットフォーム同士の提携や買収などが進んでおり、国をまたいだ株式型CFの展開も期待されています。

IPO、M&Aで投資家にリターンが実現。ユニコーンに成長する企業も

次に、株式型CFによる資金調達後、大きく成長したスタートアップ企業を紹介します。

英国

BrewDog

英国を代表するクラフトビールブランドです。2010年に英国の株式型CFプラットフォーム最大手とされるCrowdcubeで最初の調達に成功して以降、継続的に株式型CFを活用しています。株式型CFを実施する狙いは、熱狂的なファンを集め、世界中にBrewDogの仲間をつくることです。2017年にユニコーン企業の仲間入りを果たしました。

Mindful Chef

健康食ミールキットのスタートアップ企業です。2017年にCrowdcubeを通して個人投資家638人から約3億円を調達しました。2020年に食品世界最大手ネスレによるM&A(買収)によって、投資家は350%のリターンを得ることになりました。

Revolut

2015年の設立後、わずか3年でユニコーン企業となったデジタル銀行サービスです。創業2〜3年目のタイミングで、2度株式型CFでの資金調達を実施しました。2021年には、ソフトバンクグループ傘下のファンドなどから大型の調達を実現し、この時点で1度目の株式型CF利用時から660倍の時価総額となりました。

米国

Heliogen

マイクロソフトのビル・ゲイツが支援することで知られる再生可能エネルギースタートアップ企業です。2017年に英国のプラットフォームSeedInvestを通じて約2億円を調達しました。調達前評価額は約26億円でしたが、2021年に2,600億円の評価額で上場しました。米国で初めて、個人投資家が支援したユニコーン企業のイグジット事例となりました。

これらは一例ですが、英国・米国では多くのスタートアップ企業が株式型CFでの資金調達後にユニコーン企業に成長したり、IPOやM&Aを果たしたりしています。イグジットによる値上がり益で、個人投資家も多くのリターンを得る事例が見られます。

VCと株式型クラウドファンディングの連携事例にも注目

また、海外ではスタートアップ企業が資金調達する際に、ベンチャーキャピタル(以下、VC)と併せて株式型CFを利用する事例が目立ちます。

例えば、米国のスタートアップ企業向け銀行を運営するMercury Technologiesは、2021年に約156億円の調達を実施しました。この調達額には、大手VCのAndreessen Horowitzをはじめとする有名VCによる出資金額のほか、株式型CFを通じた個人からの約6.5億円が含まれています。

一般的に事業フェーズが進んだスタートアップ企業ほど、1回につき調達する金額が大きくなる傾向にあります。

VCと同時に株式型CFを行うことで、企業側は自社サービスの潜在ユーザー層などを巻き込むことができ、個人投資家側はVCからまとまった金額が投入されるようなスタートアップ企業に関わる機会を得られます。

VCと株式型CFの併用が進むことで、個人投資家にとって自分が応援したいと思える企業に出会える機会を増やすことに繋がっています。

株主のコミュニティが若い企業の成長を支える

株式型CFならではの魅力は、投資先の企業を「応援したい」気持ちを大事にする個人投資家が多いことです。その特徴から、海外ではユーザーやファンを株主として迎え、コミュニティを形成するという目的で用いられることが増えています。

先述した通り、米国のプラットフォームWefunderは株式型CFを「コミュニティラウンド」と提唱しています。このことから、スタートアップ企業が資金調達をするのに、個人投資家のコミュニティが非常に重要な役割を担っていることが分かります。

例えば、大手VCの資金調達と併せて、株式型CFによる調達を実施したMercury Technologies。創業者であるImmad Akhund氏は、株式型CFを活用した理由を、「創業時から支えてくれたユーザーを巻き込み、還元する仕組みを作るためだ」と述べています。

実際に同社は2,453名の個人投資家を株主として迎えましたが、その約75%がユーザーとなりました。

英国クラフトビールブランドのBrewdogは、2010年に最初の株式型CFによる調達を実施して以降、「パンク株」と称して複数回の調達を実施しました。世界20万人以上の株主数を誇ります。同社は、「パンクの精神」を一つのコンセプトとし、ファンや株主をパンクスという愛称で呼んでいます。

また、新商品の開発やバーの新規出店などに株主の意見を反映させるなど、株主を巻き込んだ事業開発をしている点もBrewdogの特徴です。

まとめ

このように、海外では株式型CFによって繋がった個人投資家を、単なる株主として捉えるのではなく、一緒に歩んでいく仲間として迎える考えが広がっています。昨今「ファンマーケティング」「コミュニティマーケティング」という言葉が注目されていますが、多くの企業が株式型CFを通じ、ユーザーコミュニティの形成を強化していることが伺えます。

また、近年は日本でも、若者によるオンライン投資が拡大傾向にあります。調査によると、若年層のオンライン証券口座の新規開設数は2020年に80万件でしたが、2021年には130万件以上に増加しており、わずか1年で63%も増加しています。(出所:季刊 個人金融 2021秋「新型コロナ禍の下での若年層のオンライン投資の拡大」)

新型コロナウイルスが感染拡大し、ステイホーム期間を経験したことで、消費支出の減少から貯蓄が増え、家のソファでスマホ片手に始めるという若者が増えたことが要因です。「投資」という実用に加えて、「応援」という体験の付加価値をもつ株式型CFは、お金の使いみちについて「消費行動によって得られるもの」だけでなく、「消費行動そのもの」を楽しむことを重視する若年層にもおすすめです。

※金額はそれぞれ、1ドル=130円、1ユーロ=140円、1ポンド=150円で計算

[プロフィール]

イークラウド株式会社
株式投資型クラウドファンディングのプラットフォーム「イークラウド」を運営。これまで限定的だったベンチャー投資に関する情報と機会を一般投資家へ提供し、起業家へは銀行・VCなどとは異なる新たな資金調達の手段を提供する。イークラウドを通じた平均調達額、調達成功率はともに業界No.1。(2023年1月時点、イークラウド調べ。)
https://ecrowd.co.jp/

波多江 直彦
2006年にサイバーエージェントへ入社し、広告代理部門、スマホメディア、オークション事業立ち上げ、子会社役員等を経て、サイバーエージェント・ベンチャーズで投資事業に従事。その後XTech Venturesにてパートナーとして、VR・SaaS・モビリティ・HRTech・シェアリングエコノミー・サブスクリプションサービスなどへの投資実行を担当。ベンチャー投資の世界をプロだけでなく、個人投資家にも開かれたものにすべく、2018年7月にイークラウド株式会社を創業。慶應義塾大学法学部卒。