そもそも不動産テックとは?
不動産テックとは「不動産×テクノロジー」の略で、テクノロジーの力によって不動産業界の課題解決や革新的なサービスの創出、業務効率化などを目指すものです。近年、「金融×テクノロジー」の「フィンテック」や「女性×テクノロジー」の「フェムテック」など、産業とテクノロジーを結び付けて新しい価値を生み出そうとするX-Tech(クロステック)が話題ですが、不動産テックもその一つです。
不動産テックについての詳細は、下記関連記事をご覧ください。
不動産テックとは?メリットやサービスの種類を徹底解説
不動産テックの活用種類
不動産テックには、利用者向けのサービスと不動産会社向けのサービスがあります。利用者向けのサービスの一例としては、物件情報サイトや自宅の売却査定、オフィスや貸別荘のマッチング、オンラインローン審査などがあり、不動産取引の利便性向上に役立っています。一方、不動産会社向けのサービスには、物件管理や顧客管理、電子契約などのシステムがあり、主に業務の効率化に寄与しています。
不動産テックのサービス種類
不動産テック企業とそのサービスの多彩さは、一般社団法人不動産テック協会が作成している「不動産テック カオスマップ」を見るとよくわかります。この業界地図は同協会が年に一度のリサーチにより独自の視点で取りまとめたもので、先進的なビジネスやサービスが記載されています。ただし、すべての不動産テック企業やサービスが網羅されているわけではないことには注意が必要です。
最新は2022年8月8日に公開された第8版で、430のビジネス・サービスが掲載されています。2021年7月に公開された第7版では全12カテゴリーだったところ、より細分化されてカテゴリー数が15に増えました。直近1年の傾向としては、「クラウドファンディング」のカテゴリーで企業の入れ替わりが目立ちました。
不動産テック注目企業11選とその活用事例
日本国内で注目の不動産テック企業11社、および各社が展開している主なサービスを、上記の「不動産テック カオスマップ」の分類に沿ったカテゴリー別で紹介します。
ローン・保証
不動産取得に関するローン、保証サービスの提供、仲介、比較をしているサービスです。
iYell(イエール)株式会社
iYell株式会社は2016年創業、住宅ローン関連のプラットフォームを提供する不動産テックのベンチャー企業です。代表的なサービスには、エンドユーザー向けのオンライン住宅ローン比較サービス「いえーる 住宅ローンの窓口 ONLINE」や不動産会社向けの住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」などがあります。
「いえーる ダンドリ」は、住宅ローンの業務代行において提携金融機関数・住宅事業者契約数・利用金額が第1位(※2021年5月時点・2021年度結果 株式会社東京商工リサーチ調べ)になっており、公式サイトには工務店や不動産仲介業者などへの導入事例も多数掲載されています。
iYell(イエール)株式会社
業務支援
カオスマップでは「集客」「顧客対応」「契約・決済」「管理・アフター」「設計・施工」に細別されています。不動産売買・賃貸の仲介業務支援、不動産管理会社等のPM(Property Management/不動産の管理・運用)業務の効率化のためのサービスやツールです。
WealthPark(ウェルスパーク)株式会社
WealthPark株式会社は、不動産管理会社向けのサービスを展開する企業で、10カ国以上から集まったメンバーで構成される多様性に富んだ組織が特徴です。事業の主軸の一つ、不動産オーナー向けの資産管理ツール「WealthParkビジネス」はスマホやWebからの簡単な収支確認を実現し、不動産管理会社向け業務支援ソフトウェアおよび不動産オーナー向けアプリとしてシェアNo.1(※2021年6月 株式会社日本マーケティングリサーチ機構調べ)となっています。
WealthPark株式会社
株式会社いい生活
株式会社いい生活は、2000年創業の不動産テック企業で、不動産管理会社向けに業務効率化・管理支援ツールを提供しています。不動産ビジネスに不可欠な情報掲載・賃貸借契約・売買契約・家賃管理など様々な機能を備えた「ES いい物件One」シリーズは、賃貸管理、賃貸仲介、売買仲介各社の導入事例も豊富です。
株式会社いい生活
物件情報・メディア
物件情報を集約して掲載するサービスやプラットフォーム、もしくは不動産に関連するメディア全般です。
株式会社estie(エスティ)
2018年に創業した不動産テックのスタートアップです。
利用者向けにはネットで簡単にオフィス探しができる業界最大級のサービス「estie」、事業者向けにはオフィス賃貸業務に必要な物件情報や空室情報、募集賃料といった多くの情報がそろうデータベースおよびアナリティクスツール「estie pro」を提供しています。サービスの独自性などが評価され、株式会社みずほ銀行が有望なイノベーション企業を表彰する「Mizuho Innovation Award 2021.4Q」を受賞しました。
株式会社estie
株式会社GA technologies(ジーエーテクノロジーズ)
株式会社GA technologies は、2013年に創業し、5年で東京証券取引所グロース市場(旧マザーズ市場)に上場、8社のM&Aを実施するなど急成長している不動産テック企業です。
2022年には、日経ビジネスとドイツの調査会社Statistaが共同で実施した「日本急成長企業2022(売上高を伸ばした100社ランキング)」の23位にもランクインしました。主力事業は、売買・賃貸・投資の問い合わせから契約までをオンラインで完結できる不動産取引マーケットプレイス「RENOSY(リノシー)」です。
株式会社GA technologies
イタンジ株式会社
イタンジ株式会社は2012年に設立された日本の不動産テックの先駆け企業で、2018年10月にM&Aで株式会社GA technologiesの完全子会社になりました。2019年にはスマートロック等を活用した画期的なセルフ内見型賃貸サイト「OHEYAGO(オヘヤゴー)」をリリースしています。
展開するサービスの数が多いのが特徴で、カオスマップで「業務支援」に分類されるサービスも多数展開しています。物件検索・内見・入居申込・契約・更新・退去手続きまでを一気通貫でサポートするサービス群「ITANDI BB +(イタンジビービー プラス)」には、内見予約Web受付システム「内見予約くん」や不動産関連電子契約システム「電子契約くん」などのシリーズがあり、公式サイトには導入事例のインタビューも多数掲載されています。
イタンジ株式会社
価格可視化・査定
様々なデータ等を用いて、不動産価格、賃料の査定、その将来見通しなどを行うサービスやツールです。
株式会社すむたす
株式会社すむたすは、2018年に設立された不動産テックのスタートアップ企業で、20億円超の資金調達を実現しながら事業を拡大しています。主力サービスであるAIを活用したオンライン売却サービス「すむたす売却」は、最短1時間で買取価格を提示し、最短2日で売買契約と現金入金までが完了するため、売りたい人がすぐ売却できるのが特徴です。このようにAIを活用して物件をすぐに査定・購入し、その後転売するビジネスモデルは「iBuyer」と呼ばれ、すでにアメリカでは広く浸透しています。
株式会社すむたす
SRE(エスアールイー)ホールディングス株式会社
2014年にソニー不動産株式会社として設立され、2019年にSREホールディングスに社名変更および東証マザーズへ上場し、2020年12月には東証一部(現プライム市場)への上場を果たすなど、スピード感をもって成長しているソニーグループの企業です。不動産テック事業とAIクラウド&コンサルティング事業を手がけており、不動産売却と査定ができるサイト「SRE不動産」を運営。売却専門のエージェントが付くのが特徴です。カオスマップには記載はありませんが、「価格可視化・査定」に分類できるサービスです。
SREホールディングス株式会社
VR・AR
VR・ARの機器を活用したサービス、VR・AR化するためのデータ加工に関連したサービスです。
ナーブ株式会社
2015年に創業し、2016年よりVR技術を活用したプラットフォームを提供している企業です。
不動産・建設業界向けには、不動産仲介店舗でVRキットを用いて物件を内見できる「VR内見®」や、自宅にVRキットを送付することで利用者が自宅で内見できる「おうちでVR内見(TM)」などのサービスを提供しています。
ナーブ株式会社
リフォーム・リノベーション
リフォーム・リノベーションの企画・設計・施工、Webプラットフォーム上でリフォーム業者のマッチングを提供するサービスです。
株式会社ツクルバ
株式会社ツクルバは、デザイン・ビジネス・テクノロジーをかけあわせた「場の発明」を通じて欲しい未来をつくることをミッションに掲げている企業です。2011年8月に設立され、2019年に東証マザーズ(現東証グロース)市場へ上場。主力事業の中古・リノベーション住宅の仲介サイト「cowcamo(カウカモ)」は、2022年4月末で利用者数が年間240万人以上に上っています。
株式会社ツクルバ
スペースシェアリング
短期〜中長期で不動産や空きスペースをシェアするサービス、もしくはそのマッチングを行うサービスです。
株式会社スペースマーケット
株式会社スペースマーケットは、スペースシェアリングプラットフォーム「スペースマーケット」を運営する不動産テック企業です。2014年に創業し、2019年に東証マザーズ(現グロース市場)に上場しました。スペースマーケットは、住宅、古民家、会議室、撮影スタジオ、映画館、廃校などあらゆるスペースを貸し借りできるプラットフォームで、掲載件数は2万1,000件を超え、国内最大規模を誇ります。
株式会社スペースマーケット
不動産テック企業のサービスを便利に活用しよう
記事で紹介したように、不動産テックは不動産会社向けのサービスだけでなく、エンドユーザーが利用できるサービスも数多くあります。利用シーンに適したサービスがあれば一度利用してみると、不動産テックの利便性や先進性を実感できるかもしれません。
今後も不動産テック市場は拡大していくことが見込まれています。サービスの多様化に伴い、エンドユーザーが便利に使えるサービスもますます増えていきそうです。