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変わる「推し活」…NFTアートグッズで“推し”がもっと身近に

2023.05.16(最終更新日:2023.05.16)

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アイドルグッズがNFTアート様式で発売されるケースが増加しています。公式グッズであることを証明可能なNFTは「売り上げに貢献することで、アイドルを支えたい」「非公式グッズを購入することで、アイドルに迷惑をかけたくない」と考えるファンに訴えることができ、今後ますます発展していきそうです。本記事ではいくつかの事例を紹介しながら、デジタルグッズならではのメリットや魅力、そして可能性をリサーチしていきます。

推し活の証…時代と共に変わるアイドルグッズ

「〇〇のファンです」から「〇〇が推しです」という言い回しに変化する中で生まれた「推し活」という言葉。推しを応援するため、お金や時間を割く活動全般を指します。

近年の傾向として挙げられるのは、推しの対象がアイドルや俳優、スポーツ選手などの実在人物にとどまらず、アニメや漫画のキャラクター、そして鉄道や動物などにまで広がっていること。「追っかけ」文化と「オタク」文化が心理的に歩み寄った結果、境界は限りなく曖昧になりました。いつの時代にもマニアックな人が存在する一方、ほどほどなスタンスを保つ人も気軽に「推し」や「推し活」という言い回しを使うようになりました。

推し活には必ず消費行動が含まれるもの。ライブやスポーツ試合のチケット購入は「推しに会う」ための基本的な消費となります。また日時や会場にとらわれず、より手軽に「推しを感じる」にはグッズ購入が最適。熱心なファンは入手したグッズを身に着ける、SNSで紹介するなどの方法で推しの魅力を伝えてくれます。

時代を超え量産されてきた王道グッズには、推しの作品(CD、DVDや写真集など)、ポスターやブロマイドなどの写真、そしてTシャツなどの装身具が挙げられます。うちわやマグカップといった生活雑貨も不変の人気。憧憬の対象となるアイコンのプリントさえできれば、商品化の可能性は無限大であることが示されてきました。

一方で、公式グッズのラインナップに大きな変化は生まれていません。ネット上に氾濫する画像やテキストはコピーが容易であるため、肖像権保護の観点からも、グッズのデジタル化には慎重だったと考えられます。そんな中、NFTアートを活用した画期的なアイドルグッズが登場しました。

そもそもNFTとは?

NFTとは「代替不可能なデジタルデータ」を指します。NFTデータには個別の識別子や発行日時、そして取引情報がすべて記録されています。簡単に言うと「証明書が付いたデータ」なので替えは効かず、現行の所有者が明白なのです。

NFTは暗号資産などと同じく「トークン」のひとつとして電子取引売買が可能となっています。先述の通り証明書付きデータであり、転売などが行われる際にも取引内容がすべてブロックチェーンに記帳されていくので偽造はほぼ不可能。過去にはNFTデータの形式を採ったグラフィックアートが75億円の高額で取引された実例もあります。実体を伴うことはありませんが、デバイス上でいつでも確認可能なデータとして、NFTはグッズの価値を充分に有しているのです。

「推し」が活用するNFTグッズ展開の事例

推し活の対象たちは実際に、どのようなNFTグッズ展開を見せているのでしょうか? いくつかの事例を見ていくことにしましょう。

Perfume

テクノアイドルユニットとして絶大な支持を受けるPerfumeは、そのイメージにぴたりと合致するNFTアートを2021年に発表しました。Perfumeのライブ演出やテクニカルサポートを提供するライゾマティックスとのコラボ作品となっており、パフォーマンス中に見せた3人の象徴的なポーズが3Dデータ化され、NFTアートに昇華されています。合計8つの作品はライゾマティックスの提供するプラットフォーム上でオークション販売され、数百万円の価格で落札されたそうです。

ももいろクローバーZ

息の長い活動を続ける4人組アイドルグループは、活動10周年を記念し、2021年に「ももクロメモリアルNFTトレーディングカード」を発表しました。こちらはアート作品でなくアイドルグッズの体裁で、価格は1パック10枚入り1万800円。また2022年には第2弾を同価格帯で発売しています。そちらは所有するだけでなく、SNS限定でアイコン設定も可能なデータとなっており、ファンの好評を博しました。

フロムアイドル

こちらは松竹株式会社の2次元企画で、男女2組各3名ずつのアイドルキャラクターへ手紙を書くと「あなただけに心を込めた直筆の返事が届く」という世界初の「文通もできる総合アイドルプロジェクト」です。2023年のバレンタイン時期には、彼らのグッズを松竹の公式サイトから3,500円以上購入した人に向け、購入証明となる「バレンタインチョコレートNFT」が付与されました。NFTがアートやグッズそのものでなく、特典として活用された事例です。

スポーツ業界

NFTはアイドルだけでなく、スポーツの推し活サポートにも活用され始めました。最近最も多く見られるのは「観戦証明NFT」の配布。野球、サッカー、プロレスなどさまざまなジャンルで同様の試みが開始されており、各チームや団体が運営するアプリと会場のチェックイン機能を連動させることでNFTを入手できます。その多くはチケット連動型や無料配布ですが、発行上限が定められており、デザイン希望にも対応しないケースが多いようです。

NFTが推し活の透明性を高める?

推し活の中で重要な位置を占めるグッズ群は、アイドルやアニメキャラクターなどにとって、重要な収入源。特にCDが売れなくなった昨今、音楽活動に重点を置くプレイヤーたちの資金は、ライブチケットやグッズの売れ行きで大きく変動します。しかしそれらの二次販売で多額の利益を得る人は跡を絶ちません。ネットオークション上では売り切れチケットから限定グッズまでが高値で取引されていますが、プレイヤーに差額の利益が還元されることはないのです。

代替不可能なデジタルデータであるNFTは、ブロックチェーン上での二次取引が可能。しかし「二次販売された場合、オリジネイターに販売価格の〇%が還元される」という条件を、あらかじめデータへ書き込むことが可能となっています。明朗な経路を持つブロックチェーン上での二次取得であれば、ロイヤリティの高いファンも後ろめたさを感じずに済むのです。

あの大物がプロデュース!NFTがアイドルの活躍領域を拡大

ここまでの内容を一読し、NFTがアイドルグッズとして活用される中で、新たな市民権を得ていく可能性が高いと感じた人も多いでしょう。さらに日本で現在、斬新なプロジェクトが進行中なのをご存じでしょうか? その名は「IDOL3.0 PROJECT」。何やら「Web3.0」と親和性の高そうな名称ですが、リアルとバーチャルを行き来する新アイドルグループ発足のプロジェクトです。2023年秋の活動開始が予定されています。

具体的な内容としては、ライブや握手会などのリアル活動と、メタバース上などのバーチャル活動の両軸展開が掲げられています。活動領域の世界的拡大、ファンとの相互コミュニケーション活性化がその目標なのだとか。そして総合プロデューサーには、秋元康氏が任命されています。

またプロジェクト開始に伴い、NIDT(Nippon Idol Token)なる新たな暗号資産の発行準備も進められているというのだから驚きを隠せません。活動が軌道に乗った暁には推し活に欠かせない暗号資産となりますから、早々に金融庁のホワイトリスト※入りする可能性も。

※改正資金決済法に従って金融庁の登録を受けた暗号資産交換業者(国内取引所)で取り扱っている暗号資産のこと

2020年代の中盤に向け、時代の先端を走り始めたアイドル業界からますます目を離せなくなりそうです。




ライター/西本不律
東京都出身。雑誌編集部、編集プロダクション、IT企業クリエイティヴを経たのち、フリーランスライターとして活動中。