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医療ICTとは?メリットや問題点、将来性について解説

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2022.05.11(最終更新日:2022.09.15)

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近年、さまざまな分野で普及が進んでいるICT(情報通信技術)は、医療分野においても例外なく広がりを見せています。
ICTを医療に活用することで、情報連携や情報提供の効率化はもちろん、ビッグデータの蓄積による分析の高度化など、さまざまな効果や可能性が期待されています。
そこでこの記事では、医療ICTのメリットや問題点、将来への展望について紹介します。

医療ICTとは

医療ICTとは、医療分野における情報通信技術を活用したコミュニケーションのことを指し、スマート医療と呼ばれることもあります。
ICTは「Information and Communications Technology」の略称で、単なるIT(情報技術)というだけでなく、その情報を伝達・通信する技術を活用することで、人やものがつながる情報連携ネットワークを構築することを大きな目的としています。
医療ICTの具体例としては、電子カルテや電子処方せんなどが挙げられます。
また、遠隔地でも医師による診療を受けることができるオンライン診療も、医療ICTの一つです。
これらを活用することで、患者の情報を医療従事者間や外部の医療機関などと正確かつ迅速に共有できるようになり、医療の質を高めることにつながります。

医療のICT化はなぜ必要?

医療業界は元々人手不足に悩まされており、医療従事者の負担が大きいことが問題視されていました。
そのうえ、少子高齢化によって人手不足が加速し、医療ニーズや介護負担の増加などによって、医療業界はICTの導入を進めなければならない状態に置かれています。などによって、医療業界はICTの導入を進めなければならない状態に置かれています。
医療業界のICT化が進むことによって、サービスや技術の向上、そして医療従事者一人ひとりの負担軽減が期待でき、その結果生産性向上につながっていくでしょう。

医療のICTのメリットは?

医療分野においてICT化が進むと、具体的にどのようなメリットがあり、どんな問題を解決することができるのでしょうか。
ここからは、医療ICTのメリットを解説していきます。

スマートヘルスケアによる適切で高度な医療の提供

スマートヘルスケアとは、日々のバイタルデータ(体温、心拍数、心電などの生体情報を記録したもの)をスマートフォン、スマートウォッチなどのウェアラブル端末で測定し、目に見える形で健康状態を把握・管理する取り組みのことです。
スマートヘルスケアに医療ICTを取り入れ、バイタルデータに既往歴や治療内容、投薬情報などを加えて情報を一元化することで、一人ひとりに合った医療を効率的に提供できるというメリットがあります。
ほかにも、患者情報を複数の医療機関で共有・確認できることで、過剰な薬物治療や検査の実施を防ぐことや、自治体が住民に対して効果的な健康指導や介護予防施策を実施することも可能です。

医療技術や質の向上

医療ICTでは、国民一人ひとりの健康や医療に関する情報を経年的に収集、蓄積することで、ビックデータを活用した病気の解明や治療法の解決など、医療技術や質の向上も期待されています。
全国の医療機関から大量の臨床情報を収集することで、症例数が少なく治療方法が確立されていない病気についても、新たな診断技術や治療方法を見つけることができる可能性が高まるというメリットがあるのです。
さらには、医療ICTを活用してオンライン診療や遠隔画像診断、病理診断などを行うことで、医師不足が深刻な僻地や離島における医療の質の向上にもつながります。

医療現場の効率化

日本の医療現場は、新型コロナウイルスの影響を受ける前から、深刻な人手不足に悩まされています。
そのため、医療ICTの導入は日本の医療現場における人手不足の解消、医療従事者の働き方改革にも寄与することが期待されています。
例えば、これまで医師や看護師の手間や負担となっていた煩雑な事務作業や、院内スタッフとの連携業務、外部の医療機関との連携業務なども、医療ICTによるネットワークの構築が実現することで効率化できます。
電子カルテの普及促進によって患者情報を整理するための時間が短縮し、スタッフや医療機関がそれぞれ電子化された患者情報を閲覧・共有できるようになれば、医療従事者にかかる負担も軽減されるでしょう。

健康寿命の延伸

医療ICTの普及促進が目指すゴールの一つに、健康寿命の延伸があります。
健康寿命とは、集団の健康状態を表す健康指標の一つであり、日常生活に制限がある状態のことを「不健康」と定義し「健康な期間」のみの平均値を算出するというものです。
厚生労働省の「厚生労働白書」では、日本における平均寿命はここ30年余りの間におよそ5歳伸び、2040年までにさらに2歳伸びると想定されています。
しかし、平均寿命が伸びたとしても、健康な状態で長生きをしなければ、本人が病気やけがで辛い思いをするだけではなく、介護をする家族にも負担がかかることになります。また、医療費や介護費といった負担も課題となってくるでしょう。
医療ICTによって一人ひとりの健康を増進することは、健康な状態で自立した生活を送る高齢者を増やすことにもつながります。
一人ひとりが健康な毎日を過ごすことは、医療費や介護費の給付を抑えられるという副次的な効果もあり、医療費の適正化という面でもメリットがあります。

医療ICTにおける現状は?

ここからは、日本における医療ICTの現状として、すでに普及が始まっている技術やサービスについて紹介します。

電子カルテ

日本の医療機関における電子カルテの普及率は、年々増加している状況です。
導入開始直後の2002年の電子カルテ普及率は一般病院全体で1.3%と低い数値を示していましたが、2011年は21.9%、2014年は34.2%、2017年には46.7%まで上昇しました。
また、病床数400以上の大規模病院ではより整備が進み、2002年の2.9%から、2011年は57.3%、2014年は77.5%、2017年の電子カルテ普及率は85.4%にまで達しています。

オンライン診療

医療ICTによって、オンライン診療の普及が加速しています。これまでオンライン診療は、対面診療の補完として、離島や僻地の患者などに対し限定的に行われることが想定されてきました。
しかし、医療ICTの進歩によってオンライン診療に対する現場の要請が高まったことで、厚生労働省は2018年に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を発表し、オンライン診療科やオンライン医学管理科などを創設しています。
また、2022年時点では新型コロナウイルスの流行により、時限的・特例的な取り扱いとしてオンライン診療が実施可能となっていることも影響しています。

電子版お薬手帳

お薬手帳は自らの健康管理に役立つだけではなく、医師・薬剤師が確認することで、服用・使用する薬による相互作用や副作用を判断し、必要な対処ができるというメリットがあります。そのため、多くの患者はお薬手帳に薬の服用歴を記載して持参し、医療機関を受診します。
電子版お薬手帳は従来のお薬手帳とは異なり、携帯電話やスマートフォンで管理・確認できます。受診時や来院時に持参し忘れるのを防げるだけでなく、長期にわたる服用歴の管理ができることから、普及を促進しています。
しかし、実際に電子版お薬手帳を所持している患者の数は約11%とまだまだ低く、電子版お薬手帳に対応している薬局は現在全体の約半数となっているのも現状です。

オンライン資格確認

厚生労働省は医療ICTの普及を促進するための制度として、2021年10月20日からオンライン資格確認の運用を開始しました。
この制度は、医療機関や薬局の窓口にオンライン資格確認などのシステムを導入することで、患者の直近の資格情報(医療保険や自己負担限度額など)がオンライン上で確認できるというものです。
これにより、期限切れの保険証で受診したことによる過誤請求を防ぐことができるほか、医療機関では手入力による手間などの事務コストの削減が期待できます。
マイナンバーカードを利用した本人確認によって、医療機関や薬局における特定健診などの情報や薬剤情報を閲覧できるようになるため、より良い医療サービスの提供が期待されています。

医療ICTの現状や課題についての詳細は、下記関連記事をご覧下さい。
医療ICTの現状や課題を知って、今後について考えよう

医療ICTは今後どうなる?将来への展望について

日本政府は厚生労働省や総務省を中心に、医療業界におけるICT化を推進していく方針を打ち出しています。
医療ICTの大きな目的は、私たちが住み慣れた地域で安心して質の高い医療サービスを受けることで、国民一人ひとりの健康寿命を伸ばし、高齢者も社会の担い手として活躍できる将来を目指すというものです。
地域の病院や診療所、薬局、介護施設などが患者情報を共有して連携を図るものとして、医療情報連携ネットワークがあります。導入事例としては、長崎県の「あじさいネット」や長野県の「信州メディカルネットワーク」などがあり、地域医療の質の向上への期待が高まっています。

医療ICTの具体的な活用事例についての詳細は、下記関連記事をご覧下さい。
医療ICTの活用事例を見てみよう!電子カルテやオンライン診療の普及で目指す社会とは?

医療ICTの必要性を理解して積極的に導入しよう

今回は、医療ICTのメリットや問題点、将来への展望について紹介しました。
誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現のためには、医療ICTの普及促進が必要不可欠と言えるでしょう。
ぜひこの機会に医療ICTの必要性を理解し、普段の生活でもオンライン診療や電子版お薬手帳、ウェアラブル端末などを利用してみてはいかがでしょうか。