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働く人の心に寄り添い、より良い組織に。オンラインカウンセリング「プラットトークス」

2024.09.27(最終更新日:2024.10.02)

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厚生労働省の調査(*)によると、精神疾患を抱えている人の数は、過去15年間で年々増加しているという。コロナ禍によるライフスタイルの急激な変化や、働き方の変容なども、そうした実態に大きな影響を及ぼしている。また、日本のみならず世界的に見ても、メンタルヘルスの重要性に注目が集まっています。
そうした状況を踏まえ、「健康経営」の観点から、従業員のメンタルヘルスケアに取り組む企業が増えているという。
今回紹介するのは、そんな課題や悩みを抱える企業向けの心理カウンセリングサービス「プラットトークス」。

この「プラットトークス」は企業が福利厚生としてサービスを導入することで、従業員は無料でオンラインの心理カウンセリングを受けることができる。また、運営元が労働や組織人事のプロである社会保険労務士法人であることで、相談傾向から見えてくる組織課題にまでアプローチできるのも大きな特徴だ。

サービス立ち上げへの思いや今後の展開について、「プラットトークス」を運営する社会保険労務士法人プラットワークス代表の芳賀満さんにお話を伺った。

*
厚生労働省「メンタルヘルスに関する国際調査2021」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18041.html

厚生労働省「令和5年度・過労死等の労災補償状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40975.html

匿名で自宅から受けられる、オンラインカウンセリングサービス

――まず、「働く自由をすべての人に」をビジョンに掲げる社会保険労務士法人プラットワークスでは、どんな事業をやっていらっしゃるのでしょうか?

一般的な社会保険労務士の仕事というと、企業の給与計算や社会保険の手続きといったイメージがあると思いますが、私たちのメイン業務は組織・人事のコンサルティングを中心に、人事制度の立案やヴィジョン構築、女性・子育て世代が働きやすい環境づくり、海外進出やIPOの支援、補助金・助成金などの資金調達支援などを行っています。

――そのなかで、運営するオンラインカウンセリングサービス「プラットトークス」について教えてください。

「プラットトークス」は企業で働く従業員の方向けの心理カウンセリングサービスです。

このサービスを企業の福利厚生として導入していただくと、その企業の従業員は、弊法人が独自に開発したアプリを通じて、プロのカウンセラーに無料で相談ができます。プロフィールや得意な相談領域から相性の良さそうなカウンセラーを選択して、自宅など安心できる場所から匿名でカウンセリングを受けられるのが特徴です。

――名前を伏せたままで、好きな場所で受けられるなら気楽でいいですね。カウンセラーさんは、どんな方々ですか?

現在、約25名ほどのカウンセラーが在籍していますが、臨床心理士および公認心理師の資格を持ち、10年以上の心理職もしくは企業勤務経験のある方に限って採用しています。カウンセリングを受ける方に与える安心感が違ってくるので、アプリには実名・写真・経歴を合わせて表示しています。相談者の方には、それを見て、自由にご選択いただける仕組みです。しかし、仕事にはそれぞれ特徴や環境の差があります。たとえば、顧客からの要求を直接受ける機会が多かったり、成果が見えづらかったりする仕事は、特にストレスがかかりやすいと聞きます。そのためどんな方にも対応できるよう、カウンセラーには事前に業種・職種の特性について研修を受けてもらい、企業情報も共有するようにしています。

コロナ禍のボランティア活動から始まった

――「プラットトークス」はもともと事業ではなく、ボランタリーな活動から始まったと伺いました。立ち上げの経験を教えてください。

2020年4月のコロナ禍に、私を含めた有志のメンバー4名を中心に活動を始めました。当時テレビでは連日、未知のウイルスと戦う医療従事者の姿が映し出されていました。そのような時に知り合った心理士さんとのご縁から、医療従事者のストレスケアをしたいという思いを持っていることを知りました。
私自身はこれまでにシステム構築の経験もあったので一緒に困っている方々の力になりたいと思い、本来の業務を1〜2か月ほどストップさせてアプリ開発に取り組むことにしました。並行して協力いただける心理カウンセラーを募り、全部で30名ほどがプロジェクトに共感をしてボランティアで参加していただきました。


――当時はどのような仕組みでサービスを提供していたのでしょうか?

医療従事者限定で無料でスマートフォンから時間や場所を問わず相談できるアプリを提供していました。SNSでの告知を行い、現場の看護師や介護士を中心に、全国の医療従事者の方々にご利用いただきました。

――その後、現在の福利厚生サービスという形で事業化に至った経緯を教えてください。

もともとこの活動を事業化することは全く考えておらず、スタートから約半年間は無償でサービスを提供していましたが、そのまま継続することがかなり難しくなっていきました。
そのような中、活動を始めるきっかけとなった医療法人に、外部のメンタルヘルス相談窓口として継続的にご利用いただけることが決まり、急遽事業化に向けて動き出したんです。そうして2020年末に、「就業者に対する予防的なメンタルケア」を目的としたカウンセリングサービスとして、再スタートを切りました。

問題の見える化から組織改善まで。社会保険労務士ならではのサポートを

――福利厚生でオンラインカウンセリングを受けられるのは、従業員にとっても心強いだろうなと感じます。実際には、どんな相談が多いのでしょうか?

カウンセリングを進めていくと、最初の相談内容とは別の内容が根本的な問題だったという場合もあるので、カテゴリに分けるのが難しいのですが、職場の人間関係の悩みが多いです。最近は、若い世代の方からのパワハラやセクハラに関する相談も増えています。子育てやパートナーとの関係にまつわる悩みも多いです 。相談いただく方の8〜9割は女性ですが、男性の割合も増えてきています。

――利用者層が限定的であると聞くと、やはりまだ日本においてカウンセリングへの抵抗が大きいのかもしれませんね。

そうですね。日本で男性の自殺率が高いというのも、女性に比べて日々の悩みやストレスを周囲に打ち明けづらく、孤独に陥りやすいという傾向が影響しているのではないかと言われています。そもそも、日本では欧米に比べてまだカウンセリング自体があまりメジャーではなく、その存在を知らないという場合もあると思います。病院に行くのはハードルが高いという方にこそ、「プラットトークス」を気軽に使ってほしいですね。

――「プラットトークス」の1回30分のカウンセリングでは、何をゴールとするのでしょうか。

心の専門家である心理士とのカウンセリングでは、無理に着地点を探るようなアプローチはしません。カウンセリングの大きな目的の一つは、話をして気がラクになること。匿名で相談ができて、カウンセラーも外部の人間だからこそ、本音を吐き出しやすい設計になっています。そのような場合は1回でも十分に効果を感じていただけるはずです。

ただカウンセリングにはさらに深い効果もあります。例えば、頭の中が整理されること。カウンセラーは支持的に相談者の話を傾聴し、相談者本人の心の状態を明らかにしていくお手伝いをします。自分がどんなものを抱えていたかが明らかになると、それによって考えが整理されて、見え方が変わったり、次の行動が見えてきたりするんですよね。人によっては一度で終わる場合もあるし、継続的に話をすることで気持ちに整理がつくこともあります。カウンセリングで得た気づきを日常生活に持ち帰ることで、相談する以前と比べて、自分への理解が深まり、次の一歩を新しく踏み出せるようになるのが、このカウンセリングのゴールだと考えています。

――パワハラやセクハラなど、企業側で対処すべき問題が見えてきた場合は、どう対応するのですか?

プラットトークスでは、月次レポートの形で、カウンセリングを終えたカウンセラーからの報告をもとに、個人を特定できる情報を除いた上で、大まかな相談カテゴリや利用人数などを企業側に月に1回お送りしています。それとは別に、例えばパワハラやセクハラ、就業上の問題などで、相談者ご本人の希望がある場合には、弊法人から代理で責任者にお伝えすることもあります。また、相談傾向等から組織改善の必要が見て取れる場合、社会保険労務士として、オプションでコンサルティングをお引き受けすることも可能です。問題の見える化から組織改善まで一貫して行えるのが、ほかのカウンセリングサービスにはない、社労士法人の私たちならではの強みだと思っています。

――導入された企業からの反響はいかがですか?

大変ご好評をいただいています。そもそも従業員のメンタルヘルスまで手が回らないという中小企業様だけでなく、法律上必要なハラスメント・内部通告の相談窓口の設置に困っておられる企業、また設置してはいるものの、産業医等の相談につながった頃にはうつなどの病状が深刻化しており、休職・退職を余儀なくされてしまい、重症化前の水際対策にはつながっていないという企業様も多いのです。「プラットトークス」はまさにその点に応えることができるので、一度導入に至った企業には長く使っていただいていますね。

子育て世代やフリーランスを含め、働く人を社会で支え合う

――「プラットトークス」を含め、プラットワークスの事業の軸には、芳賀さんご自身のどんな思いがあるのでしょうか?

起業のきっかけは、私が労働基準監督官や社会保険労務士として、人事労務の仕事に携わる中で、子どもの頃、誰しも持っていたはずの「自由」な感覚からいつしか離れるうちに、楽しく働けなくなったり、心を病んだりしてしまう場面を多数目にしたことでした。そのような中で、ある絶対的な確信が生まれました。それは、『働くことこそが癒しとなる』ということです。いつしか描いた希望あふれる夢、ワクワクする感覚、そういった働く楽しさを思い出すことができれば、多くのメンタルヘルスの問題は予防・解決できる!という直観でした。
そこで、「働く自由をすべての人に」というヴィジョンのもと、人の心を大切にした人事労務コンサルティングサービスや、従業員向けのメンタルヘルス支援のサービスであるプラットトークス、さらに将来の働く世代のキャリア形成を支援するための子どものキャリア教育支援などに乗り出た次第です。
中でも、初発の思いのこもったプラットトークスは、大人が働く楽しさを思い出すチャンスに関与するサービスだと考えています。


――「働く楽しさ」という意味では、この変化が大きい時代、組織で働く人が仕事に対して抱く感じ方もどんどん変化しているのではないかと思いますが、芳賀さんから見ていかがですか?

そうですね。テレワークが増えたことで、社内での直接的なコミュニケーションは減り、以前と比べて社員同士の関係性が希薄になっていると感じる人も多いでしょう。またネットの広がりによって、学生時代からあらゆる面で人と比較するのが当たり前になり、社会に出ても競争が続くとなれば、楽しい環境とはほど遠くなってしまうのは必然でしょう。



――「プラットトークス」を導入することが、企業にとっても組織を見直すいいきっかけになりそうですね。

はい。社員のメンタルヘルス維持に繋がるのはもちろんですが、企業側に気づきが生まれるのがすごく重要だと思っています。きちんと課題に向き合うことで、良い方に向かっていけますから。やっぱり人間と同じように、組織も病気になることがあります。
結局組織というのは社員があってこそ成り立ちますし、トップが社員という「人」を見なくなると、組織はどんどんおかしな方向に向かってしまう可能性があります。そういう意味でも、「プラットトークス」は社員それぞれの「人」に焦点を当てるものですから、組織がそこに意識を向け、一人一人が本来の力を発揮できる風通しの良い組織作りを目指すきっかけになるのではないかなと思いますね。

――では最後に、「プラットトークス」の今後の展開について教えてください。

これまでの相談実績の中で、仕事や職場の相談と同じくらい多く、子育てに関する悩みが寄せられることがわかりました。働く世代は、まさに子育て世代。仕事と家庭の両立の困難や、育休取得への不安、子育てをめぐる家族関係の悩みなどが、仕事でのパフォーマンスを発揮するうえでも大きなネックになっていることが見えてきたんです。女性活躍に伴う共働き家庭の増加や少子化などの社会課題とも大きく関連することから、これまでの企業向けのサービスではリーチしきれない方々を含め、社会により広くカウンセリングを届けていきたい…そんな思いから、自治体向けにも子育て世代の住民対象のサービスの提案を始めました。現在首都圏のいくつかの自治体に具体的にご検討いただいています。対企業同様、月次レポートをお送りするので、住民の方の相談傾向から潜在的なニーズや地域課題を把握することができるほか、「プラットトークス」のシステムを通して、自治体の保健師さんの面談予約も取れるようにしたり、自治体にすでにあるアプリとのAPI連携をしたりと、自治体ごとにカスタマイズも可能です。また、アプリの改修を経て、AIによる感情分析や危機状況に関するゲートキーパー機能も新たに搭載しました。親世代のメンタルヘルスを支えることで、将来の働く世代である子どもたちにとってより良い育ちの環境づくりに貢献したいと考えています。
また、個人事業主として働くフリーランスの方、さらに一般の個人利用に向けても展開していく予定です。

――まさに、フリーランス向けにも展開してほしいと思っていたので嬉しいです。個人事業主特有の悩みもありますし、カウンセリングを必要としている人は多いだろうなと。

フリーランスも社会を構成する大切な一員ですし、国や社会が支えていく必要があると私は考えます。メンタルヘルスの問題は、特定の誰かのせいではなく、組織があるところにはどうしても起こりうるものであり、いわば社会の問題です。だからこそ、カウンセリングにかかる費用の一部を社会全体で負担する仕組みを実現させていきたいと考えています。 自治体に対する取り組みもその一環ですし、こうした流れをフリーランスに対しても広げていきたいと思います。

(編集後記)

メンタルヘルスの不調は個人の問題ではなく、社会全体で支えていくべきもの。その言葉に、そして実現のためにすでに動いてくださっているという事実に、大きな希望と心強さを感じました。と同時に、お話の中にもあったように、日本ではまだまだカウンセリングに対する抵抗が大きいと感じる瞬間がたくさんあります。「カウンセリングは病気の人が受けるもの」、「自分はそこまでじゃない」と。せっかく機会があっても、本来必要としている人にきちんと届かなければ意味がありません。そうした認識を柔らかく解き、少しでも心に不調を感じたときはカウンセリングを受けるのは当たり前、という社会をつくるにはどうしたらいいのか。筆者自身、改めて考えさせられる取材でした。

(プロフィール)
社会保険労務士法人プラットワークス代表 芳賀満
厚生労働省職員、社会保険労務士を経て得た「人は心で働く」の理念を原点に、2018年プラットワークスを起業。組織人事コンサルティングやオンライン心理カウンセリングサービスの運営、こどものキャリア教育支援に尽力。「働く楽しさを思い出す組織・社会づくり」に情熱を注いでいる。

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(文:むらやまあき、写真:飯山 福子、編集:金澤李花子)