商品が自らしゃべって踊りだす!?「自己推薦ロボット」
棚に陳列された商品が喋って、踊って、自らPRを行う――ユニークな「自己推薦ロボット」が実用化に向かって歩みを進めています。
サイバーエージェントは、自社の研究開発組織「AI Lab」と、大阪大学大学院基礎工学研究科の先端知能システム(サイバーエージェント)との共同研究講座による自己推薦ロボットの実証実験を行っています。
これまでにスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアなど、さまざまな種類の商品で展開。来店者の立ち止まり率が2.14倍、販売率が6.67倍にまで増加した事例があるなど、その有効性が実証されています。
美容やヘルスケア商品の推薦効果が見込めるか検証するため、2023年10月にはスタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニーのライフスタイルストア「PLAZA NEWSSTAND」赤坂店で実証実験を行いました。サイバーエージェントによると、「実証実験後、同店舗において4ヶ月間にわたり効果の継続性を調査したところ、継続的に販売数が増加する傾向を確認しました」ということです。
自己推薦ロボットは、商品に「動く」「話す」などの生命感が吹き込まれるのが最大の特徴の1つ。重量センサーや人検知センサーなどを活用して、棚の前に人が通るのを検知します。すると喋り始めて、商品の機能や特性をPRしたり、商品CMに合わせてダンスを踊ったりしたりします。
これまでのPOPやサイネージに比べて目を引き、手に取られやすい傾向にあります。サイバーエージェントは「今後も実社会でのロボット活用の可能性を広げ、新しい顧客体験と実店舗の価値創造に貢献していく」と展望を明かしています。
(参照:「自己推薦ロボット」の販促効果範囲の調査|スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000841.000003436.html
AIが消費者の心に“刺さる”デザインの店頭POPを制作
商品の特徴やおすすめコメントなどが記載される店頭POPをプランニングするAIが注目されています。
「アイポプ」は、まず利用者が記入したヒアリングシートの内容をもとに、AIが消費者の感情を分析。その後、自動で3パターンのデザイン案を提示します。利用者が好みのデザインを1案選定すると国内の工場で印刷、加工、梱包、納品までを行います。
出力はトップボードや卓上パネルのみならず、のぼり、スタンドバナー、ポスターなど、さまざまな形でできます。
このシステムは、アイポプを提供するセールスプロモーション事業などを手がけるPXCが独自にもつソーシャルAIリサーチサービス「AIGENIC🄬」が活用されています。
これまでPOP制作に必要だった企画会議やリサーチ、デザインのチェックバックなどの一切合切が不要になることで、コストを大幅に削減。さらに、AIがアイディア出しをすることで、これまでの手法や考え方とは異なる切り口を得ることできます。
同サービスはキリンビバレッジなど大手企業も導入。同社は「各店舗におけるPOPクオリティの均一化」や「以前は数ヵ月間かかっていたPOP制作が約1カ月に短縮された」といった効果を実感しています。今後ますます、広報担当者や販促物のクリエイターにとって欠かせない存在になっていくでしょう。
(参考:アイポプ|PXC)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000042827.html
店内客の行動・属性に合わせてAIがコンテンツ配信
TOPPAN株式会社は、AIカメラソリューションの開発・提供などを手掛けるAWLと2020年に共同ラボを設立しました。
そうした流れから、AIカメラを活用して店頭顧客の属性や店内行動に合わせて、最適なデジタルコンテンツを店頭サイネージからリアルタイムで配信するシステム「AI販促」を共同開発。店頭で一律に情報を発信するのではなく、顧客それぞれのニーズに合わせた情報を選定して配信することで、認知・購買などの販促効果の向上を見込んでいます。
AIカメラが店内にいる顧客を撮影して性別、年齢、帯同人数などを認識。顧客の人物属性や特徴に加えて、店内の立ち寄りブース、立ち寄り順、店内行動履歴、商品接触歴などから行動分析を行い、分析結果をコンテンツの配信条件に反映します。
顧客に合わせた動画、静止画、音声などをリアルタイムで店内に配信。コンテンツの閲覧者数や閲覧した人の属性、視聴時間などの結果も管理します。同サービスは、これまでに2度、凸版印刷オフィス内の売店や疑似店舗環境やで実証実験を行っています。人間が店内にいる顧客の属性や行動を瞬時に認識したり分析したりするのは困難ですが、AIならお手のもの。2024年11月末現在、AI販促は小売店で実用化されています。
(参考:AI販促|TOPPAN株式会社/AWL)
https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2021/03/newsrelease210326_3.html
商品が自らPRしているように見せるロボット、自動で“映える”POPを作り出すAI、顧客の行動を分析してリアルタイムで最適なコンテンツを選定して配信するAIカメラ……。ユニークで斬新な “販促”テクノロジーが続々と芽吹いています。AIを導入した販促ツールの活用は、“売り場”の可能性を広げる効果的な手法として、今後ますます拡大が進みそうです。
<プロフィール>
カワハタユウタロウ
フリーライター。大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、Eコマース・通販関連業界紙の編集部に約7年間所属。その後、新聞社系エンタメニュースサイトの編集部で記者として活動。2017年からフリーランスのライターとして、エンタメ、飲食、企業ブランディングなどの分野で活動中。