ひとりひとりの腸内フローラを調べてカスタマイズするグラノーラ「Body Granola」
現代の朝ごはんの中で存在感を増しているのが、グラノーラ。シリアル商品の大手メーカーであるカルビー株式会社(東京都千代田区)は、2023年4月から「Body Granola(ボディグラノーラ)」というグラノーラの定期購入サービスを開始しました。これは、株式会社メタジェン(山形県鶴岡市)と株式会社サイキンソー(東京都渋谷区)との3社で共同開発した、個人の腸内環境を検査して、自分に合ったグラノーラを定期購買するサービスです。
メタジェンは個々人の腸内フローラのバランスを把握・分類し、腸内環境に基づく層別化(自分のタイプに応じて選択する)医療・ヘルスケアを実現することを目指す、慶應義塾大学と東京工業大学のジョイントベンチャー。サイキンソーは自宅で手軽にできる腸内フローラ検査「マイキンソー(Mykinso)」を提供し、菌叢データベースと高度なデータサイエンス技術を駆使して検査サービスを商用化するスタートアップです。
サービスの手順は次の通り。
(1)WEBサイトから腸内フローラ検査キットを注文。届いたら採便してポストに投函する。
(2)検査結果が届く(全57タイプに分類された腸内フローラタイプ、腸内に存在する細菌の多様性や口腔常在菌の割合など)
(3)検査結果を参考にして好みの素材を選び、自分に合ったグラノーラを注文する
(4)グラノーラが定期的に届く
カルビーは本サービスを成長戦略で掲げる「食と健康」領域の新たなビジネスモデルとして確立し、5年間で利用者10万人を目指しています。
気候変動に対応できるコシヒカリの新品種「新大コシヒカリ」
続いては、お米の事例。おいしい米の品種として広く愛されているコシヒカリは、近年の猛暑による高温被害によって、一等米が大きく低下するダメージを受けています。その深刻な問題を受け、2020年に、新潟大学・刈羽村先端農業バイオ研究センター(KAAB)の研究グループ(農学部・三ツ井敏明教授ら)が、高温・高CO₂耐性を有する新品種のコシヒカリを開発しました。
同グループは、イネのうちコメとなる部分に含まれるデンプンの合成と分解のバランスに着目し、そのバランス異常がコメの白濁化を生んでいることを突き止めました。そして遺伝子組み換えではなく、もともとのコシヒカリから選別を繰り返して発見したことが大きなポイントに。つまり、イネが本来もつ環境適応力を引き出す新品種の開発に成功したことになります。当初の品種名は、「コシヒカリ新潟大学NU1号」。その後品種名とは別に、店頭などで販売する際の名前を2022年冬に公募。寄せられた2,506件のなかから民間の有識者ら12人の選考委員会によって「新大コシヒカリ」と命名されました。
コーヒーで日本初の機能性表示食品!BMIが高めの人の安静時のエネルギー消費の向上をサポートする「UCC&Healthyスペシャルブレンド」
最後は、朝の眠気やだるさをスッキリ解消してくれる飲み物として広く愛されるコーヒーの最新事例について。UCC上島珈琲株式会社(兵庫県神戸市)は、コーヒー由来の成分である「トリゴネリン」に注目した新商品を2024年9月に発売しました。
同社は最新の独自研究において、コーヒー生豆に多く含まれる「コーヒー由来トリゴネリン」という成分が、BMIが高めの人の安静時のエネルギー消費の向上をサポートすることを発見しました。この成分はもともとコーヒーに多く含まれるものの、焙煎するほど少なくなってしまう成分。つまり含有量を保つには焙煎を浅くする必要があり、酸味が強くなってしまう傾向があるそう。同社は1933年の創業以来培ってきた焙煎技術とブレンド技術を駆使することで、トリゴネリンの含有量を保ちながらも、レギュラーコーヒー本来の豊かなあまい香りとバランスの良い味わいを実現することに成功し、商品化を実現したのです。
研究成果は次の通り。各群合計男女91名、そのうちBMIが高めの人としてBMI23以上の20名をサブグループ解析の対象とし、試験食品摂取期間は8週間。安静時エネルギー消費量などについての評価を行いました。その結果、トリゴネリン摂取群は、8週間後の安静時エネルギー消費量が、プラセボ群と比べて有意に高くなることがわかりました。
このことから、いつものコーヒーを「UCC &Healthy スペシャルブレンド」に置き換えることで、コーヒーのおいしさを楽しみながらも、無理なく健康習慣を目指せるということになります。朝のコーヒー一杯がダイエットに貢献するとなれば、気になる人は少なくないでしょう。
時代とともに気候やライフスタイルの変化は避けられないこともある中で、健康や安心につながる新たな食品がどんどん誕生していることは、私たちの朝食を堅実に守ってくれることにつながっていくでしょう。健やかな朝を実践するためにも、“朝ごはん×フードテック”の最新動向に注目していく価値は大いにありそうです。
<著者>
スギアカツキ
食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。