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学校給食にテクノロジーを。子ども達の安全&おいしいを支える最新テクノロジー事例

2024.11.28(最終更新日:2024.11.28)

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子どもたちが通う学校での食事を考える上で大きな役割を担っているのが、給食。昭和時代から続く歴史ある食文化の一つになりつつありますが、実は今、テクノロジーの進化によって新しい潮流が生まれつつあります。例えば、食の安全、フードロス、おいしさへの追求などなど……。具体的にはどのような恩恵を受けられるようになったのでしょうか。そこで今回は、新しい取り組みを実施している学校給食の事例をご紹介しながら、それらを実現するデジタル・AIの可能性について思考を巡らしていくことにしましょう。

子どものアレルギー情報を共有し献立変更ができる「my Allergy alert」

「my Allergy alert」イメージ(前橋市HPから引用)

食物アレルギーへの理解不足や対策の不備などが原因で、深刻な健康被害や事故につながるケースもあります。その対策の一環として群馬県・前橋市で始まっているのが、アレルギー情報の多角連携サービス「my Allergy alert」。より安心で利便性の高い市民サービス実現に向けて官民共創の企業「めぶくグラウンド」が開発したアプリサービスです。本サービスを利用する学校や保育所等に通うこどもの保護者が、専用アプリをスマートフォンにインストールすることで利用できるようになり、子どもが持つアレルギー情報を学校サイドが共有・対応を行う仕組み。具体的には、個人が入力したアレルギー情報に基づいて学校側が個人別献立表を作成して提示、それを保護者が確認・承認するスキームになっています。

前橋市では、内閣府が推進する「デジタル田園都市国家構想推進交付金」の採択を受け、全国の地方中核都市のモデルとなるべく、2022年度から「まえばし暮らしテック推進事業」の一つとして本サービスをスタートしています。今後は実施対象を広げ、宗教的な食事に関する規制がある、食事療法が必要な場合、さまざまな価値観を持つ人にも役立つサービスを実装する予定になっています。

かくれフードロス問題を地元の学校給食で解消

「埼玉 食のサーキュラーエコノミープロジェクト」(ASTRA FOOD PLAN提供)

学校給食だけでなく、あらゆる産地で発生しうる課題として指摘されているのが、「かくれフードロス」。これは、色や形が流通規格を満たさず出荷されることのない食材の廃棄問題のこと。その削減とアップサイクルに取り組んでいるのが、フードテックベンチャーのASTRA FOOD PLAN(埼玉県富士見市)。

具体的なスキームは次の通り。埼玉県内の農業生産者において発生する規格外品や天候理由等による余剰農産物をJAいるま野(埼玉県川越市)が集荷・販売を行い、同社が特許を取得した過熱蒸煎機で乾燥・粉末化した食品パウダー「ぐるりこ」を製造。対象となる野菜は、キャベツ、玉ねぎ、ごぼう、ニンジンなど。この粉は、野菜本来が持つ栄養価、香り、旨味を持つことが特長です。そして2023年、このぐるりこを使って、女子栄養大学と日本薬科大学の学生が埼玉県富士見市学校給食センターと新メニューを共同開発。富士見市内の全17小中学校の学校給食として提供されました。

2024年2月、富士見市内の小学校11校約6,000名と中学校6校約2600名に1日限定で提供された給食(ASTRA FOOD PLAN提供)

また給食の提供と連動するかたちで、食事をしながら「かくれフードロス」について学ぶことができる教材を配布。さらに富士見市立諏訪小学校の小学5年生約120名に対しては、科学実験を用いた特別授業を行い、多角的な食育プログラムを実行しています。

香港での成功を日本の学校へ。温かくておいしい給食を提供

温かい弁当を自販機で提供(和田フードテック提供)

給食や弁当シーンで高付加価値を感じるとすれば、ホカホカと温かいできたての食事を食べられることではないでしょうか? ホットチェーン自動販売機プラットフォームの構築を行う和田フードテック株式会社(本社:大阪府大阪市)は香港の一部の小学校や大学において、温かな弁当を自販機で提供。できたてのランチを常に65°C以上に維持、冷凍や再加熱を必要とせずに、学生は温かく新鮮で美味しい食事を受け取れます。

これが好評となり提供数が拡大。そしてさらに利便性を高めるべく、保護者と学生のためにオンライン事前注文システムを導入。毎月末に、保護者と学生がオンラインプラットフォームを通じて弁当を選択・注文。支払い完了後に食事の受け取りをスムーズにするための2次元バーコードが発行され、学生は2次元バーコードを使って自動販売機で簡単に食事を受け取ることができるようになりました。またオンラインプラットフォームでは、各食事のアレルゲンや特別な食材に関する情報が明示されることで、アレルギーや宗教的な食事制限、個人的な好みに関する不安を取り除き、安全で楽しい食事を楽しむことができます。

学生向けオンライン事前注文システム(和田フードテック提供)

同社はこのホットチェーンテクノロジーソリューションを日本の学校に展開する準備を進めています。この取り組みによって、子ども達が安心して安全で栄養価の高い、アレルゲンに配慮した食事を学校で楽しめるようになるのです。また学校給食のスタッフ採用における労働力不足の解消につながり、学校給食システム全体の現代化に対応した、革新的なソリューションとなりうるでしょう。


食の安全や労働者不足などの社会問題を解消する最新テクノロジーが、学校給食の現場ですでに採用されはじめています。未来を作る子ども達に、安全でおいしい給食を提供することは、彼らの健やかな未来を力強くサポートしてくれることでしょう。子育てに奮闘する母親の立場としても、学校給食のさらなる進化に期待していきたいと思います。


<著者>
スギアカツキ
食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。