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AIフレンドが静かなブームに…仕事効率化だけじゃない!コミュニケーションとしてのAIの可能性

2024.11.28(最終更新日:2024.11.28)

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生成AIブームが止まりません。ビジネス需要として、世の中をどう変え、仕事を効率化するのかが注目される一方、静かに盛り上がりを見せているのがエンタメ分野です。例えば、SynclubはAI恋人や友だちを作り、音声やチャットで会話できるアプリ。Talkieでは架空のキャラクターとの会話を楽しめます。アプリストアには他にも多彩なAI会話アプリが並び、エンタメへの応用が進む中、中国企業の参入も目立ち、独自の競争が展開されています。現在は主にテキストチャットが中心ですが、今後は音声での会話が可能になり、人間とより近い交流が実現するでしょう。AIフレンドの現状を、中国経済に詳しいジャーナリストの高口康太さんがご紹介します。

仕事効率化だけじゃない!AIの活用法

ChatGPTから始まったAI(人工知能)ブームが続いています。ChatGPTに代表されるLLM(大規模言語モデル)は人間のような、自然な会話が可能です。知りたいことを質問してもいいですし、文章の作成や要約もこなします。あるいはAIと対話をしながら、自分の考えをまとめていくブレインストーミングにも使えます。プログラミングのサポートや、表計算ソフトのデータ整理といった仕事もよく使われる分野です。ネットを探すとAIで仕事効率化という情報、AIが社会をどう変えるのかという未来予測は多数あります。

しかし、AIの活用は、仕事効率化だけではありません。エンタメやコミュニケーションの分野でも、AIは静かに、そして確実に進化を遂げているのです。思わず笑ってしまうようなユニークなアイデアを実装したサービスに、SocialAIがあります。スマートフォンにアプリをインストールすると、ごくごく普通のソーシャルメディアに見えますが、実は他のユーザーはみんなAI。利用者が文章を投稿すると、AIがさまざまな返答を返してくれます。厳しい意見を言うような設定もできますし、ファンからの熱烈な応援メッセージが殺到するようにして、有名人気分に浸ることも可能です。

また、キャラクターとの会話を楽しむサービスは、Character.AIやTalkie、Synclubなど多数あります。性格や口調を設定したAIとチャットで会話できるというもので、文字だけではなく音声で話せる機能もあります。ゲームやアニメ、あるいは実在の有名人を模倣したキャラクターが人気です。もちろん、本物とはほど遠い存在ですが、足りない分は人間側の想像力で補うことで楽しむことが可能です。

感情型AIコンパニオンと呼ばれるCharacter.AIやTalkieのダウンロードトップ5(Sensor Tower提供)

人間同士のコミュニケーションをAIがサポート

ここまで紹介したのは「人間とAIのコミュニケーション」という分野でした。ですが、これ以外にも用途は広がっています。中国メディアの澎湃(ほうはい)新聞はAIを使ったコミュニケーションサービスには以下の3種類があると指摘しています。

1:人とAIのコミュニケーション
2:人と人とのコミュニケーションをAIがサポート
3:AIとAIのコミュニケーション

人間同士のコミュニケーションをAIがサポートするとは、具体的にどのようなことがサービスなのでしょうか。

中国のコミュニティアプリ「Soul」は、同じ趣味や興味を持つ人々が出会い、コミュニケーションを楽しんで孤独を癒すことを目的としたサービスです。初めて会話する相手でも楽しめる人ならばそれでいいのですが、シャイな人にとってはどうやって会話を続ければいいのか困ってしまう時も。そこで共通の趣味や話題を探して、会話のきっかけを作ってくれるAI会話アシスタント機能を実装しました。確かに、すぐに会話が途切れてしまう人にとっては助け船を出してくれるAIがあれば、神機能となりそうです。

他にもAIが作曲した音楽を合唱する機能など、コミュニケーションを促進させる目的でのAIアプリケーション開発を続けています。まだ関係を構築できていない相手と、ぎこちない会話をしている時に一緒にゲームをしたり、なにか共通の話題を探したり提案できるような友人はありがたい存在ですが、いつもいてくれるわけではありません。AIならば気がねなく同席をお願いできる点が強みです。


直接的な会話の支援以外でも、性格診断やアンケート結果からAIが気の合う友だちや異性を見つけてくれるサービスも世界各国で作られています。恋人や友人が欲しいというニーズは人間の基本的な欲求です。AIとのコミュニケーションで満足する人もいるでしょうし、やはり人間とのコミュニケーションを求めるという人にはマッチングはありがたい機能となりそうです。

AIとAIのコミュニケーションとは?

第三の類型であるAIとAIのコミュニケーションはなかなか具体例が想像しづらい分野です。実用的な分野ではスマートフォンのAIと自宅のAIが連携して家電を動かしてくれたり、あるいは異なる人のパーソナルAI同士が連携して、ミーティングのための日程調整をしてくれたりというという用途が考えられます。

ですが、エンターテインメント用途でもAI同士のコミュニケーションは意外な活躍の舞台がありそうです。現在、もっとも実装に近づいているのはゲームの世界でしょう。現在、ゲームに登場するキャラクターは与えられたシナリオに沿って行動、発言するだけですが、AIによってそれぞれが話しだし、独自の行動をするようになると、ゲーム世界のリアリティが増します。プレイヤーが話しかけなくても、ゲーム内のキャラクター同士で会話しているとなれば、本物の人間を相手にしているような没入感が得られるわけです。

ファンタジー世界を冒険するような、いわゆるRPG(ロールプレイングゲーム)での実装も楽しみですし、あるいは自分の街や村を作っていく、いわゆる箱庭型ゲームの場合でも、その世界の住民たちが勝手に会話している姿を眺めるのは楽しい体験となりそうです。

こうしたエンターテインメントやコミュニケーション分野でのAI活用は、ビジネス分野での活用以上に広がる可能性があります。それというのも、ビジネスでの実装には正確性が不可欠であり、現在のAIでは応用できる分野が限られているという欠点があるためです。

一方、エンターテインメントやコミュニケーション分野では、ある程度の不正確さは許容されます。そもそも人間同士の会話もさほど正確なものではありません。それでもコミュニケーションが可能なのは、メッセージを受け取る側が不足している部分を想像力で補っているからです。

たとえAIに不自然な部分や間違いがあったとしても、コミュニケーションする人間側がそれを許容する姿勢を示せば、十分に実用的な存在となるわけです。今ほどAIの技術が進化する以前から、簡単な言葉を話す人形や、限られたパターンの応答しかできないチャットボットを相手に、多くの人々がコミュニケーションを楽しんできたのですから。

AIは、私たちの生活をより豊かに、そして楽しくしてくれる可能性を秘めています。今後、AIがどのように進化し、私たちのコミュニケーションをどのように変えていくのか、注目しましょう。


[プロフィール]
高口 康太
ジャーナリスト、千葉大学客員准教授。2008年北京五輪直前の「沸騰中国経済」にあてられ、中国経済にのめりこみ、企業、社会、在日中国人社会を中心に取材、執筆を仕事に。クローズアップ現代」「日曜討論」などテレビ出演多数。主な著書に『幸福な監視国家・中国』(NHK出版、梶谷懐氏との共著)、『プロトタイプシティ 深圳と世界的イノベーション』(KADOKAWA、高須正和氏との共編)で大平正芳記念賞特別賞を受賞。