超高層ビルの窓を清掃するロボット
超高層ビルを見上げたときに「どうやって窓を掃除するんだろう」と、ふと思うことはありませんか? およそ2ヵ月に1度は必要とされる作業ですが、現在にいたってもやり方はシンプル。かつアナログです。100m以上の超高層ビルも、専用のゴンドラを吊り下げて人力で窓拭きを行っています。
アメリカでは、そんな現状に一石を投じる取り組みが2024年8月に発表されました。
米企業Skyline Robotics、The Durst OrganizationとPalladium Window Solutionsが、窓を掃除するロボット「Ozmo」を45階建てオフィスビルに導入したことを明かしました。
高所で行われる危険な作業であるため、アメリカでは窓の清掃業務を行う若い世代の人材不足が深刻化しています。
Ozmoは米国特許を取得しており、AI、機械学習、コンピュータービジョン、ロボット工学、センサーを搭載。従来製品の3倍のスピードで、さまざまな窓の形状に対応しながら、高品質な仕上がりを可能にします。屋上で人間が遠隔操作して使用します。
ニューヨークで活用されているほか、ロンドンにも配備が決まっており、現在は日本とシンガポールで特許を取得中。近い将来の展開が期待されます。効率化とスピードアップ、作業者の安全性の確保を叶え、ビル管理業務での需要は高まり続けています。世界にこの技術が広がっていくのも間もなくなはず。
(参照:Ozmo|Skyline Robotics https://www.skylinerobotics.com/meet-ozmo)
建材や作業員の移動を大幅に効率化する76人乗り新型エレベーター
高層ビル建築に欠かせないものはさまざまありますが、そのうちの一つが工事用エレベーター。専門家でなければ想像が及ばないことですが、建設現場では、設置できる仮設エレベーターの数が限られるため、頻繁にエレベーター待ちの渋滞が起こります。
そんななか、2024年9月に清水建設が発表したのは、76人乗りという大規模なエレベーターです。建材や人員を載せるかごが大きくデザインされ、重量に応じて昇降速度を自動調整する機能が搭載されています。
従来型と比べて46人から76人に、床面は1,6倍に、重量は石こうボードで換算すると約3倍積載可能になりました。効率的に資材や人員を運搬することができ、エレベーター待ちの時間を減らすことで作業員の働ける時間を増やします。
東京都心では大規模な開発プロジェクトが相次いでおり、人手不足が叫ばれています。建設現場作業の効率化が、建設会社が利益率を高めていくのに、ますます重要なファクターとなっていくでしょう。
(参照:国内最高の垂直搬送性能を備えた工事用エレベーター「SEC-5000RS」|清水建設 https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2024/2024037.html)
行動認識AIを搭載した警備システム
世界トップクラスの行動認識AIを自社開発している株式会社アジラ(町田市)は昨年、神谷町トラストタワーでAI警備システム「AI Security asilla」の実証実験を開始しました。
日々多くの人が行き交うオフィスビルは、ビルのセキュリティ強化だけでなく来訪する人の安全確保のためにも、強固な警備が必要です。
神谷町トラストタワーは国際ビジネス拠点となる高層オフィスビルで、上層階にはラグジュアリーホテル「東京エディション虎ノ門」が入っています。駅直結でアクセス至便、あらゆる人が行き交う場所であるからこそ、よりシビアな警備体制が求められ続けるでしょう。
不正侵入や防犯、盗難、不審行為に予想されるリスクをチェックするのに、これまでは人力に頼っていましたが、このAI Security asillaの導入によって、既存のカメラを活用しながらもさまざまな見守りができるようになりました。
asillaは、既存のカメラをAI化します。喧嘩や暴力行為・侵入・たむろといった迷惑行動、急病人やふらつき・白杖や車椅子の方の見守り、混雑状況や人数カウントといった人数検知を行います。さらに特許技術として、突然走り出したり物を振り回したりする、通常から逸脱した動きを「違和感」として検知します。
これらすべての異常や見守りが必要な事象の発生から、約1秒で即時通知するのがAI警備の真価。人間の目だけではフォローできない、あらゆる人や物の動きを見逃すことがなくなり、網羅的に警備することができます。また、サーバー一台でカメラ50台分を解析できるうえ、既存のカメラを活用することから、比較的安価であることも特徴です。
(参考:AI警備システム『AI Security asilla』https://jp.asilla.com/products)
超高層ビルの現場で活躍の幅を広げる最新テクノロジー
人間の弱点や人手不足を補い、効率的に高精度なパフォーマンスを実現することができる最新テクノロジー。超高層ビルの現場でも活躍の幅を広げています。少し先の未来では、欠かすことのできない存在になっていることでしょう。
〈プロフィール〉
有馬美穂
ライター・エディター。2004年に早稲田大学第一文学部を卒業。『VERY』等、さまざまな雑誌媒体で女性のライフスタイル、健康、教育、ジェンダー、ファッションについての取材執筆・構成を行う。