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空港の手荷物検査をAIでスマートに。空の旅をもっと安全に、楽しくするテクノロジー

2024.11.27(最終更新日:2024.11.27)

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昨今、空港は深刻な人手不足に悩まされています。空港の地上業務を行うグランドスタッフの数は、国土交通省のデータ(※)によると、新型コロナウイルス拡大以前と比べて約1~2️割減少しています。空港は24時間体制で安全かつ万全なサービスを求められるため、スタッフの負担が大きいことも課題として指摘されています。一方で、海外旅行客によるインバウンド需要や国内旅行客数は高まっています。スタッフの業務負担を減らし、ツーリストを快適な空の旅へと誘う、空港での活躍が期待されるテクノロジーを紹介します。
※参照:我が国の航空をとりまく現状|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001614477.pdf

空港の手荷物検査をAIでスマートに。X線検査判定支援システム

空港での手荷物検査に使用されるX線検査装置。検査員によってX線の映像が視認され、持ち込み制限されている物品であるか否かが判断されています。そうしたなか、AIが映像判定を支援するシステムの実証実験が、日本航空(JAL)、南紀白浜エアポート、日立製作所、セノンにより行われました。

(X線検査判定支援システムの仕組み/提供:日立製作所)

X線検査装置に通された手荷物の映像は、まずAIによって判定されます。X線検査映像とAIの判定結果は、保安検査場から離れた集中監視スペースへ送信されます。集中監視スペースにいる検査員はそれらを遠隔監視して、検査結果を現地警備員に通知するという仕組みです。

この実証実験の目的について、4社は「AIと検査員が協働する仕組みを構築することで、空港の保安検査業務の高度化、および増加する航空需要に対して検査待ち時間を短縮し、検査員の業務量の約20%削減をめざす」と明かしています。

(参照:保安検査を支援する人工知能(AI)技術の実用化に向けた実証実験|日本航空/南紀白浜エアポート/セノン/日立製作所 https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2023/08/0802a.html )

個人の好みに合わせた旅プランを提案。多言語で旅先の魅力を案内するAIアバター

(左/「アバター接客さくらさん」 右/さくらさんが活躍する案内カウンター 提供/ティファナ・ドットコム)

生成AIを搭載し、多言語を操るアバターさくらさんの活躍の場は多岐に渡ります。ある企業では店舗の販売スタッフ、ある企業ではオフィスの受付など……あらゆる場面でヘアスタイルやユニフォームを替えて活躍しています。

和歌山県の南紀白浜空港では、案内カウンターで個人の好みに合わせた旅プランをさくらさんが提案してくれます。これは本システムを開発・提供するティファナ・ドットコムと南紀白浜空港、一般社団法人南紀白浜観光協会が協力して2024年7月から行っている実証実験です。

地域の観光協会やガイドブックなどの情報をベースに、生成AIが膨大な情報を編集・要約。アバターのさくらさんが接客スタッフとして知られざる旅先の魅力を紹介します。情報をリアルタイムで更新しているため、常に最新かつ正確な観光・交通・宿泊施設情報を案内できるのが強みです。

同社は本システムに期待できることとして「インバウンド需要の喚起」や「人材不足の解消」、「オーバーツーリズムの緩和」。さらに、地域の観光資源や特産品の情報を戦略的かつタイムリーに発信できることから「地域経済の活性化」「持続可能な地域発展の実現」を挙げています。同社は2025年までに、全国の主要空港への展開を目指しています。

(参照:アバター接客さくらさん|ティファナ・ドットコム
https://www.tifana.ai/products/personchat)

空港の警備業務を、四足歩行のAIロボットが代替

日本アイ・ビー・エムとロボット販売を行う東北エンタープライズは、AI搭載ロボット「Spot®」の実証実験(2024年1~2月)を愛知県・中部国際空港で行いました。

空港は24時間万全な警備体制を敷くことが必須であるにもかかわらず、警備員は天候・気温の影響を受ける厳しい労働環境にさらされます。中部国際空港では、警備の人材不足が深刻化。そんななか本実験は「警備業務の一部を、AIロボが代替することは可能かどうか」を調査するために実施されました。

実験が行われたのは、中部国際空港島の西側護岸、北側場周フェンス、駐車場連絡通路など。このエリアは「設備の破損・劣化や不審者」「護岸に接近する船舶」「鳥類」などの確認が不可欠です。

主役となるAI搭載ロボットSpot®は米国ボストン・ダイナミクス社製、東北エンタープライズの提供です。最大時速は5.75キロメートル。搭載されているカメラが周囲を撮影し3Dマップを作成することで、周囲の障害物を認識しながら自動走行することができます。路面状況をリアルタイムで把握し、柔軟に姿勢制御を行う機能や、階段の昇降機能などが備わっており、遠隔管制も可能です。

実験中のSpot®は、空港敷地内で不審者役のスタッフを見つけると「関係者以外は速やかに立ち退いてください」と警告したり、搭載される8個のカメラで360度防犯用の撮影をしたりと活躍。現在は本実験データをもとに検証を続けており、実用化が期待されます。

日本アイ・ビー・エムはSpot®への期待として「警備業務の省人化のみならず、高度化、労務環境の改善」と語っています。

(参照:「Spot®」|東北エンタープライズ https://spot-teco.jp/ )

空港や旅先の観光地で“即戦力”となるであろうAIテクノロジー

空港をもっと安全に、楽しい場所にするためにAIを活用したさまざまな試みが実施されています。空港のみならず、全国の観光地でもAIは頼もしい“即戦力”となっていくでしょう。今後どのような最新テクノロジーが実用化されていくのか、目が離せません。


<プロフィール>
カワハタユウタロウ

フリーライター。大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、Eコマース・通販関連業界紙の編集部に約7年間所属。その後、新聞社系エンタメニュースサイトの編集部で記者として活動。2017年からフリーランスのライターとして、エンタメ、飲食、企業ブランディングなどの分野で活動中。