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「営業は人がやるもの」の固定概念を覆す…営業×AIで見えてきた未来の営業活動とは?

2024.11.26(最終更新日:2024.11.26)

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いくら生成AIが発達しても、「営業」は人がやるものだと多くの人が思っているのではないでしょうか? 一方で、現場では「資料作成など、事務処理に工数がかかる」「営業人材の育成がうまくいかない」などの悩みもあり、営業職のビジネスパーソンに多大な負荷がかかっている状況も無視できません。そこで現在では、営業活動にAIを導入する動きが少しずつ広まり始めています。本記事では、AIを活用した営業活動の事例を紹介します。

AIエージェントが“自律的”にタスクを実行

はじめに紹介するのは、AIエージェントが“自律的”にタスクを実行する事例です。

NTTデータは2024年10月に、営業領域における業務を自律的に支援・代行するサービス「LITRON Sales」を開始すると発表しました。

LITRON Sales概要(提供:NTTデータ)

同サービスは、オフィスワーカーの業務に最適化されたAIエージェント「パーソナルエージェント」が複数の専門性を持つAIエージェント「特化エージェント」と連携して対象業務のタスクを抽出・整理・実行するというもの。データ入力やアポイントメントの準備、さらには提案書の作成や契約書・社内文書の作成まで代行することが可能だといい、同サービスを活用することで、事務処理や資料作成、日程調整などによる営業担当者の業務負荷を減らすことが期待できそうです。

この自律型AIによる具体的なサービス内容は、たとえば訪問予定の企業名をパーソナルエージェントに指示すると、IR情報やニュースなどの外部情報や営業活動で得た情報、議事録情報などを検索して、生成AIが顧客課題を抽出します。その顧客課題に対して、自社の提供可能なサービスなどの情報を自律的に検索しながら提案資料を作成する……という仕組み。同社では2025年3月末までに提供をスタートする予定です。

さらにNTTデータでは、こうした生成AIのコンサルティングから導入、運用までを一貫して支援するそうで、アプリケーションからインフラまでを提供する形を予定。同社では、こうした取り組みを通じて、2027年までに生成AI関連事業で累計1000億円の売り上げを目指す考えを明らかにしており、今後もサービスのラインアップを拡充していくそうです。

同サービスを活用することで、これまで多くの時間を割いていた業務から解放され、クライアントへの提案活動などの付加価値業務に充てる時間を創出することが期待できそう。今後、多くの営業担当者から注目を集めそうなサービスといえるでしょう。

電話やテレビ会議の通話を自動で書き起こし

次に紹介するのは、電話の書き起こしや解析を行うことができる電話・商談解析ツール「amptalk analysis」です。このツールは、2021年9月にローンチされたサービスで、IP電話やテレビ会議システムでの通話内容を自動的に書き起こし、要約・解析することができます。
たとえば、オンライン商談が終了すると、書き起こしデータがSalesforceなどの営業支援ツールに自動で入力される仕組みになっています。また、書き起こしテキストのキーワード検索や、録画の2倍速再生機能を備えており、効率的なデータ確認をサポートします。
さらに、「誰が何をどのくらい話したか」「お客様の課題をヒアリングしているか」など、会話の内容をAIが解析。これにより、商談の中で効果的なトークの特徴を発見し、チーム全体の営業トークを改善することが可能です。従来はブラックボックスだった商談内容を可視化できるため、営業スキル向上につながる大きなメリットがあります。
2024年7月には、富士通がamptalk analysisを導入したことが発表されました。同社は2021年にインサイドセールス組織を立ち上げ、現在では100人を超える規模で活動しています。富士通では、受注率や営業生産性の向上を目指し、社員の育成やリスキリングに取り組んでおり、amptalk analysisを活用して電話内容を可視化し、スキルの向上と商談数の増加を図る構想です。この導入により、売上増にもつながることが期待されています。

amptalk analysis(提供:amptalk提供)

amptalk analysis はこれまで多くのBtoB企業の営業組織に導入されており、近年ではイトーキ、旭化成、NECネッツエスアイなどをはじめとした大手企業への導入も進んでいるそう。今後は、書き起こしなどの解析精度の向上により、SalesforceといったSFAへのデータ蓄積などの簡素化や、商談解析ツールを用いた営業人材の育成などにも取り組んでいく予定としています。

顧客とのコミュニケーションをアドバイス。AIを活用した顧客情報管理システム

最後に紹介するのは、AIを活用した顧客情報管理の事例です。

住友生命保険は2024年9月、AIを活用した営業職員の顧客情報管理システムを11月25日から運用開始すると発表 。同システムは、AIを活用したサービス開発などを手掛けるエクサウィザーズが開発を支援したもので、AIがデータを活用して営業職員をサポート。営業活動のレベルアップや効率化につながることが期待されています。

住友生命保険では、これまでも営業職員が取得した顧客の意向などを営業用端末に収集し、活用していましたが、同システムを導入することで蓄積されたデータの中からタイムリーな情報をもれなく把握することができ、顧客に必要な情報を適切に届けられると考え、運用に着手しました。

同システムの特徴は、AIがデータを活用して営業職員の顧客対応をサポートする機能を備えていることが挙げられます。具体的には、営業職員が取得したデータを活用して顧客対応のリマインドをしたり、次に対応すべきことを示唆したりする……などです。

さらに、生成系 AI を組み込んだチャットボット機能も有しており、トピックごとの話題のヒントを提供します。 AIが顧客とのコミュニケーションのアドバイスを行えるというもので、取得したデータによって幅広く顧客の趣味や嗜好を把握したAIが、コミュニケーションを深めるためのアイスブレイクにつながるヒントを提示します。こうした機能に加え、蓄積されたデータを基に活動状況に応じたお礼状の文面も作成。その二次元バーコードをスマートフォンで読み取ることでテキストを送付できるなど、便利な機能が盛り込まれています。

住友生命保険では、このシステムを活用することで顧客と対面する「人の価値」を高め、営業職員をより必要とされる存在に進化させていく考え。その先の目標として、営業職員の入社5年後の在籍率 40%を達成させることを目指しています。

自律的にタスクを実行するAI、商談の会話を書き起こして分析してくれるAI、顧客とのコミュニケーションのアドバイスをしてくれるAI……今回紹介した事例を見ても分かるように、これまでは「人がすること」だと思われていた業務を、今はAIが代行、支援してくれる時代に突入しています。面倒な事務作業はAIに任せ、自分はより価値の高い仕事を創出することに専念する……これからは、そんなふうにAIを活用した働き方が、営業職に就くビジネスパーソンのスタンダードになるのかもしれません。


<プロフィール>
カワハタユウタロウ
フリーライター。大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、Eコマース・通販関連業界紙の編集部に約7年間所属。その後、新聞社系エンタメニュースサイトの編集部で記者として活動。2017年からフリーランスのライターとして、エンタメ、飲食、企業ブランディングなどの分野で活動中。