スポーツ中継を3Dアニメーションで行うビジュアライゼーション技術
子どもたちの“スポーツ離れ”は今、深刻な状況です。たとえばWBCで優勝しても、大谷翔平選手が活躍をしていても、野球人口は減少し続けています。総務省の調査によると、「年に1日でもスポーツをした」と答えた10〜14歳の割合は1996年では97.3%、それが2016年には90.2%、コロナ禍の2021年には86.3%まで減少しました。15〜19歳では、同93.6%から80%、2021年には76.8%まで落ち込んでいます。新型コロナウイルス感染症の位置づけが「5類感染症」に以降したあとも、減少傾向がつづいていると教育現場ではいわれています。授業以外でスポーツをする機会は、どんどん失われています。
スポーツ人口が減っている理由として、新型コロナ拡大によりステイホーム期間があったことや習い事で自由時間が減っていること。ゲームやスマホなど、いつでもどこでも楽しめるアイテムが増えたことが挙げられます。
そんななか、とある技術が注目を集めています。それは「スポーツ中継の3Dアニメ化」です。2022年にソニーの傘下に入ったビヨンドスポーツは、米国のナショナルホッケーリーグの選手の動きをアバター化。実際の試合の動きを正確にトラッキングしながら、YouTubeでリアルタイム配信したのです。
選手と一緒にグラウンドに立っているかのような視点(画角)や、現実にはあり得ない炎のエフェクトなど、アニメーションならではの演出を楽しむことができます。YouTubeのコメント欄は概ね高評価。従来のスポーツ中継に慣れない子どもや大人も親しみをもって、楽しく見続けられるという声が挙がっています。
ビヨンドスポーツは「スポーツ鑑賞離れが進む子どもたちが興味をもつきっかけにしたい」と語っており、ますます発展が期待されます。
(参考)
スポーツ観戦に新たな展開をもたらすビジュアライゼーション技術|SONY
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/technology/stories/entries/20240408/beyondsports/
“推し投手“の投球を360度体験できるVR野球シミュレーション「V-BALLER」
次にご紹介するのはVRを使ったトレーニングやエンタテイメントです。VR野球シミュレーション「V-BALLER™」は、VR空間で投球を再現します。プレイヤーの動きをデータ化し、定量的なデータ分析に基づく効果測定が可能に。選手の打撃力やパフォーマンスデータを詳細に記録することで、指導者は選手個々に適したトレーニングメニューを提供することができます。
たとえば、VR空間を利用して、選手が苦手とする特定の球種を繰り返し体験できるトレーニングでは、苦手意識を効率的に克服することが可能に。これまで感覚に頼っていた選手のパフォーマンスの記録も、具体的な数値として残ることで、チーム編成や戦略立案がよりスムーズになります。
また、VBALLERの技術はプロチームだけでなく、一般のファン向けのサービスとしても活用されています。本物のピッチャーのデータを基にしたゲームが楽しめるバッティングセンターも登場し、“推し投手“の投球を360度体験することができます。
(参考)
「V-BALLER™」|NTTデータ
https://v-baller.com/
初心者でも安全にスポーツを疑似体験できる「スマートフェンシング」
大日本印刷株式会社が官民連携で盛り上げているのは「スマートフェンシング」。近年日本人選手の活躍が目立つフェンシングですが、剣や防具など扱いには危険が伴います。加えて、特殊な装備や採点用の機器など必要備品が多く、体験する機会は少ないという課題を抱えていました。
そこで、スマートフェンシング協会が提供しているのは、柔軟性のある専用の剣と導電性のあるジャケットを装備し、スマートフォンのアプリとつなげて、フェンシングを擬似体験できるサービスです。
剣にはセンサーと通信機器が内蔵されており、ジャケットに剣の先端が当たるとセンサーが反応。得点が入る仕組みです。場所を選ばず安全に楽しむことができ、多くのスポーツ・教育施設、イベントでの活用が始まっています。こうした手軽に楽しめる機会の創出によって、フェンシング人口の裾野を広げていくことが期待されています。
(参考)
スマートフェンシング|大日本印刷
https://www.dnp.co.jp/news/detail/20173854_1587.html
最新テクノロジーでスポーツの魅力を再発見
スポーツは人生を豊かにしてくれるかけがえのない友人ですが、年齢や体力・環境の変化等により、しばしば疎遠になってしまうことも。最新のテクノロジーを活用することで、スポーツの魅力と再会し再発見することができるかもしれません。今後の展開がますます楽しみな分野です。
有馬美穂
ライター・エディター。2004年に早稲田大学第一文学部を卒業。『VERY』等、さまざまな雑誌媒体で女性のライフスタイル、健康、教育、ジェンダー、ファッションについての取材執筆・構成を行う。