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接客オンデマンドAI(提供:ビーモーション)

話題の「感情分析AI」とは? 接客での円滑なコミュニケーションやエンタメにも活用

2024.11.01(最終更新日:2024.11.01)

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接客オンデマンドAI(提供:ビーモーション)

コンテンツを自ら生成する能力を持ち、さまざまな分野で活用されている生成AI。最近では、人間の感情や気持ちの変化を認識する「感情分析AI」の開発が進み、ビジネスはもちろん、医療や教育、エンタメなどのシーンで実用化され始めています。

また、今年5月には、AIチャットサービス「ChatGPT」を運営する米・OpenAIが、生成AIの最新モデル「GPT-4o」をリリース。テキストや音声、画像、映像を認識する能力が格段に向上し、より自然で流ちょうな会話が可能になりました。

人間と同じように感情豊かに話すGPT-4oの登場で、より注目度が高まっている感情分析AI。そこで今回は、音声や生体データなどから、人間の感情や気持ちの変化を読み取る生成AIのツール事例をご紹介します。

感情がわかりにくいオンラインカウンセリング…「気分推定モデル」で気分を数値化

オンラインカウンセリングにおける気分推定モデルの模式図(提供:コーセー)

化粧品メーカーのコーセーは2024年9月、関西大学の瀬島吉裕教授との共同研究で、オンラインカウンセリングにおいて顧客の気分を推定する数理モデル「気分推定モデル」を開発したことを発表しました。カウンセリング中の音声から、感情の変化をリアルタイムで察知し、顧客一人ひとりに寄り添ったサービスの提供を目的としています。

周囲を気にせずカウンセリングが受けられる一方、画面越しでは感情の機微を読み取るのが難しかったオンラインカウンセリング。気分推定モデルでは、顧客とビューティーコンサルタントの対話の雰囲気を、仮想的な温度空間としてモデル化。対話のやり取りが、熱の出入りに対応し、気分の上がり下がりを推定する仕組みです。

同研究では、20代~40代の男女15人を対象に、スキンケアに関するオンラインカウンセリングを実施。カウンセリングの録画を観ながら、そのときの主観的な気分を評価してもらったところ、「気分推定モデル」との高い一致度を示す結果が得られました。今後は、オンラインに限らず、あらゆる接客シーンで活用することを視野に入れています。

デジタルワーカーとして多様な接客ニーズに対応する「接客オンデマンドAI」

接客オンデマンドAI(提供:ビーモーション)

オンライン接客サービス「接客オンデマンド」を提供するビーモーションは今年2月、対話型生成AIチャット「接客オンデマンドAI」をリリース。大規模言語モデル(LLM)の技術を活かし、独自のプロンプト生成アルゴリズムによる高い推論力と回答精度で、自然な対話が実現。チャットボットタイプに加え、人間のような仕草で話すAIアバターも利用できます。

GPT(OpenAI API)連携により、固有の知識や専門用語を学習するだけでなく、OpenAIの学習データも活用可能。口調や言語を調整することができるなど、対話バリエーションも豊富です。顧客の質問に対して決まった返答をするのではなく、高いスキルを持った対面レベルの接客をすることができるため、優秀なデジタルワーカーとしての活躍が期待されています。

スムーズな接客かつ24時間365日対応可能な接客オンデマンドAI。実店舗での接客やインサイドセールスでの顧客対応を自動化・無人化できれば、人手不足の解消やコスト削減にもつながります。さらに、インバウンド需要が高まっている今、言語の壁を越えた対話ができる生成AIチャットは、幅広いシーンで活用できそうです。

プレイヤーの感情をリアルタイムで反映、インタラクティブなゲーム体験が楽しめる

スイス発のテック企業・OVOMIND(オボマインド)は、機械学習と独自のアルゴリズム解析による「リアルタイム感情推定システム」を開発。クラウドベースAI技術を駆使し、生体データをもとにユーザーの感情をリアルタイムで推定するもので、人間の感情の変化に応じて動作するアプリケーション開発に取り組んでいます。

今年9月に行われた「東京ゲームショウ2024」では、特許技術を使ったサバイバルホラーゲーム「Dead Shadow」を展示。同ゲームでは、プレイヤーが装着したスマートバンドのセンサーから、皮膚温度や心拍数、微弱な電流などの生体データを自動収集。AIがそれらのデータをもとに感情を分析し、ゲーム内のストーリーやアクション、キャラクターにリアルタイムで反映させます。

また、興奮やストレス、不安、恐怖、喜びなど、プレイヤーの感情をヒートマップに変換。感情を可視化することで、プレイヤーが各シーンでどのような感情を抱いていたかが一目でわかるため、ゲーム開発者のコンテンツ制作にも応用可能です。今後は、同技術により、圧倒的な没入感のあるコンテンツの登場が期待できそうです。

ライダーの感情を可視化する「感情センシングアプリ」、ツーリングの楽しさを助長

感情センシングアプリ(提供:ミルウス)

輸送用機器メーカーのヤマハ発動機は、横浜国立大学の島圭介教授、センサーデータ事業を手がけるミルウスとの共同研究で、ライダーの感情を可視化する「感情センシングアプリ」を開発。体に装着したベルト型センサーで心電データを取得し、生成AIがライダーの感情を推定。データをスマートフォンに送信し、地図上に表示するアプリケーションです。

推定された感情は地図上にプロットされ、ツーリング先のビューポイントで得られた感動や喜び、渋滞など交通環境での緊張やイライラ、眠気などを時系列でフィードバック。製品化が実現すれば、ライダーにとって、ツーリングの楽しさを助長してくれるほか、走行ルートと感情の変化を客観的に振り返ることで、安全運転のサポートも期待できそうです。

感情分析AIの今後…精度向上やプライバシー保護などの課題解決が求められる

感情分析AIは、多岐にわたる業種やシーンでの活用が見込まれています。しかし、音声や表情のとらえ方は文化や個人で異なるため、安定した結果が得られないという課題や、感情データの収集によるプライバシー侵害といった問題も。今後は、精度向上やリスク回避の技術的アプローチ、倫理的なガイドラインの策定などが求められています。


文/渡邊晃子
フリーライター。1983年生まれ。大学卒業後、会社勤務を経て、2010年からフリーランスのライターとして活動。WEB媒体を中心に、エンタメ、ライフスタイル、テック、子育てなどの分野で執筆を行う。