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サントリー食品インターナショナル提供

発注数や在庫管理、商品の値引きもAIで…食品ロス削減をAI活用で実現する企業の取り組み

2024.10.11(最終更新日:2024.10.11)

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サントリー食品インターナショナル提供

世界中で大きな問題となっている食品ロス。環境省によると、日本では、2022年度に約472万トンの食品ロスが発生したと推計されています。そのうち、事業者から発生している量は約236万トン。各企業では、食品ロス削減のため、需要予測精度の向上や過剰在庫の削減、賞味期限の延長、調理ロスの削減など、さまざまな取り組みを施策しています。(※)

また、食品ロスの課題を解決する方法として、過去の売上データや気象データなどをもとに、最適な生産量や発注量をAIが予測したり、AIで在庫管理を最適化したりといったAI活用が注目されています。そこで今回は、AI活用で食品ロス削減を実現している企業の取り組みを紹介します。

※環境省「食品ロスポータルサイト」
https://www.env.go.jp/recycle/foodloss/

店舗における余剰食品の発生を抑制…大手コンビニの次世代発注システム

ローソン提供

コンビニエンスストアの大手チェーン「ローソン」では、2024年5月からAIを活用した次世代発注システム「AIカスタマイズドオーダー(通称:AI.CO)」の導入を開始し、7月に全国での導入を完了しています。店舗における適正発注の実現による販売機会のロス削減、また余剰食品の発生抑制による食品ロス削減につながる取り組みです。

同システムは、天候や在庫状況、販売実績など、店舗ごとのデータをもとに、商品別の需要予測と発注をサポート。2015年に導入されたセミオート発注に比べ、より各店舗の特徴を反映しており、各商品の品ぞろえや発注において精度の高いサポートを実現しています。

また、「どの商品を何円値引きするか」についても、AIを活用。これまでは、商品の値引きに対し、店舗の経験値に頼る部分が大きかったところ、同システムでは、在庫状況に応じた値引き額や値引き時間を算出。より効果的に食品を売り切ることが可能になり、各店舗における業務負担の軽減にもつながっています。

ダンボール破損による食品ロス…飲料メーカー各社が共同実証実験中

サントリー食品インターナショナル提供

ペットボトル飲料などの輸送資材であるダンボールが破損しただけで、中身の品質に問題がないにも関わらず返品されてしまう食品ロス。「サントリー食品インターナショナル」「キリンビバレッジ」「コカ・コーラ ボトラーズジャパン」「セブン-イレブン・ジャパン」は、ダンボールの破損による食品ロス削減および物流課題の改善に共同で取り組んでいます。

これまでは、ダンボールに破れや角つぶれ、膨れなどが発生すると、商品の品質に関わらず、各社の倉庫ごとに目視で納品可否を行ってきました。そこで、「富士通」が開発したAIシステムを活用し、ダンボールの破損レベル判定を統一化。各社が判断基準を共有し、軽微な破損レベルの商品を流通させることで、食品ロス削減が期待できる施策です。

AIシステムの共同実証実験は、2023年6月より本格スタートし、2024年9月末まで実施予定。 各社の倉庫担当者が破損箇所をスマートフォンで撮影し、撮影した画像をデータベースと照合。AIの判定に基づき、倉庫担当者が入荷や出荷の可否を判断する仕組みです。今後は、多くの企業に参画を呼びかけ、さらなるAI精度の向上と判定基準の標準化を目指しています。

DXが遅れていた青果流通…需要予測システムで予測誤差率20.2%を実現

オイシックス・ラ・大地提供

食品業界のなかでも特に、青果流通では、中間流通での介在者が多く、デジタル化やシステムの連携が難しいとされてきました。データの分断やサイロ化が起こりやすく、DXが遅れていることが大きな課題になっています。

そこで、食品宅配サービス「Oisix」などを運営する「オイシックス・ラ・大地」では、データ活用を専門とする組織(DMO)を立ち上げ、同社初となるAIを活用した「需要予測システム」を導入。購買者の行動、購買データ、レシピデータ、販促データなどを学習させることにより、精度の高い需要予測が可能になりました。なお、2023年11月のローンチ後、1カ月で予測誤差率20.2%(旧ロジックと新ロジックにおける相対改善率)を実現しています。

また、「需要予測システム」の導入で、最適な発注数および在庫数を把握できるようになり、欠品率や在庫回転率も改善。特に、在庫回転率が上がったことで、流通過程で発生する食品ロス削減につながっています。

自動発注サービスの導入で、予測が難しい日配品の発注数を自動算出

シノプス提供

九州地方で展開する食品スーパーマーケット「食の蔵」では、全15店舗に需要予測型自動発注サービス「sinops-CLOUD」を導入予定。2024年3月より実店舗で実証実験をスタートし、現在、全店舗での本格稼働を目指しています。

ソフトウェアメーカー「シノプス」が開発した同サービスは、POSデータをもとにした1時間ごとの在庫や売上情報をリアルタイムで収集する「リアルタイム在庫」、天候やイベントなども加味して、時間帯別や45日先までの客数を予測する「客数予測」が可能。各店舗に合わせた発注数を把握できます。

また、賞味期限が短い日配品に特化した「日配」、常温で保存可能な加工食品に特化した「グロサリー」などの需要予測型自動発注サービスも採用予定。予測が難しい日配品とアイテム数が多いグロサリーの発注作業をシステム化し、最適な発注数をAIが自動算出することで、食品ロスの改善が期待されています。

足立区が食品ロス削減の実証実験をスタート…全区への展開も期待

足立区提供

企業だけでなく自治体でも、食品ロス削減に向けたさまざまな取り組みが行われています。東京都の足立区では、事業者から発生する食品ロスを削減すべく、AIを活用した実証実験を東京23区で初めて実施。売上や来店数、天候、カレンダー情報などをAIが分析し、来客数や需要を予測することで、仕込みや仕入れを調整する仕組みです。

2023年10月にスタートした実証実験は、2025年3月末まで実施予定。なお、「足立区食品ロス削減推進計画」では、2030年度までに食品ロスの発生量を2019年度比(約5,080トン)で21.6%削減することを掲げています。現在は、区内の飲食店や食品小売店4事業者が実証実験に参加。AIシステムによって食品ロス削減に効果があるか実証されれば、全区への展開も検討されています。

フードサプライチェーンにおける食品ロス…コスト削減のためにもAI活用は不可欠

「持続可能な開発目標(SDGs)」ではターゲットとして、2030年までに食品ロスを半減させることを掲げています。フードサプライチェーン全体において、過剰生産や過剰発注、売れ残り、パッケージ破損など、事業者の食品ロスはさまざま。生産コストや廃棄コストを削減するためにも、AIを活用した取り組みは今後も注目されそうです。



文/渡邊晃子
フリーライター。1983年生まれ。大学卒業後、会社勤務を経て、2010年からフリーランスのライターとして活動。WEB媒体を中心に、エンタメ、ライフスタイル、テック、子育てなどの分野で執筆を行う。