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キッコーマン提供写真

調味料は健康とおいしさを両立できる時代に…減塩技術の最新事例3つ

2024.10.04(最終更新日:2024.10.04)

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キッコーマン提供写真

日本が世界一の長寿国(※)であることはすでに広く知られている事実ですが、日本人の食事において心配されていることがあります。それは、「食塩摂取量(塩分摂取量)」。日本人の摂取量は1日約10グラム前後であり、世界保健機関(WHO)が推奨している5グラム未満の約2倍になっているのです。この状況に対し、厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」では、推奨される1日の塩分量は男性で7.5g、女性で6.5g未満に。ただし高血圧や慢性腎臓病(CKD)の重症化を予防するための塩分量は男女共に1日6g未満に設定されています。つまり減塩対策は多くの日本人にとって重要な課題に……。

対策を考えるべく減塩商品に目を向けてみると、従来のイメージとして少なくなかったのが、「減塩はつらい、おいしくない」という声。おいしさを我慢するようなものが多くあったのでしょう。しかし最近ではその概念を覆すような新しい減塩技術が確立されているといいます。そこで今回は“おいしい減塩”をテーマに、最新の注目事例をご紹介していきたいと思います。

※WHOが発表した世界保健統計2023年版において、日本人の平均寿命、健康寿命ともに世界1位。(平均寿命:男性81.5歳で2位、女性86.9歳で1位。健康寿命:男性72.6歳、女性75.5歳で共に1位)

おいしい減塩技術を実現させる最新事例

①「キッコーマン いつでも新鮮」シリーズの減塩しょうゆ

(左から)「キッコーマン いつでも新鮮シリーズ」の減塩しょうゆ(著者撮影)

まずは日本における定番調味料「しょうゆ」の事例からはじめていきましょう。一般的にしょうゆのおいしさは、色・味・香りのバランスが重要だと言われています。減塩しょうゆは味の重要な構成要素となる塩分が少ないために、その補い方が品質設計のポイントに。減塩しょうゆには一般的に2つの製法があります。濃くつくって希釈する「希釈法」と、通常のしょうゆから塩分だけを取り除く「脱塩法」です。「希釈法」は濃いしょうゆをつくって希釈するため、香りが薄まり、やや物足りない風味になるという課題があります。一方、「脱塩法」はしょうゆの香りや旨みはそのままに、専用の設備で塩分だけを取り除く方法で、希釈法の弱点を補う製法です。

そのような従来の製法を大きく変えたのが、キッコーマンの「いつでも新鮮 超減塩しょうゆ 食塩分66%カット」。同社は1965年に東京大学医学部からの要請で 「保健しょうゆ」を発売して以降、59年もの歳月で減塩しょうゆのおいしさを追求してきました。いつでも新鮮シリーズの減塩しょうゆとしては現在4種類で、最も注目すべきは、特許製法を採用したリニューアル商品「いつでも新鮮 超減塩しょうゆ 食塩分66%カット」です。

2024年6月にリニューアル、特許の新製法「超低塩法」を採用した「キッコーマン いつでも新鮮 超減塩しょうゆ 食塩分66%カット」(著者撮影)

通常のこいくちしょうゆ(食塩分17.5%)に比べ同社過去最高の66%カットを実現。すでに2020年から発売されていた商品の製造工程を見直し、しょうゆ本来の旨みや香りをより感じられるようにリニューアルされました。大きなポイントになるのが、特許取得(特許5836466号)の新製法「超低塩法」。従来の圧搾後に減塩する脱塩法や濃くつくって水で薄める希釈法とは異なり、 もろみの塩分濃度を超低塩で仕込む製法です。これを実現させたのは、超低塩でも発酵・醸造が可能な衛生面を最大限考慮した設備開発力、温度や発酵スピードの管理を可能にする高い技術力やノウハウにあり。この画期的な技術力によって、香りが薄まらず旨味成分を多く含む超特選規格での減塩しょうゆが完成したのです。

②“アミノ酸”のはたらきに注目した技術で塩分40%なのにおいしい冷凍チャーハン、餃子

(左から時計回りに)「おいしく塩分配慮 ギョーザ」「おいしく塩分配慮 エビピラフ」「白チャーハン」(いずれも2023年8月発売・著者撮影)

続いては、忙しい現代社会の中で時短料理を叶えてくれる「冷凍食品」の減塩技術について。味の素冷凍食品は、おいしさを損なわない独自の減塩技術を用いた減塩シリーズ商品を 発売しています。

そもそも食塩は食べ物をおいしくするために様々な役割を担っており、減塩をすると食感・保存性の低下や、塩味が感じづらくなることによるおいしさ・満足感の低下につながってしまいます。味の素グループでは“アミノ酸”のはたらきを活用し、おいしさを損なわない独自の減塩技術を開発しました。

具体的には、塩味を補うために塩化カリウム(ミネラルの一種)を用いるのですが、苦みを有する成分のためその点をケアする必要があります。味の素グループの独自技術を活用することで、この苦みをマスキングしまろやかでおいしい塩味を再現しています。さらに、同社はメニューに応じて、先味~中味~後味の構成要素を特定し味を補強するレシピをつくることで、減塩してもおいしさをそこなうことのない味を再現しています。


実際に試食して驚いたのは、「白チャーハン」。直火焼豚、卵、白葱を使用したシンプルな具材と味付けにも関わらず、減塩と言われなければ分からないレベルでおいしさを堪能できました。チャーハン同社従来品比で塩分 40%カットを実現しています。

③塩分を吸着!?ファイバーを配合した食卓塩

零 しお(トイメディカル株式会社)

最後は、日本初の“塩分吸着ファイバー”を応用した塩分コントロール技術について。熊本にあるトイメディカルが2024年4月に発売した「零 しお」は、従来の減塩調味料とは異なるメカニズムを持つ調味料。ポイントになるのが、昆布などの海藻に含まれる食物繊維である「アルギン酸類」。

同社は、海藻に含まれる食物繊維「アルギン酸類」が塩分を吸着する働きを応用し、塩分吸着ファイバーを開発。(トイメディカル株式会社)

同社はアルギン酸類が塩分を吸着する働きがあることに着目し、体内に入った時に塩分の吸収をコントロールする技術を確立させました。これは、海藻より抽出したアルギン酸類の塩分吸着機能に着目した、食事中の塩分量を減らすのではなく、吸着によって体内への吸収をコントロールする技術。具体的には、親水性アルギン酸塩と疎水性アルギン酸塩をバランス良く配合した塩分吸着ファイバー(特許第6497764号)を独自配合。通常の食卓塩と同様に塩味を感じながらも減塩効果を実現できる画期的な商品です。

体内に入った時の機序は次の通り。胃の中でアルギン酸類が食事中に含まれる塩分をキャッチ、ゲル状になったまま体内に吸収されることなく移動し、最終的に便として塩分を排出するという流れです。つまり、塩分吸着をするのは特定の減塩食品ではなく、食事全体が対象に。食事の味を変えずに減塩効果が期待できます。

同じ減塩というコンセプトであっても、開発技術や作用機序はますます多様に進化していくことでしょう。これから減塩生活を考えている皆さん、どのタイプが自身の食生活をおいしくサポートしてくれるのか、実際に自分の舌で試してみてはいかがでしょうか。

<著者>
スギアカツキ
食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。