災害時に最も困るトイレ問題

いざ被災した際に切実な問題となるのが「トイレ」です。仮設トイレは届くまでに数日かかるうえ、道路状況などによってはさらに日数を要する場合もあります。トイレに行かないように水分や食事を控えたり、トイレを我慢したりするなど、重大な健康への影響が起こる場合もあり、防災トイレはマストで備えたいもののひとつです。
しかし、内閣府の調査によると、各家庭での災害時トイレ備蓄率は約2割という状況です。自分が1日に何度トイレに行くのか数えたうえ、家族の人数×7日分を準備することが推奨されていますので、ぜひ見直してみましょう。
また、パブリック向けのトイレにも、災害時を想定した商品が登場しています。株式会社LIXILの「レジリエンストイレ」は、平常時は洗浄水量5Lの水洗トイレとして、断水時には水量をたった1Lまで減らして使用することが可能です(ただ、水道管が破裂している場合など、水を流してはいけない場合があるので注意が必要です)。
通常のトイレでは断水時、タンクへ水を入れるのではなく、バケツいっぱいの水を直接便器に勢いよく流し込むことで汚物を流すことが推奨されています。しかしこの方法では水飛びが発生し床や体が汚れ不衛生であることや、一回ごとにバケツ一杯以上の水が必要で、水を運ぶことへの負担も生じます。
このレジリエンストイレは、一般的な便器とは構造が異なり、洗浄ハンドルによって開閉弁を強制的に開き、汚物を配管に排出します。ペットボトル2本分で流せるのは画期的ですね。
まるでドラゴンボールの仙豆?スマホのように携帯する未来の完全食

地震や台風などで新幹線や飛行機が止まることも目立ったこの夏。いざ本当に被災して避難生活を余儀なくされたときだけでなく、移動時の安心を確保するためにもチェックしておきたいのが「非常食」です。
そのなかで昨今注目されているものといえば、「完全栄養食」ではないでしょうか。完全栄養食とは、手軽に必須栄養素が取れる食品のこと。タイパが重んじられ、食事にかける時間や手間、お金を節約する志向の拡大により支持を集めています。パンやパスタ、スムージー、グラノーラ、カップ麺など「完全栄養」と謳った商品もスーパーで見かけるようになりました。一人暮らしの人が増えるなか、さらに選択肢が増えていくと予想されます。
そのようななかで開発され、なじみのある食品として出てきている他商品とは一線を画すものがあります。株式会社レットの「携帯完全栄養タブレット」です。特許技術によって、スマホのように持ち運べるのに完全栄養が摂れる、まさに未来の完全栄養食です。
この携帯完全栄養タブレットは、ポケットに入れて持ち運べるほどの世界最小サイズのパッケージが売り。これで人間が1日に必要な栄養素の3分の1を摂取可能です。水分を含まず完全密閉されているので、賞味期限は1年以上あります。バッグに入れっぱなしにしておき、外出時のいざというときに備えることもできますね。
気になる味ですが、実はこちら口臭予防もできる、その名のとおり「タブレット」なんです。これをご飯がわりにするのはちょっとディストピア感が漂うところ。非常食・携帯食と捉えたほうがよさそうです。
とはいえ、水も要らず手軽に栄養補給できるのは、いざというとき心強いはず。開発会社はドラゴンボールに出てくる、強力な回復力を持つ「仙豆」にたとえていますが、まさにそんな未来感あるアイテムです。自宅を遠く離れて行動するときの携行品として、また被災時の安心のために家に備えておいてもよいかもしれません。
化学の力で温める「モーリアンヒートパック」

特に冬場の被災で辛いのが、「寒さ」です。災害時、低体温のリスクにさらされるのは寒冷地だけではありません。寒さ対策としても、また被災時のQOLを上げるためにも温かいものを食べたいところですが、電気・ガスなどのライフラインが不通では手軽に非常食を温めることもできません。カセットコンロを活用する方法もありますが、場所を問わず火を使わずに温められるアイテムを常備しておくことも、安心を確保するひとつの方法です。
おすすめは「モーリアンヒートパック」。キャンプなどに携行している人も多いこちらは、使い切りの発熱剤と繰り返し使用できる加熱袋がセットになったもの。家庭で備蓄されるだけでなく、陸上自衛隊や外国の軍隊、地方自治体や企業備蓄としても採用されています。
使い方はとても簡単で、缶詰やレトルト食品などを加熱袋に入れて水を注ぐだけ。水はペットボトルの水でも、雨水でも川の水でもOKです。少量の水に発熱剤が反応し水蒸気が発生、15〜20分ほどで中に入れたものが温まります。
レトルト食品のほか、お酒や缶コーヒーの温めや、ゆで卵や蒸し野菜を作ることも。家や車にいくつか常備しておくと、安心につながりそうです。価格は、Lサイズの発熱剤3つと加熱袋1つで1,000円程度(Amazon価格)です。
災害への備えは日頃から
いつ起きるか予測できない災害。そのときへの備えは、自治体任せ・他人任せにはしていられません。自分や大切な家族、地域の人を守っていくためにも、備えが十分か確認したいものです。災害時のアイテムもバラエティに富んできており、また昨今のアウトドアブームもあって平常時でも活用したいものが増えてきました。ぜひ「非常時視点」で、便利アイテムを探してみてください。
有馬美穂
ライター。2004年早稲田大学卒業。『VERY』をはじめ、さまざまな雑誌媒体等で主にライフスタイル、女性の健康、教育、ジェンダー、ファッションについての取材執筆を行う。