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夏休みの自由研究、転職活動、フリマアプリの出品…急速に発展する「生成AI」、身近な活用事例は?

2024.09.05(最終更新日:2024.09.05)

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国内外で急速に活用が広がっている「生成AI」。従来のAIとは異なり、テキストや画像、音声、動画、音楽など、新しいコンテンツを生成する能力を持った人工知能の一種です。米オープンAIのAIチャットサービス「ChatGPT」をはじめ、実用的なツールが次々に登場し、ビジネスシーンや日常生活に浸透しつつあります。

生成AIは、業務の効率化はもちろん、クリエイティビティや日々の暮らしにも役立つツールとして、発展が期待できる分野。現在、あらゆる業界において、生成AIの積極的な活用が始まっています。そこで今回は、身近に活用されている生成AIのサービスや企業の取り組みを紹介します。

自由研究のテーマ探しをサポート、子供の安全安心にも配慮した設計

昨年度の「自由研究お助けAI」(ベネッセコーポレーション提供)

小学生の子供を持つ家庭において、夏休みの悩みの種でもある自由研究。ベネッセコーポレーション(岡山県岡山市)の進研ゼミ小学講座では、昨年7月から、ChatGPT活用ツール「自由研究お助けAI」をスタートしています。学習向けに独自にカスタマイズした生成AIで、自由研究のアイデアやテーマを見つけるためのヒントを提供するサービスです。

「どのようなテーマを調べたらいいのかわからない……」というお悩みに応えてくれる、自由研究お助けAI。一つの答えを提示するのではなく、AIキャラクターとのやりとりの中で、自分では考えつかなかったアイデアやテーマを見つけることができます。

また、利用前の保護者によるログイン認証をはじめ、保護者と子供に向けた生成AIの使い方やルールといった情報リテラシー学習の導入など、子供の安心安全にも配慮。「“読書感想文を書いて”といった目的外の利用には回答しない」「子供が好奇心のまま単純な質問を繰り返さないよう一日の質問回数を制限する」など、さまざまな工夫も盛り込まれています。

生成AIの活用について、頻繁に議論が交わされている教育現場。自由研究お助けAIでは、情報漏えい対策として、入力内容を生成AIの再学習に利用しない方式が採用されています。なお、提供2年目となる今年は、よりわかりやすく使いやすいデザインに改訂し、自由研究おたすけチャットとして、会員向けに提供中です。また、昨年の好評を受けて、今年は「進研ゼミ中学講座でも同サービスを提供中ということです。

転職活動の“職務経歴書”を自動作成、スカウト受信数40%アップの成果も

GPTモデルのレジュメ自動作成機能(ビズリーチ提供)

転職サイト「ビズリーチ」を運営するビズリーチ(東京都渋谷区)は、昨年7月、東京大学マーケットデザインセンターとの共同研究で「GPTモデルのレジュメ自動作成機能」(以下、GPTツール)を検証。GPTツールを活用することで、ユーザーの職務経歴書の内容を効率的に充実させることができるサービスです。

総務省による労働力調査では、2023年の転職希望者数は1,007万人と7年連続で増加。転職することが一般的になった今、職務経歴書の作成は、転職活動の第一歩といえます。企業の採用担当者やヘッドハンターは、職務経歴書を確認してスカウトを送るため、自身の強みや実績をわかりやすくテキスト化できなければ、質の高いマッチング機会が得られません。

GPTツールは、そんな転職活動において極めて重要かつ、負担も大きい職務経歴書作成をサポート。職種やポジション、業務のミッション、業務領域など、簡単な質問に回答するだけで、生成AIが業務内容のテキストを自動で作成してくれます。ユーザーは、生成結果を自身で編集するだけで、プロフェッショナルな職務経歴書を作成できます。

キーワード入力の際も、ビズリーチ上に蓄積された膨大なデータをもとに会員に合った入力内容が推薦され、会員は推薦されたキーワードを選択あるいは入力するだけで、企業やヘッドハンターがスカウト送信の判断を行いやすい、内容が整理された業務内容を作成できるということです。

また、東京大学マーケットデザインセンターと同社の検証によると、GPTツールを使用して職務経歴書を更新したユーザーと、使用せずに更新したユーザーを比較したところ、GPTツールを使用したユーザーのほうが、スカウト受信数が40%向上するという成果も上げています。

東京大学大学院経済学研究科教授で東京大学マーケットデザインセンター センター長の小島武仁さんは「今回の検証では、GPTツールを使ったユーザーがより多くのスカウトを受け取ることが実際に確認され、ツールの有効性の大きなエビデンスが得られたと思います。さらに実際に職務経歴書を日常的に読み込んでいるコンシェルジュによる評価も組み合わせることで、GPTツールが実際に職務経歴書の質向上に寄与しているというエビデンスも得られました。」とコメントしています。

よりよいスカウトを受け取るために、生成AIを活用したプロフェッショナルな職務経歴書は、必須のものとなりそうです。なお、同社では採用企業向けに求人の作成をサポートする「GPTモデルの求人自動作成機能」もリリース。2024年中にはビズリーチを導入する全企業が利用可能となる予定です。

出品商品をより売れやすくするために、ユーザーの最適行動を手助け

メルカリAIアシスト(メルカリ提供)

メルカリが運営するフリマアプリ「メルカリ」では、2023年10月から、ユーザーに向けたAIアシスタント機能「メルカリAIアシスト」をスタート。生成AIと大規模言語モデル(LLM)を活用し、出品や購入、困りごとの解決など、ユーザーの利用時に最適な行動をアシストしてくれます。

メルカリAIアシストでは、第1弾の機能として、「出品商品の改善提案機能」を導入。一定期間売れ残っている出品商品に対して、AIがメルカリの過去の情報を元に商品情報の改善提案を行います。商品サイズや購入時価格など、追記すべき内容を提案するだけでなく、おすすめの商品名等を自動生成したり、商品サイズや購入時価格などの追記情報を提案したり、一人ひとりに合ったサポートが受けられます。

さらに、商品検索時に利用できる機能も増設。欲しい物のイメージをもとにチャット検索する機能で、メルカリAIアシストからの質問に回答していくと、いくつかの検索結果を出力してくれます。一日に利用できる回数には上限がありますが、スムーズなお買い物が期待できそうです。(現在、メルカリAIアシストは一部のユーザーのみ利用可能)

アイデアや便利さを得られる生成AI、デメリットの理解も大切

わたしたちの生活の中で、急速に拡大しつつある生成AI。ツールの充実でアイデアや便利さを享受できる一方で、「提案された内容が正確ではない」「不適切な内容が含まれる可能性がある」「出力結果の品質を安定させるのが難しい」など、さまざまな課題も挙げられます。現時点での生成AIは発展途上のため、メリットだけでなく、デメリットも理解して正しく利用することが、安心安全につながるといえそうです。


文/渡邊晃子
フリーライター。1983年生まれ。大学卒業後、会社勤務を経て、2010年からフリーランスのライターとして活動。WEB媒体を中心に、エンタメ、ライフスタイル、テック、子育てなどの分野で執筆を行う。