数日の冷蔵保存が常識だった豆腐が、常温120日間可能に
豆腐と言えば、冷蔵保存が当たり前。保存期間は決して長くはないというのが定説でした。この常識を覆したのが、四国化工機株式会社のグループ会社であるさとの雪食品(徳島県鳴門市大津町)という豆腐専門メーカー。同社が2021年に販売した豆腐「ずっとおいしい豆腐」は、常温で120日保存が可能になっています。
保存料を使っているのでは? と疑問がわきますが、国産大豆100%、昔ながらのにがり100%、四国の美味しい水を使用し、保存料や消泡材は不使用で製造されています。なぜこのようなことが可能になったのでしょうか? その答えは、四国化工機グループが持つ3つの事業(機械事業・包装資材事業・食品事業)で長年培った技術とこだわりを結集したことにあります。具体的には、無菌空間で容器を成形して豆乳とにがりを密封する無菌充填技術。豆腐の風味を損なう原因の酸素と光をブロックする特殊な紙包材を開発。豆乳無菌化技術の確立です。
これらの豆腐は、備蓄品としての活用はもちろんのこと、持ち運びがしにくかったアウトドアシーンでの携帯にも活躍が期待されています。
水戻し不要、常温保存可能なソフトわかめを製造。トレーサビリティも徹底。
続いては、「わかめ」。大半のワカメは塩蔵タイプや乾燥タイプを水で戻す必要がありました。この水で戻す工程が面倒と感じる現代人のニーズを反映したのが、理研ビタミン(本社:東京都新宿区)から発売された「あえるわかめちゃん ナムル風うま塩味」。
同商品は水戻し不要なソフトタイプのわかめで、調味料を加えなくても野菜と和えるだけで簡単に和えものが作れます。製造にあたり、品質の安定性を保ちつつ水戻し不要でおいしく食べられる水分量に仕上げる製造条件を確立し、独自の調味技術でこれまでにない味種のソフトタイプわかめの開発に成功しました。
同社グループは、独自のトレーサビリティシステム(※)を採用。原料となるわかめがどこでどのように育てられたか、どのように加工・流通されたかを追跡できるようにしています。さらに、わかめに含まれる微量元素を分析して科学的に産地を推定し、トレーサビリティ記録と比較する検査を行っています。
※トレーサビリティ
「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにすべく、原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすること。
“漁師が食べる鮮度”を追求した「生ホッキ貝」の特殊冷凍技術
獲れたての魚介を生のままおいしく味わうこと。誰もが一度は夢見たことのある願望ではないでしょうか? 鮮度維持や流通面での進化はあるものの、地元の漁師だけが味わえるにとどまっていた食材は少なくありません。その一つが、北海道白糠町の「ホッキ貝」であり、それを輝かせたのが、「地域に根を張り、日本を興す」というコンセプトのもと、地域産業課題の解決をおこなうイミュー(本社:東京都品川区)です。
朝獲れたホッキを鮮度がよいうちに洗浄やハラワタの掃除、カットをして特殊冷凍機で即冷凍。マイクロウインドシステムという冷却方式により、冷気の気流が多方向に移動して食材を取り囲むことで高速冷却が可能に。また冷凍時に小さな氷結晶を作ることで細胞膜が破壊されずに解凍後の鮮度や風味を保つことができます。このような画期的な冷凍技術はふるさと納税品などにも少しずつ採用されつつあります。
実際に注文して冷凍状態のホッキ貝を観察してみましたが、身崩れしたり霜が降りるなどは一切なく、ピンと鮮度を保ったままの様子がすぐにわかりました。そして流水解凍で食べた時の感動は忘れられません。
AIを駆使した外観検査
最後は異物混入対策に関する最新システムのご紹介。フツパー(本社:大阪市淀川区)が提供する「メキキバイト」は、製造現場の外観検査の自動化と品質管理の強化を支援するソリューションです。検査の自動化、省人化、検査精度向上だけでなく、検査結果のデータ化、管理図への変換などを行う品質管理機能を標準搭載。管理図から品質の傾向分析を行い、不良原因を特定することで、そもそも不良を出さない工場作りをサポートするなど、フードロスや生産工数削減へも寄与することが期待できます。
メキキバイトは、食品機械業界において貢献した企業に贈られる第3回FOOMAアワード審査委員会賞を受賞するなど、業界内でも大きく注目されています。このように検査だけにとどまらないワンストップのシステム&サービスはこれからのスタンダードになっていくに違いありません。
いかがでしたか? 食品を生み出す製造機器の技術は食文化の多様化やグローバル化にともなって、可能性は無限大に広がりつつあります。和食が世界中いろいろなシーンで花開く時代もそう遠くはありません。
今回ご紹介した事例はごく一部ですが、様々な技術が進化し融合することで、食の安全・安心はますます深まっていくのではないでしょうか? もちろん私たちがそれらを理解していく姿勢も大切ですから、日々の情報発信に関心を寄せていくことにしましょう!
<著者>
スギアカツキ
食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。