筋肉の動きを可視化、効率的なトレーニングをサポート
まず、「モチベーションが続かない」「トレーニングをしても効果がでない」といった筋トレ初心者や中級者の悩みを解決するガジェットとして、プラタナスの木株式会社が開発した「カラダスコープ」を紹介します。カラダスコープは、筋トレ中の筋肉の動きを可視化してトレーニングをサポートしてくれる小型のデバイス。2023年8月に東京ビッグサイトで開催された「SPORTEC2023」にも出展され、話題を集めました。
使い方は簡単で、トレーニング時に腕や太ももなどの鍛えたい部位に取りつけて、iPhoneの専用アプリを起動するだけ。デバイスには筋肉の動きを読み取るセンサーがついており、トレーニングを開始するとセンサーが筋肉の収縮情報を感知。読み取った情報は、連動する専用アプリにリアルタイムで無線送信されます。送信された筋肉の収縮情報は、アプリ画面で瞬時に確認が可能。筋肉の収縮度合いがインジゲーターでリアルタイム表示されるため、ユーザーは鍛えたい筋肉を効果的に動かせているかどうかを確認しながらトレーニングを進めることができます。
アプリ画面では、トレーニングの手順を解説した動画の視聴も可能。正しい動きやコツ、初心者が間違えそうな注意点なども解説してくれるため、無茶な運動による怪我を防ぎ、効果的で安全なトレーニングへと導いてくれます。
また、視覚情報だけでなく、音で筋肉の収縮度合いを伝えてくれる機能も。いまの動きが「効果的なトレーニングだったのか」、それとも「最低限のトレーニングだったのか」を音で判断できるため、ユーザーはiPhone画面を見続ける必要がなく、効率よくトレーニングが行えているかを知ることができます。さらに、設定された回数を終えると音で知らせてくれる機能も。必要以上に運動を続けてしまう心配もありません。
ほかにもカラダスコープは、自己流で筋トレをするユーザーへの専任トレーナーのような役割も担っています。アプリを起動してデータを入力すると、男女の身体の違いや体格別の波形を認知したうえで、最適な筋トレ方法を提案。さらに鍛えたい部位に合わせたトレーニングや理想の体に近づくためのプランも案内してくれます。多くの筋トレ初心者が抱える「なにをしたらいいかわからない」といった悩みも解消してくれるでしょう。
行ったトレーニング名や回数は自動で保存されるため、トレーニングの振り返りやモチベーション維持にも繋がります。さらにトレーニングの悩みを専門家に直接相談できる「アナライズメニュー」も用意されており、1人でトレーニングを始める人へのケアやサービスも充実しています。デバイスとiPhoneさえあれば、外出先でも手軽にトレーニングが行えるのもメリットですね。
写真で身体の歪みや将来の自分の姿がわかる!?
体作りには普段の姿勢の歪みを直すことも大切です。株式会社Sapeetが提供する「シセイカルテ」は、AIによる画像分析で写真から身体の歪みを可視化してくれるサービス。分析結果からその人にあったエクササイズの提案まで行ってくれます。
使い方の手順もいたってシンプル。まずは正面や横向きなどの身体全体の写真をタブレットで数枚撮影します。撮影された写真は、最先端の画像解析技術によっておよそ3分程度で分析可能。分析が完了すると、撮影した人の姿勢が点数化され、同世代の人と比較したランクを知ることができます。さらに「頭の左右傾き」や「肩の左右位置ずれ」など、身体の前後左右の歪みを自動で測定してグラフ化。たとえば「頭が左に4.5度傾いている」や「肩が右に0.6cmずれている」といった詳細なデータが項目ごとに確認できます。O脚やX脚、ストレートネックなどの身体の状態も指摘してくれるため、本人が意識していなかった身体の歪みにも気づけるでしょう。
また、分析したデータから「その人が将来どんな姿勢になっているか」をAIが予測して3Dモデルで再現することも可能です。将来「筋肉が硬くなりやすい部位」や「脂肪がつきやすい部位」なども色つきでわかりやすく表現。分析結果に応じたエクササイズも提案してくれるため、分析したその日から姿勢改善に向けたトレーニングが始められます。診断結果は自分専用のカルテとして蓄積され、最新のデータとの比較も行えます。どのくらい変化したのかが数値や視覚で確認できるため、モチベーションを維持しながらトレーニングを続けられるでしょう。
シセイカルテは2020年1月からサービスを開始し、昨年には累計の姿勢分析数100万件を突破。整骨院や整体院、フィットネスクラブ、歯科医院といった身体にまつわるサービスを提供する様々な企業での導入が進んでいます。
自宅ではできないトレーニングができる…AI無人個室ジム
最先端技術により、トレーニングジムも進化しています。株式会社ONE SLASH ONEは、昨年世界初の全自動トレーニングマシンを取り入れた革新的なトレーニングジム「1/workout」をパイロットオープンしました。
バーベル種目のなかでも、スクワット、デッドリフト、ベンチプレスの3種目は、通称「バーベルBIG3」と呼ばれ、同時に複数の筋肉と体幹が鍛えられる効果の高いトレーニングです。しかし、種目ごとに重いプレートを付け替えるなどのセットアップが必要なため、初心者にはハードルが高いイメージがありました。
1/workoutの「スマートパワーラック」は、面倒で大変なバーベルのセットアップを自動的に行ってくれます。さらに本人の体格や筋力に合わせてセットアップされるため、初心者でも安心してトレーニングが可能です。
また、最新のスポーツ科学理論に基づき、バーベル速度という新たな指標を導入。バーベル速度とは、バーベルを全速力で持ち上げる速度のことです。バーベル速度を計測することでユーザーの最大筋力を推定し、その人に合った最適な重量や反復回数の算出が可能。計測中はリアルタイムでバーベル速度の確認ができるため、アトラクションゲームのように楽しみながらトレーニングに取り組めます。
最先端技術は従来のトレーニングの常識を変える
これまでは、成果が実感できるまで長い期間を要していた筋トレ。しかし最新の技術によって、筋肉の動きをリアルタイムで確認しながらトレーニングをしたり、自分の体型を数値やモデルで客観的に分析したりすることが可能になりました。
また、 1/workoutのような最先端の技術や科学理論を取り入れたジムが今後も登場し、効果の高いトレーニングがより手軽に行えるようになると期待できます。街中に健康的で鍛え上げられた人ばかりを見かけるような未来も、そう遠くないかもしれません。
吉田康介(フリーライター)
IT・テック系を中心に、各種Web媒体で記事を執筆。大学では社会学を専攻し、その後IT系のメーカー勤務・編集プロダクション勤務を経て独立。
フリーライターとして活動中。「最新テクノロジーと食文化」、「最新テクノロジーとスポーツ」など、テクノロジーとその他のジャンルをかけ合わせた記事を得意としている。