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「休憩所」から「目的地」へ。進化が目覚ましい「サービスエリア」で導入される、最先端テクノロジー

2024.07.17(最終更新日:2024.07.17)

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かつてのサービスエリアは代わり映えのしないメニューが並ぶ食堂に、老朽化した無機質な建物…ドライブの休憩に立ち寄るだけで足早に去る場所でした――。ところが2005年に民営化されて以降は、景色が一変。娯楽施設化、多様化が始まり革新的な進化を遂げています。今やサービスエリアは「休憩に立ち寄る場所」から「目的地」へ。子ども連れファミリーやペット同伴でも楽しめる人気スポットです。本記事では、人と車が絶え間なく往来するサービスエリアのスムーズな運営、快適なサービスを支えるテクノロジーを紹介します。

トイレ内の急病人や忘れ物が検知できるセンサー

(天井に設置されている「アウトラインセンサー」/NEXCO中日本より提供)

はじめにご紹介するのは、急病人や忘れ物など、サービスエリアの個室トイレにおけるトラブルを防止するサービスです。

高速道路の建設やサービスエリアの運営などを手掛ける中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)は、トイレで動けなくなった急病人や忘れ物を早期発見するサービス「アウトラインセンサー」を2018年度にスタートしました。

かつて、サービスエリア・パーキングエリアにおける遺失物の問い合わせ件数は年間で約2万件以上にものぼり、その多くがトイレ内で発生しているという状況でした。そんななかトイレ内の忘れ物を防止し、遺失物を担当するスタッフの作業負担を軽減するために開発されたのが「アウトラインセンサー」です。(開発はグループ会社である中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社が担当)

(「アウトラインセンサー」が設置されたトイレブース/NEXCO中日本より提供)

個室の天井に設置すると、人や物のシルエットを検知することができます。さらにドアの開閉信号と連動し、忘れ物や急病で動けなくなった人が取り残されていることを認識して知らせます。

同サービスは現在、東名高速道路や新東名高速道路などのサービスエリア、パーキングエリア内のトイレブース66ヵ所に設置されています。たとえば、海老名サービスエリア(下り)のブースに残された忘れ物の件数は導入後に約4割減少しており、忘れ物防止策として大きく貢献しています。

同サービスは現在も引き続き研究が進められており、今後も継続的なアップデートと、精度の向上が見込まれています。

ゴミを自動で圧縮しリアルタイムで管理できるスマートリサイクルボックス

(スマートリサイクルボックス「SmaGO」/オアシスパークより提供)

次にご紹介するのは、あらゆる「もの」とインターネットを繋ぐIoT技術を活用したスマートリサイクルボックスの事例です。

NEXCO中日本とグループ会社のオアシスパーク、フォーステックが展開するスマートリサイクルボックス「SmaGO」は、ソーラー発電で稼働するゴミ箱です。一般ゴミを自動で約5倍まで圧縮することができ、約600リットルのゴミを125リットルまで圧縮・収容するパワーがあります。

(オアシスパークより提供)

「SmaGO」のもう一つの特徴は、ボックス内の蓄積状況がネットを通じてリアルタイムで認識・分析できるところです。この機能があることで、ゴミの回収頻度を半減させ、清掃スタッフの負担を軽減することができます。

実際に「導入前は1日4回にわたりボックス内収集を行っていたところ、導入後は2回に半減し、収集に伴い行っている清掃の範囲を広げることに成功した」という声が届いています。さらに、かつては来場者数が増加するゴールデンウィークなどのタイミングでは必ずゴミ箱の増設が行われていましたが、導入後は増設する必要がなくなり、エリア内衛生管理の効率化に大きく貢献しています。

また、「SmaGO」は屋外広告メディアとしての役割を兼ね備えており、従来のごみ箱のイメージを一新するカラフルでインパクトのあるデザインはユーザーからも「絵柄が可愛い」と評判です。さらに、視認性も向上するといううれしい相乗効果があり「ゴミを抱えたまま、ボックスを探して右往左往する……」といった状況が減り、ゴミ箱としての機能向上にも一役買っています。

現在の設置状況は、東海北陸道・川島パーキングエリア(下り)に1ヵ所、隣接する世界淡水魚園、通称オアシスパーク(以下、オアシスパーク)に8ヵ所、計9ヵ所に30台です。オアシスパークでは、現在の設置台数で十分に役割を果たせているため新たに増設する予定はありませんが、今後違う公園を管理することになった場合は取り入れていく意向で、今後もIoTを活用した良いサービスがあれば導入する方針です。

リモートでの監視・育成管理が可能な植物シェード

(「IoT緑化シェード」/中日本エクシスより提供)

サービスエリアに涼しく心地よい、植物がつくる日陰の空間を提供する「植物シェード」にも、最新テクノロジーが導入されています。

NEXCO中日本と中日本エクシスは2024年4月18日~10月27日までの期間限定で、IoT技術を組み込んだパッションフルーツでできたシェード「IoT緑化シェード」のサービスを実施しています。東海地区最大級のサービスエリア・岡崎サービスエリア(下り)側園地部に設置し、反響を呼んでいます。

「IoT緑化シェード」は三菱電機の名古屋製作所が創出しました。持続可能な社会への貢献を掲げるNEXCO中日本グループの脱炭素化への取り組みと合致したことから、この度実証実験に至りました。

(中日本エクシスより提供)

この植物シェードは、パッションフルーツの葉や花が生み出す屋根と気化熱によって屋外に涼しい空間を作り出すことができます。シェード内にセンサーやカメラなどが組み込まれており、IoT技術が使用されているのが特徴です。水やり、ミスト量の調整が自動で行われ、リモートで育成管理・監視・することができます。

現在同シェードはファミリーやライダーの休憩場所として喜ばれており、夜間にはライトアップされる写真を撮る利用者も見られるなど、来場者の憩いの場として機能しています。また、シェード内の「IoT」説明ボードを熱心に読んでいる利用者もおり、脱炭素化の意義を広く周知するという目的にも貢献しています。

サービスエリアはテクノロジーの力で快適に

急病人や忘れ物のサポート、リサイクルボックス、ドライブの疲れを癒す植物シェード……サービスエリアでは、最新テクノロジーが利用者と運営者をさまざまな形で支えていました。技術発展とともに、今後ますます魅力的を増していくであろうサービスエリアから、今後とも目が離せません。


文/カワハタユウタロウ
フリーライター。大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、Eコマース・通販関連業界紙の編集部に約7年間所属。その後、新聞社系エンタメニュースサイトの編集部で記者として活動。2017年からフリーランスのライターとして、エンタメ、飲食、企業ブランディングなどの分野で活動中。