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モビリティ・マネジメントとは?効果やメリット、具体例を紹介

2022.05.09(最終更新日:2022.09.15)

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モビリティ・マネジメント(Mobility Management、略称MM)は、「一人ひとりの意識や行動を十分に踏まえ、交通の問題を考える」ことを基本の概念とした、住民や地域を対象にコミュニケーションなどを通じて行う交通政策のことを指します。
この取り組みは、短期的なものではなく継続が求められるため、どのようなものなのかを理解しておくことは大切です。
そこで今回は、モビリティ・マネジメントとは何か、効果やメリット、具体例などを紹介します。

モビリティ・マネジメントとは

現在、日本では環境問題や道路渋滞、公共交通の利用者離れによる地域モビリティ(移動)の質の低下など、さまざまな問題が生じています。
これらの問題を解消するためには、「過度に自動車に頼る状態」から「公共交通や徒歩などを含めた多様な交通手段を適度に(=かしこく)利用する状態」へ少しずつ転換していくモビリティ・マネジメントという取り組みが必要なのです。
この取り組みは、一人ひとりの住民や職場組織などに働きかけ、自発的な行動の転換を促していく点が特徴となっています。

施策の種類

「自発的な行動の変化」をサポートするモビリティ・マネジメントは、以下の3つの施策に分けることができます。

施策 施策概要
コミュニケーション施策 コミュニケーションを通じて意識・認知に直接働きかける施策
交通整備・運用改善施策 公共交通の利便性向上や料金政策、自動車の利用規制や課金施策など
一時的な交通運用改善施策 一時的な料金値下げや無料パス・チケットの配布などの公共交通施策、一時的な道路通行止めやロードプライシングなど

コミュニケーション施策と交通整備・運用改善施策を組み合わせることで、自発的な行動の変化がより大きく期待できるとされています。
しかし、財源や合意形成などに問題が生じた場合、交通整備・運用改善施策の実施が難しくなるケースもあるため、一時的な交通運用改善施策を補助的に行い、自発的な行動の変化を促すようにしています。

施策の対象

モビリティ・マネジメントは、以下の4つが実施の対象になります。

対象 期待できる効果
居住者(地域住民や転入者) 年齢や職業に関係なく、地域固有の交通問題の改善
学校などの教育機関 子どもたちに向けた将来の交通のあり方の改善可能性
企業の従業員 交通に占める割合の高い通勤手段や業務交通の効率的な行動変容
特定路線の利用者や沿線住民 該当路線の効率的な利用促進

モビリティ・マネジメントの効果・メリット

モビリティ・マネジメントへの理解を深めるためには、具体的にどのような効果やメリットがあるのかを知ることも大切です。

既存の交通インフラの有効活用

近年、路線バスなどの利用者が減少していることによって、公共交通機関の廃止が危ぶまれている地域があります。モビリティ・マネジメントは、このような地域において有効な取り組みです。
地域住民の一人ひとりが自動車に頼ることなく、さまざまな交通手段を適切に活用することで、公共交通需要の増加をもたらすことになります。
また、既存交通インフラを有効的に活用できれば、当該路線のサービス頻度の向上や路線の拡充も見込まれます。

道路渋滞や交通事故の減少

モビリティ・マネジメントは、道路渋滞や交通事故の減少にも効果があります。
特に都市部の主要道路では通勤時の道路渋滞が激しく、大きな社会問題となっている地域も少なくありません。
モビリティ・マネジメントによって住民に自発的な交通意識の変化を促し、通勤時における自動車の利用を公共交通機関や自転車、徒歩などへ転換することで、道路渋滞の緩和へとつながる可能性があります。

また、年齢層別の免許人口10万人当たりの死亡事故件数(令和元年)を見ると、75歳以上の自動車運転事故リスクはそれ以外の年齢層に比べて約2倍になることが分かっています。
高齢者が自動車の利用から既存交通インフラを活用するように行動を変えることで、自動車運転の事故リスクを軽減することにつながるでしょう。

地域の中心市街地の活性化

モビリティ・マネジメントは、地域の中心市街地の活性化にも寄与します。
自動車を利用する場合、自動車でのアクセスが良い郊外型の大規模小売店舗などで買い物する方が多い傾向にあります。
しかし、モビリティ・マネジメントにより、自動車ではなくほかの交通機関を利用することで郊外ではなく市街地で買い物する機会の増加につながり、地域の中心市街地の活性化が期待できます。

CO2 排出量削減による環境負荷抑制

モビリティ・マネジメントは、CO2排出量削減による環境負荷抑制にも効果があります。
自動車で1人を1km運ぶ際のCO2排出量は、鉄道の約7.6倍、バスの約2.3倍とされています。
公共交通機関の利用を促進することで、持続可能な環境交通の実現が可能となるでしょう。

モビリティ・マネジメントの具体例

モビリティ・マネジメントは、すでにさまざまな自治体で実施されています。
ここからは、モビリティ・マネジメントの具体例について紹介します。

福岡県福岡市

福岡県福岡市では、都心地区の自動車集中による道路渋滞問題や環境問題をはじめ、さまざまな交通問題が発生している状況にありました。

そこで、このような深刻な状況を打破するために、福岡市では自動車に過度に依存している地域を抽出し、自宅訪問形式でアンケート調査を実施しました。自宅訪問形式のモビリティ・マネジメントは、各家庭を訪問して顔を見ながらコミュニケーションを取ることができ、対象者の調査趣旨への理解度を高めることができます。

実際に福岡市では、モビリティ・マネジメントの実施効果として、自動車の利用時間22%減少、CO2排出量22%削減が確認されています。

兵庫県川西市

兵庫県川西市では、自動車交通の増大や道路渋滞・環境悪化が問題となり、これまで都市交通環境の改善として、TDM(交通需要マネジメント)施策に取り組んできました。
TDM施策は、自動車から公共交通への利用転換や自動車利用の抑制による道路渋滞の解消を目指して実施され、その効果を高めるために居住者を対象とした郵送配布形式でモビリティ・マネジメントが行われました。
具体的には、コミュニケーション・アンケート調査として「かしこいクルマの使い方」を検討してもらうための行動プラン票、環境や健康への影響など公共交通機関を利用する動機付けになる資料などを郵送し、後日行動プラン票を郵送によって回収しました。
その結果、情報提供を行っていないグループに比べ、アンケート調査を行ったグループのほうが、自動車による平均移動時間の減少が見られました。

大阪府吹田市

大阪府吹田市は、バス路線や鉄道路線が周辺地域に比べて比較的整備されている地域です。しかし、住民アンケート調査によって、最寄りのバス停の位置を知らない方やバスの運行頻度や運賃などを知らない方が多いことが分かりました。
そこで吹田市では、公共交通の利用を促進するため、簡易TFP※(全要素生産性)による転入者へのモビリティ・マネジメントを行いました。
その結果、対象者の月間バス利用頻度は、情報提供が行われなかった人々に比べ、調査直後は80%増、1年後は94%増、3年後は68%増と長期間でその効果が持続されていることが分かっています。

※TFP:Travel Feedback Program(トラベル・フィードバック・プログラム)の略。「大規模、かつ、個別的」なコミュニケーション施策の一種で、複数回の個別的なやりとりを通じて、対象者の交通行動の自発的な変容を期待する施策。
※簡易TFP:一定の参加率と一定の効果の双方を期待できる。最も基本となるTFP。

モビリティ・マネジメントの必要性を知って今後に注目しよう

モビリティ・マネジメントとはどんな取り組みなのか、効果やメリットに注目し解説してきました。
現在日本が抱えているさまざまな交通問題を解決するためには、私たち一人ひとりが社会にも個人にも望ましい方向へ自発的に変化していくことが求められています。
ぜひこの機会に、モビリティ・マネジメントの必要性を知り、日本や自身が居住している地域でのモビリティに関する今後の取り組みに注目していきましょう。

モビリティの意味や取り組みについての詳細は、下記関連記事をご覧下さい。
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